▼令和6年 令和5年度決算特別委員会 尾花 康広 総会質疑 (令和6年10月7日)

◯尾花委員 公明党福岡市議団を代表し、グリーンインフラの取組、横断歩道、踏切道の安全対策、地域における多文化共生の取組について質疑を行う。最初のテーマは、グリーンインフラの取組についてである。グリーンインフラとは、社会資本整備や土地利用等のハード、ソフト両面において、生物の生息、生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等の自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力あるまちづくりを進めるという考え方のことである。グリーンインフラと一口に言っても、とても事業範囲が広いため、本日の質疑は雨水流出抑制を中心に行っていく。まず、本市において地球温暖化がどのくらい進行しているのか、気温と降水量の経年変化の観点から、分かりやすく示されたい。

△環境局長 気象庁のデータによると、本市の年間平均気温は、令和4年までの130年間で約3度上昇しており、また5年の年間平均気温は18.5度、6年8月の平均気温は30.5度と観測史上最高を記録するなど、本市の気温は上昇傾向にあることが分かる。年間の降水量については、本市を含め全国的に経年による大きな変化は見られないが、福岡県で1時間に50ミリ以上の大雨が降る回数は、約40年前と比較して1.7倍に増加しており、こうした気温上昇や雨の降り方の変化は地球温暖化の進行によるものと認識している。

◯尾花委員 観測史上最も高い平均気温、短時間大雨の発生回数は約1.7倍などの答弁からも分かるように、本市においても、近年、気温の上昇、雨の降り方が集中化、激甚化しており、浸水被害のリスクが増大している。本市は、平成20年度に策定した福岡市雨水流出抑制指針に基づき、各施設管理者による浸透、貯留施設整備を推進している。本指針の施策の展開として、「各局は担当する公共施設の整備に際し、雨水流出抑制策の実施に関する計画等を作成し、積極的に推進する。道路下水道局は、各局と必要に応じて協議を行うとともに、各事業における進捗状況を把握するものとする」とされているが、道路下水道局は、把握した各事業の進捗状況をどのように公表しているのか尋ねる。

△道路下水道局長 公共施設における雨水流出抑制の取組の方針などを定めた福岡市雨水流出抑制指針については、本市ホームページで公表しているが、各事業の整備状況については公表していない。

◯尾花委員 本市において都市化の進展によって、河川流域における雨水を保水、浸透する機能が低下している課題が指摘されているため、本市所管の公共施設における雨水流出抑制施設の整備の進捗状況を、毎年、的確に市民に分かりやすく公表してもらいたいと思うが、所見を尋ねる。

△道路下水道局長 市民にも雨水流出抑制に協力してもらうため、本市ホームページにおいて、その必要性や本市の取組を掲載するなど、周知、啓発を図っているところである。近年、雨水流出抑制の重要性が高まっていると認識しており、公共施設における雨水流出抑制施設の整備状況についても、市民に分かりやすく整理し公表を行うなど、さらなる周知、啓発に取り組んでいく。

◯尾花委員 雨水流出抑制指針では、農業用途が消滅したため池を治水池、調整池として有効利用を図るとされているが、令和5年度の整備実績を示されたい。あわせて、当該指針が策定された以降、治水池、調整池として有効活用されているため池は何か所で、それは農業用途が消滅したため池のうち全体の何割に当たるのか尋ねる。

△道路下水道局長 令和5年度については、4か所で治水池整備を行っている。また、平成20年度の指針策定後に治水池として有効活用しているため池は、予定を含め11か所であり、農業用途が消滅したため池のうち2割弱となっている。

◯尾花委員 治水池、調整池として有効活用されている農業用途が消滅したため池は、全体の2割弱とのことである。農業用途が消滅したため池を治水池、調整池として保全することは、生物多様性の保全のため、2030年までに陸域と海域の30%以上を保全するサーティー・バイ・サーティーの世界目標を目指し、本市が取り組んでいる生物多様性の損失を止め回復させるネイチャーポジティブ、自然再興にも資する取組のため、しっかり推進してもらいたいと思うが、所見を尋ねる。

△道路下水道局長 農業用途が消滅したため池を治水池へ有効利用することは、浸水被害の防止や軽減が図られるとともに、豊かな自然環境の保全につながるものと認識している。それぞれの治水池が持つ特性を十分考慮し、地域住民の理解を得ながら治水池整備を進めていく。

◯尾花委員 さらに、雨水流出抑制指針では、教育委員会所管の公共施設を例に挙げると、市立小中学校の雨水貯留のためにグラウンド透水性改良や地下貯留槽の整備を行うことになっているが、令和5年度の整備実績を示されたい。あわせて、当該指針が策定された以降、雨水貯留のための整備を行った学校は何校で、全体の何割に当たるのか尋ねる。

△教育長 令和5年度の実績は2校である。また、指針策定後に8校の新設などを行っているが、その全てで貯留槽などを整備している。

◯尾花委員 豪雨に伴う浸水対策の拡充が求められる中、水工学の研究者である福岡大学の渡辺亮一教授の学校のグラウンドや公園などを雨水の一時貯留タンクのように活用する流域治水のアイデアは大変有益だと思うが、渡辺教授の一時貯留に関するアイデアの概要と所見を尋ねる。

△道路下水道局長 福岡大学の渡辺亮一教授によると、都市域の水害対策として、グラウンド面を周囲より少し掘り下げて雨水貯留を図るとともに、その下に砂利などの浸透性と保水性の高い層を設けるアイデアや個人住宅に地下タンクを設置するアイデアなど、身近な施設を活用した雨水の流出抑制を提唱している。本市においても、様々な手法を用いて流出抑制を図っていくことは、流域治水を進める上で大変重要であると考えている。

◯尾花委員 公共施設の各施設管理者による雨水流出抑制の取組には濃淡があるようである。各施設管理者に雨水流出抑制の必要性について、いま一度しっかりと認識してもらい、各施設整備の標準仕様にするなど、雨水流出抑制施設の整備を進める必要があると思うが、所見を尋ねる。

△道路下水道局長 公共施設における雨水流出抑制の取組を推進するためには、各施設管理者がその必要性を認識し、施設整備の際に設計に反映することが重要であると考えている。そのため、関係各局の担当課長を委員とする福岡市雨水流出抑制推進会議を毎年開催し、指針に基づき積極的に取組を推進しているが、各施設管理者との連携強化を図り、雨水流出抑制施設のさらなる整備促進に取り組んでいく。

◯尾花委員 本市は、雨水貯留タンク、雨水浸透ます、雨水浸透管の設置費用を助成する雨水流出抑制施設助成制度を設けているが、その事業概要と令和5年度の事業実績、当初予算額に対する決算額、事業の執行率について尋ねる。

△道路下水道局長 本制度については、浸水被害の軽減に対する市民意識の向上と啓発を図るとともに、市民による雨水流出抑制の取組を促すため、雨水の貯留タンクや浸透施設の設置者を対象に助成するものである。まず、助成内容であるが、雨水貯留タンクについては、容量100リットル以上のタンクを購入する代金の半額を助成しており、タンク容量500リットル未満には1万5,000円、500リットル以上には3万円を上限としている。また、雨水浸透施設については、雨水浸透ます、浸透管の設置工事費を助成しており、既存建築物には10万円、新築建築物等には5万円を上限としている。次に、令和5年度の助成実績であるが、助成件数は雨水貯留タンク36件、雨水浸透施設1件の合計37件、当初予算額100万円に対し決算額は66万円となっており、執行率は66%である。

◯尾花委員 事業の執行率は66%と7割程度にとどまっているようであるが、その要因をどのように分析し、どのような改善を図ろうとしているのか示されたい。

△道路下水道局長 要因については、本制度を利用した人へのアンケートによると、ためた雨水を庭木や花木への水やりに利用する節水の目的で雨水貯留タンクを設置したという回答が多いため、雨水流出抑制の重要性を市民へ十分に伝え切れていないのではないかと考えている。近年、全国的に想定を上回る豪雨による浸水被害が多発していることも踏まえ、現在行っている市政だより、本市ホームページへの掲載やホームセンター、住宅展示場等でのパンフレット配布に加え、積極的な周知方法を検討していく。

◯尾花委員 この質疑に臨むに当たり、京都市の雨庭を視察調査してきた。雨庭とは、地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく、一時的に貯留し、ゆっくりと地中に浸透させる構造を持った植栽空間のことで、雨水の貯留浸透と修景緑化、つまり四季の移ろいが感じられる樹種の植栽の機能を併せ持っている。雨水流出抑制、水質浄化、ヒートアイランド現象の緩和等の様々な効果が期待され、グリーンインフラの手法の一つとして注目されている。パネルを用意した。これが雨庭のイメージである。雨水を地中に浸透させやすくするため、植栽の周辺に、砂利などを敷き詰めた州浜を設けている。砂利などは、深いところで約50センチメートルの厚みがあり、砂利の隙間に雨水を一時貯留しておくことができる。また、四季を感じられるよう、様々な植栽も行われている。雨庭の雨水流出抑制機能としては、1つ目の特徴は集水であり、水が浸透しない舗装面などに降った雨水を集めること、2つ目の特徴は貯留であり、集めた水を一時的にためる浅いくぼ地などを備えていること、3つ目の特徴は浸透であり、ためた水をゆっくり地中に浸透させることである。道路の縁石の一部を穴空きのブロックに据え替えることで、歩道上や直接雨庭内に降った雨水だけではなく、車道上に降った雨水も雨庭の中に取り込んでいる。これが京都市の実際の雨庭の一つである、四条堀川交差点北西角の雨庭である。植栽には、カスミザクラなどの10種類以上の植物を施しており、四季折々の自然を感じることができる。景石には、加茂七石の一つ、貴船石をはじめとした京都を代表する銘石を使用しており、日本庭園としても楽しむことができる。石はお金がかかるため、公共施設を改修したときに出る廃石も再利用しているということであった。また、雨庭についての説明看板もきちんと立てられている。この雨庭を造ったことをきちんと市民や来街者に分かりやすく説明している。京都市では、国土交通省の社会資本整備総合交付金事業のグリーンインフラ活用型都市構築支援事業を活用して、「過去に付近や周辺で浸水履歴のある箇所や道路冠水しやすいなど、雨水の一時貯留や浸透施設の必要性が高いと見込める箇所」、「多くの人に質の高い緑の空間整備を楽しんでもらえるよう、人通りが多く、一定の植栽面積を確保することができる箇所」、「管理に協力してもらえる街路樹サポーターなどの地元活動が行われている箇所」、以上3つの観点から年1~3か所の整備を推進している。本市において、雨水を保水、浸透する機能が低下している課題があるにもかかわらず、雨水流出抑制施設助成制度の事業執行率は伸び悩んでいるため、これを補完する取組が必要だと思う。そこで提案だが、本市は市長を先頭に、緑化啓発、緑化推進をさらに進めるため、市民、企業等との共働により、全国に誇れる一人一花運動を推進している。ただいま紹介した京都市の雨庭の事業スキームを概観すると、本市の一人一花運動と親和性の高い取組だと思う。本市において、両事業の融合型の取組などは推進できないものか。花と庭園にあふれたまちづくり、何かわくわくしないだろうか。都心の修景によるにぎわいの創出にもつながり、しかも雨水流出抑制という流域治水の役にも立つ、大変有益な取組だと考えるが、この質疑の最後に、雨水流出抑制の観点を中心としたグリーンインフラの整備について、市長の所見を尋ねる。

△市長 近年、全国的に豪雨災害が激甚化、頻発化しており、自然環境が持つ雨水流出抑制の機能を活用したグリーンインフラの取組を進めることは、大変重要であると考えている。本市における雨水流出抑制の取組については、治水池などの整備に加え、学校や公園などの公共施設の整備に合わせて貯留、浸透施設を導入するほか、民地内での雨水貯留タンク等の設置に助成を行うなど、官民での取組を積極的に推進しているところである。今後とも、グリーンインフラの持つ機能を生かし、さらなる浸水安全度の向上に取り組むとともに、都市の魅力向上を図るため、植栽空間の活用なども含め、雨水流出抑制に取り組んでいく。

◯尾花委員 次のテーマは、横断歩道、踏切道の安全対策についてである。生活道路上での交通事故が後を絶たない。政府は7月23日、住宅街の生活道路など道幅が狭い道路について、自動車の法定速度を時速60キロメートルから30キロメートルに引き下げる改正道路交通法施行令を閣議決定し、再来年の9月1日に施行するとの報道発表があっており、とても深刻な事態に陥っている。令和6年版交通安全白書によると、交通事故死5割超が高齢者、道路横断中が多数とあるが、令和5年度に本市が講じた生活道路上の横断歩道に関する安全対策について尋ねる。

△道路下水道局長 令和5年度においては、ゾーン30プラスの対策としてスムーズ横断歩道の整備を行ったほか、視覚障がい者の道路横断時の安全性を高めるためのエスコートゾーンの整備や、ドライバーに対する注意喚起のための路面標示などを実施している。

◯尾花委員 また、当該白書では、交通環境整備を進める必要性が強調されているが、区域内の最高速度を30キロメートルに規制するゾーン30や車道の路面を盛り上げて速度を抑制するハンプの設置を組み合わせたゾーン30プラスについて、本市の取組状況を尋ねる。

△道路下水道局長 ゾーン30プラスの取組については、ビッグデータを活用し、生活道路における安全対策を効果的、効率的に進めるものであり、令和3年度から国土交通省や県警察と連携し、地域の合意を得ながら進めている。5年度末までに4地区が設定されており、そのうち3地区において整備が完了している。

◯尾花委員 パネルを見てもらいたい。これがスムーズ横断歩道の写真である。横断歩道を通常の凸状のハンプで盛り上げて、歩道と同じ高さにするスムーズ横断歩道の設置を検討している自治体が近年増加しているが、その概要と設置効果を尋ねる。

△道路下水道局長 スムーズ横断歩道の概要については、安全かつ円滑な歩行環境を実現するため、横断歩道部を10センチメートル程度盛り上げ、横断歩道と歩道を同じ高さにするものである。また、その効果については、スムーズ横断歩道とすることで、ドライバーに対しては、横断歩道手前での速度の抑制や、歩行者への譲り運転を促すことによる安全性の向上、歩行者に対しては、道路の横断がしやすくなることなどが期待される。

◯尾花委員 横断歩道手前で速度を落とし歩行者へ譲る運転を促す、横断歩道を盛り上げることで小さな子どももドライバーから見つけやすくなる、歩道と横断歩道がほぼ同じ高さにつながるためスムーズに横断できるなど、スムーズ横断歩道は、設置効果が高いとの検証結果が得られているため、本市も設置を進めてはどうかと思うが、所見を尋ねる。

△道路下水道局長 スムーズ横断歩道については、歩行者の道路横断時における安全性の向上などの効果があるものと認識しており、現在、ゾーン30プラスの対策として、令和5年度末時点で東区香陵地区において1か所設置している。今後も、国土交通省や県警察と連携し、地域の合意を得ながら、必要な箇所への設置を進めていく。

◯尾花委員 次のパネルを見てもらいたい。これはエスコートゾーンの写真である。視覚に障がいのある人の横断歩道の安全対策として、歩道の点字ブロックに接合している横断歩道には、横断歩道上に設置され、横断時に横断方向の手がかりとなる突起体の列であるエスコートゾーンの設置を促進していると思うが、令和5年度時点での進捗状況を尋ねる。

△道路下水道局長 エスコートゾーンについては、福岡市バリアフリー基本計画において、令和7年度までに市内の145か所が設置必要な箇所として位置づけられており、5年度末までに121か所で設置が完了している。

◯尾花委員 バリアフリーに関する国の基本方針を踏まえた福岡市バリアフリー基本計画によれば、令和7年度末の目標として、主要な生活関連経路のうち、道路または交通の状況に応じ必要な部分の道路標示は、原則100%エスコートゾーンを促進することがうたわれている。今後、横断歩道の改修を行う際は、その点を踏まえてスピード感を持って整備してもらいたいと思うが、所見を尋ねる。

△道路下水道局長 エスコートゾーンについては、視覚障がい者が横断歩道を安全に通行するために設置を推進することが重要であると認識している。引き続き、バリアフリー基本計画に基づくエスコートゾーンの設置について、令和7年度末までの完了を目指して、県警察と連携し、しっかり取り組んでいく。

◯尾花委員 エスコートゾーンの整備は、主要な生活関連経路のみで事足れりと考えるのではなく、変則交差点などで立ち往生し困っている視覚に障がいのある人がいることに、常に思いをはせながら、全市的に取り組んでいくよう強く要望する。踏切道における交通の安全対策として、令和3年度に策定された第11次福岡市交通安全計画には、歩道が狭小な踏切についても、踏切道内において歩行者と自動車等が錯綜することがないよう歩行者滞留を考慮した踏切拡幅など、事故防止効果の高い構造への改良を促進する、さらに、平成27年10月の高齢者等による踏切事故防止対策検討会の取りまとめを踏まえ、平滑化等のバリアフリー化を含めた高齢者等が安全で円滑に通行するための対策を促進するとうたわれている。この計画に基づき、令和3年度からこれまでどういった施策を講じてきたのか尋ねる。

△道路下水道局長 踏切道における交通安全対策については、これまでに連続立体交差事業による踏切の除去のほか、歩道の設置や路側のカラー化などの対策に取り組んだところである。令和3~5年度においては、連続立体交差事業により8か所で踏切の除去を行ったほか、2か所で踏切の拡幅などの対策を実施している。

◯尾花委員 令和4年4月に奈良県内において、視覚に障がいのある人が踏切内で列車に接触して亡くなる痛ましい事故が発生した。それを受けて、6年1月に、道路の移動等円滑化に関するガイドラインが改定されたが、具体的な改定内容を示されたい。

△道路下水道局長 具体的な改定内容については、踏切道での視覚障がい者の安全性の向上を図るため、踏切道内の誘導標示が標準的な整備内容として位置づけられ、その設置方法や構造が規定されたものである。

◯尾花委員 パネルを見てもらいたい。これが踏切道内誘導表示の写真である。踏切道内へ表面に凹凸のついた誘導表示、先ほど紹介した横断歩道のエスコートゾーンのようなものを設けることを標準的な整備内容に位置づけるなど、重要な改定が行われている。先日、東区の鹿児島本線の大名1号踏切において、奈良県と同様の事故が発生しかねない状況があったとの報告を受けた。視覚に障がいのある本人にも直接話を聞いたが、踏切道を横断中に進行方向を見失ってしまい、線路に入り込んでしまったとのことで、それに気づいた人が非常ボタンを押して、電車が緊急停止をして、すんでのところで事故を免れ命拾いをしたとのことだった。このガイドライン改定以降、全国で5か所の踏切道内誘導表示が整備されたようだが、九州では残念ながらまだ1か所も整備されていない。ぜひユニバーサル都市・福岡を標榜する本市が先陣を切ってもらいたいと思っている。改定内容である踏切道内誘導表示を含め、踏切拡幅、カラー舗装など踏切道の安全対策にしっかり取り組み、その進捗状況を市民に分かりやすく公表してもらいたいと思うが、所見を尋ねる。

△道路下水道局長 踏切道の安全対策については、引き続き、歩道の設置やカラー化などを実施するとともに、踏切道内誘導表示についても、改定されたガイドラインを踏まえ、令和6年度からの整備に向け、現在、鉄道事業者と協議を進めているところである。踏切道内誘導表示を含む安全対策の進捗状況を分かりやすく公表することは、市民の不安感を取り除くことに寄与すると考えられるため、重要であると認識している。このため、引き続き、踏切道の安全対策を推進するとともに、進捗状況の公表に向け取り組んでいく。

◯尾花委員 障害者差別解消法の改正により、本年4月から事業者の合理的配慮の提供の義務化が実施されている。高齢者や障がいのある人などの交通事故死を未然に防ぐという命に関わる大事な問題のため、本市もこれまで以上に交通事業者との連携を強化し、官と民が一体となって、横断歩道や踏切道を安全に通行できる環境を速やかに整えてもらいたいと思うが、市長の所見を尋ねる。

△市長 近年、全国的に高齢者や障がいのある人が犠牲となる痛ましい交通事故が発生しており、こうした事故を未然に防ぐ安全対策は、大変重要であると認識している。本市においては、全ての人に道路を安全、安心に利用してもらうという観点から、横断歩道や踏切道を含め、市民に身近な生活道路などの安全対策を推進しているところである。今後とも、地域や県警察、鉄道事業者などと連携をしながら、交通事故のない社会の実現を目指し、ハード、ソフトの両面からしっかりと対策に取り組んでいく。

◯尾花委員 最後のテーマは、地域における多文化共生の取組についてである。本市の令和5年度末の在住外国人の出身国、地域の数と人口総数、また、人口上位5位までの国籍、地域と在留資格、経年と比較してどういった状況になっているのかを示されたい。

△総務企画局長 本市には、令和5年度末時点で、146の国、地域から4万4,812人の外国人が在住しており、出身国、地域の上位5か国については、中国、ネパール、ベトナム、韓国または朝鮮、フィリピンの順で、近年の特徴としてはネパールが急増している。在留資格の上位5位については、1位が留学、2位が永住者、3位が技術、人文知識、国際業務、4位が家族滞在、5位が特別永住者の順となっており、近年は、技術、人文知識、国際業務などの就労目的や、家族滞在が増加している。

◯尾花委員 本市において、急激に在住外国人が増加し、外国人数が過去最多を更新していることから、相互理解促進のため、これまでにも増して、交流事業を通じた顔の見える関係づくりを行う必要がある。本市では、異なる文化や習慣などから生まれる摩擦を生じないようにするため、小学校区単位の外国人住民との交流や外国人との共生に関する啓発支援を実施していると思うが、令和5年度の実績を尋ねる。

△総務企画局長 令和5年度は、本市と福岡よかトピア国際交流財団で、地域の多文化共生に関する企画サポートや経費支援などの活動支援を、11校区において13件実施している。

◯尾花委員 本市と福岡よかトピア国際交流財団が地域の国際交流や啓発活動を支援した地域数は、11校区13件であり、小学校区単位での取組はまだまだ少ないように思う。この質疑に先立ち、神戸市の地域における多文化共生の取組を視察調査してきた。神戸市内の在住外国人数は、令和5年3月末現在で5万4,522人であり、本市と同じく過去最高を更新している。これは神戸市の全人口の約3.7%に当たり、国籍は143か国を数えている。そこで、令和5年度に市民参画局を地域協働局に再編し、地域において外国人も含めて安心、安全に生活できるまちを目指し、外国人への重層的かつ体系的な情報発信と相互理解、交流の促進を実施している。特に印象深かった取組を幾つか紹介すると、多文化交流員という制度である。政治体制等の違う国から来訪した外国人は、行政は監視や取締りを行うところとの固定観念が強く、行政窓口や行政が主導するイベント等を忌み嫌う傾向があり、それを払拭するために、外国人の中から有償ボランティアを募り、交流の中核となるリーダーを育成し、在住外国人に気兼ねなく行政に相談することや地域の交流イベント等へ勧奨するといったスキームを構築していた。在住外国人の心をつかんだ大変よい取組だと思うが、本市も取り組んではどうかと思うが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 本市においては、福岡よかトピア国際交流財団の外国人支援ボランティアバンク制度に外国人も登録し、地域の交流事業に紹介、派遣する仕組みを設けるとともに、共生コーディネーター1人を配置し、地域の外国人との交流活動の企画等をサポートしている。また、令和5年度には南区役所において、多文化共生のキーパーソンとなる在住外国人に対するヒアリング等を実施し、具体的な交流活動事例や実施手順を紹介する手引書を作成しており、6年度は、南区の取組を各区へ横展開するため、ワークショップ形式で外国人住民を巻き込む手法などを学ぶ公民館職員対象の研修実施を予定している。今後とも、他都市の取組も踏まえ、全市的に外国人キーパーソンと地域が連携できるよう取り組んでいく。

◯尾花委員 本市在住外国人の行政サービスへのニーズを把握し、そのニーズに対応することも重要な取組である。本市における令和5年度の外国人支援団体等からの広聴状況、寄せられた意見、要望への対応状況について尋ねる。

△総務企画局長 令和5年度においては、外国人支援団体や外国人当事者へヒアリングを実施し、子どもの教育や医療、福祉など、生活していく上での課題が今後増加するとの意見や、日本のルール、マナー、保険や税等の制度についてのより丁寧な説明のニーズがあるなどの意見をもらっている。このようなヒアリング結果を踏まえ、引き続き、転入時に生活ルール、マナーなどを記載した冊子等をセットにしたウェルカムキットの配布や生活ガイダンスを行うとともに、日本語学校向けの出前講座のメニューに国民健康保険制度を追加するなど、6年度に新たな取組を実施している。

◯尾花委員 本市では、在住外国人からの広聴に関しては、団体、個人から不定期にヒアリングを行い、要望等に対応するという方法を取っているようである。神戸市では、神戸市外国人市民会議という学識者、外国人コミュニティ代表者等を構成員とする市民会議を年2回開催し、外国人当事者の意見を施策に反映するスキームを構築し、就学案内の多言語化や区役所窓口電話通訳システムの整備、災害発生時の外国人住民支援策の策定などの成果につなげていた。本市もこのような在住外国人団体等から意見、要望を吸い上げ、施策に反映し、その結果が報告できるシステムを構築してはどうかと思うが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 在住外国人の生活の現状やニーズ等を把握し、今後の戦略的な在住外国人施策の展開に活用するため、3年に1回外国籍市民アンケートを実施しており、引き続き、外国人当事者等へのヒアリングやアンケートを行うとともに、様々な手法により広く意見等を収集していく。

◯尾花委員 先日、ある日本語学校が、定員を考えずに、次から次へと数百人単位で外国人留学生を受け入れ、先に入学していた留学生は、当初の渡航費用の中に滞在期間分の寮費が含まれていたにもかかわらず、突然寮から追い出され、寮費も返還してもらえない事案が発生した。一報を受け、本市の総務企画局に相談したところ、県の指導が入り、寮費の一部が当該外国人留学生たちに返還されたとのことである。総務企画局のスピーディーかつ懇切丁寧な対応に感謝を申し上げたいと思う。その際、思い知ったことは、寮を追い出された外国人留学生の住居探しの大変な苦労である。遠く離れた異国の地で、言葉もなかなか通じない中、保証人なしの住居探しがどれだけの困難を伴うか、想像に難くないと思う。在住外国人に対する不動産事業者との連携など、本市の支援策があれば示されたい。

△総務企画局長 外国人の住居探しへの支援として、福岡市外国人総合相談支援センターへの、言葉が通じないため住宅を探すことが困難である旨の相談に対して、外国語対応が可能な不動産会社の案内を行っている。

◯尾花委員 神戸市では、多様な文化的背景を持つ外国人が増加する中、ごみ出しや騒音等、生活慣習の違いや周知不足による地域課題を防止するため、不動産事業者団体との連携協定を締結し、賃貸借契約時の外国人賃借人への生活情報提供に役立てていた。本市においても、不動産事業者との連携協定を締結し、在住外国人が安心して住まいを探せる環境づくりを行ってもらいたいと思うが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 本市においては、年末年始のごみ収集日の振替に関する広報物を多言語で作成し、宅建協会を通じて周知を行っているところであり、今後とも生活情報の周知などについて、不動産事業者との連携を図っていく。

◯尾花委員 本年6月に育成就労法が成立し、入管難民法が改正された。我が国において、総人口は年間100万人ペースで減少し、2040年までに1,200万人の生産年齢人口が減少する。2100年には人口の4割が高齢者となる。その結果、各産業分野が生産性向上や国内人材確保のため最大限努力したとしても、なお人手不足となることは避けられず、特に地方経済、地方産業において、外国人材が、より貴重な労働力になっていくことは確実になったことが制度見直しの背景にあると言われている。こうした育成就労法の成立や入管難民法の改正を踏まえると、本市においても、今後ますます働く人やその家族が増加することが予想され、基礎自治体である本市のミッション、使命として、外国人が地域に根づき、共生できる制度の構築と日本語能力の向上を図る方策の充実など、多文化共生の取組をさらに推進する必要があると思うが、所見を尋ねる。

△総務企画局長 国における法改正等を踏まえ、本市においても今後さらに外国人やその家族が増え、教育や医療、介護、防災などあらゆる分野における外国人対応の重要性が高まるものと認識している。地域の中で、日本人と外国人がともに安心して生活することができるよう、地域における交流事業や地域と連携した日本語教育に関する取組を充実させるとともに、様々な外国人施策にしっかりと取り組んでいく。

◯尾花委員 最後に、アジアをはじめ世界の人にも暮らしやすいまちづくりを先頭になって進めている市長の所見を尋ね、私の質疑を終わる。

△市長 本市では、これまでも在住外国人に対して、多言語による情報発信や地域における国際交流の促進、日本語教育の推進など、様々な施策を幅広く実施してきた。本市の在住外国人が今後ますます増加していくことが見込まれる中、地域における日本人と外国人との共生は大変重要であり、今後とも、国籍にかかわらず、一人一人が自分らしく輝けるよう、多文化共生社会の実現を目指し、誰もが住みやすく活動しやすいまちづくりを推進していく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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