▼令和3年 令和2年度決算特別委員会 古川 清文 総会質疑 (令和3年9月21日)

◯古川委員 公明党福岡市議団を代表して、再犯防止と出所者の立ち直り支援について、コロナ禍における就学援助制度について、以上2点を質問する。初めに、再犯防止と出所者の立ち直り支援について尋ねる。私たちが住む地域社会の中に、罪を犯した人や非行に走った人の立ち直りの援助や、地域住民からの犯罪や非行の予防に関する相談に応じ、必要な助言、指導を行うなど、更生保護の重要な役割を担っている保護司がいる。保護司は、保護司法に基づき、法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員である。保護観察官と協力して本質的にボランティアで活動している。本市議会の中にも保護司がおり、私も保護司の委嘱を受けた1人である。まだまだ経験が浅いゆえに全てを知り尽くしているわけではないが、更生保護に係る質問、再犯防止と出所者の立ち直り支援について質問する。まず、再犯とはどういうことなのか、詳細を尋ねる。
345△市民局長 再犯については、刑法第56条において、懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とすると規定されている。また、犯罪白書においては、再犯者として、刑法犯により検挙された者のうち、前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり、再び検挙された者をいうとされている。
346◯古川委員 刑務所に入っている受刑者に対して、また、一度だけではなく犯罪を繰り返した再犯者について、どのようなイメージを持っているだろうか。令和2年版の犯罪白書を見ると、警察から検察庁に送られる犯罪者、被疑者は約90万人、その中から刑務所に収容されるのは約1万7,000人、つまり犯罪者の2%弱となる。逮捕、起訴、裁判と刑事司法の手続を踏んだ犯罪者が受刑者になることを考えれば、犯罪者の中でも極悪中の極悪犯罪者が刑務所に送られると考えがちだが、実態は少し違うようである。一般的に家庭や仕事があり、社会基盤がしっかりしている人は、弁護士の支援も受けることができ、被害弁償などを行うことによって示談にもなりやすい。また、コミュニケーション能力がある人は、取調べや裁判の過程で場に応じた謝罪や自己弁護等の受け答えができる。その結果、起訴猶予や略式起訴、執行猶予判決を受けやすく、よほどの重大事件または累犯者でなければ実刑判決にはなりにくいのである。逆を言えば、社会基盤がしっかりしていない人の場合、被害弁償や示談による支払いや罰金の支払いが困難な場合は労役所留置となり、拘置所に収容され、労働によって罰金を支払わなければならない。また、コミュニケーション力に乏しい人の場合は、検察官や裁判官を納得させる謝罪が困難で反省していないとみなされ、再犯のおそれから実刑になることもある。それでは、本市の再犯の状況はどうなのか。過去3年間、本市における刑法犯検挙者数とそのうち再犯者数並びに再犯者率の推移を尋ねる。また、その状況を本市はどのように分析しているのか併せて尋ねる。
347△市民局長 本市における過去3年間の刑法犯検挙者数の推移については、平成30年が3,484人、令和元年が3,813人、2年が3,349人であり、再犯者数の推移は平成30年が1,673人、令和元年が1,727人、2年が1,557人であり、再犯者率の推移は平成30年が48.0%、令和元年が45.3%、2年が46.5%となっている。全国の再犯者率は、平成30年及び令和元年はともに48.8%となっており、本市の再犯者率は若干下回っている。
348◯古川委員 パネルを用意した。これは国における刑法犯検挙者数と、再犯者数及び再犯者率を示している。平成15年~令和元年を1年ごとに表しているが、刑法犯の検挙者数、つまり犯罪件数は徐々に減っているが、再犯者数はほぼ横ばいとなっている。そのため、再犯者率は年々上がり続けている状況である。グラフは国のデータだが、課題は、犯罪の総数が減っている割には再犯者数が減っていないことに着目すべきだと思う。再犯者率が48.8%であることから、刑法犯の2人に1人が再犯ということになる。これまで行ってきた出所者の立ち直り支援を根本的に見直すことがなければ、犯罪のない社会は実現できないのではないかと感じている。犯罪の種類には、殺人、強盗などの凶悪犯、暴行、脅迫などの粗暴犯、空き巣や自転車盗などの窃盗犯、詐欺や横領などの知能犯、賭博や強制わいせつなどの風俗犯、器物損壊などのその他に区分される。令和2年の本市の刑法犯検挙者数から、包括罪種別の検挙者数と再犯者数、再犯者率を再犯者率の高い順に尋ねる。
349△市民局長 包括罪種別の再犯者率については、知能犯が最も高く、検挙者数が136人、再犯者数が74人、再犯者率が54.4%であり、次に、窃盗犯で検挙者数が1,364人、再犯者数が734人、再犯者率が53.8%。次に、凶悪犯で検挙者数が53人、再犯者数が27人、再犯者率が50.9%。次に、風俗犯で検挙者数が75人、再犯者数が36人、再犯者率が48%。次に、その他で検挙者数が447人、再犯者数が198人、再犯者率が44.3%。次に、粗暴犯で検挙者数が1,274人、再犯者数が488人、再犯者率が38.3%となっている。
350◯古川委員 本市では、どのような犯罪の再犯が多いのかが見えてきた。これらの犯罪の再犯を防ぐためにはどのような課題があると認識しているか。
351△市民局長 再犯を防ぐための課題については、就労の支援と住居の確保による生活基盤の安定化が重要であると認識しており、国、地方公共団体、民間協力者が連携し、民間協力者の活動を促進するとともに、広報、啓発活動の推進による地域社会への理解促進を図る必要があると考えている。
352◯古川委員 現在、具体的にどのような就労支援と住居確保の支援を行っているのか、また、地方公共団体と連携する民間協力者とは具体的にどのような活動、協力をしている人をいうのか尋ねる。
353△市民局長 就労支援と住居確保の支援については、再犯防止を目的とした制度ではないが、生活困窮者に向けた既存の各種施策、制度がある。就労支援策としては、就労に向けた基礎能力の習得を支援する就労準備支援事業、支援つき就労の場を提供する認定就労訓練事業などがある。また、住居確保支援策としては、家賃相当分の給付金を支給する住居確保給付金、入所施設において一時的に衣食住を提供するとともに、就労支援や居住移行支援を行う一時生活支援事業などがある。次に、民間協力者の主なものについては、保護司や協力雇用主があり、保護司は犯罪をした人たちの立ち直りを地域で支えるために、保護観察の実施、犯罪予防活動などの更生保護に関する活動を行っている。協力雇用主は、犯罪をした人たちの自立及び社会復帰に協力することを目的として、犯罪をした人たちを雇用、または雇用しようとする事業主である。
354◯古川委員 平成28年12月に議員立法により成立した、再犯の防止等の推進に関する法律の第5条では、国及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図らなければならないとされている。これにより、再犯の防止等に関する施策を実施するなどの責務が国だけでなく地方公共団体にもあることが明記されるとともに、都道府県及び市町村に対して、国の再犯防止推進計画を勘案し、地方再犯防止推進計画を策定する努力義務が課せられた。つまり、地方自治体も課題解決に向けて、具体的な計画と施策を立てて再犯防止を推進しなければならないとされたのである。これまで、更生保護は国の機関である法務省、地方機関として地方更生保護委員会及び保護観察所があったが、地方自治体である本市も課題解決に向けて再犯防止を推進することとなった。このことは大変重要なことだと思っている。令和3年6月議会の総務財政委員会で、福岡市版の再犯防止推進計画策定に取りかかる旨の報告がなされた。本市が考える計画策定の意義と今後のスケジュールを尋ねる。
355△市民局長 福岡市再犯防止推進計画については、再犯防止に関する就労、住居、福祉などの施策に係る総合的な推進、再犯防止施策に関する具体的な取組み内容の明確化、計画策定を通じた再犯防止施策への理解と合意形成の3点を意義として策定に取り組んでいる。今後の策定スケジュールは、外部検討会の意見なども踏まえ、パブリックコメント案を作成し、12月議会で報告したいと考えている。その後、パブリックコメントを実施し、令和4年3月の計画策定を予定している。
356◯古川委員 令和3年4月現在、全国で再犯防止推進計画を策定済みの団体は189団体と聞いている。そこで、政令指定都市における計画策定の状況について尋ねる。
357△市民局長 政令指定都市における再犯防止推進計画の策定状況については、法務省の資料によると、令和3年4月1日現在で20政令指定都市のうち16市が策定済みとなっている。
358◯古川委員 若干出遅れた感はあるが、先行している都市に学び、よいところを取り入れることができるのはメリットである。この質問に先立ち、既に再犯防止推進計画を策定し終わっている京都市の活動内容を調査してきた。京都市保護司会連絡協議会──以下、市保連という──は、市内における犯罪や非行の状況、保護司会における活動などについて情報交換しながら連携することで、保護司会活動をより充実させていくことを目指す組織である。京都市保連の主な活動は、年度初めに京都市長を表敬訪問し、意見交換を行っている。次に、京都府保連ブロック研修会の京都市ブロックの研修を実施。9月には、社会を明るくする運動街頭パレードを実施し、京都市長を先頭に市消防音楽隊の演奏に合わせ繁華街を練り歩き、市民への理解を呼びかけている。10月には、京都市教育委員会の指導主事や京都市立中学校校長会の校長との協議会を開催し、生徒の状況について全市的な視点で意見交換し、それぞれの活動の充実に努めている。このように、本市では分区単位や地域単位で行われている行政と保護司の連携活動が、京都市では市長をトップに市というくくりでも連携が取れている。そこで、現在、本市と本市の市保連との連携はどのようなものがあるのか。また、それに要した過去5年間の決算額を尋ねる。
359△市民局長 保護司会連絡協議会との連携については、保護司会連絡協議会や各区保護司会が行う更生保護活動等に対する補助金を交付するとともに、社会を明るくする運動福岡市推進委員会を設置し、各区役所において7月の強調月間を中心に講演会や街頭キャンペーンなどの啓発活動を保護司会と連携して行っている。また、市役所北別館及び城南市民センターにおける更生保護サポートセンター運営に関し、使用許可や減免など、保護司会活動への支援を行っている。保護司会補助金の決算額は、平成28年度が270万円、29年度~令和2年度が各年度300万円となっている。
360◯古川委員 どのような啓発活動を行ったのか、令和2年度の取組内容と決算額を尋ねる。
361△市民局長 令和2年度における啓発活動については、社会を明るくする運動啓発ポスターの地下鉄駅構内への掲示や、社会を明るくする運動区大会の実施のほか、市政だよりなどにより更生保護活動の取組の周知を図っている。なお、更生保護活動の啓発に限定した予算措置は行っていない。
362◯古川委員 今後は、補助金を出しているのでそれでよしとはならないようにしてもらいたい。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大で多くのイベント等が中止された。本市も京都市も同様で、これまで行ってきた社会を明るくする運動などの活動は中止をせざるを得なかった。そういったコロナ禍の中、京都市で令和2年度から新たに開始した活動が、京都市職員研修における講演の実施である。令和2年12月、京都市が主催する人権月間講座の一環として開かれた市職員向け研修会で、更生保護について市保連の代表が講演。更生保護や保護司といったテーマはあまり注目されないので、認知度を高め、関心を持ってもらえる機会となったようである。研修会後の市職員アンケートでは、97人参加のうち84人から満足との評価、93人から仕事にも役立つとの回答があったそうである。また、「現役の保護司の話が聞けて貴重な時間だった。社会で犯罪者を受け入れることは簡単にできないと思うが、保護司の関わり方を聞いて少しイメージができるようになった」、「ためになった」といった多くの高い評価があったそうである。また、講演した市保連の関係者も「市職員の方々に保護司の生の声を伝えることができました。職員の方々には今後、業務を通して、また、退職後の社会参加活動の一つの選択肢として、更生保護の地域活動に関わっていただき、犯罪や非行のない社会の実現に向け、ぜひ一緒に活動してほしい」と語っていた。再犯防止推進計画を実のある計画にするためには、京都市のように職員が更生保護や保護司の活動を研修などで知ること、過去に罪を犯した人の地域社会への復帰支援を行政職員の立場からも考えていく機会が必要であり、職員研修等の機会を設けてはどうかと思うが、所見を尋ねる。
363△市民局長 市職員が更生保護活動や過去に罪を犯した人の人権について学ぶことは、再犯防止推進を図る上で必要と考えており、様々な人権問題に対する理解を深めるための職員研修において取り上げるなど、研修機会や方法について検討していく。
364◯古川委員 犯罪のない明るい社会をつくるためには、再犯防止とともに出所者の立ち直り支援は欠かせない。立ち直り支援に欠かせないのは就労支援である。平成24年度の犯罪白書に、保護観察対象者で職を有している人と無職の人の再犯率を調査した結果、平成14~23年の累計で比較すると、有職者の再犯が7.4%に対し、無職者の再犯は36.3%と、圧倒的に差が出ていることが分かる。職に就けるかどうかが再犯を防止する観点からも最重要である。本市には現在何社の協力雇用主登録企業があり、実際に雇用している会社は何社あるのか、また、協力雇用主企業を増やすための取組を行っているか尋ねる。
365△市民局長 市内の協力雇用主登録企業数については、令和3年8月末時点で334社、そのうち実際に雇用している企業数は22社となっている。また、平成28年度から、社会貢献優良企業優遇制度において、協力雇用主支援企業として保護観察対象者などを雇用する企業を社会貢献優良企業に認定し、公共工事等を発注する際の入札参加機会の拡大など、優遇措置を講じることとしている。今後とも協力雇用主の募集を行っている福岡保護観察所と連携し、登録企業を増やす取組を検討していく。
366◯古川委員 現在、登録企業は334社あるが、実際に雇用している企業は22社と僅か6.5%である。この原因はどこにあるのか。この質問に当たり、実際に刑務所出所者、少年院出院者を雇用し、対象者の自立更生を職の親となって支える(一社)ヒューマンハーバーそんとく塾の副島勲代表理事に会い、話を聞いてきた。また、副島氏は、就労支援を通じて刑務所出所者、少年院出院者の社会復帰を支える、日本財団職親プロジェクトで、再犯防止に意欲を持つ協力雇用主と共同でプロジェクトを推進している団体の一員である。副島氏は、出所者にとって就労は生活の源であるはずだが、雇用主の期待とのずれがあると指摘。協力雇用主に行ったアンケートで「出所者には根気と体力がない。雇用してもすぐ辞める」、「資格は仕事を覚えながら習得可能だが、社会人としての自覚を身につけてほしい」、「正しい金銭感覚の醸成が必要」との雇用主の声が多かったそうである。適正に社会復帰できない人にはある特徴があり、特徴の一つ、ものの見方、考え方や価値観に偏りや間違いが多い。二つ、間違っていてもそのことに気づいていない人が多い。三つ、気づいていても修正しようとしていない人が多い。社会常識、社会人としての自覚、労働に堪え得る体力、勤労意欲、職業倫理を最低限備えないと雇用できない。そうしなければ一緒に働く社員が納得しない。社内融和が図れなくなるという理由から辞めてもらうしかなく、それに懲りてもう採用できなくなったという企業もあり、切実な問題がある。それが、協力雇用主の登録は本市で334社もあるのに、実際に22社にしか雇われていないという数字に表れているのではないかと思う。基礎学力、学びが足りない彼らが企業の戦力に育つように仕事の手順や段取り、業務内容を教えるのには3か月~1年かかるとして、それと同時に社会常識や社会人としての自覚、労働に堪え得る体力、就労意欲、職業倫理を教えることを、企業の努力だけで両方を同時に育てるのは困難である。そこで、副島氏はプロジェクト参加企業の出所者や少年院出院者の教育支援の場を設け、自己の価値観やものの見方、考え方が違っても受け入れ、高めていけるような社会人基礎力、人間力の育成に力を入れるための、心のスポンジづくりプログラムと名づけたプログラム教育を展開している。受講した元受刑者は、再び罪を犯すことがなくなったという結果が表れており、その人がある会社において幹部として活躍しているとの話も聞くことができた。このように、社会人基礎力や人間力の育成をもう一度行うようなプログラム教育の場を行政が施策として取り組むべきだと思うが、所見を尋ねる。
367△市民局長 就労に向けての教育指導等については、現在、法制度に基づき矯正施設において行われており、本市では、国、県との適切な役割分担を踏まえ、就労支援など社会復帰に関する広報、啓発に努めていきたいと考えている。また、先進自治体の取組や地域再犯防止推進モデル事業の成果等を参考にするとともに、民間協力者などの意見も聞きながら再犯防止推進計画を策定し、就労支援などの取組を推進していく。
368◯古川委員 就労に向けての教育指導等は、矯正施設において行われているとの答弁だが、それができていない、足りていないから協力雇用主の苦悩があるということを忘れないでもらいたい。出所者が社会に戻って生活が安定するためには、仕事のやりがいや生きる喜びに気づくことが重要である。今までと一緒では何も変わらない。これまで再犯防止や出所者の立ち直り支援は国管轄の仕事として、本市は現実の課題に関わることはなかったが、このたび本市が計画から取りかかることになったことから、保護司は期待している。行政当局も、更生保護に関しては知らないことも多いと思うので、再犯防止推進計画の策定については、ボランティアで活動している保護司や協力雇用主などの民間協力者の意見もたくさん聞かれたい。そして、これぞ福岡モデルといわれるような推進計画を策定し、再犯防止を進め、犯罪や非行のない明るい社会のまち福岡の構築を目指していくよう強く要望する。まずは、その基本となる再犯防止推進計画策定に取り組む本市において、具体的で実効性のある計画策定とするための決意を市長に尋ね、この質問を終わる。
369△市長 再犯防止推進計画については、犯罪や非行をした人が孤立することなく地域社会の一員として円滑に社会復帰することを支援することによって再犯を防止し、犯罪のない安全で住みよいまちづくりを実現するため策定することとしている。計画の策定に当たっては、更生保護活動に尽力している福岡市保護司会連合会や協力雇用主など、民間の協力者の意見をしっかりと聞くとともに、保護観察所などの関係機関とも連携を図りながら、実効性のある計画となるように全庁を挙げて取り組んでいく。
370◯古川委員 次に、コロナ禍における就学援助制度について質問する。まだまだ収束が見えない新型コロナウイルス感染症だが、社会経済のダメージは様々な分野に影響を及ぼし、子育て世代の家計にも影響を与えている。議員の下にも新型コロナウイルスの影響で家計が急変した人などから、何らかの支援策や方法はないのかといった相談も多数寄せられている。そんな中、就学援助は、経済的な理由により就学が困難な児童生徒の保護者に対して、就学に必要な援助を行う制度だが、一般的に認知度が低いという印象である。そこで、本市の就学援助とはどのような制度なのか、対象世帯の収入基準、申請時期を尋ねる。また、市立の小学生、中学生向けに支給される平均金額を示されたい。
371△教育長 対象は、基本的に要保護または要保護に準ずる程度に困窮している世帯としており、その申請は随時可能としている。また、就学援助の支給額の1人当たりの平均額は、小学生は6万3,000円強、中学生は10万円前後である。
372◯古川委員 就学援助はどのように申請し、受給できるのか、申請から決定までの流れを尋ねる。
373△教育長 就学援助の認定を求める保護者から、毎年度学校または教育委員会へ申請書と必要書類を添付して申請してもらい、教育委員会において税額の確認など、審査、支給決定を行った後、その内容を保護者に通知している。なお、申請が円滑に進むよう、毎年度全児童生徒の保護者に対する学校を通じたチラシの複数回配付や、ホームページや市政だよりへの制度の掲載などにより、周知を図っている。
374◯古川委員 本市の場合、就学援助の申請には具体的にどのような書類が必要なのか、要件ごとに示されたい。また、申請手続はどこで行うのか。
375△教育長 本市では、生活保護の廃止・停止、市県民税非課税、国民健康保険料全額減免、児童扶養手当受給など、対象世帯の認定要件を7種類設けており、例えば、生活保護の廃止・停止を受けた人は、生活保護廃止・停止決定通知書が必要となるなど、申請に当たっての必要書類が各種各様となっているため、受付は原則として学校または教育委員会で行っている。様々な事情で手続に行くのが困難な場合は、まずは学校または教育委員会へ相談してもらえればと考えている。
376◯古川委員 令和2年度の就学援助制度を利用している市立の児童生徒数と、全体に占める割合を尋ねる。また、10年前、20年前と比較して決算額、認定者数、割合がどうなっているのか示されたい。
377△教育長 就学援助制度を利用している児童生徒数は、要保護を含み、令和2年度が2万8,097人、平成22年度が2万8,893人、12年度が1万6,975人となっており、認定率は令和2年度が23.6%、平成22年度が26%、12年度が15.2%となっている。また、決算額については、令和2年度が21億619万円余、平成22年度が18億3,995万円余、12年度が10億5,371万円余となっている。
378◯古川委員 この20年の推移を見て、子育て世代の経済状況や時代背景が考えられるのか、教育委員会としての分析を尋ねる。
379△教育長 平成初期から平成24年度までは長引く経済不況や平成20年の世界同時不況の影響などもあり、本市の認定率も増加傾向にあったが、その後は全国的な景気回復などに伴い、下降傾向を示している。なお、こうした傾向は本市独自のものではなく、文部科学省の調査によると、全国でも同様な傾向となっている。
380◯古川委員 パネルを用意した。これは、文部科学省が発表している平成7年~令和元年の要保護及び準保護児童生徒数、つまり就学援助対象者数の推移と援助率である。少し長いスパンで記載しているが、近年では8年連続で減少しており、社会状況、特に景気に左右されると感じることができる。恐らく本市の就学援助対象児童生徒数の推移も同様で、景気がよく7年連続で市税収入が最高額を更新していた近年は、就学援助の対象者数も減少していたと思われる。ところが令和2年、世界中をパンデミックが襲った新型コロナウイルス感染症の拡大は、好調だった日本の経済、福岡の経済状況も一変させた。令和2年6月議会で我が党の議員が、コロナ禍で家計が急変した家庭を支援する質問に立ち、就学援助について教育長に質問した。新型コロナ感染症の拡大で所得が大幅に減少した家庭、申請してよいかどうかも分からない家庭があり、家庭経済の激変にも子どもたちの学習保障と生活保障を同時に進められたいと求めた。先ほどの答弁で、年度途中に家計が大変になった場合であっても就学援助の申請ができるものと理解した。家計急変による申請で、申請された平成30年度~令和3年度の申請数の推移、そのうち新型コロナの影響による申請数を尋ねる。
381△教育長 平成30年度は68件、令和元年度が66件、2年度が145件、3年度は8月末時点で49件となっている。そのうち申請理由に新型コロナによる影響が記されているものは、2年度が73件、3年度は21件となっている。
382◯古川委員 今の答弁を分かりやすくパネルにしてみた。令和2年以降、家計が急変したとの理由で申請が増えている状況である。申請理由欄に明確にコロナの影響と書いてあった申請に関しては、令和2、3年は別枠として示している。明らかに令和2年度から助けを求める声が増えている。また、3年度は8月末現在であることから、これから先も増える可能性が十分にあり、極力この動きについては見てもらいたいと思っており、また、制度を知らない人がいるのではないかと危惧している。今年5月に、就学援助の周知に力を入れる自治体の取組が紹介された朝のNHKニュースの特集を目にした。番組では、就学援助についてまだまだ知らない世帯が多いとし、沖縄県はアンケートで経済的に厳しい家庭の20%が就学援助の制度を知らなかったとして、同県の教育委員会はアニメによるCMを作成、行政は子ども目線で分かりやすい制度の周知徹底をと訴えていた。また、横浜市では、以前から就学援助の利用を呼びかけるお知らせを年3回発行、ほぼ年間いつでも申請可能である。板橋区では、対象者だけにかかわらず児童生徒全員に申請用紙を配付しており、申請しない世帯は、申請しないと記入し、意思表示を学校側に伝えることで周知漏れを防いでいる。周囲の目を気にしないようにとの配慮がされている取組が紹介された。また「お知らせのプリントを配付すれば伝わる」ではない家庭がある。親が忙しいから、関心がないからプリントを読まないではなく、字が読めない、読んでも理解が困難な親も少なくないとの視聴者の声には、はっとさせられた。また、就学援助を申請するとき、自分が貧困家庭であることが知られてしまうことの不安、差別やいじめにつながるかもしれないという不安から申請できないといった現実があることも事実である。クラス全員同じように提出させることで、それが分からないように配慮している自治体の取組には感心した。教育委員会からの就学援助制度の周知は、確実に保護者に伝わっているのか。本市の周知方法について尋ねる。また、制度の認知度を測る調査等を実施していれば示されたい。
383△教育長 認知度に関する調査は行っていないが、学校を通じてチラシを全児童生徒に配付することや、ホームページや市政だよりへの制度の掲載などにより周知を図っている。全児童生徒へのチラシ配付は、例年学校を通じて年2回行っていたものを、令和2年度は5回に増やし、周知を強化している。また、3年度申請分からは、保護者負担を軽減するため、税額証明書など一部の要件に係る添付書類を原則提出不要とするなど、さらに申請しやすい制度となるよう改めている。
384◯古川委員 就学援助の申請をしていることを他人に見られたくない、知られたくないと、人目を気にする意見、また、そのようなことから申請をためらうという意見も聞いている。学校の手続は事務室で行われることが多く、特に事務室は人目につきやすい場所にある。要保護世帯であれば、学校側も掌握できて申請をしなくても対応できるのであろうが、準要保護者にとって、就学援助制度はあくまでも申請主義である。申請しなければ、たとえ対象基準世帯であっても、支給を受けることができない。申請手続場所となる学校や教育委員会に出向くことが様々な都合で困難な保護者もいる。このような金銭的な援助を求める申請は、行政職員や議員が考える以上に多くの人は抵抗があり、制度を利用していること、申請していることをできれば誰にも知られたくないのである。極力他人には知られずに申請できる方法はないのか。その気持ちに少しでも配慮することが教育委員会には求められるのではないか。それでは、DX戦略課を有する総務企画局に尋ねる。就学援助の申請には、このパネルに示している書類が必要である。7要件あり、今年度に限り、原則不要なものがある状況である。これであれば就学援助のデジタル申請が可能と思うが、所見を尋ねる。
385△総務企画局長 就学援助の申請手続のオンライン化について、本市においては、市民の利便性の向上と業務の効率化を図る観点から、令和3年3月末時点で、年間総処理件数の約79.1%の行政手続についてオンライン申請等を可能としてきており、今後も法令等によりオンライン化できない手続等を除き、可能な限りオンライン化を進め、令和4年度末までに年間総処理件数の90%以上の行政手続について、オンラインによる申請等が可能となるよう取り組んでいるところである。就学援助の申請手続のオンライン化については、市民の利便性の向上につながると考えられることから、新しい電子申請システムを利用したオンライン化に向け、現在教育委員会と連携して検討を進めているところである。
386◯古川委員 学校の事務室や教育委員会に行かずとも、保護者のスマートフォンやパソコンから就学援助のデジタル申請ができるよう取り組むべきだと思うが、教育長の所見を尋ねる。
387△教育長 オンライン申請は、申請者の利便性向上に資するものであると考えている。そのため、新電子申請システムを活用した就学援助申請の一部オンライン化に向けて、現在総務企画局とも協議、検討をしている。
388◯古川委員 早急に進められたい。市長は自身の著書「日本を最速で変える方法」で次のように述べている。一部引用する。「これまで日本の行政システムは弱者に冷たいといわれることが少なくありませんでした。それは日本の行政が申請主義に基づいているからです。申請主義とは、利用者からこの制度を利用したいという申請があって初めて動き出す行政の在り方であり、プッシュ型とは、行政が利用できる制度や手当などを一人一人に積極的に案内する、あるいは申請がなくとも対象となる方に自動で手当支給などのサービスを提供する能動型の行政サービスのことです。また、職を失ったり、離婚したりして、経済的に困窮している人が失業保険や生活保護などのセーフティネットがあるのにそういった支援を受けるのは恥ずかしいことだと考えて申請をためらうことがあるという話も耳にします。あるいは申請したい制度があるのに仕事が多忙で役所に行けないというケースもあるでしょう。こういったケースのように申請主義の下では制度を知らない人、申請することに対して心理的、物理的なハードルがある人は制度を利用することができず、社会のセーフティネットからこぼれ落ちてしまうことになります。物理的なハードルに対しては、例えばオンラインでの申請を可能にするといった施策が有効ですが、行政のセーフティネット機能を高めるためには、申請主義からプッシュ型への転換が必要になります」とのことである。就学援助の申請について、市長の著書の言葉と合致するものだと思えてならない。教育分野のことではあるが、教育委員会と連携を密にし、弱者支援のための、申請主義からプッシュ型への理念を浸透させてもらいたいと思う。また、デジタルは活用の仕方次第では高齢社会や福祉にとって、新しい発想の画期的な改革が生まれる可能性を持っている。コロナという今までに誰も経験したことのない大ピンチを新たな時代へと変革する大チャンスと信じ、進めるべきである。今、苦境の中を頑張っている児童生徒、保護者、そして全ての福岡市民に希望となるような言葉と決意を市長に求め、質問を終わる。
389△市長 就学援助制度については、本市の子どもたちが経済的な負担や心配を感じることなく、安心して学習できるようにするための大変重要な制度であると考えており、申請しやすい環境づくりに向けて教育委員会と連携してオンライン化を進めていく。また、近い将来には、個人情報の保護を図りつつデジタルを利活用することで、利用できる制度や手当などについて対象となる人に申請がなくとも自動で手当を支給するなど、申請主義からいわゆるプッシュ型の行政サービスへの転換を図っていくことが必要であると考えている。国においては、今月、デジタル庁が発足するなど、国民目線でのサービスの創出やデータ資源の利活用の推進によって、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会の実現に向けた取組が進められており、本市としても、令和2年11月にはDX戦略課を設置し、国の動向を踏まえながら行政手続や市民サービスのデジタル化、オンライン化などのDXの取組を積極的に進めているところである。このコロナ禍のピンチをむしろ、DXを推進し、新しい価値を創造するチャンスと捉え、これからの時代を担う若者やチャレンジャーたちが自分たちの意思と行動によって希望を持って未来を創造していける社会を目指し、本市としてもしっかりと応援をしていきたいと考えている。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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