◯楠委員 公明党福岡市議団を代表して、新公会計制度の活用について、特別支援学校高等部卒業生の進路について、2点質問する。最初に、新公会計制度の活用についてである。本市の決算内容を説明する書類は、事業の目的別に計上され、現金の動きが分かりやすい1か所だけ記録をする単式簿記で表されている。行政サービスが発生した時点で、費用などをマイナスとプラスに分けて表す発生主義、複式簿記の会計制度は世界中が取り入れ、日本だけが大幅に遅れていた。我が会派も、行財政改革の推進のため財政の見える化を進めるよう、平成27年度の代表質問から新公会計制度の導入、それに伴う数値の活用を訴えてきた。まずは、新公会計制度とはどのようなものか尋ねる。
△財政局長 新地方公会計制度については、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提として、貸借対照表や行政コスト計算書などの財務書類を全国統一的な基準で作成、活用する仕組みである。平成27年1月の総務大臣通知において、全ての地方公共団体での実施が求められており、本市では、平成28年度決算から統一的な基準による財務諸表を作成、公表している。
◯楠委員 答弁のあった統一的な基準による財務諸表を作成する目的を尋ねる。
△財政局長 財務書類を作成する目的については、発生主義、複式簿記といった企業会計的手法によってストック情報、フロー情報を相対的、一覧的に把握することで、現金主義会計を補完し、市民や議会に対する財務情報の分かりやすい開示や、財政運営、政策形成を行う上での基礎資料として、資産、債務管理や予算編成、政策評価などに有効に活用することである。
◯楠委員 資産や債務の管理、政策評価に活用するとの答弁であった。それでは先に、本市の財政状況の特徴と課題を尋ねる。
△財政局長 公会計制度から分かる本市の特徴としては、令和2年度末時点の一般会計等の負債の総額は約1兆5,606億円と、施設が比較的新しいため他都市と比べて多いものの、資産の総額は約3兆2,190億円と負債の倍以上ある。近年の傾向としては、負債の主な内訳である市債の減少に伴い負債額は減少を続ける一方で、学校や市営住宅の建築、大規模改修などに伴って資産額は増加している。
◯楠委員 本市は、総額として2倍以上の資産、財産を持ち、負債、借金も多いことが特徴であるとの回答であった。では、人口推計や社会保障関係費の伸びなど一定の条件を前提に、本市はどのような財政の見通しなのか尋ねる。
△財政局長 本市の財政の見通しについては、令和3年6月に策定した財政運営プランにおいて、少子高齢化の進展などによる社会保障関係費の増加や、公共施設等の改修、修繕に係る財政需要の増大、公債費の高止まり等が見込まれており、楽観できない状況が続くことを見込んでいる。
◯楠委員 楽観できない状況の中、無駄をなくし効率化を図るため、先ほどの財務諸表の活用は欠かせない。本市の統一的な基準で作成されている財務諸表とはどのようなものがあるのか示されたい。また、その活用についても尋ねる。
△財政局長 財務書類をそれぞれ説明すると、貸借対照表については、基準日時点における資産や負債の内容などの財政状態を表示したものである。行政コスト計算書については、1会計期間中の費用、収益の取引高を表示したものである。純資産変動計算書については、1会計期間中の純資産の変動を表示したものである。資金収支計算書については、1会計期間中の現金の受払いを活動区分ごとに表示したものである。作成した財務書類の活用については、市民や議会、投資家等の市場関係者向けに本市の財務状況を分かりやすく示すものとして、福岡市の財務書類のポイントなどを作成、公表している。また、予算編成時において、現金会計では把握できない財務指標を参考指標とするなどしており、財政規律と投資のバランスが取れた財政運営に向けて活用を図っている。
◯楠委員 答弁のあった4つの書類、財務4表と、その基礎名簿となる固定資産台帳の作成に関わった年度から令和3年度までの決算額の推移を示されたい。
△財政局長 財務書類及び固定資産台帳の作成に係る決算額の推移については、公会計システムの関連経費及び公認会計士からのアドバイザリー契約等の経費として、平成29年度2,358万8,000円、30年度1,524万8,000円、令和元年度1,621万1,000円、2年度1,614万2,000円、3年度1,183万5,000円となっている。
◯楠委員 新しいシステム購入など、8,000万円以上の予算を使って、現金会計、単式簿記では把握できない重要な指標を持った4つの書類、財務4表が作成された。令和3年度決算による財務4表の公表はいつになるか。また、2年度はいつ公表されたか尋ねる。
△財政局長 令和3年度決算分の財務書類の公表については、総務省研究会の報告書で示されているとおり、4年度末までの作成、公表を予定している。また、2年度決算分については、3年度末に作成、公表している。
◯楠委員 答弁があったように、今行われている令和3年度決算審議に当たって3年度の財務4表は手元にない。また、その前年度、2年度の財務4表は今年の3月28日に公表された。今年の2月から始まった新年度予算審議は3月24日に終了したが、前年度の財務4表が私の机に届いたのは3月31日であった。毎年毎年、決算時にも予算審議のときにも、前年度の財務4表が私たちの手元に届くことはない。先ほどの総務大臣通知には、予算編成等に積極的に活用されるよう特段の配慮をお願いすると記載されている。なぜ財務4表が役に立たない書類となっているのか、なぜ予算審議にさえ間に合わないのか、理由を尋ねる。
△財政局長 財務書類については、9月期など決算時期がそれぞれ異なる外郭団体等を含めた財務書類が必要となることや、現金主義会計で作成された決算書類を発生主義、複式簿記に改めるために多くの作業が必要となるため、年度末での作成、公表を行っている。なお、総務省研究会の報告書においても、決算年度の翌年度末までに完成させることとされている。
◯楠委員 財務書類の作成は、忙しい時期の大変な作業であるのは認識している。しかし、全ての政令都市ではないが、更新していない古い財務システムのままで、職員の努力により前年度の財務4表を9月の決算審議に間に合わせている都市がある。神戸市と横浜市である。本市よりも6か月早く作成された財務諸表を基に、財政と事業の評価ができている。本市も実際に活用できる財務諸表として、作成日の前倒しに取り組むべきと考えるが、所見を尋ねる。
△財政局長 本市が財務書類の作成に活用している財務システム、予算決算システム、公会計システム、固定資産台帳システムはそれぞれが独立しており、財務書類の完成までに多大な時間や手作業が発生している状況となっている。こうした状況を受け、現在これらが一体となったシステムを令和6年度当初の稼働に向けて構築しているところであり、これによって財務書類作成のスピードアップを図るとともに、公表の時期について検討していく。
◯楠委員 それでは、財務4表の貸借対照表に計上されている数値を尋ねる。1年を超えて返済時期がやってくる負債、借金である固定負債の中で、長期未払金とその他という項目がある。115億円と262億円の計上となっており、他都市と比べて大きな金額となっている。その内訳、明細を示されたい。また、その傾向、特徴も併せて尋ねる。本来であれば、令和3年度の数値を聞きたいが、残念ながら2年度の数値で尋ねる。
△財政局長 長期未払金約115億円の内訳については、主に施設整備公社が児童生徒数の増加等を踏まえた学校校舎の立替え施行をしたことによるもので、照葉北小学校約38億円、平尾小学校約16億円、西都小学校約12億円、千早小学校約12億円などとなっている。立替え施行により、財政負担の平準化のほか、児童生徒数の増加を踏まえた国庫負担金の増加確保を図っている。次に、負債のその他約262億円の内訳については、主にPFI事業によるもので、総合体育館整備運営事業約84億円、学校給食センター整備運営事業約78億円、科学館整備運営事業約32億円、第2期展示場立体駐車場整備事業約21億円などとなっている。PFI事業の活用により、民間事業者のノウハウを生かしたサービスの向上やコストの低減、民間資金の活用による負担の平準化を図っている。
◯楠委員 貸借対照表を作成することによって、ある時点におけるたまっているもの、積み重なっているものが把握できるようになる。本市は、PFI事業を含めた債務負担行為で確定している負債、借金等が370億円と多いということである。財政規模がほぼ同じ神戸市の4.2倍に当たる。市債の返済も多いが、債務負担行為の返済も多い。他都市にはない特徴だと思う。この数値は、一般会計だけでなく、特別会計、企業会計を含めた全体の貸借対照表でも、外郭団体を含めた連結の貸借対照表でも、如実にその特徴を表している。次に、財務4表の貸借対照表から分かる数値を尋ねる。データから出てくる数値は、客観的な事実を表す。実態の全てを表すものではないが、数値と数値を重ね合わせることにより、財政の特徴と課題が見えてくる。今までの決算審議では、健全化比率などの数値のみを尋ねてきたが、新しい会計になっての数値を尋ねていく。本市の市民1人当たりの資産額は幾らで、政令都市比較で何番目になっているか尋ねる。
△財政局長 一般会計等における市民1人当たりの資産額については、比較可能な令和2年度では約206万円で、20政令市中高いほうから11番目となっている。
◯楠委員 行政サービスが発生した時点で、費用などをマイナスとプラスに分けて表す発生主義、複式簿記の会計処理があって、初めてこの資産額の数値が出てくる。それでは次に、市民1人当たりの負債額は幾らで、政令都市比較で何番目になっているか尋ねる。
△財政局長 一般会計等における市民1人当たりの負債額については、令和2年度では約100万円で、20政令市中高いほうから5番目となっている。
◯楠委員 最初のほうで、本市の財政状況の特徴を尋ねた。総額として2倍以上の資産、財産を持ち、負債、借金も多いことが特徴であるとの回答であった。しかし、市民1人当たりにすると資産額は20政令市中11番目と、決して多くはなく、どちらかといえば少ないほうである。逆に、負債額は20政令市中5番目と、明らかに多いと言える。この2つの数値から分かる本市の特徴は、1人当たりの資産、財産は少なく、負債、借金は多いということではないだろうか。もう一つ尋ねる。資産から負債を引いた純資産比率は幾らで、政令都市比較で何番目になっているか。
△財政局長 一般会計等における純資産比率は、令和2年度では51.5%で、20政令市中高いほうから13番目となっている。
◯楠委員 この数値は、過去及び現代の市民の負担によって、将来も利用可能な資源が蓄積していることを意味する。数値が高ければ、将来世代に負担をかけることがないが、政令市の中で13番目と、残念ながら低くなっている。もう一つ尋ねる。社会資本等形成の世代間負担比率は幾らで、政令都市比較で何番目になっているか。
△財政局長 一般会計等における世代間負担比率は、令和2年度では37.2%で、20政令市中高いほうから5番目となっている。
◯楠委員 この数値は、社会資本、インフラに係る将来世代の負担の程度を把握することができる。数字が高ければ、将来の負担が大きいことになる。政令市の中で5番目に高く、先ほどの将来世代による負担割合の数値の裏づけとなる数値である。財務4表の数値から分かる本市の特徴としては、1人当たりの資産、財産は他都市と比べて少なく、借金である負債は多い、将来使える返済が終わった資源、インフラは少なく、逆に必要なインフラに係る将来の人の負担が大きいということである。本市の統一的な基準による財務諸表が表す貴重な数値を市民に分かりやすく説明し、他都市と比べてどのような特徴があるのか開示すべきと考える。先ほども述べたが、神戸市は既に令和3年度決算による財務4表を公表し、そこから算出される数値を他都市と比較し、経年比較しながら、客観的な財務方針として市民や議会に説明している。本市の財務4表の公表は、数値と数値を重ねた分析を交え、市民や議会に分かりやすい内容となるよう要望するが、所見を尋ねる。
△財政局長 本市においては、都市基盤、生活基盤を積極的に整備した結果、他都市と比べて市債残高は高水準となったが、その後プライマリーバランスに配慮した財政運営を行い、令和3年度決算では実質的な市債残高は、平成16年度のピークから約1兆円減少し、市民1人当たりでは36年ぶりに100万円を下回っている。その結果、健全化判断比率である将来負担比率も大きく減少しており、こうした状況を財政のあらましなどで市民や議会に分かりやすく広報している。また、財務書類の公表については、福岡市の財務書類のポイントを作成し、財務4表の解説や純資産比率などの財務指標の紹介、年度間の比較などの解説を行っている。委員の指摘も踏まえつつ、今後とも様々なタイミングを捉え、市民、議会向けの財政状況の広報に取り組んでいく。
◯楠委員 財務4表のうち、職員の給与、退職手当引当金、減価償却費など、全ての経費が計上された行政コスト計算書というものがある。市民1人当たりの行政コスト額が算出され、数値が高ければ無駄が多いということになり、低ければ行政サービスが足りていないということにもなる。本市の数値は、政令市中、真ん中ほどで推移しているようである。この行政コストを全体会計で表すだけでなく、施設別や事業別の数値として、細かい単位で財務書類を作成することができれば、行政評価や財政の最適化を図ることができると考える。そのようなことは可能なのか尋ねる。
△財政局長 施設別、事業別の行政コストについては、本市の現行の公会計システムにおいては、行政コスト計算書の作成に当たり、決算額を一括して集約しているため、施設別、事業別とするには、各種の決算資料や固定資産台帳などを改めて手作業で集計する必要があるなどの課題があるが、作成すること自体は可能である。
◯楠委員 これは大分県の施設別の財務諸表である。財務4表を基に作成され、施設ごとの状況を資産、負債も含めて分かりやすく説明するとともに、維持管理コストの経年比較などを通じて、効率的な運営につなげている。記載されている前半の4つの施設が指定管理者、後半の4つが直営施設となっており、費用と収益を全て反映した行政コストの額も記載されている。指定管理者が適正な運営をしているか、直営施設に無駄がないのかが一目で分かる。大分県はやっていないが、ここに施設利用者1人当たりのコストを記載することも可能である。このように、本市も重要な幾つかの事業に範囲を定めて、求められれば財務4表を活用した細かい単位での財務書類の作成に取り組むべきと考えるが、所見を尋ねる。
△財政局長 施設別の財務書類の作成については、人口減少などのそれぞれの自治体の課題を踏まえ、財務書類を活用した施設別のコスト比較などを行い、管理手法の見直しや事業、施設の統廃合につなげるなど、目的に応じて実施している事例が多いものと承知している。本市においては、現在も人口が増加している状況ではあるが、財務書類を活用した財政のマネジメント強化について、他都市の状況なども参考にしながら今後検討していく。
◯楠委員 先日、東京町田市を訪問し、新公会計制度の活用を調査してきた。人口43万人の、規模として本市の4分の1の都市である。財政に対する危機感を持って、10年前の平成24年から、毎日会計システムに入力する日々仕訳を導入し、238事業の細かい単位での財務書類、行政評価シートを作成することが可能となった。資産、負債、コストが書かれた行政評価シートを活用した予算編成での効果としては、毎年70件以上の取組の削減、拡充が行われ、予算反映額も10億円を超えていた。効果として驚いたのは、毎日会計システムに入力する職員の行政改革に対する意識の向上を一番に挙げていたことである。また、もう一つの目的である行政事業のフルコストの見える化で、市民に対する説明責任を果たしていこうということだった。これは、市民に配布される資産、負債、行政コストをまとめた評価シートのダイジェスト版である。学童保育事業から市営住宅事業までピックアップされた14の事業が掲載され、丁寧な説明がなされている。このダイジェスト版を使って、市民の代表と毎年市政説明会が開催されていた。最近は、高校生との市政懇談会も開催されている。市民のほうが貸借対照表のことをよく理解しており、無駄の削減に興味を持っているとのことであった。本市も財政の見える化に努力してもらい、市民への説明責任をいま一層進めながら、財政健全化に取り組むべきと要望しておく。最後に、市長の所見を尋ね、この質問を終わる。
△市長 市政の推進に当たっては、財政に関する情報を分かりやすく発信し、市民と行政が一体となって取組を進めていくことが重要であると考えている。本市においては、令和3年度決算では、実質的な市債残高は、平成16年度のピークからおよそ1兆円減少し、市民1人当たりでも36年ぶりに100万円を下回るとともに、将来負担比率は大きく減少するなど、財政健全化に取り組んできたところである。今後とも、財政規律と投資のバランスが取れた市政運営を行うことで、市債残高の縮減など財政健全化を図りながら、都市の成長と生活の質の向上の好循環を創出するまちづくりに取り組むとともに、財政状況の積極的な広報を行っていく。
◯楠委員 次に、特別支援学校高等部卒業生の進路についてである。令和3年度文部科学省の学校基本調査によると、幼稚園、小学校、高等学校と、在籍者数は軒並み減少しており、中学校もほぼ横ばいが続いている。社会全体では、確実に少子化に向かっていることは明確である。多くの学校機関で減少傾向が示されている中、唯一過去最高の在籍者数を更新している学校がある。特別支援学校である。本市においても、新たな特別支援学校高等部の設置が発表されているところである。最初に、本市特別支援学校の20年前と現在の児童生徒数を尋ねる。同じく、特別支援学級の児童生徒数も併せて尋ねる。
△教育長 特別支援学校の児童生徒数は、20年前の平成14年度が973人、令和4年度が1,851人、特別支援学級は、平成14年度が595人、令和4年度が3,738人となっている。
◯楠委員 支援学校の児童生徒数は約2倍、支援学級の児童生徒数は約6倍に増加している。障がいのある生徒は、学校卒業後の将来の自立と社会参加に不安を抱えながら、高等部の入学準備を進めている。最初に、入学に関することを少し尋ねる。本市の特別支援学校の入学選考の日程は、いつ、どのような方法で発表されているか。
△教育長 入学選考の日程は、博多高等学園は8月末に、他の特別支援学校においては例年10月に、各中学校に通知することで発表している。
◯楠委員 本市は毎年10月、各中学校に通知することで発表しているようだが、福岡県立の一般高校も特別支援学校も、入学選考の日程は7月初めにホームページで発表されている。ちなみに、市立の4つの高校も同じ時期である。本市の特別支援学校も7月に発表されれば、同時に県立、市立のどこの学校を選択するか、親も子どもも学校説明会に向けて、入学選考日に向けて、担任の先生とともに余裕を持って準備を始めることができる。なぜ、本市の特別支援学校だけ日程の発表時期が10月となっているのか、理由を示されたい。
△教育長 博多高等学園を除く市立の特別支援学校の入学選考は、この10年間、2月中旬から下旬の限られた時期に実施しており、校長会からも特に日程公表に関する要望も届いていないことから、例年10月の募集要項の配布時に合わせて公表している。
◯楠委員 私のところには、保護者から入学選考の日程を早く発表してほしいという声が届いており、福岡県と同じ時期に発表すべきと考える。また、発表の方法についても、入学希望者と保護者全員に知らせていくために、県と同じく日程発表をホームページで行うべきと考えるが、所見を尋ねる。
△教育長 入学選考の日程については、ホームページ等も活用し、県立の発表と同時期に学校や保護者にお知らせできるよう検討していく。
◯楠委員 今までホームページに掲載されていなかったこと自体が異常だと思う。よろしくお願いしておく。まず、高等部卒業後の進路を決めるに当たり、博多高等学園の志願理由書で気になることがある。卒業後の進路を決定するための保護者の責務を求める記入欄があるが、なぜそのような欄があるのか、理由を示されたい。
△教育長 博多高等学園に確認したところ、生徒が就労し、自立して社会生活を送っていくためには、生徒自身の自主性、意欲に加えて保護者の協力も大切であり、学校と保護者の協力関係が生徒の企業就労の可能性を広げることにつながるという理由から、志願理由書の中に記入欄を設けているとのことである。
◯楠委員 就労に当たって保護者の協力を求めるのであれば、入学説明会や入学後の担任懇談会のときに、口頭でお願いは十分できる。県立の就労を目的とした学校を含め、このような志願理由書はどこにもない。この欄があるがために、博多高等学園の入学を諦めた人もいると聞いている。保護者に踏み絵を踏ませるような記入欄は廃止すべきと考えるが、所見を尋ねる。
△教育長 生徒の就労支援は、学校と保護者の適切な協力関係の下で行われることが望ましいと認識しているが、志願理由書の在り方については、今後、保護者の意見等も踏まえ、学校と協議、調整していく。
◯楠委員 それでは、令和3年度特別支援学校高等部卒業生の進路状況を尋ねる。進学、就職、社会福祉施設などに分類し、分かりやすく示されたい。
△教育長 令和3年度卒業生の進路状況として、進学の実績はないが、一般企業や一般の事業所または就労継続支援A型事業所等へのいわゆる一般就労の割合が27.5%、就労移行支援事業所や就労継続支援B型事業所等へのいわゆる福祉的就労の割合が21.4%、生活介護や自立訓練等の福祉サービスを利用する割合が48.3%、在宅及び入院が0.6%、進路先未決定が2.2%となっている。
◯楠委員 答弁があったように、進路先の約7割が福祉施設となっている。自立と社会参加に不安を抱えながら、自分に合った進路先、福祉施設を探すには大変苦労していると聞いているが、障がいの重たい卒業生はなおのことである。障がいの重たい今津特別支援学校、南福岡特別支援学校の今年3月の卒業生の進路状況を尋ねる。
△教育長 令和3年度の卒業生は両校合わせて22人で、就労移行支援事業所への福祉的就労が1人、生活介護事業所等の福祉サービスの平日5日間の利用が12人、平日4日以下の利用が9人である。
◯楠委員 平日の福祉サービスが不十分で、進路先が決まらない生徒が9人という答弁であった。そのような状況は毎年なのか、今年初めてなのか尋ねる。
△教育長 今回の状況は今年度初めてのことで、前年度までは介護事業所等の福祉サービスを希望する生徒は全て平日5日間利用することができていた。
◯楠委員 今年初めて、卒業後に福祉サービスを平日5日間利用できないという事態が起こったが、状況の厳しさは何年も前からあったと聞いている。卒業生の進路先決定のための一人一人に対する実態調査などを行っていれば、その決算額の推移を5年間で示されたい。
△教育長 進路調査に関する予算は特に措置しておらず、学校職員が面接時等に進路の実態について聞き取りを行っているところであり、一人一人の詳細な実態調査までは行っていない。
◯楠委員 卒業生の進路先の7割が福祉施設であり、卒業生の増加傾向の中で実態調査は必須であると考える。答弁にあった進路先となっている生活介護事業所とはどのような施設なのか尋ねる。
△福祉局長 生活介護事業所については、介護を必要とする障がい者に対して、入浴や排せつ、食事の介助などを行うとともに、絵画や陶芸などの創作的活動や金銭管理など、生活能力の向上に必要な支援を行う施設である。
◯楠委員 答弁があったように、生活介護は昼間の生活全般の介護を受けるだけでなく、創作的活動にも参加し、生活能力向上のために必要な援助をここで受けることができる。今までどおり、月曜日から金曜日まで行き先が決まって初めて進路の決定となる。行き先が週3日しか決まらなければ、あとの2日間の本人の生活の場は奪われ、その分の家族の介護負担は今まで以上に重たくなる。仕事をしている親は仕事を辞める決断も必要となってくる。9人の平日の福祉サービスが不十分だった状況はどうして起こったのか、原因を尋ねる。
△教育長 令和3年度においては、福祉サービスを提供する事業所等の受入れ可能定員が、希望生徒数よりも少なかったことが主な要因と考えている。
◯楠委員 肢体不自由特別支援学校の進路の先生から、進路先がなかなか決まらない理由を教えてもらった。もともと医療型の生活介護事業所が極端に少ないこと、介護報酬が少ない福祉型の事業所で医療的ケアの必要な人を受け入れるには負担が大きく、定員の空きがないこと、福祉施設一覧表に掲載されている事業所に問い合わせても、車椅子での送迎ができないことを理由に受入れを断られること、医療型の福岡病院ひまわりが閉鎖してしまったことなどなど、受入れ施設の絶対数が不足していることが大きな原因で、来年度以降も卒業生は年々増加していく。今通っている生活介護事業所を辞める障がい者はほとんどいないため、新しく定員を増やすしかないのではないかとの話であった。平成31年、特別支援学校学習指導要領等が改定されているが、高等部卒業後についてどのような改定があったか尋ねる。
△教育長 平成31年に改定された学習指導要領には、新たに学部段階間及び学校段階等間の接続の項目が付け加えられ、大学や専門学校、教育訓練機関等における教育や社会的、職業的自立、生涯にわたる学習や生活のために、高等部卒業以降の進路先との円滑な接続が図られるよう、関連する教育機関や企業、福祉施設等との連携により、卒業後の進路に求められる資質、能力を着実に育成することができるよう工夫することとされている。
◯楠委員 その指導要領に沿った支援を教育委員会には強く要望する。卒業予定者の週5日間の通所の実態を調査してもらい、受入れ可能な福祉施設の拡大を福祉局と綿密に協議してもらいたいと考えるが、所見を尋ねる。
△教育長 障がいのある生徒の社会的な自立に向け、卒業生の進路先を確保するために必要な手だてを講じることは重要であると認識しており、これまで本市においては、各学校が複数の事業所を訪問して卒業後の受入れを依頼するなど、進路先の開拓に取り組んできた。今後は、一人一人の進路状況の調査を行うとともに、関係各局とも連携し、福祉サービス事業所の受入れ可能数の動向等の把握に努めるなど、進路先の拡大に取り組んでいく。
◯楠委員 福祉局に尋ねる。先ほど紹介した支援学校の進路の先生の話によると、福祉施設一覧表に掲載されている事業所に問い合わせても、車椅子での送迎ができないことを理由に受入れを断られるとあった。生活介護のうち、医療的ケアを受け入れている事業所の数と受入れ可能な人数を、令和3年度の実績で示されたい。
△福祉局長 生活介護の事業所における医療的ケアが必要な人の受入れ人数などについては、受け入れた事業所に届出などの義務がないため、具体的な利用状況などは把握していない。なお、生活介護事業所全体での実績で答弁すると、令和3年度の3月末時点における生活介護の事業所数は98か所、受入れ可能な人数は2,571人である。
◯楠委員 生活介護の実情は分かっても、医療的ケアの実情は分からない、困難であるとの答弁であった。先日、医療的ケアの必要な人も受け入れている生活介護事業所の現場を訪問し、話を聞いてきた。その日の受入れは14人の予定だったが、3人のお休みがあり11人の利用者で、そのうち7人が医療的ケアの必要な人であった。3人の看護師が7人を担当、ほかのスタッフは、管理者を含め8人での運営である。皆、大きめの車椅子を利用しているが、筋力が弱いため車椅子に30分以上座ることができない。2人がかりでベッドに寝かせる。ほとんどの人がベッドを利用するため、広いホールはベッドで狭く感じる。当初20人の定員でスタートしたが、スペース的に14人の定員が精いっぱいとの話であった。ほかに行くところがないので預かってほしいと保護者から懇願されるそうだが、丁寧に断るそうである。筋ジストロフィーの人がいた。自立呼吸はできるが、横になっているときは人工呼吸器をつけていて、呼吸器を支えるベルトの位置を数時間ごとに変えなくてはならない。たんの吸引は口から、水分や栄養の補給は鼻からのチューブを挿入して行われていた。私には、看護師1人がその人に付きっきりのように見えた。利用者の生きる姿、スタッフの献身的な姿を見て、改めて命の重さを実感した。スタッフでも慣れていない人が利用者の体に触れてしまうと、おなかから出血する人もいるそうである。また、体調の変化から発作を起こすこともあるが、声が出たり体が震えるなどの前兆がなく、呼吸音の変化でしかSOSを出せない人もいた。緊張感のある精神的にも肉体的にも厳しい業務に耐えており、この福祉サービス事業は、施設スタッフの福祉に対する高い志と熱意によって支えられていることを目の当たりにした。このような福祉現場を担当局はどのように認識しているのか。また、どのような支援があるか尋ねる。
△福祉局長 医療的ケアが必要な人を受け入れている事業所が、緊張感を持って献身的な支援をしていることは認識しているところである。また、生活介護事業所への支援については、国において障がい支援区分に応じた報酬単価や看護職員、生活支援員などの加配に対する加算が整備されている。
◯楠委員 福祉サービスの度合いを表す1~6の支援区分があるが、ここの施設の利用者は全員一番重い支援区分6に当たる。しかし、医療的ケアをたくさん受けている人、少し受けている人、全く受けていない人、いろいろいるが、施設が申請できる報酬は全て同額である。看護師の配置加算はつくが、それは看護師1人の人件費にも足りず、大変な医療行為の一つ一つに、個別の報酬も計算されない。14人の受入れを準備し、看護師を含め11人のスタッフをそろえていたが、3人がお休みとなり、3人分の報酬は請求できない。キャンセル加算ができるようになったが、1人につき僅か997円である。誰がこのような施設の運営に手を挙げるだろうか。この生活介護事業所の6年間の累積赤字は1億4,300万円に上ると、代表の人に聞いた。高い志と熱意と巨額の負債の上に、本市の障がい福祉サービスが成り立っているのが現実だと感じた。このような運営に対してどのような認識を持っているのか。また、どのような支援メニューがあるか尋ねる。
△福祉局長 現在の生活介護の報酬制度については、医療的ケアが必要な人の支援に係る負担の大きさに応じたものとなっていないことから、受入れ状況によっては運営に苦慮しているところもあると認識しており、利用者一人一人の状況に応じた、より充実した報酬体系となるよう国に要望しているところである。なお、医療的ケアが必要な人を受け入れている事業所に対する報酬の上乗せなどの市独自の補助制度はない。
◯楠委員 横浜市は、特別支援学校卒業後に不足する生活活動の場を補うため、また、医療的ケアの受皿を確保するため、障がいの重たい人に特化した多機能型施設の整備に取り組んでいる。卒業後の進路、受皿として、地域生活支援のための多機能型施設として位置づけた。今までも、生活介護の中で医療的ケアの受入れはあったが、機能を高めて別に整備が進められている。市内を6つの方面に分け、運営法人を公募し、現在4か所の多機能型施設が整備されている。施設整備に関しては、市独自の補助金が交付され、人件費に対する細かい運営補助金も用意されている。これは、国の制度を待っていては、障がい福祉は間に合わないという理念からである。医療的提案の内容によっても細かく補助金が設定されている。横浜市のような補助金制度をとは言わない。誰のために、どのような施設をどうやってつくるのか、まずは本当に困っている人のニーズに合致した受入先を拡大するための実態調査を実施すべきと考える。福祉局の所見を尋ねる。
△福祉局長 医療的ケアが必要な人を受け入れている事業所の中には、運営状況が厳しいところもあると認識しており、まずは生活介護事業所における医療的ケアが必要な人の受入れ実態を調査し、それぞれの事業所の課題の把握に取り組んでいく。
◯楠委員 横浜市の多機能型施設の運営上の課題に、医療、福祉人材の確保の困難さが挙げられている。障がい系の施設で働きたいという意思を持つ看護師、スタッフが少なからずいるという声がありながら、ミスマッチが起こっているという問題である。横浜市は、障がい者施設の存在や役割、機能を十分に周知し、人材確保のためのパンフレットとPR動画を作っている。障害福祉の仕事の魅力をお伝えしますと銘打ったパンフレットである。これを就職フェアの会場で配布している。また、自分を必要としてくれる人がいると、障がい者に寄り添い働く若い施設スタッフがPR動画で語りかける。このPR動画は、横浜市営地下鉄と市営バスの全車両の広告モニターで放送されている。障がい福祉の人材確保のためなら何でもすると語っていた。本市も、人材確保のPRにぜひ取り組んではどうかと考えるが、所見を尋ねる。
△福祉局長 医療的ケアが必要な人をはじめ、重度障がい者の受入れを進めていく上で、施設における人材確保は重要であると認識している。このため、本市においては、介護関係団体と連携して、障がい者施設等の魅力発信の取組を始めたところであり、今後とも紹介のあった他都市の事例も参考に、効果的なPRについて検討していく。
◯楠委員 進路について尋ねてきたが、医療的ケアを必要とする高等部卒業生が増加する中で、子どもたちを養育する家庭の負担は非常に大きいものがある。しかし、その家庭が利用できる社会資源やサービスは、極めて限られている。誰一人取り残さないという理念を掲げた市長の障がい福祉の充実へ向けた決意を尋ね、質問を終わる。
△市長 医療的ケアを必要とする人をはじめ、重度の障がいのある人が、必要な支援を受けながら自らの能力を最大限発揮して社会の一員として活躍していくことは、大変重要であると認識している。本市では、医療的ケアが必要な人の緊急時の受入れ体制の確保や、グループホームの受入れ促進に加え、重度の障がいがある人の就労支援の充実などの環境整備に取り組んでいるところである。今後とも、誰一人取り残さないというSDGsの理念を踏まえ、障がいのある人が地域や家庭で生き生きと生活することができるまちづくりにしっかりと取り組んでいく。