▼令和3年 令和2年度決算特別委員会 松野 隆 総会質疑 (令和3年10月6日)

◯松野委員 公明党福岡市議団を代表して、周りから理解されず、原因不明の体調不良に苦しむ人たちへの支援について、ウィズコロナ時代における本市の経済回復策と観光業支援について尋ねる。初めに、周りから理解されず、原因不明の体調不良に苦しむ人たちへの支援についてである。この症状は本態性環境不耐症、あるいは化学物質過敏症とされる。本態性環境不耐症とは聞き慣れない言葉であるが、本態性とは医学上、疾病ではあるが原因不明ということで、環境不耐症とは環境中にごく普通に存在する幾つかの物質を吸う、触るなど体内に入れて少量暴露するだけで引き起こされる症状のことで、心拍数の増加、胸痛、発汗、息切れ、疲労、紅潮、目まい、頭痛、呼吸困難、不眠、不安、鬱状態等々がある。ごく少量の物質にでも過敏に反応する点ではアレルギー症状に似ているが、低濃度の化学物質でも反復暴露されると体内に蓄積し、慢性的な症状も来し、中毒性の疾病様な症状も持ち合わせるなど未解明な部分が多い疾病である。一般的に化学物質過敏症という症状が相対的に認知されているため、以降は化学物質過敏症として質問する。初めに、化学物質への本市の取組について尋ねる。UNEP、国連環境計画は環境分野における国連の主要な機関として1972年に設立され、地球規模の環境課題を設定し、各国の政府と国民が将来の世代の生活の質を損なうことなく自らの生活の質を改善できるように、持続可能な開発の取組の中で環境に関連した活動を進め、グローバルな環境保全の権威ある役割を果たしている。このUNEP事務局で策定された国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ、SAICMの概要及びこれまでの主な取組について尋ねる。
△環境局長 国際的な化学物質管理のための枠組み、いわゆるSAICMについては、令和2年までに化学物質が健康や環境への影響を最小とする方法で生産、使用されるようにすることを目標とし、科学的なリスク評価に基づくリスク削減、予防的アプローチ、有害化学物質に関する情報の収集と提供などを進めることについて定めたものである。主な取組としては、国が平成24年9月にSAICM国内実施計画を策定し、国が実施主体となって、化学物質に関するリスク評価の推進やライフサイクル全体のリスクの削減、未解明の問題への対応、安全、安心の一層の推進などの取組がなされていると承知している。
◯松野委員 令和2年度に環境局が化学物質についての課題や調査研究に取り組んだ事業内容及び決算額について尋ねる。
△環境局長 令和2年度における化学物質対策としては、低濃度であっても長期的な摂取で健康への影響が生じるおそれのある、有害大気汚染物質の調査及び解析、化学物質の排出量と移動量に関する情報収集を行う、いわゆるPRTR制度に基づく届出審査及び集計結果の公表、環境中における化学物質の残留状況を把握する化学物質環境実態調査などに取り組んでおり、決算額は1,359万円余である。
◯松野委員 南アフリカのヨハネスブルクで開催されたWSSD、持続可能な開発に関する世界首脳会議における2020年目標達成に向けた国際的合意事項「化学物質が、人の健康と環境にもたらす悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」を受け、SAICM国内実施計画では令和2年に地方公共団体における各種取組の点検結果を取りまとめている。そこで、その取りまとめに記載された取組状況について、化学物質の適正管理及び化学物質過敏症のそれぞれの項目に取り組んだ政令指定都市は幾つあったか。また、本市の取組結果について尋ねる。
△環境局長 国が令和2年に取りまとめたSAICM国内実施計画の進捗結果における地方公共団体による独自性の高い取組として、化学物質の適正管理については20政令市中12政令市、化学物質過敏症等については20政令市中9政令市の取組が記載されている。本市の取組については記載されていないが、大気汚染防止法や水質汚濁防止法等に基づく事業場の監視、指導や、PRTR制度に基づく届出審査や集計結果のホームページでの公表、出前講座の実施など、化学物質の適正管理に向けた取組を実施している。
◯松野委員 環境局としては出前講座やホームページへの掲出などに取り組んでいるそうだが、市民には知られていない。今後きちんと市民に伝わるように啓発すべきではないか、所見を尋ねる。
△環境局長 化学物質の適正管理に向けた啓発については、これまでの身近な化学物質の適正利用に関する出前講座の実施や化学物質の排出状況などのホームページへの掲載に加え、SNSを用いた情報発信や啓発チラシの作成、配布を行うなど、より多くの人に情報が伝わるよう取り組んでいく。
◯松野委員 よろしくお願いする。次に、長年この症状に苦しみ続ける市民への支援について質問する。初めに、本市の難病対策、支援に関わる令和2年度の決算額を尋ねる。
△保健福祉局長 令和2年度における難病対策事業の決算額については27億5,300万円余である。
◯松野委員 次に、国が難病に指定している疾病数と本市の難病患者に対する具体的支援内容について尋ねる。
△保健福祉局長 指定難病については令和3年10月1日時点で333疾病がある。また、難病患者に対する支援については、難病の治療等に要する医療費の助成や、在宅で人工呼吸器を使用している指定難病の患者への訪問看護、難病相談支援センター等における難病に関する講演会や研修会の開催、患者交流会や個別相談支援の実施、また、難病の患者で一定の障がいがある人に対するホームヘルプサービスや補装具、日常生活用具の給付などを実施している。
◯松野委員 指定難病については支援がある。では、難病に指定される前の段階の疾病で、指定を待機しているものがあれば登録されている疾病数と、その疾病に対する何らかの支援の有無と支援内容を尋ねる。
△保健福祉局長 難病については疾病ごとに厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴いて指定することとされており、指定される前の疾病を登録する仕組みや指定前の疾病に対する支援などはない。
◯松野委員 化学物質過敏症は難病に指定されているのか、あるいは指定される予定があるのか。また、本市においてこのような症状の人々への支援はあるのか。
△保健福祉局長 化学物質過敏症については現在のところ難病としての指定はされておらず、指定の予定についても聞いていない。本市において化学物質に過敏な症状を有する人から相談を受けた場合、各区保健福祉センター等において個別の健康相談として対応している。
◯松野委員 長年この症状に悩まされ苦しみ続けている、あえて患者と呼ぶが、患者に会い、話を聞いた。仮にAさんとする。高校1年生時にクラスメートの化粧や香水の香りに対し、ある日突然喉の痛みや目のかゆみ、鼻水などを発症し、外出時にも香りに対し同様の症状を覚えるなど困難を来すようになった。幼少時代からのかかりつけ医に相談したところ、香りアレルギーというアレルギーはないと断言され、そのことが大きなトラウマとなり、以来、医療機関も受診できず、自分自身で対処することを余儀なくされ現在に至っている。高校2年生になり、授業中突然の鼻血、腹痛が頻発し、欠席も増えていった。高校3年生時にはこの疾病の症状である鬱状態となり、心療内科で適応障がいと診断された。以後、進路についての悩みや人間不信により20代になっても職に就くこともできず、家からの外出もほとんどできない10年間であり、Aさんは現在30代となった。何に対して症状が出るかとその症状を示すパネルを用意した。香水や化粧品、制汗剤、アロマ、シャンプーは喉が痛み、目や鼻、皮膚がかゆくなり、鼻水やくしゃみが出る。たばこはそれよりさらに強い症状が出る。芳香剤や消臭スプレー、殺虫スプレー、線香、ガソリン、排気ガスはその症状に加えて頭痛や耳鳴りがする。もっとひどいのは香りつきの蚊取り線香で、頭痛や耳鳴りに加えて胸が痛くなり、呼吸数が増えて呼吸がしづらくなり、吐き気や手足の冷え、腹痛、鼻血という症状まで出る。柔軟剤や一部の洗剤、消毒液、ペンのインクでもこのような症状が出る。一歩外に出るとこのようなものにさらされる。自分や自分の家族がこんな症状を持っていたら本当に生活できるかと思う。このような症状の苦しさに加え、もっと大変なのは人間関係の構築や日常生活、社会生活が困難を極めるなどの二次的な被害である。どんな思いでAさんはこの10年間を過ごしたのだろうか。国指定の難病で支援を受けている人や待機しながら早期指定を待っている人もたくさんいる。しかし、病名もつかず、行政サービスのはざまで誰からもどこからも支援がなく、ただ一人で苦しんでいる人が少なからずいると推察する。このような症状を持つ人の実態について本市は調査を行ったことがあるのか。ないのであれば、まずは市民に実態調査を行うべきではないか。
△保健福祉局長 化学物質過敏症の実態調査についてはこれまでに行ったことはない。化学物質過敏症についてはその病態や発症のメカニズムについて未解明な部分が多く、平成27年度に環境省が、令和2年度からは厚生労働省が調査研究を行うなど、国において実態解明に向けて取り組んでいるところであり、本市としてはその動向に注視していきたい。
◯松野委員 福岡市保健福祉審議会において、このような原因不明の疾病に苦しむ人たちへの支援について諮問したことや検討の必要性について具申したことはあるのか。ないのであれば、今後、意見をもらうことは考えられないのか。
△保健福祉局長 同審議会については、社会福祉をはじめとした本市の保健福祉施策を総合的に推進することを目的として設置しており、同審議会に対しては保健福祉総合計画の改定など保健福祉施策全般に係る事項を諮問し、審議を行ってもらっていることから、個々の事象に対する支援策について諮問した例はない。しかしながら、同審議会の答申を受けて策定した同計画については、策定後においても同審議会において議論を行いながら推進することとしており、これまでも同計画の進捗評価などの際に同審議会委員より各施策等についての様々な意見をもらっているところである。
◯松野委員 原因不明の症状に苦しむ人々は、その実態についての調査や研究が進まなければ地域でも孤立したままとなる。新しく策定された同計画は、地域で暮らす全ての人が住み慣れた地域で生きがいを持ちながら安心して暮らすことができる地域共生社会の実現を目標としており、ぜひ委員の意見をしっかり聞きながら必要な施策を進められたい。また、審議会の委員のみならず、原因不明の症状に苦しむ人、もしくはその家族の切実な訴えを直接拾い上げ、難病指定につなげるなど行政からの支援に結びつける仕組みはぜひとも必要だと考えるが、所見を尋ねる。
△保健福祉局長 難病の指定については、患者からの申出等を起点とする仕組みについて、国において具体的な議論が行われていると承知しており、まずは国の動向を注視していきたい。
◯松野委員 患者の申出を起点として診療体制の構築をすることは非常に大事であり、国の中で具体的に議論が進んでいるとのことであるため、今後もぜひ国に対して申入れを進められたい。ここでAさんからの手紙を紹介する。「社会保障を受けるにも医師に診断書を書いてもらう必要があります。しかし、そもそも医師自身がこの病を知らず、診断できないことから診断書を書いてもらえません。病気を診てくれるはずの医師が過敏症自体を知らずにきちんと診断してもらうことができない。どこで診てもらえばいいのか分かりません。専門医も少なく、診断してもらうにも遠出を余儀なくされ、バスや電車、場合によっては飛行機などといった公共の乗り物を使わざるを得ません。病院にたどり着くまでのリスクが大きく、結局、極力外に出ず、家の中に引き籠もることで回避するしかなく、自分たちで気づき、自分たちで判断し、自分たちで対処するしかありません。無理解に傷つきたくないから口を閉ざし我慢するしかない。それが私たちの大半を取り巻く現状です」との切実な実態である。各政令市のホームページを見ると、化学物質等はどういうものか、それにより苦しむ人たちはどのような症状なのか、その人たちに対してどのようなことができるかなどを紹介し、市民に理解と協力を求める啓発を行っている。仙台市教育委員会がホームページに掲出している情報のパネルを用意した。化学物質過敏症とシックハウス症候群とはどのように違うのか、洗剤や柔軟剤など原因となる可能性があるもの、化学物質過敏症の症状は何かなどかなり詳しく書いてある。また、換気やワックスがけの方法、殺虫剤やトイレの芳香剤、防臭剤の使用方法、受動喫煙、学校用品の購入に関すること等々の日常の予防法や留意点も書いてある。当事者のみならず、市民が主体的にこの問題にしっかり取り組める啓発内容になっており、このような情報をホームページに掲出するということは、このような症状を持った子どもたちが結構いるのだと考える。市内にもこのような人たちはたくさんいると考えられ、少なくとも本市も同様に、ホームページや市政だよりを通じて啓発活動を積極的に行うべきだと思うが、所見を尋ねる。
△保健福祉局長 他の政令市では、国の調査研究で明らかとなった知見等を基に化学物質過敏症に関する啓発が進んできていると認識している。本市としては、化学物質過敏症に対する市民の理解を促進するため、他都市の状況も踏まえながら具体的な啓発内容等について検討していきたい。
◯松野委員 どうかよろしくお願いする。かつて発達障がいがある児童やその保護者が誰からの支援もなく、しつけができていない、家庭に問題があるなどとされた誤解に対し、親同士の連携によって情報の共有が進み、その後、医学的なエビデンスが認められ、政治からの支援や法整備につながった。こうした事例から考えても、本市として、診療体制の構築や相談窓口の設置を図り、潜在化する患者同士が意見交換やあるいは相談する場を設け、NPO等の市民団体と連携したプラットフォームをつくるなど、原因不明の疾病に悩み続ける人々への支援に取り組むべきだと考えるが、所見を尋ねる。
△保健福祉局長 化学物質過敏症については、いまだ未解明な部分が多いことから国において調査研究が進められているところであるが、その動向などを踏まえ、知見を収集しながら、市民の理解促進を図るための啓発に取り組んでいきたい。また、身体的な症状はもとより、不安や鬱状態などの心理的な症状、さらに人間関係や社会生活に関わるものも含めた多岐にわたる悩み事や心配事などについて、健康相談や心の相談など個別相談支援を行うとともに、関係機関、団体などをしっかりと連携させながら対応を図っていきたい。
◯松野委員 再度手紙を紹介する。「適応障がいもある程度落ち着き、人間不信についてもある程度の改善が見られ、普通の人と同じように外に出て働きたいと思うようになりました。しかし、自身が化学物質過敏症を持っていること、周囲からの理解が乏しく、説明しても分かってもらえないことのほうが多いことから、外で仕事をすることに大きなリスクを感じています。私自身できることなら皆さんのように香りを楽しみたいと思っています。決して香りが嫌いだから大げさに言っているのではない、症状が出るのも気のせいではないということを理解していただきたいのです。判別することが難しいため、面倒だと煩わしく思われるのも仕方がないのかもしれません。けれど、誰よりもこの病を面倒で煩わしいと思っているのはこうして生きている私たち患者自身であることを忘れないでいただきたく思います」とある。この手紙を書く際にも使っていたボールペンのインクでまた体調を崩したという話を聞いた。それほどひどい症状の人がいるということである。本年8月に策定された福岡市保健福祉総合計画において、市長は「誰もが一人の人間として尊重され、住み慣れた家庭や地域で安心して暮らし続けることができるハード・ソフト両面の調和がとれた健康福祉のまちづくりを実現してまいります」と市民一人一人に寄り添う決意を表明している。誰一人取り残さないことを理念としているSDGsにおいても、化学物質による疾病等を減少させることがターゲットとして示されている。最後に、周りから理解されず、原因不明の体調不良に苦しむ人たちへの支援について市長に所見を尋ね、この質問を終える。
△市長 健康とは病気ではないということだけではなく、肉体的、精神的、そして社会的にも全てが満たされた状態であることと定義されており、誰もが意欲や生きがいを持ちながら生活するための基盤となるものである。化学物質によるとされる疾病については、国において調査、研究が進められているところではあるが、原因が分からず、また、誰からも理解されず苦しんでいる人がいることから本市としてもその知見を収集して、化学物質によって様々な症状が誘発される人がいることを周知し、周囲の人に配慮を促すなど、市民理解の促進と啓発に努めるとともに、一人一人に寄り添った対応、支援によって多岐にわたる悩み事や心配事が解消につながるよう取り組んでいく。
◯松野委員 力強いメッセージが当事者に生きる希望として伝わっていくと思う。よろしくお願いする。次に、ウィズコロナ時代における本市の経済回復策と観光業支援についてである。令和2年から拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により海外からのインバウンド需要が激減し、また、国内においても緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴い、不要不急の外出や県をまたぐ帰省、旅行などの移動を自粛するよう要請がなされたことから、地域経済は大きな影響を受けているとテレビや新聞などで報道されている。初めに、福岡空港と博多港からの入国者数及び出国者数の推移について平成30年、令和元年、2年とそれぞれ尋ねる。
△経済観光文化局長 福岡空港と博多港からの入国者数については合計で平成30年が約416万8,000人、令和元年が約381万3,000人、2年が約50万人で、出国者数については合計で平成30年が約361万2,000人、令和元年が約332万8,000人、2年が約44万5,000人である。
◯松野委員 同感染症が拡大する前は、市内で大きなイベントが開催されると市内のホテルなどは宿泊予約が取りづらい状況になることもあったが、市内の宿泊施設における客室稼働率の推移について同じく平成30年、令和元年、2年とそれぞれ尋ねる。
△経済観光文化局長 市内の宿泊施設における客室稼働率については年平均で平成30年が82.1%、令和元年が79.6%、2年が34.8%である。
◯松野委員 福岡空港や博多港からの入国者数及び出国者数、市内の宿泊施設における客室稼働率は同感染症の拡大前である令和元年に比べてかなりの落ち込みとなっており、第3次産業が9割を占める本市においても地域経済は非常に厳しい状況になっていると考えられる。そこで、コロナ対策として、本市による経済支援策の令和2年度の決算額、財源内訳及び主な対象業種別決算額を尋ねる。
△経済観光文化局長 経済支援策について、令和2年度の決算額は2,768億円余で、その財源は商工金融資金預託金元利収入が2,658億円余、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金が88億円余、県補助金などが15億円余、一般財源が5億円余である。また、主な対象業種別の決算額については幅広い事業者への支援が2,705億円余、飲食業などの休業・時短要請を受けた事業者への支援が56億円余、宿泊・観光・MICE事業者への支援が2億2,000万円余、文化・エンターテインメント事業者への支援が2億2,000万円余、商店街への支援が1億5,000万円余である。
◯松野委員 その中で宿泊や旅行業といった観光産業に対してどのような支援策を実施したのか。また、今年度どのような支援を実施しているのか。
△経済観光文化局長 観光産業に対する支援について、令和2年度は宿泊事業者が取り組む感染症予防策に対する支援、新たな生活様式に対応した宿泊施設の多様な利用促進事業、休業要請を受けた旅行代理店店舗などへの家賃支援を、3年度は福岡型ワーケーション推進事業、宿泊施設の高付加価値化等支援事業、修学旅行等による都市圏周遊の推進、感染症対応シティ促進事業など、観光産業を対象とした支援や幅広い事業者を対象とした支援を実施している。
◯松野委員 長引くコロナ禍により1年以上旅行需要が激減したことにより、観光産業の中でも国内の旅行会社は大きな影響を受け倒産や廃業が相次いでおり、このまま事態が推移すると旅行需要回復前にさらに倒産が増加するとの予想もある。日本旅行業協会が会員へ調査したデータでは、緊急事態宣言の発出を受けて失ったと見られる本年4~8月の旅行取扱いは、人数が580万人、取扱い額が2,230億円、粗利額が335億円に達し、2019年と比較し売上げ9割減が続いている。昨年度はGo Toトラベルがあり一時的に経済効果もあったと思われるが、その後の感染拡大により効果は極めて限定的であり、今年はさらに厳しい状況となっている。特にここ数年はOTA、オンライン・トラベル・エージェンシーの利用者拡大により実店舗を抱える旅行会社の取扱高はそもそも減少傾向にあったようだが、それに加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、実店舗で従業員を多く抱える旅行会社にとって、利益率が大きい団体旅行の取扱件数と売上げの減少が経営に大きく影響していると思う。団体旅行といえば、修学旅行も収益の柱の一つである。そこで、令和2年度の本市の小中学校の修学旅行の行き先や実施状況、キャンセル状況について教育委員会に尋ねる。
△教育長 修学旅行の行き先については、小学校の場合はほとんどが長崎県内で、中学校の場合は関西地方や南九州が多くなっている。また、昨年度は全ての小中学校で実施できており、中止した学校はない。
◯松野委員 中止はなかったようであるが、全ての修学旅行を実施するに当たり、延期や目的地、宿泊先の変更などに伴うキャンセル料などの発生はなかったのか。また、修学旅行のキャンセル料の内容にはどのような取決めがあるのか。さらに、キャンセル料の発生に際し、教育委員会はどう対処するのか。
△教育長 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により日程や目的地、宿泊先を変更した学校はあるが、それに伴って児童生徒がキャンセル料を負担したケースは発生していない。また、キャンセル料の内容は学校が契約している旅行業者によって異なるが、おおむね20日前の中止で旅行代金の30%、1週間前の中止で40%、当日の中止で50%である。教育委員会としては、令和3年度は感染状況の予測が困難であったことなどからキャンセル料の算定ができず、予算措置は行っていないが、一方で、想定外の事態にも対応できるようキャンセル料を補う保険に加入している学校もある。
◯松野委員 修学旅行や遠足、社会科の見学、移動教室、体験活動など校外で行う活動については教育的意義や児童生徒の心情を考慮し延期扱いとし、既に取りやめた場合も改めて実施検討を行う等の配慮を行うよう文部科学省より要請がなされている。全国の旅行会社にも、何とか修学旅行だけは行かせたいと学校側から実施可能な提案を幾つも要請されたと聞いている。本市教育委員会は実施に向けて旅行会社に協力依頼を行っているのか。
△教育長 修学旅行は子どもたちにとってかけがえのない貴重な思い出となる有意義な教育活動だと考えている。そのため、教育委員会としても、直接契約を行う学校が計画段階から旅行会社と密接に協議し、教育効果があることはもちろんのこと、実現可能性の高低の観点からも目的地や日程等を検討するとともに、仮に延期が必要となった場合の対応についても事前に十分に相談しておくなど、修学旅行がより実施できるような働きかけを旅行会社へ学校を通じて行っている。
◯松野委員 キャンセルした場合に備え保険に加入している学校もあるとのことだが、コロナ感染症による影響など、客観的でやむを得ない事情により修学旅行がキャンセルになったにもかかわらず、保護者がキャンセル料に係る保険料まで負担するのはいかがなものか。教育委員会として、保険料の保護者負担について保護者への対応に苦慮することはないのか。また、修学旅行が急遽取消しになった場合のキャンセル料負担について、国による財源負担等の支援メニューはないのか。
△教育長 キャンセル料等に関する公費負担については今後の感染状況等も見ながら適切に対応していく。また、国による財源負担については、文部科学省から発出された学校設置者及び学校関係者に対するQ&Aに、修学旅行等を中止または延期した場合において、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用を内閣府が可能としている旨記載されている。
◯松野委員 修学旅行のキャンセル料については全国的にも旅行会社が負担している例もあり、このキャンセル料負担が大きな課題となっている。業界の存亡に関わるような需要激減を業務外の事務受託などにより補填している中、その利益からキャンセル料の負担を余儀なくされればまさに二重苦となってしまう。観光庁及び文部科学省から本年7月21日に修学旅行等の中止、延期に伴うキャンセル料への地方創生臨時交付金の活用が可能である旨の事務連絡が発出されている。また、8月20日に新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(事業者支援分)における追加交付分の取扱いについてとして、旅行の中止、延期の影響を受ける事業者の支援が特段の事例として示された。これから本格的な修学旅行シーズンを迎えるが、新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては再びキャンセル料負担の問題が生じることになりかねない。同交付金の活用が可能であるならば、日程や宿泊地の変更が生じても何とか子どもたちのために修学旅行の実施に向けて、また、保護者の経済的負担を軽減するために、さらに交通事業者や宿泊事業者、旅行会社等、地域の観光インフラを救済するためにもこの交付金を活用し、修学旅行のキャンセル料について本市が負担すべきと考えるが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 旅行会社をはじめとした観光産業は本市にとって重要な産業だと認識している。修学旅行のキャンセル料負担については修学旅行の重要性を考慮し、教育委員会と連携しながら市立学校の修学旅行の実施状況や新型コロナウイルス感染症の状況を注視し、国の臨時交付金の活用も含め検討していく。
◯松野委員 できるだけ早く検討されたい。よろしくお願いする。次に、福岡観光コンベンションビューローでは現在、市内に宿泊する修学旅行等に対し、貸切りバス1台当たり5万円を上限とする支援並びに修学旅行や校外学習などで市内の体験学習プログラムを利用する場合の参加費用支援を行っているが、申請数と利用実績について尋ねる。
△経済観光文化局長 修学旅行や校外学習に対する支援については緊急事態宣言などが発出されていた期間は一時停止していた。そのため、市内に宿泊する修学旅行などに対する貸切りバス代の支援については、9月末現在で申請数は68件、利用実績は1件である。また、修学旅行や校外学習などで利用する市内の体験学習プログラムの参加費支援については、9月末現在で申請数は15件で利用実績はない。なお、10月からこれらの支援を再開している。
◯松野委員 ちょうど実施時期が今年7月からで、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の期間と重なり、使用実績はともに厳しいようである。貸切りバスの売上げ動向も、旅行需要の大幅な減少により経営は壊滅的な打撃を受け続けている。次年度以降も本市への修学旅行の積極的な誘致策による貸切りバスの利用拡大などにより、旅行業全体の活性化を図っていくことが重要であると思うが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 旅行業全体の活性化について、貸切りバス事業者をはじめとした運輸業は大変厳しい状況にあることから、現在実施している修学旅行に対する支援などについて周知や利用促進を図っていく。今後も企業ニーズや業界の置かれている状況などを踏まえながら必要な支援策を検討していく。
◯松野委員 よろしくお願いする。第3次産業により成り立っている本市経済と市民の所得回復のためには本市の観光振興策は欠かせない。また、本市観光事業のパートナーとして、旅行会社やバス会社などの交通機関には今後また様々な支援を行うことと思う。最近聞いた日本旅行業協会会員からの生の声を幾つか紹介する。「政府からの移動自粛要請に従いツアーの中止や時期の変更などに協力してきたが、飲食店と異なり補償がない」、「ワクチン接種を条件とした行動制限の緩和に光明が見えてきた。国内、海外、インバウンドの順で少しずつ回復していくことを期待している。一方で、経営的にもう1か月も待てない。資金繰り悪化や人材の流出が止まらず、回復しても元に戻れない」、「緊急事態やまん延防止のたびに取消しや変更作業に追われる。しかも出社して行うので、雇用調整助成金の対象にもならず、二重苦となっている」、「現状、地場の観光業に対し、銀行は融資を見送っている。月次の助成金や雇用調整助成金だけではもう生き延びることができない」等々、どれもウィズコロナの経済回復策に間に合わないとの旅行業を取り巻く現場の切実な声であり、旅行業界の存亡、従業員家族の生活への影響、店舗の縮小による旅行の受皿の消滅、次年度以降の新卒採用控え、さらなるリストラによる人件費の圧縮など雇用や税収面でも地元経済に与える影響は多大である。他都市では旅行会社に対する支援策を次々と決定しているとの情報もあり、本市においても旅行会社を含む観光産業への支援を要望して市長に所見を尋ね、質問を終える。
△市長 本市は第3次産業が9割を占める産業構造であり、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく減少している交流人口を回復することで観光産業を含む市内経済を活性化していくことが重要であると認識している。観光産業は宿泊や飲食、交通など裾野が広く、今回影響を特に大きく受けた産業であるため、これまで、事業継続のための感染症対策や休業要請に協力をした事業者に対する家賃支援などに加え、需要喚起のためのワーケーションの推進や修学旅行の誘致など、事業者に寄り添った支援を続けている。今後も感染の拡大防止と社会経済活動の維持の両立を基本とし、同感染症の収束状況や国の動向を注視しながら域内外からの誘客や消費の促進を図るなど、観光産業の活性化につなげていく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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