○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子)登壇 私は公明党福岡市議団を代表し、企業と行政による奨学金返還支援について、誰もが文化芸術に出会えるまち、感動都市福岡を目指しての2項目を質問いたします。
初めに、企業と行政による奨学金返還支援についてです。
これまで我が党では、学びたい人が進学を諦めることのない社会を目指して、奨学金制度の充実や返済不要の給付型奨学金制度を実現してまいりました。日本学生支援機構が行った令和4年度学生生活調査によると、奨学金制度を利用する学生は、大学で55%、短期大学で61.5%、大学院修士課程で51%、大学院博士課程で58.9%と実に半数以上となっています。学びの機会は保障されるものの、社会に出ると同時に大きな額の返済が始まり、不安を抱える若者は非常に多い状況です。結婚に踏み切れない、様々な困難を抱えても会社を辞める決断ができず、結果、心身ともに健康を損なうなど、若者からの声も度々報道などで取り上げられています。一方、少子・高齢化が進展する中、様々な分野で人手不足が深刻化しています。先月、国が公表した雇用情勢によると、福岡地区の10月の有効求人倍率は1.19倍と、近年は1倍を超える状況が続いています。また、雇用環境が変化し、人材の流動化も進んでおり、特に中小企業では人材確保に苦労されている現状を伺います。
中小企業の人材確保の支援策の一つである奨学金の返還支援について、昨年9月議会で我が会派の高木議員から、若者支援、そして、企業の人材確保の観点から福岡市独自の奨学金の返還支援が必要ではないかと質問いたしました。今後も全国的に様々な分野でさらに人手不足が深刻化していくことは避けられないことから、今回、改めて本市における企業の人材確保にもつながる奨学金の返還支援の導入に向けて質問してまいります。
まず初めに、令和3年から企業が従業員の奨学金をその従業員を介さず、直接、日本学生支援機構に返還ができるようになり、企業にも従業員にもメリットが拡大した代理返還制度について、現在、その制度を活用している企業数がどのくらいあるのか尋ねます。
以上で1問目の質問を終わり、以降は自席にて行います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 日本学生支援機構によりますと、令和5年8月時点で全国では972社、うち福岡県内では40社であったのに対し、令和6年8月時点では全国で2,267社、うち福岡県内では110社となっており、この1年間で2倍以上に増加しております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 1年間で2倍以上の企業が利用されるようになり、企業にとっても、そこで働く従業員にとっても大きなメリットがあるということが認識されてきた結果ではないかと思います。
それでは次に、奨学金の返還を支援する制度を導入している自治体が全国でどのくらいあるのか、お尋ねいたします。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 国が令和6年3月に公表した調査結果によりますと、令和5年6月時点で42の都道府県、717の市区町村、合計で759の自治体で導入されておりまして、前年度の調査と比べますと、都道府県で6、市区町村で102の増加となっております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 地方独自の奨学金の返還支援についても、全国的に多くの自治体で導入されるようになり、1年間で100を超える自治体で新たに支援が開始されています。支援を利用し、就職を決めた学生からは、この制度について知り、ぜひ支援を受けて地元で働きたいと思い申請しました、この支援が地元に戻ってくる後押しになりましたとの声もあります。従業員だけではなく、企業側にもメリットがあり、また、自治体としても人材の流出防止や地域経済の活性化につながる効果も期待されているからこそ、これほど多くの自治体で導入されているのだと思います。
昨年9月議会において、他都市の実施状況などを調査するとの御答弁をいただいたところですが、他都市調査によって具体的にどのような支援が行われていることが分かったのか、お尋ねします。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 他都市の具体的な支援内容については大きく2種類に分類されまして、一つは、移住や定住につなげることや地域内における若者の就労促進などを主な目的とし、個人に対して支援をしているケースで、例えば、自治体内に居住し、就業された方を対象に100万円を上限として奨学金返還額の5年分を助成している事例などがございました。もう一つは、企業の人材確保や定着を主な目的とし、企業に対して支援をしているケースで、例えば、従業員の奨学金の返還支援を行っている地場中小企業を対象に、1企業当たり年間10万円を上限として支援額の2分の1を助成している事例などがございました。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 2つの支援がありますが、企業を通して支援することで、企業側の人材確保や定着にもつながることが期待されるのではないかと思います。就職先に迷っていたとき、現在自分が通っている大学のある自治体にこの奨学金返還支援制度があることを知り、県外から来ていた学生がそのままその土地で就職したとの声も上がっております。
本市は人口10万人当たりの短大、大学などの学校数が政令指定都市20都市に東京23区を加えた都市比較でも第1位です。本市で学んだ学生たちが本市にとどまり、働き続ける一助になるのではないでしょうか。人手不足で悩んでいる中小企業の中には、従業員への奨学金返還支援制度を設けて待遇面で他社との差別化を図り、人材確保につなげたいと考えている企業も多いのではないかと思います。しかし、物価高騰などにより様々なコストが上昇している中、その原資を生み出せない企業が多いのが現状ではないかと思います。
本市では、保育士不足に対応するため、いち早く家賃支援や奨学金の返還支援を行ってまいりました。ぜひ人材確保のために努力をしている市内の中小企業を応援するため、市独自の奨学金の返還支援制度を創設すべきと考えますが、髙島市長の御所見をお伺いして、この質問を終わります。
○議長(打越基安) 髙島市長。
○市長(髙島宗一郎) 日本が人口減少社会を迎え、少子・高齢化が進展をする中、全国的に様々な分野で人手不足が深刻化しており、市内中小企業においても人材の確保が困難な状況になっているものと認識をしています。奨学金の返還支援については、市内中小企業の人材確保や定着につながるとともに、若者世代の経済的な負担の緩和にもつながることから、積極的に人材確保に取り組む中小企業の支援に向けて検討を進めてまいります。以上です。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ありがとうございます。
続いて、誰もが文化芸術に出会えるまち、感動都市福岡を目指しての質問に入ります。
福岡市民ホールがいよいよ来年3月に開館し、新たな文化芸術の発信拠点として、ますます市民の芸術鑑賞の機運も盛り上がると期待します。ピクトグラムを活用した分かりやすい表記やバリアフリーなど工夫が凝らされた施設にたくさんの市民が集まることを想像するだけで心躍る思いです。
本年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化されました。また、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律には、障がい者が文化芸術を鑑賞する機会の拡大を図るため、必要な施策を講じることが明記されております。本市においても、福岡市美術館、福岡アジア美術館、福岡市博物館、また、博多座などの劇場とすばらしい施設があります。様々なハード面が充実する中、誰もが芸術に触れることができる環境が芸術文化施設に整っているのか、現状を伺ってまいります。
まず、本市の障がいのある方から文化芸術に対し、どのような要望や意見があるのか、令和元年度に実施された福岡市障がい児・者等実態調査の回答内容から伺います。
あなたは生活に関することで福岡市からどのような情報が知りたいですかとの問いに対し、文化、スポーツ・レクリエーション、レジャーなどの余暇活動に関することと回答した割合を障がいの種別ごとにお示しください。
○議長(打越基安) 藤本福祉局長。
○福祉局長(藤本広一) 令和元年度に実施した調査におけるお尋ねの回答割合は、身体障がい者で11.3%、知的障がい者で17.3%、身体・知的障がい児で20.8%、精神障がい者で16.8%、発達障がい児・者で17.4%、難病患者で8.0%となっております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 障がい者に関する事柄で、特に人権上問題があると思われるのはどのようなことですかとの問いに対し、スポーツ、文化活動、地域活動に気軽に参加できないことと回答した割合を障がいの種別ごとにお示しください。
○議長(打越基安) 藤本福祉局長。
○福祉局長(藤本広一) お尋ねの回答割合は、身体障がい者で5.4%、知的障がい者で8.2%、身体・知的障がい児で9.2%、精神障がい者で4.7%、発達障がい児・者で7.0%、難病患者で4.4%となっております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 文化、スポーツなどに対し情報を求め、また、参加に際しては少なからず壁を感じることもあるようです。
では、本市の文化芸術施設の利用状況について伺います。
福岡市美術館、福岡アジア美術館、福岡市博物館への昨年の来場者数、そのうち障がいがある方の来場者数をお尋ねします。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 美術館、アジア美術館及び博物館における令和5年度の常設展の来場者数と、そのうち障がいのある方及び介護者の来場者数については、美術館が20万3,787人、うち5,950人、アジア美術館が6万2,068人、うち1,768人、博物館が10万9,462人、うち3,258人となっております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 本市の、障がいがあり手帳をお持ちの方は、令和5年度末時点で8万9,522人とのことですので、ぜひさらに多くの方に来場の機会が増えますよう、各文化芸術施設の状況、また、障がいのある方に対し、どのような取組を行っているのか、伺ってまいります。
まず、福岡市美術館について伺います。
福岡市美術館では、障がいのある方が美術鑑賞を楽しめる機会をツアーとして開催されていると伺いました。
視覚障がい者のためのおしゃべりとてざわりのツアー、聴覚障がい者のための目で聴くツアーについて、内容、定員、応募数、実施時期を教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 視覚障がい者のためのおしゃべりとてざわりのツアーについては、視覚障がいのある方とない方が一緒に展示を鑑賞したり、触れられる作品に直接触れながら鑑賞したりするもので、令和6年度は11月30日に実施し、定員10人に対し9人の申込みとなっております。また、聴覚障がい者のための目で聴くツアーについては、聴覚障がいのある方とない方が手話通訳者を介し、感じたことを伝え合いながら作品鑑賞を行うもので、令和6年度は12月1日に実施し、定員10人に対し5人の申込みとなっております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) それぞれのツアーを見学させていただきました。本年9月に福岡市美術館に設置した国際的に活躍する現代美術家モナ・ハトゥム氏の作品「+と-」を鑑賞しました。資料1の投影をお願いします。(資料投影)円形の容器に敷き詰められた砂の上を一定の速度で回るバーの半分が模様を刻み、もう半分がかき消していくという作品です。視覚障がい者のツアーでは、まず音を聞きましょうと全員で耳をそばだてると、風の音のよう、川が流れている音みたい、海の音にも聞こえるなど様々な感想が寄せられました。ですが、この作品を言葉で表現するのは非常に難しいと思います。投影ありがとうございます。
この中で、ある方が両手を広げてみてくださいとお話をされ、左手が模様をつけていきます、右手がそれをかき消していきますというような説明をされていました。それを聞いた視覚障がい者の方が、なるほど、分かったと感動が広がる様子に、見ている私自身も大変感動いたしました。
資料2の投影をお願いします。(資料投影)模様が描かれていく砂も実際に用意され、手触りができるようになっておりました。さらに作品の姿を想像できる工夫でありました。聴覚障がい者のためのツアーでは、手話通訳者の方が2人同行され、作品の感想を手話を通じて交わし合いながら作品理解が深まっていく姿は、まさに目で聞くツアーだと感じました。
資料3の投影をお願いします。(資料投影)当日はそれぞれツアーが実施されると看板が設置されています。作品の前で語らう姿を温かく見守るほかの来場者の方の姿も印象的でした。現在は、このすばらしいツアーは1年に1度の開催で、応募数は定員数前後の状況ではありますが、参加者の皆様の芸術に触れた喜びを間近で拝見すると、さらなる周知の拡充と開催頻度の拡大をお願いしたいと考えます。
各ツアーの広報、周知方法について教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) ツアーの募集に当たりましては、市政だよりや美術館のホームページ、公式SNSで告知するほか、福岡市内の福祉団体や特別支援学校などへメール及び印刷物を送付しております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 先日視察に伺った新国立劇場では、障がい者への観劇サポートを実施し始めた頃、なかなか集客がなかったため、東京都のあらゆる福祉事業所、グループホームにチラシを送付したところ、申込みが大幅に増えたとのことでした。
障がい者の方に様々な情報を得る機会創出のためにも、さらに多くの周知を、また、周知に伴う開催回数の増や、簡易的なツアーを希望に沿って実施できる体制をつくってはいかがでしょうか、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) ツアーにつきましては、新たに美術館近隣のグループホームにお知らせをするなど広報を強化してまいります。また、開催回数の増やツアー内容の変更については、参加者のニーズやツアーの実施体制を勘案しながら検討してまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ありがとうございます。ぜひたくさんの方にこのすばらしいツアーに参加いただけることを楽しみにしております。
先日、東京都美術館に伺い、障がいのある方のための鑑賞会を視察いたしました。資料4の投影をお願いいたします。(資料投影)特別展示の休室日を活用し、障がいのある方、難病の方を定員400名募集し、当日はとびラーと呼ばれるスタッフが来場した方を迎えていました。視察の当日30分ほど前に着いたため、ロビーにて待っておりますと、車椅子で嬉々として来館される方、また、白杖の方、ヘルプマークをつけた方、大変多くの方が来場していらっしゃいました。久しぶりなどと声を掛け合う姿もあり、外出の機会になっていることも実感いたしました。
資料5の投影をお願いいたします。(資料投影)通常の展示日と異なる工夫として、搬入用のエレベーターを開放し、移動を手助けしています。また、トイレに行く際など、順路通りに行くと大変時間がかかるということで、カーテンなどの仕切りを全て開放して行き来しやすい空間をつくっていました。
資料6の投影をお願いいたします。(資料投影)鑑賞会では、手や指で分かる触図を2枚ずつ用意されているとのことでした。これはちょうど触図を触って鑑賞している介護犬を連れた方でいらっしゃるのですが、絵が見えるようですと大変感動しながらこの触図を触っていらっしゃいました。
資料7の投影をお願いします。(資料投影)作品に目線が合わない方のために、タブレット端末で作品を見られる工夫をしておりました。タブレットを持ってらっしゃる方がとびラーというスタッフの方です。とびラーは、会社員や教員、学生、主婦など様々な人で構成され、美術館のサポーターではなく、能動的なプレーヤーとして、障がいのある方のための鑑賞会でも積極的に来場者とコミュニケーションを取り、より鑑賞しやすい方法を見つけ、提案していっているということでした。資料8の投影をお願いいたします。(資料投影)ですが、話しかけられることが苦手だという精神障がい者の方からの申告もあったため、声かけを控える工夫もされていました。鑑賞会入り口に白い名札を設置し、その名札をかけている方には警備員さんをはじめ、誰も声かけをしないというルールをつくり、今回の鑑賞会から取組を実施しているということでした。
このような施策は、全て来場者アンケートから行っているとのことでした。担当者の方に伺ったところ、鑑賞会開始時は多くのお叱りを受け、さきに述べた様々な工夫もこのアンケートから得たものだったとのことでした。何としても障がいのある方も美術鑑賞を楽しんでほしいというスタッフの思いも伝わりました。
福岡市美術館においても様々な工夫をいただいております。また、多くのボランティアの皆さんが支えてくださっています。今後もアンケートなどアウトリーチの活用で、現利用者や障がい者の方からどのような鑑賞スタイルが望まれるのか、積極的な情報収集によるイベントや鑑賞会を行うべきと考えますが、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 現在もツアー終了後に障がいのある方や介護者の方にアンケートを実施し、その意見を取り入れておりまして、例えば、令和5年度のアンケートに音や匂いを体験するツアーをしてほしいとの御意見がございましたため、令和6年度は、先ほどの御質問の見学のお話にあったように、モナ・ハトゥム氏の作品「+と-」の砂に模様が刻まれたり、かき消されたりするときの音を聞いてもらうことといたしております。今後もアンケートを活用したり、ツアーをサポートした美術館ボランティアとの情報共有により、ツアーの改善を図ってまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ぜひよろしくお願いいたします。
次に、福岡アジア美術館について伺います。
障がいのある方が来館した際のサポートはどのように行っていただいているのか、教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) アジア美術館においては、障がいのある方が来館され、作品鑑賞のお申出があった場合は、ボランティアスタッフによる案内を行っております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 障がいのある方が来館した際にサポートがあることを、広報、周知はどのように行っていらっしゃいますでしょうか。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) アジア美術館にございます総合受付や展覧会の受付で相談を受け、対応についての案内を行っているところでございます。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) アジア美術館は地下鉄からのアクセスもよく、誰もが訪れやすい立地であります。
資料9の投影をお願いいたします。(資料投影)コレクション展示の作品の一つです。スピーカーからは、掲載されている写真が撮られた時代の電報や手紙が読み上げられる声が流れています。
資料10の投影をお願いいたします。(資料投影)これの中に何重にもカーテンが重なっているのですが、そのカーテンを手繰りながら作品にたどり着くという工夫もあり、多くの方が五感で考え、刺激を受けることができる空間です。音や映像など静かな空間の中にも想像力をかき立てる作品の数々をさらに多くの方に鑑賞いただきたいと思います。
ぜひ視覚や聴覚の障がい者の方が訪れてみようと思うツアーやイベントの実施ができないでしょうか。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) アジア美術館では、現在、障がいのある方向けのツアーなどのプログラムがございませんため、手話でのツアーなど、障がいのある方が参加したくなるようなツアーなどの早期実施に向け、検討してまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ありがとうございます。手話のツアーなど、ますますアジア美術館の至宝の作品がたくさんの方に伝わることを心待ちにしております。
障がいのある方が来館した際のサポートがあるというふうに教えていただきましたが、ホームページなどで案内することで、より訪れやすくなるのではないでしょうか。ぜひ周知をいただきたいと考えますが、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) ホームページにバリアフリー情報のページを作成し、可能なサポートを案内してまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
次に、福岡市博物館についてお伺いいたします。
障がいがある方に向けたイベントなど実施されていましたら教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博物館においては、特別支援学校からの団体見学の依頼に対し、事前に学校と綿密な打合せを行い、教師の手話通訳に加え、フリップやハンズオン資料を活用した展示案内を行っております。また、点字図書館からの依頼を受け、出前での封泥体験を実施したり、福岡市視覚障害者福祉協会と連携し、博物館の収蔵資料やレプリカなどを触りながら講師のレクチャーを聞くイベントなどを実施しております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) では、イベントについての広報、周知はどのように実施されていますでしょうか。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) イベントについては、市政だよりや博物館のホームページ、公式SNSで告知するほか、視覚や聴覚の障がいのある方に対しては、市点字図書館やボランティアの協力の下、市史だよりFukuokaの点字版及び音訳版を公開するとともに、博物館広報誌、Facataの点字版を公開しております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) では、障がい者に対するサポートにおける課題があれば教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 課題といたしましては、障がいのある方が活用しやすいスマートフォンなどを用いた誘導、解説システムの導入の要望を受けておりますことから、リニューアル推進事業を通して実現を図ってまいりたいと考えております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 福岡市博物館では触って作品を感じられる展示も多く、様々な方が楽しむ工夫がされております。
資料11の投影をお願いします。(資料投影)金印の重さを体験でき、実際に粘土に押してみるレプリカでの体験をはじめ、資料12の投影をお願いします。(資料投影)紙のこよりで作られ、文字に凹凸があり、手で読むことができるこより文字の展示もあります。
資料13の投影をお願いいたします。(資料投影)手で触る展示も多くありました。また、タブレットによる詳細な解説や、各展示の入り口には解説の音声があり、音で聞きながら楽しめる工夫もふんだんにありました。展示の最後は小松政夫さんが動画で博多手一本を教えてくれるすてきな演出もあり、いろいろな体験ができます。
様々な方がより来館でき、福岡の歴史や文化を知ることができますよう、福岡市立点字図書館が近隣にもありますが、連携などお考えでしたら、その内容や今後の展開について教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 福岡市点字図書館との連携については、引き続き、市史だよりFukuokaや博物館広報誌、Facataの点字版の周知に連携して取り組みますとともに、視覚障がいがある方のサポートの強化について、点字図書館にも相談しながら検討していきたいと考えております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
次に、博多座及び福岡市民ホールについて伺います。
障がいのある方が来場した際、どのようなサポートがあるのか、教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博多座においては、サポートが必要な方に対し、座席案内や着席などの補助を行うほか、演目によっては聴覚に障がいのある方への台本貸出しを行っております。また、福岡市民ホールでは、上演時のサポートは公演主催者での対応となりますが、PFI事業者が行う自主事業において、障がいのある方も楽しめる鑑賞サポートつきのイベントの提案がなされておりまして、今後、実施に向けて取り組んでまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 障がい者の方へのチケット料金のサポートがあるのか、お尋ねいたします。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博多座は、公演を主催している株式会社博多座が収支の見込みや他の劇場の金額を踏まえ、制作会社と調整してチケット料金を決定しておりまして、これまでに障がいのある方のサポートを設けたことはないと聞いております。また、福岡市民ホールは、PFI事業者による自主事業も含め、公演主催者が個別にチケット料金を設定することとなります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 東京都にある世田谷パブリックシアターという劇場では、公演によりますが、チケットの障がい者割引があり、介助者はチケット料金を無料とする取組を行っています。1人で来場することが難しい方にとって介助者は必ず必要となりますが、気兼ねなく観劇いただくための工夫がなされています。このような観劇の工夫も外出の機会創出につながると考えます。
では、障がい者に対するサポートにおける課題があれば教えてください。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博多座は、サポートが必要な方からの要望に対してできる限り対応いたしておりますが、スタッフが限られており、サポートが必要な方が多い場合はお客様をお待たせすることから、御理解、御協力をいただくよう努めているところでございます。また、福岡市民ホールにおいては、開館後、アンケートなどを通して課題を把握するとともに、必要に応じ、改善に努めてまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 博多座では、さきに教えていただいたように、聴覚に障がいのある方へ台本の貸出しを以前から行っていたと伺い、いち早く観劇のサポートをいただいております。
資料14をお願いいたします。(資料投影)先日、新国立劇場の観劇サポートを視察いたしました。聴覚に障がいのある方には手持ち型のポータブル字幕機の貸出しを実施しております。理解に重要となる効果音や音楽の情報も含めて表示され、新国立劇場は主催公演がほとんどですので、台本作成から行っていることからできるサービスでもあると言えます。
状況は異なると考えますが、観劇の手助けとして、このようなタブレットでのサポートを博多座で行うことは可能でしょうか。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博多座においても、演目によってはタブレットによる台本貸出しを行っております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 博多座でもサポートいただいていることが分かりました。大変ありがたいサポートですが、現在、ホームページなどにはその内容の記載がありません。そのようなサポートがあると分かれば、観劇の可能性が広がる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
障がいのある方に向けた観劇のサポートを博多座で行っていることを周知すべきと考えますが、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 車椅子での来館動線などバリアフリー情報については、現在、博多座のホームページで周知しているところでございますが、今後、台本の貸出しなどのサポート情報についても周知してまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ぜひよろしくお願いいたします。
資料15の投影をお願いいたします。(資料投影)同じく新国立劇場では、視覚に障がいがある方には観劇前に舞台上で舞台装置に触れていただき、イメージを持っていただく取組も行っておりました。また、ここに表示しておりますように、観劇中にはリアルタイムの音声ガイドサポートを実施しています。作品の見どころに加え、舞台上で役者がどのような体勢を取っているのか、誰が入ってきたかなど生放送で解説し、臨場感たっぷりに舞台を鑑賞することができます。音声ガイドの実施のためには労力もかかり、また、自主作品であるからこそ手厚いサポートができる側面もあるとのお話でした。
自主公演であるからこそのサービスでもあると思いますが、こういった音声のガイダンスによるサポートを博多座で行うことは可能でしょうか。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 音声ガイダンスについては、博多座から業務量や費用の増加のほか、公演作品の制作会社との調整が必要となるなど課題が多いことから行っていないと聞いております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 新国立劇場の担当者に伺ったところ、聴覚に障がいのある方より視覚に障がいのある方のほうが鑑賞のサポートの申込みが多いとのことでした。舞台から聞こえる衣装の音や劇場独特の香りなど、観劇でしか味わえない喜びを求める方々にぜひサポートをお願いしたいと思います。
また、パンフレットにも工夫が必要です。音声で聞くことができるパンフレットや、本市でも多く取り組んでいただいているユニボイスを活用することなど、博多座でも音声によるパンフレットなど視覚に障がいのある方へのサポートはできないでしょうか。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博多座では、自らパンフレット等の作成は行っておりませんが、ホームページにおいて各公演の情報を掲載しておりまして、スマートフォンなどで音声読み上げ機能を活用することで公演概要の案内は可能となっております。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) パンフレットには、そこにしかない舞台をさらに楽しめる情報がたくさん詰まっています。
福岡市文化芸術振興計画においても、障がいのある人もない人も──略させていただきますが、すべての人が触れあうことができる機会が提供されていなければなりませんと記載があり、様々な取組で情報を得る仕組みづくりを要望いたします。また、当事者の方から、障がい者に向けての取組があると私たちも劇場に行っていいんだと思えますとのお話を伺いました。
ぜひできることからと考えると、博多座では自主公演も実施しております。障がい者の方が観劇できる取組をできることから実施いただきたいと思いますが、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 博多座においては、これまでもお客様一人一人にきめ細かな対応を心がけ、障がいのある方の鑑賞サポートについても、可能な限り要望に対応してきているものと認識しております。今後も先進的な事例を参考にし、できることから取り組むよう博多座と協議してまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ぜひよろしくお願いいたします。
ひいきの公演が博多座で決まると大変喜ばれると伺います。その理由の一つとして、一度の観劇が最高の時間となるようスタッフの細やかな気遣いが飛び抜けているとのことです。その温かな劇場で、ますます誰をも受け入れる環境が整うことを願います。
障がいのある方の鑑賞サポートを調べていくと、東京開催での公演などで実施されていることが多く、確認すると、現在、アーツカウンシル東京では東京芸術文化鑑賞サポート助成を行っておりました。東京都内で実施される音楽、演劇、伝統芸能、芸能など特定のジャンルにとらわれない芸術活動において、手話通訳、リアルタイム字幕、バリアフリー対応機器レンタル費や専門スタッフ、アドバイザー費など1事業につき150万円まで補助する助成となっております。アーツカウンシル東京へ視察し、この助成を始めた意図を伺ったところ、助成事業を開始することで民間団体も障がい者を受け入れる体制づくりを促進できるのではと実施したとのことでした。様々な芸術団体が誰でも鑑賞できる環境づくりを行うことは大変重要です。東京都の人口、資源、それに伴う芸術活動の活発さはほかに比類のないものと考えますし、また、市民の求めるものの違いもあると思います。
ここ福岡で障がいのある方を受け入れる環境づくりに必要な助成制度や、何をすべきかの動画教材の作成など、民間団体が多くの方を受け入れる体制づくりをすべきと考えますが、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) 民間団体が障がいのある方の文化芸術鑑賞を受け入れることのできる環境づくりについては重要であると認識いたしておりまして、福岡市では、文化芸術振興財団を通して文化芸術団体等の活動に対して経費の一部を助成しており、令和6年度は舞台手話通訳者を養成する事業に助成を行っているところでございます。また、同財団の主催公演においては、手話通訳などの障がいのある方の鑑賞サポートを実施しております。今後とも、助成制度の活用を周知いたしますとともに、市や財団が障がいのある方の鑑賞サポートに取り組むことで民間団体の取組を促進してまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) 福岡市の施設における障がい者はじめ、多くの方を受け入れる環境づくりについて、様々伺ってまいりました。今後、福岡市博物館のリニューアルや福岡アジア美術館の機能拡充が予定されています。ぜひ誰もが安心し、来場できる施設とするため、カームダウンスペースを設置いただきたいと思います。カームダウンスペースは、光や音などの感覚の刺激を遮断することで、自閉症や知的障がい、認知症の方などが感覚過敏によるストレスの軽減やパニックの回避、クールダウンに使用できるスペースです。
福岡市博物館、福岡アジア美術館でもカームダウンスペースを設置いただきたいと考えますが、御所見を伺います。
○議長(打越基安) 鈴木経済観光文化局長。
○経済観光文化局長(鈴木順也) カームダウンスペースの設置については、博物館においては、リニューアル推進事業を通して設置していきたいと考えております。また、アジア美術館においては、今後、館の魅力向上の検討を行う中で設置の検討を行ってまいります。以上でございます。
○議長(打越基安) 田原香代子議員。
○16番(田原香代子) ありがとうございます。
今回の質問は、母親が脳の手術後、認知機能にも障がいが出始めたため、好きだった舞台鑑賞が難しくなったと、ある方からお話を伺ったことがきっかけでした。その方は、映画館ならとお母様を鑑賞に連れていったけれども、静まり返ったシーンで突然お母様が拍手をし出してしまった、もう母を映画館にも連れていけなくなっちゃったと言われたことがきっかけでした。文化芸術からでしか得られない活力や歓喜があります。福岡市は、先進的な建物や景色が広がる中でも様々なアート活動に力を入れてきました。誰もがその文化芸術に触れられる懐が深い都市であり続けますよう心から願います。
新たな可能性がまだまだ詰まった本市の文化芸術活動を、障がいの有無にかかわらず、享受できる環境を整え、誰もが文化芸術から得られる感動や喜びを感じられる芸術施設づくりについて、髙島市長の御所見を伺い、私の質問を終わります。
○議長(打越基安) 髙島市長。
○市長(髙島宗一郎) 文化芸術は人々の創造性を育み、豊かな人間性を涵養するとともに、人々の心のつながりを強め、心豊かで多様性と活力のある社会を形成する源泉となるものであり、子どもから高齢者まで、障がいのある人もない人も、また、性別や国籍にかかわらず、全ての人が触れ合うことができる機会が提供されなければならないと考えております。福岡市では、これまで美術館や博物館などにおいて障がいのある方々が文化芸術を鑑賞できる機会の提供に努めてまいりましたが、今後もこれまでの取組を継承、発展させ、全ての人が文化芸術を楽しめる環境づくりを推進してまいります。以上です。