◯たのかしら委員 公明党福岡市議団を代表して、住宅耐震化と火災安全対策への取組について、地震発生時の案内について、史跡の活用モデルについて、以上3項目の質疑を行う。初めに、住宅耐震化と火災安全対策への取組についてである。今年元日に発生した能登半島地震により、日本が地震大国であることを改めて突きつけられた。また、8月8日には宮崎県で震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震が発生し、気象庁は南海トラフ地震が発生する可能性がふだんと比べて高まっているとして、緊張感が続く状況となった。本市の下にも警固断層があり、地震が今後30年以内に発生する確率は、我が国の主な活断層の中でも高いグループに属している。西方沖地震の際には、宇美断層も動いたとのことであった。地震発生をきっかけに本市の市民の意識が高まっている中で、まず、耐震化の現状について尋ねる。福岡県西方沖地震の経験を踏まえ、福岡市耐震改修促進計画を策定し、令和3年4月に最新の計画に改定しているが、本市の福岡県西方沖地震発生時の死者数、負傷者数、避難者数、全壊、半壊の数値を示されたい。
△市民局長 福岡県西方沖地震に係る被害については、死者1人、負傷者1,038人、避難者は最大で2,759人、また、建物の全壊141棟、半壊323棟となっている。
◯たのかしら委員 今後、警固断層地震が発生した場合に想定される最新の死者数、負傷者数、避難者数、全壊、半壊の数値を示されたい。
△市民局長 警固断層地震が発生した場合の被害については、福岡市地域防災計画では、死者458人、負傷者3,171人、避難者2万5,072人、また、建物の全壊4,523棟、半壊3,474棟と想定している。
◯たのかしら委員 答弁の想定の数値に対し、木造戸建て住宅や共同住宅についても、耐震診断やさらに必要に応じて耐震改修を努めてもらっているわけだが、被害が大きくなると想定されているのが、旧耐震基準の住宅である。本市の旧耐震基準の住宅戸数をそれぞれ示されたい。
△住宅都市局長 国が実施した平成30年の住宅・土地統計調査を基に推計すると、令和6年3月末時点で、木造戸建て住宅は約3万3,400戸、共同住宅は約1万9,500戸となっている。
◯たのかしら委員 本市の耐震診断の実施数、耐震化工事の実施数について示されたい。
△住宅都市局長 耐震診断や耐震改修等については、本市への報告が義務づけされておらず、全数の把握は困難なため、本市の補助事業や耐震診断の支援制度を活用した住戸数で答弁すると、令和6年3月末時点で耐震診断を実施した戸数は、木造戸建て住宅1,854戸、共同住宅4,465戸、また、耐震改修工事等を実施した戸数は、木造戸建て住宅1,002戸、共同住宅620戸となっている。
◯たのかしら委員 市への報告が義務づけされていないため、全ての住戸数を把握することは困難との答弁だが、報告が義務化されていないからこそ、より補助を使ってもらえるよう配慮し、耐震化を進めるべきであると考える。耐震化工事の補助件数が、木造戸建て住宅1,002戸、共同住宅620戸とのことだが、本市の旧耐震基準の木造戸建て住宅3万3,400戸、共同住宅1万9,500戸に対して、いつまでにどのような目標で改修を目指しているのか、尋ねる。
△住宅都市局長 耐震化の目標については、平成29年度に改訂した福岡市耐震改修促進計画において、国や県の目標を踏まえ、令和7年度までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することとしている。国の基本方針においては、3年度の改正により、12年までにおおむね解消することとされており、本市においても、これを踏まえ、計画の見直しを検討することとしている。
◯たのかしら委員 答弁によれば、令和7年度におおむね解消の目標から、令和12年へ延長し、計画の見直しを検討するとのことである。目標に対し遅れていた中で、能登半島地震が起きた。本市においても危機感の高まりから、耐震化補助を利用し、耐震化を図る人が増えており、その予算を含む民間建築物耐震化促進経費については、補正予算も計上されている。そこで、住宅などに係る民間建築物耐震化促進経費の決算額と併せて、その執行率を令和5年度と過去5年間の平均で示されたい。
△住宅都市局長 令和5年度の決算額は4,174万円余、執行率は約56%となっている。また、過去5年間の平均で答弁すると、決算額は4,997万円余、執行率は約70%となっている。
◯たのかしら委員 目標値に対する現在の執行率について、本市の認識を尋ねる。
△住宅都市局長 補助件数や交付額により年度ごとの執行率には波があるが、令和6年度については、能登半島地震などもあったことから、補助件数等が増加している状況である。今後とも多くの人に補助事業を活用してもらえるよう周知、啓発に努めていく。
◯たのかしら委員 民間建築物耐震化促進経費について、補正予算を組んでもらったことはありがたいことだと感じている。ただ、本市の耐震化の目標に対して、令和5年度の執行率が56%だったため、この耐震化の高まる機運を持続して、ここからは目標達成を急ぐべきと考える。具体的な住宅耐震化への補助について尋ねる。現在、本市が行っている住宅などの建築物耐震化に対する補助制度の種類とその内容を示されたい。
△住宅都市局長 まず、木造戸建て住宅に関するものとして、木造戸建て住宅耐震改修工事費補助事業があり、令和6年度から補助率は80%、上限額は150万円と大幅に補助の拡充を行っている。また、既存住宅が解体される場合は、耐震建替費補助事業があり、最大で50万円を補助することとしている。次に、共同住宅に関するものとして、耐震診断費補助事業と耐震改修工事費補助事業があり、補助率は最大でそれぞれ3分の2と、23%としている。次に、道路に面している危険なブロック塀等に関するものとして、ブロック塀等除却費補助事業があり、最大で15万円を補助することとしている。
◯たのかしら委員 木造戸建て住宅に対しては、耐震改修と建て替えのときの解体へ補助、共同住宅については、耐震診断と改修工事への補助ということであった。ブロック塀について、除却については補助があるとのことだが、プライバシーを守りたいから置いているということも考えられる。そこで、ブロック塀には耐震補強や建て替えに対する補助はあるのか。もしくは、プライバシーへの配慮として、ブロック塀除却の補助と合わせて、本市で行っている緑化助成事業の補助との併用ができるのか、尋ねる。
△住宅都市局長 ブロック塀等除却費補助事業については、耐震補強や建て替えに対するものではなく、道路に面している危険なブロック塀等の除却を対象とするものである。生け垣などの設置費用を補助する緑化助成事業については、ブロック塀等除却費補助事業との併用についても可能であり、その旨を周知している。
◯たのかしら委員 ブロック塀については、除却の補助だけではプライバシーを守りたいという希望には沿えないため、補強や建て替えなど、もう一段の補助が欲しいとの声があった。答弁のとおり補助の併用ができるということであれば、制度の周知不足の可能性がある。そこで、ブロック塀除却の補助に対する案内の際に、緑化助成事業の補助も一緒に使えることを周知し、プライバシーの保護も図りながらブロック塀除却ができることを伝え、安全対策を進めてもらいたいが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 現在、ホームページには両事業を関連して掲載するとともに、相互に補助事業の案内やリーフレットの配布を行っているところである。今後とも、これらによる事業の周知を図るとともに、ブロック塀に係る関連団体に対し、両事業を一体的に案内するなど、補助事業の利用促進に努めていく。
◯たのかしら委員 ぜひ制度の案内を強化して、ブロック塀除却への後押しをお願いする。本市は政令市の中で共同住宅の割合が1位であるため、共同住宅について幾つか尋ねる。共同住宅の耐震診断については、診断をしないと長期修繕積立金がどのくらい必要なのか分からないという問題も考えられることから、期間限定でも補助率を上げるキャンペーンをするなど、スピードを上げて耐震化への推進を図るべきと考えるが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 共同住宅耐震診断補助事業については、予備診断及び精密診断のそれぞれの診断について補助対象としており、補助率を3分の2としている。また、これまで市政だよりでは年2回、木造戸建て住宅及びブロック塀の補助事業について周知していたが、令和6年からは能登半島地震などもあったことから、共同住宅の補助事業についても併せて掲載している。今後とも、市政だよりや耐震セミナーなどにより、補助事業の周知に努め、耐震化の促進に取り組んでいく。
◯たのかしら委員 ぜひ、耐震診断のさらなる推進をお願いする。また、共同住宅について、本市には耐震設計の補助がないため、国の制度も活用し、補助を設けて耐震化を促進してもらいたいが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 木造戸建て住宅の耐震化促進に当たっては、国及び県の補助制度とともに、県の耐震診断アドバイザー派遣制度を活用しているが、共同住宅については、国の補助制度のみの活用となっており、耐震設計に対する補助制度については、今後、県や他都市の状況も踏まえて検討していく。
◯たのかしら委員 設計と改修工事はセットで行うことで、費用軽減やより効果的な改修が予想できるため、検討をお願いする。ここからは、高経年マンション管理組合の理事長などが手続をする場合のイメージを追ってみる。耐震診断から耐震設計、耐震工事へと進んでいくために、まずどこに相談したらよいのか。また、相談があった場合の管理組合へのアドバイザー派遣などの支援制度や専門家、事業者などの関連団体との協力体制について尋ねる。
△住宅都市局長 耐震化に関する相談については、住宅都市局において担当課を設けている。次に、管理組合への支援制度であるが、築40年以上の分譲マンションを対象に、管理運営の支援や耐震改修等を含む様々な改修に関して相談できるアドバイザーを派遣する高経年マンション運営支援事業等がある。また、関連団体の協力体制については、日本建築構造技術者協会の協力により、共同住宅の耐震診断や耐震改修の実施に伴う相談等に対応してもらっているところである。
◯たのかしら委員 相談の内容に応じた対応やアドバイザーを派遣してくれるとのことで、ゼロから事業者を探し回ることはしなくてよいと分かり、安心した。ただし、共同住宅の場合、改修工事には合意形成の難しさがある。もう先が長くないから改修しなくてよいとか、年金暮らしなのにそんなお金はないなどのような厳しい意見が出る場合もある。マンション管理組合の理事長の中には、順番が回ってきているので引き受けている場合もあり、必ずしも説明が得意ではない理事長もいる。また、補助の仕組みなどをうまく説明できず、必要な情報を伝えられないために、耐震改修工事への住民の合意形成が難しい場合もある。管理組合の理事長が耐震改修のメリットを説明しやすくするためにも、本市から手続の大まかな流れを載せたフローチャートなどを作成し、理事長が替わっても、管理会社からも耐震診断や耐震工事への補助の存在やアドバイザー派遣の仕方やメリットなどを、マンションの総会などで定期的に案内してもらえるようにすることは有効だと考えるが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 耐震診断や耐震改修の補助事業については、現在、窓口での案内、住まいづくりの手引き等の配布のほか、本市ホームページや市政だよりへの掲載を行うとともに、関連団体とも連携して周知をしているところであるが、診断から改修までのフローチャート等により、より分かりやすい周知に努めていく。
◯たのかしら委員 ぜひ要点を分かりやすくして、作成をお願いする。旧耐震基準であっても、耐震改修工事を完了した物件については、固定資産税、所得税の控除が受けられる場合がある。また、第三者機関の発行になるが、耐震基準適合証明の発行により、住宅を売却する際に買う人が住宅ローン控除を受けられるため、売却しやすくなることも考えられる。このような情報も本市から耐震化に対する価値としてアピールし、さらなる耐震工事への動機づけを図ってもらいたいが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 耐震改修に伴う固定資産税や所得税の税制特例については、本市ホームページや住まいづくりの手引き等へ掲載するとともに、補助事業を活用した人へも周知を行っているところである。今後は、住宅ローン控除も含めた税制特例の情報なども含め、市民に分かりやすい周知に努めていく。
◯たのかしら委員 併せて火災安全対策も尋ねる。近年、ガソリンを使った放火により、建物内にいた多くの人が犠牲となる痛ましい事件が度々発生している。令和3年12月に発生した大阪市北区のビル火災においては、1つしかない避難経路の階段付近から出火したことで避難することができず、多くの貴い命が奪われた。元年7月には京都市の事業所において火災が発生し、こちらも階段付近で出火したことで、急激に煙や熱が建物内に充満し、多くの貴い命が奪われた。これらの背景を踏まえ、既存建築物の一層の防火上、避難上の安全対策が重要な課題となっている。このような状況の中で、昨年から始まった建築物火災安全改修事業だが、現在、九州の自治体はどこも手を挙げていない。本市にはこの火災安全改修事業にぜひ参加してもらい、しっかりと火災に対する安全対策にも取り組むべきと考える。また、周辺自治体にも広がるよう取り組んでもらいたいと考えるが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 建築物火災安全改修事業については、令和6年4月に国から具体的な基準等が示されており、2方向避難などが確保されていない既存建築物の安全改修を促進するため、令和6年度中の事業開始に向けて、他都市の事例も参考にしながら検討しているところである。引き続き、県や他都市と情報交換を行い、より多くの人に活用されるよう、周知方法についても検討していく。
◯たのかしら委員 このテーマの最後に、誰一人取り残さない防災先進都市として取り組んできた市長に、今後の地震火災対策について尋ねる。
△市長 令和6年能登半島地震や、3年の大阪市北区のビル火災など、近年、日本各地での大規模な災害が発生しており、まち全体の防災力を高めていくことが大変重要であると考えている。建築物の耐震化や防火対策については、市民にとってより分かりやすい周知に努めるとともに、国の補助制度も活用しながら、その促進に取り組んでいく。今後とも、市民の命と財産を守ることを第一に、災害に強いまちづくりを進め、防災先進都市福岡を目指していく。
◯たのかしら委員 2つ目のテーマ、地震発生時の案内について尋ねる。地震などの災害時には、早めに避難したほうがよい場合や、むやみに移動しないほうがよい場合、徒歩で帰宅を目指すためにトイレの確保だけはしたい、子どもがいる、要援護者がいるなど、様々な案内へのニーズがある。慣れている地域で被災した場合にはイメージすることができても、偶然観光や買物で訪れている際に被災するという場合も想定されるため、そうした状況に対する本市の備えについて尋ねていく。まず、本市における地震発生時の避難所への案内について、どのような方法があるのか示されたい。
△市民局長 地震発生時においては、震度に応じてあらかじめ指定した避難所を開設することとしており、開設済みの避難所については市ホームページに掲載するとともに、テレビやラジオ、防災メールや市の防災アプリ、ツナガルプラス、また、市LINE公式アカウントなどで情報発信を行うこととしている。また、ツナガルプラスや市LINE公式アカウントでは、避難所までのルート案内が可能となっている。
◯たのかしら委員 答弁にあった案内のうち、防災メール、ツナガルプラス、市LINE公式アカウントとマイ・タイムラインの決算額を示されたい。
△市民局長 令和5年度の決算額は、防災メールが510万円余、ツナガルプラスが2,167万円、市LINE公式アカウントにおける防災情報に係る経費が132万円、また、マイ・タイムラインの作成ツールに係る経費が129万円余となっている。
◯たのかしら委員 防災メール、ツナガルプラス、市LINE公式アカウントとマイ・タイムラインの登録数についても示されたい。
△市民局長 各ツールの利用状況については、いずれも令和6年9月12日時点で、防災メールの登録数が約4万3,000件、ツナガルプラスの導入数が約18万6,000件、市LINE公式アカウントの防災情報の受信設定数が約16万6,000件となっている。なお、マイ・タイムラインについては、ウェブ上または紙ベースで作成できるようにしているため作成数は把握していないが、専用サイトへのアクセス件数については、約1万1,000件となっている。
◯たのかしら委員 これらの案内は本市在住の人には周知されてきているが、本市の人口からすると、まだ登録者数を増やしていかないといけない状況である。また、本市を訪れている人でこれらを事前に登録している人は少ないと想定されるが、本市を訪れている人が地震などの災害に遭った場合、避難先への案内はどのような方法があるのか尋ねる。
△市民局長 帰宅困難者については、災害時応援協定を締結している一時滞在施設へ誘導することとしており、現地での市職員等による誘導のほか、市ホームページへの掲載や商業施設との協定によるデジタルサイネージの活用、さらには天神・博多駅周辺地区へのエリアメールによる情報発信などを行うこととしている。
◯たのかしら委員 先日、神戸市の帰宅困難者支援システムを視察してきた。地震など災害発生時には、市内のデジタルサイネージへ一斉にQRコードを表示し、事前にアプリ登録をしていない人でも、QRコードを読み込めば使える仕組みで、要援護者、乳幼児のいる家族、女性専用、外国人、旅行者、特になしの6種類の属性に応じて予約し、一時滞在施設へ案内する。また、近年の災害発生時には関係のない場所からのデマ情報の投稿が問題となっているため、デマ情報対策として市外からの投稿ができないようになっている。災害発生時のみデータを使うため、平時の運用費は年間100万円程度とのことであった。本市でも、市外から訪れている人の地震発生時への備えとして、防災メール、ツナガルプラス、市LINE公式アカウント、マイ・タイムラインなどに事前登録していない人のために、帰宅困難者支援の仕組みも検討してはもらえないだろうか、所見を尋ねる。
△市民局長 帰宅困難者への支援については、まずは市から一時滞在施設に対し受入れ要請を行い、受入れ体制の整った施設について、市ホームページやエリアメール等で情報発信などを行うこととしているが、他都市の状況も参考にしながら、より効果的な支援策を検討していきたいと考えている。
◯たのかしら委員 また、神戸市では、一時滞在施設を提供してくれる事業者の協力の下、このシステムを使って、災害時の一斉帰宅抑制のために、定期的な訓練をイベントとして行っていた。この訓練イベントでは、企業ブースの設置や来場者へのプレゼント、ミュージカルなどで呼び込み、QRコードの読み込みチェックで帰宅困難者をスムーズに受入れできるかを確認しているとのことであった。この訓練イベントは、地域主体ではなく、市がリードして行っているものである。そこには、まちを守りたいという担当職員の強い気持ちを感じた。その体当たりの姿勢に市民や事業者が協力を申し出てくれている様子であった。具体的な訓練を行うと、協力企業や市民を巻き込んだ啓発になるし、市職員にとっても災害時にどのような手順でどのような対応が必要なのか理解できるので、とても大切な取組であると感じた。本市でも、帰宅困難者発生時を見据え、定期的な訓練イベントを検討してもらえればと考えるが、所見を尋ねる。
△市民局長 訓練については、We Love天神協議会などのまちづくり組織が実施する帰宅困難者の一時滞在施設への受入れ対応訓練に市職員も参加する形で行っていたが、令和6年度は関係機関と共同で施設への誘導訓練を実施することとしており、今後とも訓練内容の充実を図っていく。
◯たのかしら委員 帰宅困難者支援の仕組みと定期的な訓練イベントは、いざというときの備えとして必ず役に立つ。よろしくお願いする。3つ目のテーマは、史跡の活用モデルについてである。本市はたくさんの魅力ある文化の足跡があるが、古代から中世、近世、近代、そして現代へとつながる本市の歴史の旅を考えたときに、現代は一級河川がないというハンデのある中で、コンパクトシティ、国家戦略特区、スタートアップなど、挑戦する文化を発信するまちとして、近代は川上音二郎や赤煉瓦文化館など、庶民から文化やエンタメなどが芽生えていく福岡・博多として、近世は福岡城、博多祇園山笠、博多松囃子などを活用した今の福岡・博多らしさの原点となる文化都市として、中世は博多遺跡、元寇防塁など博多における商人の交易や武士による防衛の最前線として、そして古代は鴻臚館、さらには稲作、弥生文化スタートの地域として、その可能性を探ってみたいと思う。まず、本市所在の文化財の中で、特に中世以前の史跡、遺跡を活用した取組について、令和5年度の主な事業と決算額を尋ねる。
△経済観光文化局長 中世以前の史跡を活用した令和5年度の主な取組と決算額については、鴻臚館北館の東門等の復元整備に向けた検討に3,280万円余、生の松原地区元寇防塁の集客促進に向けた駐車場の管理運営等に552万円余となっている。
◯たのかしら委員 最近は、福岡城エリアや博多旧市街エリア以外の観光案内を求められることも多いと聞いているが、これらの史跡について、どのように活用していくべきと考えているのか尋ねる。
△経済観光文化局長 史跡については、令和4年7月に福岡市文化財保存活用地域計画を策定し、文化財を生かす取組として、多様な交流が育んだ歴史文化ストーリーの発信、文化観光の推進、歴史文化を活かした共創による地域づくり、学び合いを通じたコミュニケーションの活性化という4つの方針を掲げ、その活用を推進しているところである。
◯たのかしら委員 本市には幾つもの国指定史跡があるが、その中で、私の住んでいる博多区の板付遺跡は全国的に見ても大変重要な遺跡であると思うが、板付遺跡は史跡としてどのような価値があると考えているのか尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡は、日本に稲作が伝来した最初期の水田遺構のほか、集落や埋葬地などが発見されており、弥生時代におけるムラの様子を解明、復元するために欠かせない学術的価値が高い遺跡である。また、併せて地域景観に溶け込んだ史跡としての価値や、日本における稲作文化の始まりの地を体感できる教育的、観光的価値などがあるものと認識している。
◯たのかしら委員 答弁の始まりの地という言葉のように、懐かしさを現地で感じた。では、板付遺跡の施設などの概要を尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡の施設等としては、環濠、竪穴住居、甕棺墓、水田など、当時のムラの様子を再現した復元遺構や、遺跡のジオラマ等を展示する板付遺跡弥生館のほか、案内版、トイレ、ベンチ等の便益施設がある。
◯たのかしら委員 当時の環壕や住居をはじめとしたムラの再現性の高さと弥生館などの存在など、すばらしい遺跡だが、板付遺跡の管理、保全に関して、市民からどのような要望があるのか尋ねる。
△経済観光文化局長 管理、保全に係る要望として、遺跡内の適切な植栽管理や落ち葉の処理、除草、新たな案内板の設置、地域のイベント会場としての利用などを受けている。
◯たのかしら委員 板付遺跡については、樹木管理あるいは除草が十分に行き届いていないと感じられる場所もあるが、遺跡の保存、管理の状況について尋ねる。
△経済観光文化局長 樹木の剪定については、繁茂等の状況を見ながら適宜行い、また、除草については、年間3回の定期除草を行っている。
◯たのかしら委員 板付遺跡のある地域に居住する人から相談を受けた。30年ほど前、環濠と竪穴住居が再現されたとき、この遺跡の周りに多くの木を植えることに反対したそうだが、市からは3メートル以上になるようだったら切りますからとの説明があった。しかし、その後、ほぼ伐採、整備されることはなく、地域の人で子どもたちがけがをしそうな枝を切り、落ち葉で詰まった排水溝の掃除をし、周辺地域に落ち葉が飛び散らないためのネットの修理を行ってきたそうである。このパネルのような状況で、いつも落ち葉がたまっていて、この落ち葉が飛び散って、排水溝がたまって頻繁に掃除をしないといけないという状況である。この周りにあるネットも住民の人が頻繁に直しているそうだが、風があるたびに飛び散っているという状況とのことであった。また、あるときはたまった落ち葉の深さで子どもが落とし穴に落ちたような状況になったこともあり、地域の人がごみ袋も買って捨ててきたとのことであった。地域の人は「もうすぐ30年、いつになったら切ってくれるのかしら。あのとき説明を受けた人も生きているのは2人だけ、みんないなくなってしまう。教科書に載るような板付遺跡なのよ。私たちもいつまでできるか分からない。ここを通る子どもたちのためにも何とかしてほしい」という、板付遺跡を守ってきた誇りと切なる願いによる相談、これが今回の私の質問の発端である。板付遺跡で言えば、樹木は本数も高さもあり過ぎると感じる。現在、このパネルのような状況であり、大体、人の高さがこのくらいであるため、かなりの高さに茂っている状況になる。整備しきれずに長い年月が経過しているので、遺跡をどのように見せていきたいのかしっかりと検討して景観整備を進めるべきと考える。また、草刈りなどの仕方も統一されていない場合があるため、市として場所ごとに清掃の仕方についてのガイドラインを設け、定期的に確認してもらいたいと考えるが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡の整備については、開設当初から、弥生時代前期のムラの復元を目指しており、植栽については、史跡を周辺環境から遮断するのではなく、周囲の民家等からもその風景を楽しめることをコンセプトとしてきた。しかし、樹木が想定を超える成長をしていることから、令和5年3月に作成した史跡板付遺跡保存活用計画において、今後、計画的な剪定などの整理を行うこととしている。また、除草と清掃については、現在、業務委託や管理人による日常清掃を行っているが、適切な実施のため、改めて作業内容や実施後の確認を徹底していく。
◯たのかしら委員 よろしくお願いする。続いて、板付遺跡弥生館について、トイレや駐車場などの附帯施設の状況を尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡弥生館においては、館の前に男女及び車椅子利用可能のトイレを設置するとともに、水田作業等を実施した際に利用できるよう、洗い場も設けている。また、弥生館前の多目的広場を駐車スペースとして利用しており、学校など団体利用の大型バスが複数台駐車可能な広さを確保している。
◯たのかしら委員 トイレについては弥生館のそばにしかなく、環濠や竪穴住居からかなり離れている。また、腰を下ろせる休憩場所もない。あえてと述べると、座れるところがこのパネルの木くらいになる。もうほとんどよく分からない写真になるが、あえて撮ってきた。トイレと休憩場所についても検討してもらえないか、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡をはじめ、国指定史跡の区域内においては、文化財保護の観点から施設や設備の設置に制限があるため、現在の弥生館の前にトイレを設置しているものである。今後、既存のトイレや弥生館における休憩場所の確保について、来訪者が利用しやすいものとなるよう検討していく。
◯たのかしら委員 駐車スペースについてはある程度の広さがあるが、今後、多くの人たちを迎えるために、なるだけ現地へ行きやすい環境を整えてもらうようお願いしたいが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 遺跡へのアクセスについては重要であると認識しているため、駐車スペースの確保に加え、公共交通機関によるアクセスについても、ウェブサイト等において分かりやすく情報を発信するよう努めていく。
◯たのかしら委員 板付遺跡で開催される行事について、認識しているものとしてどのようなものがあるのか尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡では、地元の自治協議会や公民館と協力して、復元水田の田植、稲刈りに合わせ、市民を対象とした田植祭りと秋の収穫体験を開催している。また、小学生を対象として、水田で実施する体験学習も行っている。
◯たのかしら委員 多くの人たちに関心を持って参加してもらえるよう、田植祭りや秋祭りなどを米文化の祭典として盛り上げ、1年に一度でも、空港や天神、博多駅などから直接訪れることができる日を設けるなどの取組を検討してはどうか。また、板付遺跡が持つ日本の米文化の始まりといったストーリー性を打ち出したイメージ映像を作ってPRをしたり、現地で様々なデジタル技術などを活用した疑似体験などができるようにしてはどうか。現在の案内板も情報が少ないものや劣化が進んでいるものもあるため、QRコードをつけた新しい案内板設置なども必要ではないかと考えるが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 板付遺跡は国指定史跡であること等から、田植祭りや秋の収穫体験の拡大実施には一定の制約があるが、より多くの人に楽しみながら弥生時代の営みを感じてもらえるよう工夫していくとともに、交通結節点から板付遺跡をはじめとした市内の史跡を巡るモデルルートを設定するなど、来訪を促進する取組について、今後検討していく。また、福岡の歴史文化を紹介する動画を制作する中で、板付遺跡についても動画を制作し、弥生館において実物の史跡と組み合わせることで校外学習にも活用できるようにするなど、その活用を検討していく。案内板については、QRコードを含め、分かりやすい表示及び設置について検討していく。
◯たのかしら委員 ぜひ検討をお願いする。収穫したものを食べてみたいとの声もあった。弥生時代にタイムスリップしたような体験、ハロウィンなどの活用も面白いかもしれない。目や耳で、さらに研究が進めば、匂いで時代を再現できる日が来るかもしれない。地域とのアイデアを出す中で、郷土の歴史、文化教育の体験、そこから郷土愛の醸成、地域コミュニティの強化につながるかもしれない。触れ合う場、体験する場、主体者として参加して入り込める歴史、古くてはっきりしないからこそ、市民から新しいアイデアが出てくるかもしれない。修学旅行などに訪れた子どもたちからアイデアを募ったり、観光ボランティアの人たちとも遺跡関連グッズなどを企画したりしながら、それらを購入してもらうことで、文化財の保存活用を応援してもらえる仕組みづくりなど、ぜひ検討してもらえればと考えるが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 文化財の保存活用に向け、その財源を確保することは重要であると認識しており、令和6年度から、ふくおか応援寄付金に福岡の伝統芸能を支援メニューに追加し、指定無形文化財や無形民俗文化財の公開事業に対する補助に活用することとしている。遺跡関連のグッズについては、その製作や販売等にノウハウや仕組みづくりが必要となることから、まず、事業者へのヒアリングや他都市事例の調査等を行っていく。
◯たのかしら委員 ぜひよろしくお願いする。板付遺跡は弥生館を備え、そこで解説する人も考古学に知見のある人を配置しており、このような史跡は本市で唯一の場所と聞いている。未来につながる仕組みづくりをぜひよろしくお願いする。令和8年に日本で初となる、第21回世界観光ガイド連盟総会を本市で初開催することが決まった。本市の観光ボランティアガイドの皆さんにもやりがいを感じてもらい、登録人数の拡大を目指すとともに、本市を訪れる観光ガイドのプロフェッショナルの人に徹底的なヒアリングと本市の隠れた魅力を伝え、世界に広げてもらうチャンスとなることを願う。市外から板付遺跡を訪れた人に話を聞く中で、観光案内のパンフに金隈遺跡、埋蔵文化財センターなど南のスポットももっと紹介したら来る人がいると思いますよ、という声もあった。今回は板付遺跡をモデル案として述べたが、アジアのリーダー都市を目指す本市においては、福岡城、鴻臚館、博多町家など、ハード面の文化財活用と同時に、市内に点在する史跡などを通して、ソフト面ともいうべき歴史、文化、自然との営みの物語を前面にした活用も大切ではないかと感じている。市長の史跡活用への思いを尋ね、この質疑を終わる。
△市長 板付遺跡をはじめとした文化財は、福岡市の2000年を超える長い歴史の中で生まれ、今日に伝えられてきた貴重な財産である。また、文化財は福岡の歴史や文化の理解に欠かすことができないもので、将来の文化の発展、継承の礎をなすものであると考えている。本市はこれまで、鴻臚館や元寇防塁、福岡城などの史跡の保存や公開、また、博多旧市街プロジェクトの推進など、福岡・博多の歴史文化を分かりやすく発信し、ハード、ソフト両面から文化財の活用に取り組んできた。今後とも、市民が地域に対する誇りと愛着を持てるように、史跡の整備やイベントの実施など、さらなる活用を進めるとともに、地域が有する歴史、文化や自然などの魅力を磨き上げ、市民のみならず観光客にも情報発信するなど、都市の魅力や活力を高めることにつながるように取り組んでいく。