◯田原委員 公明党福岡市議団を代表して、学校に通う児童生徒の生理に関する対応について、誰もが気軽に外出できるユニバーサル都市・福岡に向けた車椅子貸出し事業について、子どもの貧困について、以上3点を質問する。初めに、学校に通う児童生徒の生理に関する対応についてである。1919年頃の女性が生涯に経験する月経回数は、出産や産後の授乳による無月経などにより、約40回程度であったものが、2019年頃の生涯月経回数は400回であるという報告もあり、約10倍程度に増加しているというデータがある。月経回数が増加すれば、月経痛などの随伴症状を経験する回数も増え、学校や職場などにおける日常生活への影響も増加することとなる。また、生理の貧困も社会問題となり、生理用品を購入できない女性への支援も広がっている。本市でも、アミカスのつながりサポート相談室にて、様々な困難や不安を抱える女性への相談事業や、生理用品の配布を行っている。では、令和4年度における主な相談内容、相談件数、生理用品の配布数、配布場所、つながりサポート事業の決算額について尋ねる。
△市民局長 つながりサポート相談室における主な相談内容は、性格や対人関係など自分自身に関する悩みや親子関係など家族に関する悩みであり、令和4年度の相談件数は516件である。生理用品については、1パック22枚入りのものを836パック配布しており、配布場所は、子ども食堂やマザーズハローワーク、アミカスなどである。また、つながりサポート事業の4年度の決算額は985万円余となっている。
◯田原委員 様々な支援や啓発もあり、生理の貧困が身近な問題と感じる人も多くなってきた。では、学校現場では、どのような対応をしているのか、本年6月13日に閣議決定された女性活躍・男女共同参画の重点方針2023において、女性の健康に関する理解の増進等が盛り込まれ、その中で、学校における健康教育の充実や教員の理解の促進などを図るための施策が記述されている。具体的には「児童生徒が月経随伴症状などの身体・健康上の理由によりやむを得ず学校を欠席する場合において、そのことのみをもって学習評価や入学者選抜において不利に取り扱われることがないように周知する」と記載されている。また、6月16日、文部科学省から、今後の高等学校入学者選抜等における新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえた配慮等について、各都道府県、各指定都市教育委員会教育委員ら宛てに発出された。調査書の活用などにおける留意事項として、入学志願者が本人に帰責されない身体、健康上の理由、すなわち病気や事故などにより、やむを得ず中学校などを欠席したと認められる場合に、月経随伴症状などを含む旨が明示されるとともに、高等学校入学者選抜における調査書については、入学者選抜の実施に真に必要な事項に見直しを図ることとされている。本市の市立高校の入学者選抜時に提出する調査書の様式は、どのように作成しているのか。
△教育長 福岡県教育委員会が毎年度10月頃に作成する入学者選抜要項に様式が示されるため、それに準じて作成している。
◯田原委員 では、令和5年春の入試で使用された調査書に欠席日数を記述する欄はあったのか。また、生理に伴う欠席によって入学者選抜で不利に取り扱われることはないのか。
△教育長 調査書に欠席欄の記載箇所はあるが、県立高校と同様に、入学者選抜要項において、修学上はなはだしい支障のない限り、等差をつける資料としないことを明示している。そのため、市立高校の入学者選抜においては、生理に伴う欠席の取扱いが受験生の不利になることはない。
◯田原委員 不利に取り扱われることはないとのことであるが、実際には内申が気になり、どれほど生理痛がつらい状況でも学校に行くという声や、自分の意思ではどうにもできない生理による体調不良のせいで欠席をすることは、女性だけが不利に感じるなどの声を聞いている。日本若者協議会とみんなの生理が学生を対象にした学校での生理休暇導入についてのアンケートでは、学校を休みたいと思ったことがあるにもかかわらず、68%が休むのを我慢している実態が明らかになった。休めなかった理由として一番多かったものが、成績や内申点に影響が出ると思ったという回答だった。入学者選抜が調査書の欠席欄に左右されないにもかかわらず、そのことを理解していない保護者、生徒が多いように思うが、保護者や生徒への周知はどのように行っているのか。
△教育長 入学者選抜要項の選抜の方法の記載の中に、出欠の記録を等差をつける資料としない旨を明示するとともに、中学校の教員に向けた説明動画を作成し周知しており、学級担任等を通じて保護者、生徒との三者面談等で説明している。また、市立高校や市教育委員会のホームページにおいても、入学者選抜要項を掲載しており、保護者や生徒に対する入試制度の理解促進に努めている。
◯田原委員 保護者や生徒のさらなる理解促進に向けてしっかり取り組んでほしいと思う。先ほど、本市の市立高校における入学選抜試験について尋ねたが、6月議会の教育こども委員会において、専門学科を有する市立高校の在り方検討についての報告を受け、少子化の影響などにより、多くの学科で募集定員割れや、低い倍率で推移している現状を聞いた。市立高校の入学志願倍率の直近5年間の推移について示されたい。
△教育長 市立高校全体での入学志願倍率であるが、平成30年度が1.40倍、令和元年度が1.26倍、2年度が1.12倍、3年度が1.16倍、4年度が1.17倍となっている。
◯田原委員 市立高校の特性を生かしつつ、魅力ある校風を受験生に知ってもらう必要があると思う。私自身も市立福岡西陵高校出身で、緑豊かで、広々とした校内、生徒を信じ見守り伸び伸び育ててくれる校風、熱心な先生に育んでもらい、かけがえのない高校生活を過ごした。福岡西陵高校は、全国に先駆けてICT教育を推進するなど、これまでの特色ある取組により進学実績を上げているが、入試制度の多様化、私立高校の授業料実質無償化などの影響で志願倍率は微減傾向にある。引き続き、市立高校の魅力化を図るとともに、中学生へ魅力を発信するための様々な改善にも取り組んでほしいと思う。そこで、入学者選抜の調査書の様式について、令和5年春の入試から、東京都、広島県では、調査書から欠席欄を削除している。また、既に大阪府、奈良県、神奈川県では欠席欄の削除を実施しており、改善が進んでいる。市立高校では、県立高校と同じ調査書を使用しているとのことであるが、欠席欄を削除するなど、市立高校独自の姿勢を打ち出してはどうか、所見を尋ねる。
△教育長 調査書については、市立4高校のみならず、中学校教員の負担軽減などの観点から、令和4年度から私立高校も県立高校と同じ様式を使用している。そのため、市立高校独自の調査書の導入は、複数の様式による調査書の作成と、提出先ごとに様式の確認が必要となる点で、中学校教員の負担が増えることや、入試手続が煩雑になることなどの課題があると考える。
◯田原委員 公立高校と私立高校の調査書を1つにまとめ、中学校教員の働き方を改善していく観点も大切であるが、様式についても改善を図っていくことが重要である。そこで、欠席欄を削除することを福岡県教育委員会などに提案すべきと考えるが、所見を尋ねる。
△教育長 既に欠席欄を削除している他府県等の事例も参考にしながら、福岡県教育委員会等と協議していくとともに、引き続き、欠席欄の取扱いについて、生徒、保護者へ周知していく。
◯田原委員 福岡県教育委員会等と協議していくとの答弁であった。ぜひよろしくお願いしておく。また、観点は変わるが、新たな休暇制度として、大分県別府市の公立小中学校では保護者が平日に子どもを休ませたいと申請すれば、年3日までは欠席扱いとせず、家族旅行などを楽しめるラーケーションが導入された。日本有数の温泉地である別府市は、観光業で働く市民が多いことから、通常の休日に保護者が休むことができないため、家族と過ごす時間を確保する目的などで創設されたとのことである。観点、目的は異なるが、家族との時間を有意義に過ごし、かけがえのない経験のために、休暇制度を導入することは大変画期的である。社会全体では、様々な企業でライフサポート休暇が取り入れられている。会社によって用途は様々であるが、生活に直結した事情や自己啓発、社会貢献などを行うときに利用できる、また、介護準備、不妊治療、そして生理による体調不良などの休暇として活用できる会社もある。では、市立学校の教員が家庭の事情や生理による体調不良などの際に利用できる特別有給休暇制度について、概要を尋ねる。
△教育長 特別有給休暇は、特定の事由に該当する場合に認められている休暇であり、子の看護休暇や短期の介護休暇、生理休暇などがある。
◯田原委員 教員には生理休暇があり、生徒にはそれに値する休暇がない。体の不調があるときに無理に出席する児童生徒への休暇があってもよいのではと考える。全国初の試みとなるが、本市で児童生徒が生理を理由に休んでも欠席とならないような制度を検討してもらえないか。また、生理に特化するだけではなく、児童生徒、家族の状況に合わせて学校を休んでも欠席とならない制度の創設について、本市の所見を尋ねる。
△教育長 指摘のような制度の創設については、市民からの様々な声が予想されるため、まずは他都市の先行事例を調査し、社会情勢の変化等を勘案しながら、実現の可能性について検討していく。
◯田原委員 児童生徒を取り巻く環境は刻々と変化している。ぜひよろしくお願いしておく。続いて、生理に関する学校などでの学習状況について尋ねる。生理に関しては学校でどのような学習が行われているのか、小学校、中学校での学習状況を尋ねる。
△教育長 学習指導要領に基づき、まず、小学校4年生の保健で、体は思春期になると次第に大人の体に近づき、体つきが変わったり、初経、精通などが起こったりすること、続いて、中学校1年生の保健では、思春期には内分泌の働きによって、生殖に関わる機能が成熟することなどを学習している。
◯田原委員 令和3年12月13日、文部科学省より「児童生徒等の月経随伴症状等の早期発見及び保健指導等の実施について」の事務連絡が発出されている。この通知の中で、月経に伴う諸症状を有する児童生徒を把握し、必要に応じて医療機関へつなぐことが適切であると示されている。そこで、本市では月経に伴う諸症状を有する児童生徒に対して、どのように取り組んでいるのか尋ねる。
△教育長 児童生徒から養護教諭などへ、月経に伴う諸症状について相談があった際には、必要に応じて保護者へ連絡し、医療機関の受診を促すなどの対応を行っている。また、生理も含め、健康上心配があることや、学校に配慮してほしいことがあるときは、あらかじめ緊急連絡カードに保護者に記入してもらうようにしており、適宜必要な配慮を行っている。
◯田原委員 大人になるまで、生理痛は我慢するもので病院に行ってよいと思わなかった、様々な対処方法があることを教えてもらいたかったなどの声も聞いた。月経症状が重い理由として、子宮内膜症等に原因がある場合に、症状を我慢することにより発見が遅れ、将来不妊につながるなど、人生に多大な影響を及ぼす可能性もある。現在、学校で様々な選択肢の提案や相談を受けることで早い段階から医療機関につなげるなどの対応を取ってもらい、大変ありがたい取組である。NHKシチズンラボによる生理リサーチの結果で、月経について学ぶ機会があったかとの設問に、男性の36%が授業を受けたことがないと回答している。男性側から正しい知識を教わりたかったという趣旨のコメントが多く、生理について学校教育で教わった記憶はない、実際に生理というものがここまで大変で、生活にも影響が出ると知らなかったとの回答もあった。また、日本財団が女性の生理をテーマにした調査を行った結果、生理について十分な知識があると感じている人は、男性が17.8%、女性が40.0%で、女性ですら5割に満たない状況である。女性でも腹痛をはじめとする症状に個人差があるため、知識を学ぶだけではなく、相互理解を深める機会が必要であると考える。なぜなら、いろいろな場面で生理痛くらいでという認識がまだまだあるからである。どの程度の痛みで、どのくらいつらいのか、そのようなときにどのようなサポートがあるとよいのかを想像し理解することや、これらの症状はいずれも自分でコントロールできないこと、生理が始まる前の不調はPMS、月経前症候群という事象であることなど、さらに踏み込んだ学習機会があることで将来の相互理解につながると考える。この項目の最後に、生理の相互理解に向けた教育現場での取組について、本市の所見を尋ねる。
△教育長 自分や他人を大切にする気持ちを育てる観点から、生理も含め、自己の体の変化や個人による発育の違いを理解し、互いを尊重し合うことができるようにすることは大変重要であると認識している。今後も、保健の学習等、様々な教育活動の中で、互いを理解し尊重する態度を育成していく。
◯田原委員 続いて、誰もが気軽に外出できるユニバーサル都市・福岡に向けた車椅子貸出し事業について尋ねる。6月に三重県志摩市で開催された先進7か国交通相会合で、主要課題について議論が行われた中、高齢者や障がい者など誰もが移動しやすい社会をつくるため、バリアフリー化の推進、実施の重要性が確認された。本市でも誰もが思いやりを持ち、全ての人にやさしいまちづくりを推進するため、平成25年4月に福岡市バリアフリー基本計画を策定、令和3年に改定し、計画が実施されている。そこで、本市におけるバリアフリーのまちづくり推進について、主な事業と令和4年度の決算額を尋ねる。
△福祉局長 バリアフリーのまちづくりについては、旅客施設や道路などの施設整備の基準や方向性などを示した福岡市バリアフリー基本計画に基づき、ハード、ソフト両面を一体的に推進している。福祉局における主な事業については、福岡市バリアフリー推進協議会の開催や広報誌「心のバリアフリー」の全戸配布、福岡市バリアフリーマップの保守管理などを行っており、令和4年度決算額は650万8,000円余となっている。
◯田原委員 ハード、ソフトの両面からバリアフリーを推進していることが分かった。では、本市のホームページに掲載の福岡市バリアフリーマップについて、どのような目的で、どのような内容を掲載しているのか尋ねる。
△福祉局長 福岡市バリアフリーマップについては、誰もが安心して気軽に外出できるよう、市内の公共施設や公共交通機関、飲食店などの施設におけるバリアフリー情報を掲載したホームページを作成し、公表しているものである。
◯田原委員 ホームページでは自身の状況や目的から行きたい施設を検索できるなど、利用しやすい内容である。車椅子を利用する人の中には高齢者もいる。本市における100歳以上の人も本年9月15日で943人となり、平成17年では254人であった100歳以上の人口が大きく増加している。そこで、本市の高齢者数の直近5年間の推移について尋ねる。
△福祉局長 65歳以上の高齢者数については、3月末現在の住民基本台帳登録人口によると、平成31年は33万2,789人、令和2年は33万8,864人、3年は34万4,721人、4年は34万9,018人、5年は35万2,063人となっている。
◯田原委員 高齢人口も5年前から2万人程度増加している状況である。多様な利用実態に応じた柔軟かつ合理的なバリアフリー化について、さらに進めていく必要が考えられる。では、高齢者の外出頻度や、外出する上での困り事の声について、どのように把握しているのか尋ねる。
△福祉局長 令和4年度に実施した高齢者実態調査によると、高齢者の外出の頻度は、ほとんど毎日が44.1%、週4~5日が20.9%、週2~3日が22.6%、週1日が5.8%、ほとんど外出しないが5.7%となっている。また、外出の際に困っていることは、多い順に、自転車や車などのマナーが悪いが20.9%、バス停に屋根やベンチなどの待合施設がないが15.3%、移動の途中に利用できるトイレが少ないが11.8%、歩道にベンチなどの休憩施設が少ないが11.7%、道路や歩道に段差があるため歩きづらいが10.1%などとなっている。
◯田原委員 外出に際し、困り事が様々あることが分かった。高齢者にとって、外出一つ取っても私たち世代が考える以上に体の負担が大きいのではないか、高齢者が外出しやすいまちづくりについて本市の取組を尋ねる。
△福祉局長 福岡市バリアフリー基本計画に基づきバリアフリーの推進を図っているほか、誰もが気軽に安心して外出できる環境づくりのため、官民連携してベンチの設置を推進している。
◯田原委員 様々な取組を実施している。一方で、本市の高齢者から、「コロナ禍で外出を控えていたが、天神に出かけたい。コロナ中、足腰が弱ってしまい、長時間の歩行に不安がある」との声や、介護施設に勤める人から、「ショッピングや外出が生きがいという高齢者が多くいる。気軽に借り、返却ができる車椅子サービスがあれば、さらに高齢者の外出支援にもつながる」とまちづくりへの期待を聞いた。本市でも、車椅子の貸出しは、公共施設や民間の商業施設などで行われているが、それぞれの施設で車椅子を借りては返しをしなくてはならない状況である。他都市の取組として兵庫県神戸市では「KOBEどこでも車いす」施策を実施し、観光などでまちなかを移動する際、市内12か所のどの拠点でも借りることができ、かつ返却もできる車椅子貸出しを実施している。コロナ前は年間1,000件前後の利用実績があり、利用者からのお礼の声も多数届いているとのことである。また、神奈川県横浜市では、電動車椅子「WHILL」の無料貸出しを行う実証実験を行い、ユニバーサルツーリズムの普及、促進の観点から、誰もがアクセスしやすくなるまちづくりに取り組んでいる。5か所で車椅子の貸し借りができ、国内外からのお客様のおもてなしや、超高齢社会に対応できるように整備されている。本市でも、バリアフリーマップ、車椅子利用者おでかけマップなどにより、高齢者や障がい者に向けた情報発信を行っている。車椅子を必要とする人の中には、観光で福岡に来る人もいる。全ての人が楽しめるようつくられた、高齢や障がいなどの有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指すユニバーサルツーリズムの取組について観光庁でも取り組んでいる。このため、ユニバーサルツーリズムの観点から、車椅子利用者も楽しめる観光の取組について尋ねる。
△経済観光文化局長 年齢や障がいなどの有無にかかわらず、全ての人が楽しめるユニバーサルツーリズムの取組は重要であると認識しており、MICE参加者向けの福岡MICE体験プログラムガイドにおいて、博多人形絵付け体験など、車椅子利用者にも楽しんでもらえる様々なプログラムを提供している。また、令和5年度は、福岡観光コンベンションビューローが福岡市社会福祉協議会と共働し、観光案内ボランティアによる車椅子利用者向けのまち歩き案内を博多旧市街エリアにおいて試行的に実施している。
◯田原委員 観光庁がユニバーサルツーリズムの普及状況や課題について、障がい者、高齢者にアンケート調査を実施している。旅行の行程で不便や困難があったかを問う設問で、障がい者からは、車椅子が少ない、車椅子などの手配が不便であったという回答があった。高齢者からは、歩行が困難、歩行距離との回答で、観光時の車椅子貸出しの必要性が挙げられている。こうした不安が解消され、潜在的市場規模が実現した場合、金額ベースで8,881億円の国内旅行消費額が増加するとの試算も同調査で発表されている。本市でも、観光地エリアを整備するとともに、旅行に感じる不便を解消することで、多くの人に選んでもらえるユニバーサル都市・福岡を実現できるのではないか。そこで、本市でも神戸市や横浜市のように、民間事業者等と連携し、車椅子を貸出し返却できるサービスを実施してはと考えるが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 市内では、公共施設や民間の商業施設など、多くの施設で車椅子の貸出しサービスが行われているものと認識している。指摘のようなサービスも含め、観光客のニーズや民間事業者の意見、他都市での取組状況を聞きながら、ユニバーサルツーリズムの観点を踏まえた施策の充実を図っていく。
◯田原委員 来街者にとって、福岡が過ごしやすい、優しいまちであったと感じてもらえるよう、また、市民にとっても、福岡100でもうたわれる、誰もが心身ともに健康で自分らしく活躍できるまちであるよう、ぜひ取組をお願いしておく。この項目の最後に、高齢者や障がい者、来街者など、誰もが移動しやすいバリアフリー社会の実現に向けて、市長の所見を尋ねる。
△市長 全ての市民が年齢や性別、障がいの有無などによって分け隔てられることなく共生できる環境整備を進めることは重要であると認識している。本市では令和3年12月に改正した福岡市バリアフリー基本計画に基づき、施設のバリアフリー化、心のバリアフリーの推進など、ハード、ソフト一体的なバリアフリー化を官民連携して進めている。今後とも、「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」の実現に向け、全ての人にとって暮らしやすいまちとなるように、しっかりと取り組んでいく。
◯田原委員 続いて、子どもの貧困について質問していく。本年6月に発表されたこども未来戦略方針の中で、「こどもの貧困対策は、我が国に生まれた全てのこどもの可能性が十全に発揮される環境を整備し、全てのこどもの健やかな育ちを保障するという視点のみならず、公平・公正な社会経済を実現する観点からも極めて重要である。こどものいる世帯の約1割はひとり親世帯であり、その約5割が相対的貧困の状況にあることを踏まえれば、特に、ひとり親家庭の自立と子育て支援は、こどもの貧困対策としても喫緊の課題であると認識する必要がある」とうたわれている。令和4年3月、福岡市子どもの生活状況に関する調査報告書の中で、平日の朝食摂取状況の調査を実施し、市立小学校に在籍する全小学6年生の保護者へアンケートをした結果、毎日朝食を食べていない児童が6.2%、世帯収入別に見ると、収入300万円以下の家庭では毎日朝食を食べていない児童が14.9%に上る。また、同調査を世帯状況別に見ると、ひとり親家庭では16.5%に上るという結果であった。状況や事情はそれぞれの家庭で様々ではあるが、福岡市子ども総合計画の中でも、「子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、すべての子どもが心身ともに健やかに育成され、その教育の機会均等が保障され、子どもひとり一人が夢や希望を持つことができるようにするため、子どもの貧困の解消に向けて、子どもの貧困対策を総合的に推進する」とあり、子どもたちが今日食べるものにも困る、1人での食事ではなかなか食が進まないなどの課題を何とか解決したいと誰しも願っていると考える。そこで、本市における子どもの貧困対策の方向性について尋ねる。
△こども未来局長 子どもの貧困対策については、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境に左右されることのないよう、教育の支援、生活の安定に資するための支援、保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援など、様々な方面から取り組み、総合的に施策を推進している。
◯田原委員 支援の方向性について確認できた。では、生活の安定に資するための支援として、どのような支援があるのか尋ねる。
△こども未来局長 いわゆる子ども食堂を支援する子どもの食と居場所づくり支援事業や、貧困の状況にある子どもを支える地域ネットワーク構築事業、ひとり親家庭への支援などを行っている。
◯田原委員 特にひとり親家庭は様々な困難を抱える人が多い状況である。そこで、ひとり親家庭に対する自立に向けた支援について、令和4年度の決算額、実績、利用者への周知方法について示されたい。
△こども未来局長 自立に向けた支援については、ひとり親家庭の生活の安定と向上のために、ひとり親家庭支援センターでの就業相談や、講習会の実施などのほか、自立に向けた就業に必要となる資格を取得する間の生活の経済的支援や、養育費の取決めに必要となる費用の支援などを実施しており、令和4年度の決算額は2億6,912万円余となっている。主な実績は、就業相談が2,144件、自立支援給付金事業における助成件数が199件、養育費確保支援事業における助成件数が174件である。また、周知については、ひとり親家庭向けポータルサイト「たよって」やひとり親家庭ガイドブック、ひとり親家庭支援センターや市のホームページなどにより行っている。
◯田原委員 令和4年3月の福岡市子どもの生活状況に関する調査報告書によると、習い事をしていない家庭の割合が全体では15.6%であったが、収入300万円以下の家庭では35.2%、ひとり親家庭では31.3%となっており、これらの家庭で子どもの体験活動が不足していることが分かる。子ども習い事応援事業クーポンの令和4年度の決算額、利用率について尋ねる。
△こども未来局長 子ども習い事応援事業は、生活保護または児童扶養手当受給世帯の小学5年生~中学3年生を対象に月額1万円の電子クーポンを交付し、習い事費用の助成を行っている事業であるが、令和4年度決算額は約2億1,156万円、クーポンの利用率は21.6%となっている。
◯田原委員 さらに多くの家庭で利用してほしいと考える。利用率の向上に向けてどのように取り組んでいくのか尋ねる。
△こども未来局長 令和4年度は対象者の約45%がクーポンの利用に当たっての申請を済ませたものの、利用はその半数となっているため、アンケートにより利用していない理由を調査している。その結果、利用したい教室がクーポン利用可能な教室として登録されていないとの回答が大半であったことから、まずは登録教室の増加に向けて、教室の開拓を強化するなど、利用率向上に向けて取り組んでいる。
◯田原委員 子どもの学びたいとの思いが実現できるよう、ぜひよろしくお願いしておく。次に、教育現場において、生活が困窮しているなどの理由で、支援が必要な児童生徒や家庭に対して、実際に支援を行っているのは誰なのか尋ねる。
△教育長 当該児童生徒にとって、最も身近な存在である学級担任や、教育や福祉の専門的知識、技能を持つスクールソーシャルワーカーが中心となって対応している。
◯田原委員 児童生徒の相談にはスクールソーシャルワーカーが対応しているとのことである。では、本市の令和4年度のスクールソーシャルワーカーの人数や配置状況を示されたい。
△教育長 79人のスクールソーシャルワーカーを全ての市立学校に週1~2日配置している。
◯田原委員 先日、小学校で学校生活支援員をしている人から、保護者に福祉の支援を案内しても断られたり、提案を受け入れてもらえなかったりすることがあるという話を聞いた。せっかくの福祉の支援が子どもにまで届かない現実があることに心を痛めている様子であった。このように、対応に苦慮する家庭をどのように福祉の支援につなげているのか尋ねる。
△教育長 まず、学級担任等が状況を把握した上で、管理職やスクールソーシャルワーカー等と協議しながら、教員と多様な専門性を持つ職員がチーム学校として対応しており、そのうち虐待の疑いがある場合など、関係機関との連携が必要と考えられる場合は、区役所の担当者等を含めたケース会議を行うなどして、必要な支援につなげている。
◯田原委員 ぜひ1人でも多くの子どもたちが本市の支援で今の困難を脱却できるよう、大変な対応かと思うが、よろしくお願いしておく。また、学校に水筒を持ってくることができない子どももいるとさきに話を聞いた人が言っていた。大阪府泉南市ではふるさと納税を活用し、児童生徒の夏季における熱中症対策として市立小中学校にボトル給水型の冷水機を設置し、大阪府寝屋川市でも、市立の全小中学校に直結式給水の冷水器を設置するおいしい水のみ場事業を上下水道局と教育委員会が連携し進めているとのことである。水筒を持ってくることができない子どもは、本人の生活習慣が十分に身についていない、あるいは保護者からのサポートを十分受けることができていない可能性があるように思う。水筒を持参しない児童生徒への生活指導や保護者への働きかけを行うとともに、給水スポットなどの環境整備を検討するなど、子どもたちをしっかり支援してほしいと思うが、所見を尋ねる。
△教育長 水筒を持参していない理由は様々であるため、学級担任等が児童生徒や保護者から聞き取った事情を基に、個別に声かけをする等の働きかけを行っているところであり、今後も児童生徒の状況に応じて適切に対応していく。また、各学校では安全に飲むことができる水道水を供給しており、今後の環境の整備については、引き続き他都市の状況などを調査し検討していく。
◯田原委員 校区によっては貧困家庭、ひとり親家庭が多く、朝食を取れていないため、午前は授業に集中できない子どもも多い現状があると聞いた。そのような中、地域での子ども食堂、子どもの居場所づくりが大変重要であると考える。子どもの食と居場所づくり支援事業について、令和4年度の決算額、今年度の変更点について尋ねる。
△こども未来局長 令和4年度は子ども食堂への補助を行い、決算額は677万円余となっている。5年度は子ども食堂への補助上限額や補助率の引上げなど、助成を拡充したほか、新たに、活動場所の拡大に向けた子ども食堂開催場所等マッチング支援事業を実施している。
◯田原委員 今年度からさらに事業が充実している。では、子ども食堂開催場所等マッチング支援について尋ねる。
△こども未来局長 子ども食堂が抱える開催場所や食材保管場所の不足などの課題を解決するため、そのような場所に活用できる空きスペースを広く募集し、活用を希望する運営団体とのマッチングを支援するものである。
◯田原委員 子ども食堂の開催場所や食材保管場所が増えることで、さらに支援の手が届く範囲が広がると考える。では、子ども食堂の開催場所として想定される場所はどのようなところがあるのか尋ねる。
△こども未来局長 開催場所については運営団体によって様々あるが、本市の補助交付団体においては公民館や飲食店などが多く見られる。マッチング支援においては、例えば、休業日の店舗や施設、営業時間外の広場や駐車場など、基本的には民間企業や施設等が保有する空きスペースを想定しているが、公的施設や個人などが保有するスペースも広く対象としたいと考える。
◯田原委員 公民館で子ども食堂を実施している校区も多くあると聞いているが、そのメリットを尋ねる。また、本市が目指す子ども食堂の在り方について尋ねる。
△こども未来局長 公民館は、世代を問わず地域住民の身近な交流拠点であり、地域に広く認知されている、調理設備が備わっているほか、子どもでも行きやすいなどの理由から、多くの子ども食堂が開催場所として活用していると考える。子ども食堂は温かい食事の提供に加え、子どもたちを地域で見守り支えるための居場所として重要な役割を果たしており、本市としては、引き続きその支援を継続することで、それぞれの活動が充実、拡大していくことを目指している。
◯田原委員 他都市の取組では、大阪府泉佐野市では朝食を食べずに登校している子どもたちが少なくないことから、子どもたちが朝御飯を取る生活習慣をつけ、子どもたちの学習や成長を支えることを目的とし、こども朝食堂の実証実験を実施している。各校1回当たり約50食を提供し、申込み、利用料とも不要で、運営はNPO法人に委託している。実証実験は本年2月から2つの小学校で実施されたが、9月からは実施校を4校に拡大している。当初は、経済的支援の要素が強かったそうであるが、コロナ禍で孤食や黙食を余儀なくされていた子どもたちが会話をしながら朝食を楽しむ場になっているとのことである。朝食を取れていない子どもの午前中の集中力が欠けるということは、その時間に得られる知識がつかない可能性がある。学習の遅れは、不登校や将来の進路選択にも関わってくる。いまだかつてないパンデミックを経験した子どもたち、そして子どもを抱える保護者は、生活が脅かされ、本来子どもと過ごすことのできた時間を失い、子どもにかけられたはずの経験も積ませてあげられていない状況だったのではないか。現在、本市で進める子ども食堂開催場所等マッチング支援が充実し、子ども食堂の開催回数が増えることを期待するが、一刻も早く今困っている子どもたちに支援が行き届く必要があると考える。本市でも、モデル事業的に小学校での子ども朝食堂の実施や、子ども食堂開催場所等マッチング支援を活用し、小学校や公民館など、子どもが行きやすい場所での食料配布が実現できないか、所見を尋ねる。
△こども未来局長 子ども食堂は、各地域の実情に応じて、運営団体と施設等の合意の下で開催されるものであり、小学校や公民館なども同様であると考える。運営団体と施設等の合意に当たっては、施設管理上の課題への対応や、双方の十分な協議、関係者の理解などが必要であることから、マッチング支援なども活用しながら、多様な場所で子ども食堂が実施されるよう、必要な支援を行っていく。
◯田原委員 ある地域の公民館で子ども食堂を実施した際、参加した小学生から、映画館にも、動物園にも行ったことがないという話を聞いた地域の人が、自分たちが何をしてあげられるだろうかと真剣に話をしていた。地域全体で子どもを見守り支え、育てる、様々な人が子どもに関わる重要な機会となり、そこから子どもへの理解、支援につながると考える。ぜひ支援をよろしくお願いしておく。この質問の最後に、全ての子どもたちが生まれ育った環境に左右されず、将来に夢を描ける福岡市を目指して、子どもの貧困対策にどのように取り組んでいくのか市長の所見を尋ね、質問を終わる。
△市長 子どもはその一人一人が未来をつくっていくかけがえのない存在であり、全ての子どもたちが自分の夢や希望に向かって進んでいけるように、経済的に困難な状況にある子どもと家庭を支援していくことは大変重要なことであると認識している。これまでも本市は子どもの食や習い事に関する支援、ひとり親家庭の自立支援、教育の支援など、様々な方面から総合的に支援を行ってきたところであり、令和5年度からは子ども食堂への補助を拡充するなど、各施策の充実にも取り組んでいる。今後とも、子どもたちが自分らしく生き生きと輝き、生まれ育った環境に左右されず、将来に夢を描きながら、心身ともに健やかに成長していけるまちづくりをしっかりと進めていく。