▼令和4年 令和3年度決算特別委員会 古川 清文 総会質疑 (令和4年9月26日)

◯古川委員 公明党福岡市議団を代表し、ジェンダーと防災について、これからの指定管理者選定について、以上2点質問する。初めに、ジェンダーと防災についてである。「これからの日本の街づくりを考えるとき、無視できないのが災害対応です。今、日本では、台風や大雨による災害の激甚化が進んでいます。特にここ数年、6月から9月にかけては必ず台風や大雨による水害が起こっています。これは一時的な自然現象ではなく、将来的に台風はますます大型化していくと予想されています」「異常気象と呼ばれている現象が、これからのスタンダードになるのです」これは市長が自身の著書「日本を最速で変える方法」の中で述べている言葉である。私はこの予想が的中しないでほしいと願う1人だが、自然災害はいつでも起こり得る脅威である以上、万全な対策と警戒を怠ることはできない。防災月間であるこの9月、防災意識を持つことの重要性、そして、誰一人取り残さないというSDGsの理念の下に避難体制を構築しなければならないと感じ、ジェンダー視点の防災について取り上げる。初めに、本市の災害に強いまちづくりについて、令和3年度の防災危機管理費の決算総額と主な実施事業を尋ねる。

△市民局長 防災危機管理費の令和3年度決算額は8億6,084万円余であり、主な内訳としては、災害対策本部機能の移転、拡充として3億7,128万円余、公民館等の非常用電源の確保として1億6,938万円余、公的備蓄の整備として3,711万円余となっている。

◯古川委員 令和3年度は災害対策本部機能を市役所15階に移転、拡充したことが大きな事業となっている。災害対策本部機能の移転、拡充により、どのような機能が強化されたのか尋ねる。また、強化した機能をどのように活用しているのか尋ねる。

△市民局長 災害対策本部機能の移転、拡充については、大規模災害時に政府や自衛隊など関係機関から集結する多くの要員が一体的に活動できるよう、最大約1,500平方メートルのスペースを15階ワンフロアに確保するとともに、大型マルチモニター等の設置のほか、ウェブ会議システムの導入や、各区役所、外局を結ぶ災害用ネットワーク等を新たに構築している。災害時には、新たに整備、拡充した機能を生かし、迅速かつ円滑な対応を行っていく。

◯古川委員 それでは、令和3年度の避難指示の発令回数、住民の避難所開設の箇所数や避難者数等を尋ねる。

△市民局長 令和3年度に行った避難発令等については、8月11日からの大雨に際し、避難指示を22回発令しており、開設した避難所は119か所、避難者数は最大105人となっている。

◯古川委員 ここからは大規模な災害を想定した避難所運営について尋ねる。東日本大震災では、災害関連死の約半数が避難所生活での肉体的、精神的疲労によるもので、避難所生活の環境をはじめ、避難所の衛生問題、プライバシーが配慮されない等の環境問題、ジェンダー視点の配慮不足に起因したことが、後に避難所で取り組むべき大きな課題として認識された。災害時の避難所に関して、一番心配になるのはトイレである。そこで、災害時のトイレ機能が麻痺する事例が起こっているが、このことに対する本市の課題意識と対策について尋ねる。

△市民局長 災害時における避難所のトイレ対策については、衛生管理の観点などから非常に重要であると認識しており、警固断層南東部を震源とする地震が発生した場合の想定避難者数等、約3万人分の3日分を超える47万回分を携帯トイレと簡易トイレで確保している。また、避難が長期化した場合のトイレの確保については、国からのプッシュ型支援により供給される携帯トイレと簡易トイレを活用するとともに、必要に応じて災害時応援協定に基づき、仮設トイレの設置や携帯トイレ等の調達を行うこととしている。さらに、小中学校や公民館などの新設や大規模改修時に、マンホールトイレを整備していくこととしている。

◯古川委員 1995年1月の阪神・淡路大震災では、消防庁が1997年にまとめた報告書、災害時のトイレ対策によると「住民らは避難先の学校などに到着するとトイレの利用を始めた。しかし、断水や停電で水が流れない。ある神戸市内の中学校では、既設トイレが発災当日に使用不能になると、校庭の側溝がトイレ化し汚物であふれ、仮設トイレは通信や道路の寸断により、市内避難所に行き渡るのに約2週間を要した」とのことである。同じような現象は、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震などでも繰り返し起きている。大正大学の岡山教授が熊本地震の避難者を対象に行った調査によると、避難生活の初期の段階で最も困ったことを聞くと、眠れぬ環境の19.5%に次いで多かったのが、やはりトイレの13.8%で、食事やプライバシーを上回った。劣悪なトイレ環境は健康をも脅かし、感染症のリスクが高まる。さらに、トイレに行く回数を減らすため、避難者が食事や水分摂取を控えることで脱水症状になり、足の静脈にできた血栓が移動して肺などで詰まるエコノミー症候群のおそれも出てくる。熊本地震では54人がエコノミー症候群で入院、うち1人が亡くなった。何と死者も含め42人が女性だったのである。2019年の文部科学省調査によると、避難所に指定されている全国の公立小中学校のうち、断水時にトイレが使えない学校が4割を占めたとのことである。マンホールトイレについては、大規模改修時に整備しているとのことだが、現在の小中学校等の整備状況について尋ねる。

△市民局長 マンホールトイレについては、小中学校208校のうち5校に21基、公民館については151館のうち11館に22基、その他、地区体育館や地域交流センターなどを合わせ、市全体で25施設に76基を設置している。

◯古川委員 避難所となる小中学校に限って言えば、208校中5校にしか整備されておらず、全く足りていないのではないかと心配している。今年の5月、総務省が自治体に示した、トイレの下水処理に関する防災対策という指針の中で、従来はマンホールトイレの整備と下水道施設の耐震化を重要施策としていたものを、合併処理浄化槽を利用した防災トイレが有効であると示した。初めて聞く人も多いと思うため、参考までにパネルにしてみた。このようにトイレの排水と台所などの生活排水を併せて処理する合併処理浄化槽が、災害に対して極めて強い特徴を持つことから、将来的な普及を目指す意向とのことである。この合併処理浄化槽も含め、避難所に指定されている小中学校等の災害トイレ機能は早急に整備すべきだと思うが、所見を尋ねる。

△市民局長 避難所のトイレ対策については、携帯トイレや簡易トイレの備蓄のほか、仮設トイレの設置やマンホールトイレの整備等により対応することとしているが、提案の合併処理浄化槽も含め、他都市の取組状況などを参考にしながら対策を検討していきたいと考えている。

◯古川委員 さて、本市では、各自治会や地域ごとに避難所開設訓練が行われているが、市全体で延べ何回の避難所開設訓練が実施されたのか、令和3年度の実施回数と参加者数を示されたい。

△市民局長 地域主体の避難所開設訓練については、令和3年度、市全体で28回実施され、参加者数は延べ630人となっている。

◯古川委員 コロナ禍の中、避難所開設訓練の参加者が全市で630人という数字は、多いのか少ないのか判断は難しいものの、630人もの人が参加したことは、地域の防災リーダーやサポーターを育成する上で大変重要である。この夏、会派の同僚議員とともに、地方議員向けに開催された特別支援学校BCP、業務継続計画をテーマにした講習に参加し、過去の災害を例に、避難所の生々しい実態を聞いてきた。少し紹介させてもらうと、東日本大震災の現場で、障がいのある人は、大勢の人がごった返す一般の避難所では避難生活を送ることができず、一旦避難したとしても、幾つもの違う場所へ移動、滞在することになったとのことである。避難所がバリアフリーではなかったり、障がいについて、できることとできないこと、困っていることなどが一般の人には理解してもらえず、避難所を離れ、自宅や車中に避難しなければならなかったそうである。視覚障がい者や聴覚障がい者に対し声だけのアナウンスでは、携帯トイレの使い方さえ十分に伝わらない。認知症の高齢者は、おむつ替えの場所も必要である。しかし、臭いまで隔離することはできず、次第にみんながストレスを感じ出し、避難所を退所するように説得されたり、退所するように仕向けられたりしたとのことである。こうした事例は、避難所開設訓練等で訓練できていれば、トラブルを回避することもできたと思う。避難所開設訓練の充実強化が必要だと考えるが、所見を尋ねる。

△市民局長 避難所における要配慮者への対応については、公民館の和室や学校の諸教室を利用した福祉避難室での受入れを行っているほか、避難所内でのお知らせ事項は、聴覚に障がいがある人にも確実に情報が伝わるよう、掲示板に貼り出すなどしている。今後とも他都市の事例なども参考にしながら、障がいのある人をはじめ、全ての人に適切に配慮した避難所となるよう、避難所の開設及び運営訓練の充実を図っていきたいと考えている。

◯古川委員 さて、災害弱者と言われる人たちの避難は、早めの行動判断が重要になる。要支援者に対する避難所開設の情報伝達等は、誰が、どのようなタイミングで、どのように行うのか尋ねる。

△市民局長 避難所の開設情報については、避難情報の発令に合わせて、市ホームページへの掲載や防災メールでの配信のほか、テレビやラジオ等も活用し、発信している。また、テレビやインターネットで避難情報を確認することが困難な視覚障がい者、聴覚障がい者、高齢者については、本人の希望に応じて、自宅の電話やファクスに避難情報をお知らせする避難情報配信システムにより情報提供を行っている。避難行動要支援者に対しては、本市が発令する避難情報を基に、地域において避難所開設情報の伝達など、協力してもらいたいと考えている。

◯古川委員 地域では、高齢者や障がいのある人たちなど、災害時に支援を必要とする人に対して、自治協議会や民生委員など、地域で連携し、助け合いながら避難行動を行う取組が始まった。避難行動要支援者の個別避難計画の作成など、平常時の取組や災害時の支援についても令和5年から8年の本格実施に向けて、モデル事業がこれから始まる動きと聞いている。事あるごとに、その進捗状況を確認したいと思う。さて、過去の大規模災害時には、避難所で乳幼児連れの女性や障がいのある女性等に対して必要な配慮が提供されないことにより、様々な問題が発生したことが報告されている。避難生活では、生活環境の悪化から、よりきめ細やかな配慮が必要とされることから、偏った属性による観点からの対策では限界がある。ジェンダーの視点を取り入れた避難所運営マニュアルはもとより、災害現場のリーダーを男女ともに担ってもらうことで、女性を含む多様な困り事に寄り添った対応が可能になる。本市の避難所運営については女性の視点がどう生かされているのか、令和3年度に行った避難所運営の充実に向けた取組のうち、女性に特化した取組とその決算額を尋ねる。

△市民局長 避難所運営については、地域防災計画や避難所運営の手引きにおいて、更衣室、仮設トイレ及び物干場などを男女別で確保することや、乳幼児のいる家族に配慮した授乳スペースや育児スペースの確保などに取り組むとともに、避難所における地域の運営体制に女性の参画を図るようにしている。また、防災ミニブックにおいても、女性をはじめ、誰もが安心できる避難所レイアウトの例を示しており、これらを参考に、各地域において避難所開設訓練等が実施されている。さらに、女性に向けた取組としては、令和3年度では、生理用品3万1,500枚を購入しており、決算額は22万円余となっている。

◯古川委員 内閣府男女共同参画局は、本年5月、全国の市区町村の防災危機管理部局の61.9%で女性職員がゼロだったとの調査結果を発表した。女性職員が配置されている割合の平均は9.9%にとどまっている。女性職員がゼロ人の市区町村では、哺乳瓶やおむつ、介護食、簡易トイレなどの備蓄が少ない傾向にあったと言われている。防災の担当は、緊急対応、24時間体制であり、育児や介護を担っていることが多い女性職員を配置しづらいという現状がある。そこで、災害対応能力の強化を目指すガイドラインでは、女性と男性が災害から受ける影響の違いなどに十分に配慮された女性の視点からの防災対応が行われることが、防災や減災、災害に強い社会の実現にとって必須と定めている。本市の防災担当職員の女性配置率を尋ねる。

△市民局長 市民局防災・危機管理部の女性職員配置率については、令和4年5月1日時点で17.9%となっている。

◯古川委員 この質問に当たり、兵庫県明石市の先進事例について尋ねてきた。明石市では、SDGs未来安心都市・明石としてSDGsの基本原則でもあるジェンダー平等を実現するため、2021年8月から市役所庁舎内にジェンダー平等プロジェクトチームを立ち上げた。このプロジェクトチームが、防災、教育、家庭社会、職場、意思決定過程の5つの分野にわたりジェンダー平等を実現するための会議を行い、提言をまとめ、その提言を受け取った市長をはじめ執行部は、市の施策として打ち出していく。これまで防災分野においては、その構成メンバーが充て職などにより男性中心で構成される傾向にあった。そこで、ジェンダーや障がい者等の多様な視点から求められる対策については、明石市防災会議の中に、ジェンダーと防災に係る専門委員会議を創設し、専門委員15人中9人が女性という構成で、活発な議論を開始したそうである。活発な議論の中で特筆すべきは、小中学校などの収容避難所を所管する教育委員会がジェンダー防災会議の調整役となり、横断的な部署の代表による議論をまとめていること、高専高等学校の女子生徒も交えた多様な人選を行っていること、ジェンダー防災会議プロジェクトチームが最高決定機関に提言書を提出する仕組みになっていることが挙げられる。その結果、明石市の防災は、ジェンダー平等を踏まえた避難所意識に生まれ変わった。避難所の運営に当たっても、運営責任者に女性と男性を両方配置、住民による自主的な運営組織への女性の参画、女性による女性トイレや女性更衣室等の巡回、女性による被災者のニーズの聞き取り、生理用品等の備蓄、間仕切り等によるプライバシーの確保、物干場、更衣室等の男女別設置など、安心して使用できる場所に配置等が決定された。本市も明石市のような取組を行ってはどうかと考えるが、所見を尋ねる。

△市民局長 本市の防災においては、子育て中の母親や女子大学生のグループなどとの座談会を行いながら、女性の視点を活かした防災ミニブックを作成するとともに、避難所運営においても運営体制への女性の参画や、男女別の更衣室や授乳室等の確保を行うこととしている。今後とも、他都市の事例なども参考にしながら、さらなる充実に取り組んでいく。

◯古川委員 また、ジェンダーの視点になれば、ペットの避難も気にかかる。ペットも家族の一員との思いがある人も多く、ペットとの避難が他人に迷惑をかけることにより、避難をためらう人もいる。一方で、ペットアレルギーのある避難者もいる。ペットとの避難についての市の考え方、対応を尋ねる。

△市民局長 ペットとの避難については、避難所まで同行し、避難所敷地内の風雨がしのげるような場所で、ケージ等に入れて飼育してもらう、いわゆる同行避難を原則としている。なお、ペットアレルギー等を考慮し、避難者が寝泊まりをする空間まで同伴する、いわゆる同伴避難については認めていないところである。

◯古川委員 過去の大型災害による経験から、横浜市や岡山県総社市などのように、他都市ではペットと一緒に避難生活を送れるよう検討している自治体も増えているようである。本市もペット同伴避難等を今後検討する考えはないのか尋ねる。

△市民局長 同伴避難の場合は、一般の避難所とは別に専用の避難所を確保する必要があるなどの課題があり、今後とも他都市の事例も参考にしながら検討していきたいと考えている。

◯古川委員 さらに、避難者情報のDX化も重要である。避難者の掌握について、正確な受付業務が重要であり、避難者情報を正確に素早く把握し、次の支援へとつなげることが重要である。密を避けるためにも、受付で長蛇の列ができる事態は避けたい。従来手書きによる受付業務をDX化し、各自のニーズに合った支援物資を受け取れるようにした避難所受付システムなど、アナログからデジタルへ民間技術を活用する自治体も多いようである。本市もDXを活用した避難所運営に取り組むべきだと思うが、所見を尋ねる。

△市民局長 避難所でのDXの活用については、避難者の受入れや人数把握の迅速化などの効果も見込まれることから、国においてもデジタル庁主導による実証実験が開始されており、本市としてもモデル事業に参加するなど、国と連携しながら積極的に取り組んでいく。

◯古川委員 本市には様々な人々が暮らしている。地震や水害等の災害時には、地域の人たちが力を合わせ、助け合うことが不可欠である。国籍、性別、年齢、障がいのあるなしを問わず、誰一人取り残さず、命を守らなければならない。災害対応においては、高齢者、障がい者、乳幼児、妊産婦、外国人等全ての人権尊重の視点が必要である。また、女性と男性が災害から受ける影響やニーズの違いに配慮するとともに、性的少数者への配慮を行うなど、男女平等参画、ジェンダー平等の視点を取り入れることが重要である。ここまで、ジェンダーと防災、避難所運営を考えてもらいたいとの思いで質問してきた。本市は誰一人取り残さないSDGsの理念に基づいた防災にどのように取り組むのか、決意を尋ねる。

△市民局長 災害対応については、地域防災計画において、女性をはじめ、高齢者、障がい者、乳幼児、外国人、性的マイノリティなど、全ての人に対する適切な配慮を基本理念として挙げている。また、避難所運営については、避難所運営の手引きにおいて、避難所に関わる全ての人がそれぞれのプライバシーに配慮するとともに、男女双方の視点や性的マイノリティなどの視点にも十分配慮することとしており、これらを踏まえ、しっかりと取り組んでいきたいと考えている。

◯古川委員 災害はいつでも起こり得る脅威である。163万市民や本市をビジネスや観光で訪れる来街者など、全ての人の命を守る防災、災害対策について、市長の決意を尋ね、この質問を終わる。

△市長 近年、毎年のように全国各地で大規模な自然災害が続いており、防災、減災の対策を推進していく上で、日頃からの十分な備えと誰もが安心できる避難体制の構築は大変重要であると考えている。このため、避難所におけるDXの活用などによる業務の効率化を進めるとともに、女性をはじめ、高齢者や障がいのある人など、全ての人に配慮した避難所運営について、地域とともにその充実に取り組んでいく。今後とも市民の貴い命と財産を守ることを第一に、災害に強いまちづくりを進め、防災先進都市福岡を目指し、取り組んでいく。

◯古川委員 次に、これからの指定管理者選定について尋ねる。承知のとおり、指定管理者制度は2003年の地方自治法の改正で導入された制度である。本制度は広範な公の施設で展開され、これまで地方自治体やその外郭団体に限っていた管理運営について、株式会社など営利企業や財団法人、NPO、市民グループなどの法人や団体が包括的に代行することが可能となった。その上で重要なこととして、指定管理者制度の運用に当たっては、指定管理者の選定、協定締結、指定管理料の積算等に係る透明性などが担保される必要がある。本市は昨年6月に策定した行政運営プランにおいて、市民や企業などとの共働、連携を推進項目の一つとして、指定管理者導入施設における市民サービス向上に取り組むこととしている。指定管理者制度は導入から既に約20年が経過しようとしており、運用に関する実務は浸透したと言えるものの、浸透したからこそ課題等を改めて把握し、改善策を講じていく時期に来ているのではないかと考える。本市において令和3年度に指定管理者制度を導入している施設数、指定管理料の決算総額を尋ねる。

△総務企画局長 令和3年度における指定管理者制度の導入施設数は389施設、指定管理料の決算総額は162億円余となっている。

◯古川委員 本市においては389という多くの施設で指定管理者制度が導入され、決算総額は162億円余となっている。改めて、本市が指定管理者制度を導入している目的と、自治体が直営で管理するよりも指定管理者制度とすることのメリット、また、導入に当たっての課題認識を尋ねる。

△総務企画局長 指定管理者制度を導入する目的については、多様化するニーズに、より効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力を活用しつつ、経費の節減のみならず住民サービスの向上を図ることである。導入するメリットについては、民間団体のノウハウを活用したサービスの提供により住民満足度の向上が期待できることや、施設の効率的な管理運営が図られることなどがある。課題については、指定管理者の選定に当たり、応募団体が減少傾向にあることと認識している。

◯古川委員 応募団体が減少傾向にあることを課題と認識しているようである。指定管理者の選定はおおむね5年ごとに行われているようだが、令和3年度に公募した施設の応募団体数について、同施設が前回公募したときの応募団体数との比較を示されたい。

△総務企画局長 複数の施設をまとめて選定する場合もあるため、公募件数で答えると、令和3年度に行った公募12件のうち、前回に比べ減少したものが9件、前回と同数が2件、前回に比べ増加したものが1件となっている。

◯古川委員 大半の施設の応募団体数が減少しているようだが、その理由についてどのように認識しているのか尋ねる。

△総務企画局長 指定管理者制度の導入から20年程度となり、指定管理者が長年蓄積されたノウハウにより安定的に施設を運営している事例も多く、他団体の参入意欲が低下していることや、特に近年では、コロナウイルス感染症の影響により施設の臨時休館や利用制限などが続いたことも影響しているのではないかと考えている。

◯古川委員 コロナ感染症の影響があるのではないかとの認識があるようである。このことは、後ほど触れたいと思う。それでは、指定管理者の選定方法について、公募と非公募それぞれの施設数を尋ねる。また、公募でありながら、結果1団体のみの応募となって決定した施設数とその割合を尋ねる。

△総務企画局長 指定管理者の選定に係る公募と非公募の施設数については、令和3年度における指定管理者制度の導入施設389施設から市営住宅171施設を除いた218施設のうち、公募で選定した施設数は184施設で84%、非公募で選定した施設数は34施設で16%となっている。次に、1団体のみの応募については、公募で選定した184施設のうち112施設で、その割合は61%となっている。

◯古川委員 現在、指定管理者を非公募としている施設があることについて、非公募としている理由を分かりやすく示されたい。

△総務企画局長 指定管理者の指定の手続に関するガイドラインでは、非公募により選定できる場合として、PFI法の活用による長期契約を前提とした事業方式等により公の施設を設置し、設置後一定の期間指定管理者の役割を担うべき者が当該契約により限定されている場合、公の施設を民間施設の中にまたはこれに接続して設ける場合であって、当該民間施設の管理と一体的に公の施設を管理することが施設の構造上または経済的観点から明らかに合理的なとき、施設の管理上緊急に指定管理者を指定する必要がある場合、その他特別な事情があると市長が認める場合と定めている。

◯古川委員 それでは、これまでに非公募から公募に切り替えた施設はどの程度あるのか、また、現在非公募の施設は公募に切り替えることはできないのか尋ねる。

△総務企画局長 指定管理者制度の導入時には非公募であった施設は、市営住宅を除くと70施設あり、そのうち36施設が公募への移行を行っている。各施設所管課において、ガイドラインの規定を踏まえ検討を行った結果、可能な限り公募への移行を行っており、現在非公募の施設については、施設の特性や設置目的などから公募への移行が現時点では難しいものと考えているが、競争性確保のためには公募が望ましいため、状況の変化などにより公募が可能となった段階で移行について引き続き検討を行っていく。

◯古川委員 先ほど非公募は16%、公募において1団体のみの応募は61%とのことであった。これでは指定管理者導入の目的である民間アイデア、価格の競争が働きにくいと思われる。複数応募になるように、所管局はどのような取組を行っているのか尋ねる。

△総務企画局長 応募を増やす取組については、民間団体が参入しやすい公募条件を設定するためのサウンディング型市場調査の実施、応募の準備期間を確保するための公募期間の延長、スケールメリットを生かすための複数施設の一括公募などに取り組んでいる。

◯古川委員 サウンディング型市場調査の概要について尋ねる。

△総務企画局長 サウンディング型市場調査とは、国土交通省作成の地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引きによると、事業発案段階や事業化検討段階において、事業内容や事業スキーム等に関して、直接の対話により民間事業者の意見や新たな事業提案の把握等を行うことで、対象事業の検討を進展させるための情報収集を目的とした手法である。

◯古川委員 それでは、本市がサウンディング型市場調査を導入した経緯とその内容について尋ねる。

△総務企画局長 導入した経緯については、公募への応募団体が減少する中、応募団体の増加を図るため平成30年度に開始したものである。内容については、翌年度に公募を実施する施設を対象として、市場性の把握、参入しやすい公募条件の設定などを目的として、応募団体と施設所管課が個別に意見交換を行うこととしている。なお、そのほかにも、サウンディングへの参加実績は公募の際に優位性を持つものではないことなどを実施要領に定め、公表している。

◯古川委員 サウンディング型市場調査の企業側のメリットとこれまでの成果、今後の課題を尋ねる。

△総務企画局長 企業側のメリットについては、公募開始前の段階から施設の情報を収集することが可能となり、応募の準備期間を確保できること、参入しやすい公募条件などを直接施設所管課に伝えることができることなどがあると考えている。成果については、これまでに参加した民間団体からは、利用料金制度の導入や自主事業の増加はサービス向上につながる、複合施設や類似施設は一体的な管理を行ったほうが効率的な運営ができる、準備期間は2か月程度ないと応募の準備が難しいなど、様々な意見を聞いたところである。これらの意見は、施設ごとに公募要項の検討材料として活用できるだけでなく、制度全体の改善に当たっても参考となり、サウンディングの実施は効果的であると考えている。課題については、応募団体数の増加を目的として実施しているものの、現時点では応募団体の十分な増加につながっておらず、今後さらなる改善を図っていく必要があると考えている。

◯古川委員 これまでの質疑で、大半の施設の応募団体数が減少傾向にあり、非公募は16%、公募しても1団体のみの応募は61%、応募が複数になるようにサウンディング型市場調査を行っても、今のところ応募者増につながっていないことが分かった。この課題を考える際に、北海道大学法学研究科、公共政策大学院の宮脇淳教授が「指定管理者制度の本質」の中で指摘しているように、次の点に留意する必要があると思うため、紹介する。1点目は、指定管理者制度の導入は当該施設のサービスを民営化することではない。あくまで公共サービスとして位置づけながら、その提供を民間等に委ねるものであり、最終的に公共サービスの持続性確保に関する責任は地方自治体にあること。2点目は、指定管理者制度の導入により即座に行政のスリム化が実現すると考えることは適切ではない。むしろ新たな制度の下で質と持続性を確保するために新たな人材が必要となることを地方自治体として認識すること。3点目は、制度導入後には指定管理者との情報共有に十分配慮し、指定管理者とともに公共サービス提供について考え、行動する姿勢が地方自治体には必要となること。4点目は、指定管理者制度の課題として指摘される事項の大半は、地方自治体の指定管理者に対するモニタリング機能が不十分なことに起因していることから、指定管理者とともに公の施設で提供される公共サービスの質を維持向上させるモニタリング機能を生み出す努力が必要となること。5点目は、指定管理の姿は対象となる公の施設から提供される公共サービスの性格によって様々であり、指定管理を導入する条例等に基づいて展開されるものの、具体的な契約内容を画一的に設定することは必ずしも適切ではなく、モニタリング項目も含め、提供される公共サービスの質に合わせて多様化を図ること。6点目は、地方自治体の職員は二、三年程度で異動することが多く、地方自治体の組織全体として指定管理者制度の理解とノウハウを高める人材育成が必要であること。以上6点の地方自治体側の意識改革である。民間の肌感覚を知るためにも、自治体と民間の本音で語り合った対話が重要だと思っている。応募団体の増加に向けた取組を強化していくことはもちろんのこと、そこで得られた貴重な意見や情報を確実に市民サービスの向上につなげてもらいたいと思う。さて、ここまで指定管理者について一般的なことを尋ねてきたが、先ほど、特に近年では、コロナウイルス感染症の影響により施設の臨時休館や利用制限などが続いたことも影響しているのではないかと考えているとの答弁があった。新型コロナウイルス感染症の第7波など、現在も続く感染症のパンデミックにより、公共施設の指定管理を取り巻く状況は大変困難なものになっていると推測され、そのことについて触れさせてもらう。現時点において、コロナ禍による影響として考えられるものとして、感染予防対策のための業務の一部停止または休館が求められる、休館に伴う事業やイベントの中止等を余儀なくされている、利用者、職員への感染の危険性がある、施設がクラスターの場所となる危険がある、休館期間中は施設利用料収入が全くない、企画していた事業収入を見込めない、再開館しても利用者への外出自粛要請等で利用者が極端に少ない、指定業務以外の業務が発生しているなどが挙げられる。(一社)指定管理協会の報告においても、「コロナ禍という初めて経験する危機に自治体と指定管理者の間で何も決めていない状況で役割分担が揺れ、指定管理者が戸惑う場面が多数報告された。これまで大地震や風水害に際して、一つ一つ協議を重ね課題を解決しながら築き上げてきた相互の信頼関係が無に帰するような事態も見て取れ、今後自治体との信頼関係を保っていけるのか不安になる」といった深刻な回答も寄せられていたとのことである。こうした事態に陥らないためにも、役割分担の明確化及び減収補填などの対策を講じる必要があると思う。今後も民間活力を最大限に活用した魅力ある施設運営及び市民サービスの向上を図ってもらいたいと思うが、市長の所見を尋ね、質問を終わる。

△市長 指定管理者制度については、施設運営に民間団体の有するノウハウを活用することにより、多様な住民ニーズへ効果的、効率的に対応することができるものである。この制度をより効果的に運用していくためには、選定における競争性をできる限り確保し、様々な民間のアイデアを活用していくことが重要であると認識している。また、民間団体の意見をしっかりと聞き施設運営に反映していくことや、指定管理者との信頼関係を深めていくことが、施設の魅力向上、市民サービスの向上につながるものと考えている。今後とも民間団体の意見や施設利用者の声を聞きながら、競争性の確保に努め、指定管理者制度の適切な運用にしっかりと取り組んでいく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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