◯尾花委員 公明党福岡市議団を代表して、ポストコロナ時代に求められるものをテーマに、「大きな社会変革のラストチャンスの気概を持って」を副題として、世代を超えた市民全体のデジタルリテラシー、活用能力の向上、教育、自然、文化、芸術の力による社会の閉塞感の打破の観点から質疑を行う。コロナ禍の影響により、世界的な規模で経済の低迷が深刻化しているが、こうした不況を脱する政策として思い起こされるのが、1933年に米国のフランクリン・ルーズヴェルト大統領が世界恐慌克服のために示したニューディール、新規まき直し政策である。最初の2年、救済(Relief)、次の2年、回復(Recovery)、その後の2年、改革(Reform)、それぞれの政策の頭文字を取って3R政策と言われているが、実に6年の歳月がかかっている。最近、中西宏明経団連会長が民報のインタビューに答えていたものを聞いたが、「ポストコロナの時代に求められるものは、これまで、四、五年かかっていたものを、すぐにやらなければならないスピード感」というフレーズがとても印象に残った。国においては、新型コロナウイルス対策の陣頭指揮を執っている西村内閣府特命担当大臣も、デジタル・ニューディール、グリーン・ニューディール、ヒューマン・ニューディールということを提言し、新型コロナウイルス感染症によって浮き彫りになった、我が国が長年抱えてきた課題解決のために全力で取り組むことを表明しているが、全く同感である。ポストコロナの時代は感染リスクを抑えるために、ニューノーマル、新しい日常の中で3Rを同時並行に進めなければならず、課題解決のための施策の柱は、デジタル化の推進とグリーン社会の実現であり、そして、何よりも大切なのはその施策を実施するための人への投資、人材育成だと思っている。そこで、本市において、デジタル、グリーン、ヒューマンの3つの施策が少しでも早く市民の隅々まで行き渡ればと思い、質疑を行っていく。まず、「DXの推進について」をテーマにした令和2年決算特別委員会の9月24日の総会質疑において、総務企画局長は、全庁を挙げてデジタル化の強化に取り組むと答弁しているが、その後、どのようなスピード感を持って、どのようなことに取り組んでいるのか。象徴的な事業として、DX戦略課の新設、(仮称)福岡市情報通信技術を活用した行政の推進に関する条例の検討、公民館Wi-Fi環境整備事業、全市版プレミアム付商品券事業などがあるようだが、その概要を尋ねる。
△総務企画局長 DX戦略課については、市役所のDXを全庁的に推進するため、令和2年11月に新設しており、その業務内容は、DXに係る総合的な企画調整である。具体的には、民間人材のDXデザイナーの専門的な知見を活用しながら、誰もが使いやすく分かりやすいユーザーインターフェースの導入や仕組みづくりを進めているほか、RPAの活用推進などにも取り組んでいる。(仮称)福岡市情報通信技術を活用した行政の推進に関する条例については、総務企画局において、行政手続等に関し、オンラインにより行うことができるようにするための共通する事項を定める条例の制定に向けて検討している。現在、パブリックコメントを実施中であり、6月議会において条例案を提出する予定である。
△市民局長 公民館Wi-Fi環境整備事業については、地域のデジタル化を促進するため、国の交付金等を活用し、全ての公民館に令和3年秋を目途にWi-Fi環境の整備を進めることとしている。
△経済観光文化局長 全市版プレミアム付商品券事業については、福岡商工会議所、志賀商工会及び早良商工会が共同で実施する、市内全域の登録店舗で利用可能な電子版プレミアム付商品券を発行するものであり、利用者がスマートフォンなどで商品券の購入及び店舗での支払いを行うものとなっている。なお、商品券のプレミアム率を販売額の20%とし、本市と福岡県がそれぞれ10%を補助するほか、事務経費については主に本市が補助する。
◯尾花委員 令和3年度予算の各事業において、DXをどのように具体化していくのか。象徴的な事業として、新電子申請システムの本格運用、窓口のデジタル化の実証実験の開始、マイナンバーカードの普及促進、マイナンバーカードの円滑な交付、地域のデジタル化支援事業、介護予防の充実・強化事業などに取り組むようだが、その概要を尋ねる。
△総務企画局長 新たな電子申請システムについては、電子申請における申請画面の視認性や操作性の改善、決済機能の追加など、市民の利便性向上を図るため、電子申請システムを刷新するものである。現在、民間人材のDXデザイナーからも多くの意見やアイデアをもらいながら、スマートフォンでも見やすく、シンプルで入力しやすい画面のデザインなどについて、鋭意検討を行っている。窓口のデジタル化の実証実験については、公民館などの市民の身近な場所等にビデオ通話が可能な機器を設置することで、市民が区役所等に出かけることなく、遠隔での手続や相談を可能とする実証実験を行うものである。マイナンバーカードの普及促進については、公民館などの身近な場所へ出向き、申請手続の補助や受付等を行う出張サポートを令和2年8月から実施しているが、令和3年度は、公民館などのほか、地域の団体等が希望する場所に出向く出前サポートを新たに実施するとともに、実施回数を2年度の約400回から800回程度へ倍増する予定としている。
△市民局長 マイナンバーカードの交付については、区役所や証明サービスコーナーなどのこれまでの窓口に加え、新たに令和3年6月に臨時交付センターを開設することとしている。当センターは平日夜間や土曜、日曜も開設するとともに、インターネットや電話での予約により、短時間で交付できるようにしていきたい。また、申請については、写真撮影などのサポートや本人確認を行うことにより、マイナンバーカードを自宅に郵送することができるようにするなど、より一層の利便性の向上や円滑な交付に努めていく。地域のデジタル化支援事業については、全ての公民館に整備するWi-Fi環境を活用し、WEB会議サービスなどオンラインを活用した講座やオンライン申請の相談会等を実施していきたい。
△保健福祉局長 介護予防の充実・強化事業については、コロナ禍において、高齢者が家に閉じ籠もりがちになり、認知症や要介護のリスクが高まることが懸念される中、ICTツールを活用した非対面交流やオンライン講座を実施することで、継続的な交流やオンラインのコミュニティの創出につなげるなど、新しい生活様式に対応した介護予防の取組を推進するものである。
◯尾花委員 令和3年秋を目標とした全ての公民館へのWi-Fi環境整備や、マイナンバーカードの申請の出張サポート倍増など、様々な事業にスピード感を持って取り組んでおり、大変期待している。市長は令和3年度の市政運営方針の中で、「市民の命と暮らしを守るため、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた取組を強力に推し進める」と述べている。令和2年版経済財政白書によると、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、移動や人との接触を避けることができるインターネットを介したEC、電子商取引の有用性が改めて認識され、総務省家計消費状況調査において、令和2年5月以降、全ての世帯主年齢階層で、こうしたデジタル化による消費が拡大しているとのことである。感染拡大防止と社会経済活動の両立のためには、こうした状況にしっかり対応することが重要である。令和3年度の本市が行う農業、漁業者を対象にしたEC活用支援策の概要について尋ねる。
△農林水産局長 農業では、ECに取り組む農家に対し、活用のサポートや出品等に係る経費を支援し、先駆的に取り組む農家の姿や活用方法、効果をPRすることにより、市内における農家での活用を促進していく。漁業では、市漁業協同組合が実施するECを活用した直販事業の取組を支援することで、水産物の消費拡大に努めていく。
◯尾花委員 公民館のWi-Fi環境整備については、「子どもから高齢者まで地域住民がSNSに取り組める施策の取組について」をテーマにした平成28年決算特別委員会の10月6日の総会質疑の中で、どのキャリアでも使える公民館Wi-Fi環境整備の必要性を訴えた。あれから4年が経過し、遅きに失した感があるが、ようやく実現の日の目を見た。令和3年度から教育委員会の生涯学習の業務の一部が市民局に移管されることを踏まえ、地域のデジタル化支援事業と併せ、スピード感を持ってどのような施策に取り組んでいくのか。
△市民局長 公民館については、これまでも高齢者等を対象に、スマートフォンの使い方等を学べる講座として、公民館スマホ塾を実施しており、今後は公民館のWi-Fi環境の整備を踏まえ、オンラインを活用した講座やオンライン申請の相談会を実施するなど、地域のデジタル化の拠点として事業の充実に努めていく。
◯尾花委員 先ほど来、象徴的な事業の概要を立て続けに答弁してもらったが、これらの事業に横串を刺し、成否の鍵を握るのは、デジタルを使いこなす市民を増やすことに尽きると思う。ポストコロナの時代、全公民館でのWi-Fi環境整備もようやく整い、地域の身近なところでデジタル人材の育成が可能となった。デジタルを実際の地域や現場で利用できる基盤をつくるという目標の設定がとても大事だと思っている。具体的には、使いやすく分かりやすいユーザーインターフェースの導入も含む公民館や公共施設のアクセシビリティーの向上、電子申請手続や防災、防犯、生活、消費者対策の情報発信としてのLINE等のフル活用、キャッシュレス決済アプリの活用、オンラインビデオ会議システムアプリ、ズームなどの活用、電子版プレミアム付商品券の購入の手ほどき、飲食店などのデリバリーや農業、水産業者からのECの活用支援、オンラインによる非対面交流や講座の活用支援などに直結するスマホの使い方講座や相談コールセンターの開設なども行い、高齢者などのデジタルデバイド、情報通信技術を利用して恩恵を受ける者と利用できず恩恵を受けられない者との間に生じる知識、機会、貧富などの格差の解消や、昨年の9月決算議会でも取り上げたデジタルミニマム、子どもから高齢者まで、障がい者や外国人などあらゆる社会層が安全、安心、快適に暮らしていける地域共生社会を目指すために一人一人が最低限度の情報通信技術を活用できる環境を保障することはとても大切なことである。そして、さらなる次元を目指し、スマホなどにより情報収集から各種電子申請までお茶の子さいさい、キャッシュレス決済により農水産物を店頭やインターネットでやすやすと購入し、オンラインによる会議や講座の受講も何のその、IT用語では実装と言うそうだが、装置や機器の構成要素となるものをすぐにも使えるように組み込み、ばんばん使いこなせることを最終目標としてもらいたいと思う。世代を超え、実際の地域や現場でデジタルが幅広く活用されている、福岡市は日本一のデジタル先進都市と言われるまでのスピード感のある市民全体のデジタルリテラシー、活用能力の向上にも取り組んでもらいたいと思うが、所見を尋ねる。
△総務企画局長 指摘のとおり、デジタル化の重要性はより高まってきていると認識しており、現在、行政手続や市民サービスのデジタル化、オンライン化など、DXの取組を全庁を挙げて積極的に進めている。今後は、使いやすく分かりやすいユーザーインターフェースを導入し、市民に利用してもらうとともに、全ての公民館にWi-Fi環境の整備を進め、公民館におけるオンライン申請相談会を実施するなど、高齢者などにも十分配慮しながら、市民の利便性の向上を図っていく。これらの取組を進め、より多くの人がデジタル技術を活用できる環境づくりにより、市民全体のデジタルに対するリテラシーの向上にも着実につなげていきたい。
◯尾花委員 少し角度を変えるが、一般会計歳出性質別比較において、貸付金が対前年度伸び率222.7%と過去最大規模になっている。幾ら予算をつけても、実際にスピーディーに使えなければ意味がない。特に、市内中小事業者の資金需要に対応するための商工金融資金が増えているが、それに伴う申請件数の大幅な増加に対応するため、申請のデジタル化などに新年度どのように取り組むのか。
△経済観光文化局長 商工金融資金については、新型コロナウイルス感染症の影響による中小企業、小規模事業者の資金需要の増加に対応するため、令和3年度は、当初予算としては過去最大となる5,854億円余の融資枠を確保するなど拡充を図っており、それに伴う申請件数の増加に対応するため、オンライン申請も活用し手続の簡略化を図り、迅速、円滑に融資が実行されるよう引き続き努めていく。
◯尾花委員 デジタル化の課題が浮き彫りとなる要因になった、緊急時の給付金等の支給のためのマイナンバーと口座のひもづけなどは、今後どのようにスピード感を持って進めていくのか。
△総務企画局長 国において、緊急時等の公的給付の支給事務においてマイナンバーを利用できるようにする仕組みと、預貯金口座の登録、利用の仕組みの創設に向け、関連法案が国会に提出されており、令和4年度中の運用開始を目指すとされている。
◯尾花委員 がらっと話題を替えるが、最近、子どものコロナ鬱が深刻で、小学校4年生以上の15~30%の子どもに中等度以上の鬱症状があるとの国立成育医療研究センターの発表があった。また、昨年の自殺者2万人超え、女性の増加が顕著、小中高生の自殺者が過去最多などの報道を目にし、とても心が痛む。何としてもコロナ禍による社会の閉塞感を打ち破らなければならない。教育の目的とは、生きる力、生き抜く力を身につけることである。そこで、令和3年度予算の人への投資について、象徴的な事業として、子どもたちを対象としてICTを活用した新しい学習スタイルの確立、ひとり親を対象としてキャリアアップ支援やリカレント教育の強化などに取り組むようだが、その概要を尋ねる。
△教育長 ICTを活用した新しい学習は、デジタル教科書を活用した視覚的で分かりやすい授業や、学習支援ソフトの活用による考えを共有しやすい授業、AIドリルの活用による一人一人の習熟度に応じた授業などを実施し、全ての児童生徒の可能性を最大限に引き出していく。
△こども未来局長 ひとり親を対象とした就労等の支援については、児童扶養手当の所得水準にあるひとり親を対象に、就職に有利となる資格の取得を支援し、生活の安定に資するため、令和3年度から高等職業訓練促進給付金の対象資格を、これまでの看護師、保育士、介護福祉士、作業療法士、理学療法士、歯科衛生士、美容師、社会福祉士、製菓衛生士、調理師の10資格から、新たに2級自動車整備士、栄養士、理容師、きゅう師、はり師、柔道整復師、助産師、言語聴覚士、臨床工学技士、歯科技工士、精神保健福祉士の11資格を追加し、合計21資格に拡大することとしている。
◯尾花委員 ポストコロナの時代、オンラインによる学びや働き方の変化による学び直しの可能性の拡大に迅速に対応することが必要である。令和元年第4回定例会の9月17日の一般質問の提案に対し、ひとり親家庭自立支援給付金事業の高等職業訓練促進給付金については、令和2年4月からの通信制への対象拡大に続き、令和3年度には、これまでの看護師などの10の資格から、新たに2級自動車整備士などの11の資格を追加し、合わせて21資格へ対象となる資格を大幅に拡大するとのことである。ひとり親家庭の父母の笑顔が目に浮かぶようである。福岡アジア都市研究所の中村由美研究主査も、「働き方の変化による学び直しの可能性に関する一考察」の中で、コロナ禍で見られたテレワークなどの人々の働き方や時間の使い方、時間や場所に関する概念の変化が社会人の学び直しにとって新たな転機となる可能性があることを示唆していた。人生100年時代を皮切りに、市民のオンラインなどを通じたキャリアアップ支援やリカレント教育の充実に取り組んでもらいたいと思うが、生涯学習の観点から教育委員会に、産学官連携によるリカレント教育の促進の観点から経済観光文化局に所見を尋ねる。
△教育長 一人一人が学びを通じてその能力を維持向上し続けることができるよう、誰もが生涯にわたり必要な学習を行っていくことは非常に重要であると考えている。このコロナ禍を契機として、社会のデジタル化が加速する中で、学びの在り方も変化してきており、今後とも多様な市民の学習活動を支援していく。
△経済観光文化局長 産学官連携によるリカレント教育の促進については、福岡都市圏の大学が中心となり、本市も参加する福岡未来創造プラットフォームにおいて関連プログラムを実施している。具体的には、令和2年度は、子どもの貧困をテーマにしたオンライン講座を実施しており、3年度は、同講座を継続するとともに、新たなテーマを検討している。社会人の学び直しは、ポストコロナ時代に対応した新しいビジネスモデルやイノベーションを促進する上で重要であると考えており、今後とも大学や産業界と連携を図っていく。
◯尾花委員 留守家庭子ども会事業及び放課後等の遊び場事業に係る体制見直し、こども未来局から教育委員会への移管の意図は学校との連携体制の強化と聞いているが、それにより、具体的にどのような子どもの育成支援の充実を図るのか。
△こども未来局長 子どもたちを取り巻く環境が複雑かつ多様化している状況の中で、両事業を教育委員会に移管し、学校との連携体制を強化することにより、子どもたちに一層きめ細やかに対応できるようになるとともに、今回の新型コロナウイルス感染症をはじめ、予測困難な事態が発生した場合についても、より迅速かつ柔軟な対応ができるようになるものと考えている。
◯尾花委員 教育現場においては、英語教育、プログラム教育、今般のICT活用などが続き、多様な教育ニーズへの対応にてんてこ舞いだと思うが、現場の先生の話を聞くと、ICTの活用によって学習の在り方がドラスティックに変わるようで、ICTを活用した新しい学習スタイルの確立には大変期待している。その一方で、進学、進級の時期になり、障がいを持つ子どもを特別支援学校以外の地域の学校で学ばせたいという保護者から、ICTを活用した新しい学習スタイルに関する相談を複数受けている。そこで、GIGAスクール構想の実現において、1人1台端末のほかに、視覚や聴覚、身体等に障がいのある児童生徒の端末使用に必要となる入出力支援装置の整備の予算措置も国から行われており、的確に対応しなければならないと思うが、その取組状況を尋ねる。
△教育長 国の補助金を活用して、視線の動きに応じて端末への入力を行う装置を、学校長の意見を基に特別支援学校2校に導入している。今後も、入出力支援装置などが必要な児童生徒には的確に対応していく。
◯尾花委員 福岡アジア都市研究所の菊澤育代研究主査の「イノベーション力を育む多様な学び-ICT教育、STEM教育、デザイン思考教育の考察を通して-」によれば、1人1台端末の環境下では、一斉学習では、双方向型のコミュニケーションが確保され、教室の座る位置によって目が行き届きにくい状況や学習の遅れに気づかない状況が生まれにくくなる。個別学習では、各人の教育的ニーズや学習状況に応じて学べることから、得意な教科では学習をどんどん進め、苦手な教科では時間をかけて基礎を理解することが可能になる。協働学習では、一人一人の考えがリアルタイムで共有され、全員の参加度が高まる。調べ学習では、ICTの活用により情報収集、整理、分析力の向上、表現、制作の幅が広がる。そのほか、遠隔教育における多様な考えに触れる機会の創出、情報技術の活用場面の増加による情報モラル教育効果が期待されるとのことである。しかし、デジタル学習、オンライン学習などのICT活用教育において、日本が他のOECD諸国に比べ大幅に遅れを取っていることが、PISA、OECD生徒の学習到達度調査の2018年の報告で明らかになっている。例えば、国語の授業において、デジタル機器を週に30分以上利用する割合を見ると、デンマーク81.3%、OECD平均22.6%に対し、日本は5.4%であり、OECD加盟国中最下位。また、生徒がコンピューターを使って宿題をする頻度を見ると、ほぼ毎日と答えた割合がOECD平均22.2%に対し、日本は3.0%となっており、さらには、全くかほとんどないとの回答が日本は78.8%と非常に高い値を示したとのことである。その一方で、ネット上でチャットをする、1人用ゲームで遊ぶ、インターネットでニュースを読むなど、日常でのデジタル機器の利用はOECD平均を上回っていることから、デジタル機器が身の周りにない、あるいは使い慣れていないわけではない。インターネットやデジタル機器が学習のために利用されていないという実態が浮かび上がっているとのことである。そこで提案だが、家庭学習の充実については、タブレット端末の持ち帰りも可能になることを踏まえ、留守家庭子ども会事業と放課後等の遊び場づくり事業においても、学校のネットワーク環境を利用し、ICTを効果的に活用した個別最適化された学習支援、インターネットやデジタル機器の学習利用の動機づけや様々な体験活動などの充実にもぜひ取り組んでもらいたいと思うが、所見を尋ねる。
△こども未来局長 留守家庭子ども会は、家庭に代わり生活の場を提供する事業であり、その活動の中で子どもたちが宿題に取り組む時間もあることから、学校と連携し、家庭学習の状況を踏まえながらICTの活用を検討していく。また、放課後等の遊び場づくり事業は、校庭での自由遊びを基本に、子どもたちが主体的に遊べる場をつくる事業であることを踏まえつつ、ICT活用の可能性について検討していく。
◯尾花委員 成績低下という学習面でのつまずきが自尊感情の低下を招き、多くの子どもたちの貴い命を奪う自殺の背景になっていると聞き及んでいる。コロナ禍により、生活を支えるため、遅くまで共働きをしなければならない世帯も増えてくると思う。また、ひとり親は、仕事の掛け持ちなどで疲れ果ててしまい、子どもに十分に接する時間が取れないかもしれない。どうか留守家庭子ども会を利用する子どもたちがICTを活用した家庭学習の習慣が身につくような取組をぜひ進めてもらいたい。また、生涯学習に係る体制の見直し、教育委員会から市民局への移管の意図は、生涯学習と地域コミュニティ活動の支援を一体的に行うことと聞いているが、そのことで、どのような施策を行い、どのような効果を上げようとしているのか。
△市民局長 令和3年度の市民局の組織については、生涯学習の推進に係る業務の一部を教育委員会から移管することとしている。生涯学習など、地域での学びはコミュニティ活動につながっていくものと認識しており、市民局において、地域の状況やニーズを踏まえながら、より効果的かつ一体的に生涯学習や地域コミュニティ活動の支援を行っていきたい。
◯尾花委員 公民館などにおいて、生涯学習という様々な学びの機会を提供しつつ、そこで醸成された絆により、地域活動への参加者や役員等の担い手が不足している課題解決などに向けた地域人材の発掘、育成にも取り組んでもらいたいと思うが、所見を尋ねる。
△市民局長 公民館については、地域において人や組織をつなぎ、育成する役割が大変重要であると考えており、公民館利用者の地域活動への参加促進や様々な主体と地域をつなぐ取組、地域活動の担い手の育成などに取り組んでいる。今後とも、地域のデジタル化の支援などにより、さらなる地域人材の発掘や育成に向けて取組を推進していく。
◯尾花委員 冒頭に触れた米国のニューディール政策は、フェデラル・ワンと呼ばれる文化芸術振興なども大事な柱であったと言われている。令和3年度に、文化芸術の鑑賞・体験機会や文化芸術活動の支援の充実、美術館・博物館の魅力及び機能の充実、子どもの居場所や体験機会の充実、市民が触れ合う自然共生のまちづくり、環境教育・学習を推進する取組の一環として実施する親子見学会など、幅広い事業に取り組むようだが、その概要を尋ねる。
△経済観光文化局長 文化芸術に関する取組の概要については、コロナ下において、市民が文化芸術に触れる機会の重要性がますます高まっていることから、文化芸術活動者への支援として、助成の拡充やハイブリッド公演の開催支援を継続して実施する。あわせて、福岡市民芸術祭や子ども文化芸術魅力発見事業などの実施を通して、市民の文化芸術の鑑賞、体験機会の充実に取り組んでいく。また、美術館、博物館の魅力及び機能の充実については、美術館、アジア美術館及び博物館では、コロナ下においても、オンラインも活用しながら、新しい生活様式に対応した魅力ある展覧会を開催しており、引き続き市民が安心して鑑賞、体験できる機会の充実に取り組んでいく。
△こども未来局長 子どもの居場所や体験機会の充実については、子どもの遊びや活動の場づくり、多様な体験、交流機会の充実に、関係機関や地域団体などと連携して取り組んでいる。具体的には、中央児童会館における遊び、体験、交流の場や、青少年施設における自然体験活動の機会の提供、科学を楽しく体験できる福岡市科学館の運営、地域等が行う活動や遊びを通じて子どもを育む活動への支援などを行っていく。
△環境局長 市民が触れ合う自然共生のまちづくりについては、本市の魅力あふれる豊かな自然の保全と利用の好循環を目指し、コロナ下においても、3密に留意し、森、川、海の自然と触れ合える体験活動を実施することとしている。具体的には、NPOなどとの共働により、森の機能や特徴を学ぶための間伐体験や、木を使ったものづくり講座などを行う森の恵み体験活動、市民や学生との共働により、たくさんの生き物が生息する干潟の重要性について学び、大切にする心を育む干潟の生き物調査など、親子で楽しみながら学べる活動に取り組む予定としている。環境教育・学習を推進する取組の一環として実施する親子見学会については、環境への理解を深め、環境に優しい取組へのきっかけづくりとするため、夏休みに親子で環境に関連が深い施設を巡る体験型イベントとして、新たに実施していきたいと考えている。令和3年度は脱炭素をテーマとし、メガソーラー発電所や水素ステーション、科学館などを巡り、実際に見て、触れて、楽しみながら、再生可能エネルギーや脱炭素のまちづくりについて学んでもらうことを狙いとして取り組む予定としている。
◯尾花委員 コロナ禍の中で苦労しながら、背振少年自然の家が行った出張自然教室、オンラインプログラム、せふりこども天文教室は、その後に児童から取ったアンケート調査結果によると、全体の満足度が90%台後半と、子どもたちにかけがえのない気づきと感動を与えたようである。令和3年度には数多くの学校が参加できることを期待したい。ポストコロナの時代、リアルとオンライン、そのハイブリッド型、何らかの方法によって、幅広い世代の様々な体験の機会、わくわく感の創出が今ほど求められているときはないと思っている。アーティストの熱演を鑑賞する機会の創出、宝の宝庫である美術館や博物館の活用、本市の豊かな海や森など自然との触れ合い、海の中道や背振の少年自然の家などの青少年施設を存分に生かした取組など、コロナ禍の中、3密に留意しながら、子どもたちが五感を揺さぶる人、物、ことの本物に出会える機会の創出に工夫して取り組んでもらいたいと思うが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 新型コロナウイルスの感染状況に留意しながら、引き続き、市内の小学校へ伝統文化、演劇、音楽などのアーティストを派遣し、子どもたちが文化芸術に親しむ機会を提供していく。また、美術館、アジア美術館及び博物館において、小中学生を対象に、美術作品や福岡の歴史、文化財に触れるスクールプログラムやこども博物館を実施するほか、アジア美術館では、絵本ミュージアムや子ども向けのワークショップなどを開催する。あわせて、学校などに出向き、どこでも美術館や博物館出前学習などを実施するとともに、オンラインも活用しながら、多くの子どもたちの鑑賞、体験機会の充実に取り組んでいく。
△こども未来局長 背振少年自然の家及び海の中道青少年海の家においては、立地環境を生かした野外活動や天体観測などのプログラムにより、子どもたちが自然の豊かさや大切さを学ぶ機会を提供するとともに、新型コロナウイルス感染症の影響の中で、学校に赴いて、直接、工作等を教えたり、オンラインで周辺の自然環境を紹介するなど、少しでも本物の臨場感を伝えられるよう、新たな活動にも引き続き工夫しながら取り組み、充実させていく。
△環境局長 自然と触れ合う機会の創出については、環境保全意識の醸成を図り、自然環境を大切にする心を育むため、重要であると考えている。森の恵み体験活動では、森のすばらしさや木のぬくもりを体感し、干潟の生き物調査では、実際に干潟に入り、様々な生き物に触れて調査をするなど、今後も森、川、海など様々な自然において、五感を使って楽しむことができる体験活動の充実を図るとともに、オンラインも活用するなど、魅力的な自然や様々な生き物と触れ合う機会の創出に取り組んでいく。
◯尾花委員 特に、文化芸術の振興については、コロナ禍を契機に、文化芸術基本法に定める様々な文化芸術が福岡のまちで花開いたと言われるような、まちなかに文化芸術があふれる施策の展開をぜひ進めてもらいたいと思うが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局長 文化芸術は、市民一人一人の心豊かな生活やまちの潤いやにぎわいにつながるものであり、大変重要であると認識している。令和3年度は、新たに設立される音楽関係者の協議会と連携し、ストリートピアノやまちなかでのパフォーマンスを実施するほか、屋外でのアートイベントを開催するなど、コロナ下においても、市民が文化芸術を鑑賞する機会を創出し、文化芸術を生かしたまちのにぎわいや活性化を図っていく。
◯尾花委員 自然体験など、様々な経験をした子どもほど、自己肯定感、道徳感、正義感が高いという(独)国立青少年教育振興機構が実施した青少年の体験活動等に関する意識調査にあるように、これらの事業に取り組むことが子どもや若者などの鬱や自殺の予防、社会の閉塞感を打ち破ることにつながるという意味の大切さにいま一度立ち返って、事業の確実な執行を行ってもらいたいと思う。少し角度を変えるが、道路や公園、海岸の清掃など、これまでもぎりぎりの予算で、年1回程度実施されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、市税収入が大幅に減少する見込みであり、その後についても一般財源の大幅な伸びが期待できない中で、それらの業務を執行するための予算確保はできているだろうかととても心配になる。内閣府が実施した13~29歳を対象にした、子供・若者の意識に関する調査によると、「社会のために役立つことをしたいか」との問いに、「どちらかといえばそう思う」45.2%、「そう思う」25.7%と、合計で7割を超える子どもや若者たちが社会のために役立つことをしたいと答えている。そこで提案だが、令和3年度に、自然環境の保全、公園や緑地などの除草、森と海の再生交流事業などの地域清掃を含む事業を執行する際に、ぜひ子どもや若者などの有償を含むボランティア活動への参画をこれまで以上に積極的に促してはどうか。ボランティア活動によって、ユニバーサル、優しい心にあふれたまちづくりが推進できると思うが、所見を尋ねる。
△環境局長 自然環境の保全に関する事業については、ラブアース・クリーンアップ一斉清掃では、多くの若者やボランティア団体などとの共働により海岸などの清掃活動を行っており、里海保全再生活動では、地域住民や大学生などとの共働により漂着ごみの回収などを行っている。環境に関する多様な活動へ、より多くの若年層に参加してもらい、その必要性を知ってもらうことが自然環境を将来にわたって保全するための重要な視点であると考えている。今後も様々な主体の清掃活動や海洋プラスチック削減の啓発活動などに今まで以上に多くの子どもや若者が参加できるよう、取組を広げていく。
△住宅都市局長 公園や緑地などの除草については、これまでも子ども会などで構成される公園愛護会を中心として市民の協力を得ていた。引き続き、公園愛護会を含め、ボランティア活動の充実に取り組んでいく。
△農林水産局長 森と海の再生交流事業については、森林から供給される水が豊かな漁場を育んでいることから、水域全体としての環境保全を図るため、平成15年度から、漁業者をはじめ、林業関係者、市民ボランティア団体などと連携し、様々な世代とともに植林活動を実施してきた。令和3年度の事業実施に当たっては、参加団体と連携、協力し、植林以外の活動にも取組を広げるとともに、子どもや若年層により多く参加してもらえるよう努めていく。
◯尾花委員 ポストコロナの時代、デジタル、グリーン社会実現のために、人材育成、人への投資、ヒューマン・ニューディールの必要性をるる述べてきた。特別支援の対象となる子どもも含め、全ての子どもたちが同じ教室で学ぶ教育を実践してきた、草分けとして有名な学校である大阪市立大空小学校の初代校長の木村泰子氏が、「コロナ禍で生きる若い皆さんには、全てを学びのチャンスにしていってほしい。過去は過去。これは幾ら頑張っても変えられません。けれど、今から1秒先は未来です。未来はこの瞬間から幾らでもつくれます。どんな失敗をしても、悔しい思いをしても、命がある限り、生きている限り、やり直せばいい。そこに学びがあるんですから。こんな時代だからこそ、新しい発想で新しい社会をみんなと一緒につくっていける。そう思うと、何だかわくわくしませんか」と語っておられたことにとても感銘を受けた。市長は、新たな時代の変革期にあってこそ、誰一人取り残さないというSDGsの理念を踏まえ、真に必要な施策、事業を積極的に推進し、本市が一体となって経済的な成長と安全、安心で質の高い暮らしのバランスが取れた持続可能なまちづくりを進めることが大切だと述べている。その実現のためには、SDGsの理念を体現した、ポストコロナという危機の時代に価値創造を行う主体者である人への投資が何よりも必要だと思う。最後に、市長に、ビルド・バック・ベター、以前よりよりよい社会の構築に向けた決意を尋ね、質問を終わる。
△市長 指摘のとおり、ポストコロナを見据えた時代の変革期において、デジタル社会やグリーン社会の実現に向けた人材を育成するとともに、ダイバーシティ推進の観点から、幅広い人材の参画を得ながら、新たな社会づくりを進めていくことが大変重要であると認識している。そのために、令和3年度はGIGAスクール構想の推進や地域のデジタル化などにより、子どもから高齢者まで、誰もがデジタル技術を活用できる環境づくりを進めるとともに、文化芸術や自然と触れ合う体験機会の拡充、脱炭素をはじめとした環境教育の推進、ボランティア活動への参加促進などに積極的に取り組むこととしている。新型コロナウイルス感染症は市民生活や地域経済に様々な影響を及ぼしているが、このピンチをチャンスとして捉え、感染症に強く、より国際競争力が強いまちづくりに積極的にチャレンジするとともに、誰一人取り残さないというSDGsの理念を踏まえ、誰もがその能力を存分に発揮できる、ポストコロナにふさわしい持続可能な都市づくりに今後ともしっかりと取り組んでいく。