▼令和3年 条例予算特別委員会 勝山 信吾 総会質疑 (令和3年3月22日)

◯勝山委員 公明党福岡市議団を代表して、複合的な課題解決に向けた相談体制強化について、若年代介護者、ヤングケアラーの早期発見と支援について質疑を行う。初めに、複合的な課題解決に向けた相談支援体制の強化についてである。日本の福祉制度は、1980年代後半以降、高齢、障がい、子どもなど属性別、対象者別に制度が整備されてきた。一方で、人口減少など社会構造の変化に伴い、いわゆる8050問題や社会的孤立、介護と育児を同時に行うダブルケア、ひきこもり問題など、制度、分野を超えた複合的な課題が表面化してきている。複合的な課題を抱えている人はこれまでの法制度、支援の枠組みに当てはまらないため、相談に行ってもたらい回しに遭ったり、結果的に解決につながらなかったという残念な声を市民相談などで聞いている。そこで、地域の身近な相談窓口として地域包括支援センターや障がい者基幹相談支援センターがあるが、センターで働いている職員の声や課題についてどのように把握しているのか。

△保健福祉局長 各相談機関の課題等については、日々の業務連絡や相談機関相互の連絡会のほか、市の職員による相談機関の巡回や実地調査など、様々な機会を捉えて把握に努めている。また、令和2年7月には、地域包括支援センター、区障がい者基幹相談支援センターなどの職員を対象に、複合的な課題への対応に関わるアンケート調査も実施している。

◯勝山委員 昨年7月にアンケート調査を行っているとのことだが、内容について何点か尋ねる。複数の課題が複合化した相談を受けたことがある割合と複合化した相談が増加傾向にあると感じている人の割合はどれくらいか。

△保健福祉局長 アンケート調査の結果によると、各相談機関のほぼ全ての職員が、課題が複合化した相談を受けたことがあると回答しているほか、複合化した課題を抱えた相談が増加傾向にあると回答した人の割合が約9割となっている。

◯勝山委員 複合化した相談において、よく対応する課題の上位3つを尋ねる。

△保健福祉局長 よく相談対応するものを多い順に、経済的困窮を含む課題、高齢と障がいの重複した課題、病識のない精神疾患から派生する課題となっている。

◯勝山委員 経済的困窮を含む課題や精神疾患の疑いから派生する課題など、今後のコロナ禍においてもさらに複合化した課題は顕著になってくると思われる。そこで、課題が複合化した相談について、職員が感じている難しさや課題はどのようなものがあるのか。

△保健福祉局長 各相談機関の職員が難しいと思う課題としては、制度が複雑化しており必要な知識を習得することや、行政や関係相談機関の間で適切な役割分担を定めることなどである。

◯勝山委員 地域包括支援センターと障がい者基幹相談支援センターが受けた過去3年の相談件数と職員数の推移について尋ねる。

△保健福祉局長 市内57か所の地域包括支援センターについては、相談件数は、延べ件数で平成29年度が15万8,451件、30年度が16万846件、令和元年度が16万9,675件である。職員数は、平成29年度が214人、30年度が225人、令和元年度が236人である。次に、市内14か所の区障がい者基幹相談支援センターについては、相談件数は、延べ件数で平成29年度が6万6件、30年度が7万7,419件、令和元年度が8万6,545件である。職員数は、平成29年度以降59人を配置している。

◯勝山委員 多重債務問題や介護・障がいの重複、自分で認識のない精神疾患を持つ相談など、相談件数も右肩上がりで急増している一方で、対応する職員数はほとんど変わっておらず、職員1人当たりの負担を見ると、地域包括支援センターでは718件、障がい者基幹相談支援センターでは1,466件と、既に限界を超えているように感じる。先日、障がい者基幹相談支援センターの担当者から話を聞いたが、その事業所でも相談件数が飛躍的に増えており、日常的な相談援助や緊急対応など提供すべき範囲を超える支援が続き、職員の疲弊が常態化しているとのことだった。どの委託相談機関も使命感を持って相談業務に従事してもらっているが、職員の多大な負担を考えると次の更新時期に二の足を踏んでしまうとも言われ、支援者を守る必要性を感じた。相談の成否を左右するのは、言うまでもなく支援を担う人材である。人材の育成・確保、専門性の向上、処遇改善を図り、支援者を孤立させない取組が必要だと考えるが、本市の現状認識と併せてどのように取り組んでいくのか、所見を尋ねる。

△保健福祉局長 相談支援に携わる人材の育成等については、現在、地域包括支援センターにおいては、高齢者人口に応じた職員の増員や情報共有を円滑にするための業務のICT化、区障がい者基幹相談支援センターにおいては、コーディネーター研修の充実や業務負担の軽減を見据えた相談支援体制の在り方の検討を行っている。本市としては、各相談機関における相談件数の増加や支援ニーズの多様化を踏まえ、職員のさらなるスキルアップや負担の軽減、組織対応力の強化を図るとともに、相談機関相互の連携をより促進していく必要があると考えている。

◯勝山委員 社会福祉法の改正に伴い、令和3年度から重層的支援体制整備事業がスタートするが、その概要と本市の取組を尋ねる。

△保健福祉局長 重層的支援体制整備事業については、複合化、複雑化した課題や既存の制度では対応が難しい課題など、従来の分野ごとの社会保障制度では十分な対応が難しい課題に対応するため、社会福祉法の改正により新たに規定されたものである。その概要については、複合化、複雑化した課題について、複数の支援機関による相互連携の促進や、既存の制度では対応が難しい課題について、社会参加やアウトリーチ支援を実施することで包括的な支援体制の構築を図るものである。また、重層的支援体制整備事業への円滑な移行に向けて移行準備事業が設けられており、本市としては当該事業を活用し、重層的支援体制整備事業への移行を検討していく。

◯勝山委員 重層的支援体制整備事業への移行準備事業とはどのような事業なのか、国と本市の負担割合と併せて尋ねる。

△保健福祉局長 移行準備事業については、重層的支援体制整備事業への段階的な移行を促進するために新たに設けられたものであり、重層的支援体制整備事業では一体的に実施される多機関協働、地域づくり・アウトリーチ支援、参加支援を段階的に実施することが可能となっている。国と市の負担割合については、国が4分の3、市が4分の1であり、重層的支援体制整備事業と同率の国庫補助制度となっている。

◯勝山委員 現場の困難な状況や負担を軽減するために、国の補助を有効に活用して重層的支援体制整備事業にしっかり取り組んでいくことが重要だと考える。特に検討会や研修会の開催などの多機関協働の体制構築、はざまの問題に対するアウトリーチ支援の充実などを図る必要があると思うが、本市としてどのように取り組んでいくのか。

△保健福祉局長 重層的支援体制整備事業に向けた取組については、移行準備事業を活用し、複合化した課題への対応に向けて多機関協働の体制構築を検討するための事例検討会や研修会を実施するほか、制度のはざまにある課題への対応に向けて社会福祉協議会に支援員をモデル配置し、アウトリーチによる支援の促進や、地域の社会資源との連携による課題解決に取り組むこととしている。

◯勝山委員 はざまの問題に対応するために、これからはアンテナを一歩先へ張り巡らせ、これまで制度上のはざまになり手の届かなかった人たちへ支援が届くよう、この新しい取組が始められることに期待している。アウトリーチ支援については、地域生活協議会の検討部会などでアウトリーチについてさらに働きかけを行い、サービス事業所の拡充を求めておく。また、基幹相談支援センターの現場の声の中には、「多問題家族やひきこもり者への支援について、各分野の相談機関の役割分担が明確になっておらず、本市の部局が分かれているので、相談支援機関等に連携を求めても、どこまで支援するのかの方針に差異が生まれてしまう現状があり、行政側で調整する機能が必要」、「重層的支援が必要な人に対応する際、区役所との連携が必要になるが、幾つもの課に分かれているため、情報収集や情報共有が難しい。区保健福祉センターとして、相談支援機関と連携した担当係が配置されていると困難事例により効果的に対応できる」などの意見があった。多機関協働を円滑にするためには、現場である区役所の調整機能も大事と思う。今後、多機関協働のための国の補助なども活用して、区役所の調整機能の強化についても検討してはどうかと考えるが、所見を尋ねる。併せて、地域共生社会の実現に向けて、この重層的支援体制整備事業を推進していくに当たり意気込みを尋ねてこの質問を終わる。

△保健福祉局長 超高齢社会を迎え社会環境が大きく変化する中、介護、障がい、子育て、生活困窮など複数の課題を同時に抱える人も増えており、複合化、複雑化した課題に対応する包括的な支援体制の構築は、地域共生社会の実現に向けて極めて重要な取組であると認識している。本市としては、令和3年度に国の補助事業を活用し、多機関の協働に関わる検討やアウトリーチ支援のモデル実施に取り組むこととしており、指摘の区役所の調整機能の強化を含め、相談体制の検討を進め、本市の現状に即した包括的な支援体制の構築にしっかりと取り組んでいく。

◯勝山委員 区役所の調整機能の強化が具体的に進み、包括的な支援体制が拡充され、複合的な課題を抱える人への課題解決につながるよう、今後の取組に期待している。次に、はざまの問題でもある若年代介護者、ヤングケアラーの早期発見と支援についてである。全国的に高齢化が進む中、本市においても、2040年には約3人に1人が高齢者になる。今後、その高齢者の増加に伴い、支える側でもある介護者、──以下、ケアラーと言う──も同様に増加していくことが予測され、社会全体でケアラーを支える仕組みや支援が今後ますます重要になる。本市の高齢者と障がい者のケアラーに対する支援事業の新年度予算額と現行制度を示されたい。また、ケアラーに対する支援の必要性についてどのように考えているのか。

△保健福祉局長 高齢者と障がい者の家族介護者に対する支援事業については、地域包括支援センターや区障がい者基幹相談支援センターによる相談支援、介護講座やユマニチュードなどの適切な介護に関する支援、短期入所や認知症家族介護者やすらぎ支援事業などのレスパイト支援などを実施しており、令和3年度予算額は42億3,000万円余である。また、家族介護者については、介護の悩みや問題を1人で抱え孤立しがちな傾向があることから、介護についての情報提供や相談支援を行い、適切な福祉サービスにつなげるなど、介護者自身の生活も安心して継続していけるような支援を行うことが必要であると考えている。

◯勝山委員 令和元年度、高齢者実態調査の中で、高齢者が今後どのような介護やサービスを求めているのか、介護意向の調査結果を示されたい。

△保健福祉局長 高齢者の介護意向については、令和元年度に実施した高齢者実態調査によると、介護が必要になったとき在宅で介護を受けたい人の割合は51.8%で、そのうち約半数が在宅で家族による介護を受けたいと希望している。

◯勝山委員 介護が必要になった親の望みであれば、家族としてもできるだけ他人に頼ることなく家族介護をかなえてあげたいと思うのが当然の気持ちだと思う。家族介護のケアラーの環境はそれぞれあると思うが、特に仕事をしながらの介護は、ケアラーにとって様々な影響を及ぼす。そこで、介護のために勤務調整を行っているケアラーの状況を示されたい。

△保健福祉局長 令和元年度の高齢者実態調査によると、残業の免除や短時間勤務、遅出・早帰りなど、介護のために何らかの勤務調整を行っている介護者の割合は53.8%となっている。

◯勝山委員 このようなことが長期間続くと、会社にいづらくなったり、会社側からの信頼が失われたりなど、精神的にも経済的にも大きな負担を感じざるを得ない。総務省の平成29年就業構造基本調査によると、2012年度からの5年間で介護、看護のために仕事を辞めた人は全国で49万8,000人、本市でも5,900人となっており、介護と仕事の両立が困難となり、仕事を辞める介護離職も大きな問題となっている。ケアラーは介護の悩みや問題を1人で抱え孤立しがちと言われており、困難に直面していることが周りから分かりにくいため、必要な支援が遅れてしまうおそれもある。埼玉県は昨年3月に全国で初めてヤングケアラーを含むケアラーを支援するためのケアラー支援条例を施行した。2040年は本市にとっても高齢化のピークを迎えるが、4年後の2025年には4人に1人が高齢者となり、それほど先のことではなく、課題の解決に向けて早急に仕組みをつくる必要がある。福岡市介護保険事業計画の「地域や職場等、家族介護者の社会生活圏において、家族介護者が抱えている問題をいち早く共有し、社会全体で家族介護者を支えていく仕組みをつくることが重要」との本市の課題認識に基づいて、全てのケアラーの人権が尊重され、健康で文化的な生活を営むことができるよう、基本理念や施策の基本となる事項を明確に定め、かつ計画的に推進していくための条例の作成などを視野に入れ、今後検討すべきと考えるが、所見を尋ねる。また、企業や市民に対してケアラーの理解、認識を広げるため、具体的に周知啓発に努めるべきと考えるが、併せて所見を尋ねる。

△保健福祉局長 家族介護者への支援については、保健福祉総合計画や介護保険事業計画において、精神的、身体的負担を軽減するため、家族介護者への支援を推進することとしている。まずはこれらの計画に基づき、介護を必要とする家族を地域包括支援センターや区障がい者基幹相談支援センターなどの相談機関を通じて適切な福祉サービスにつなぐことなどにより、家族介護者の負担の軽減を図っていきたいと考えている。また、家族介護者への理解を促進するため、企業や市民に向けて、講座やパンフレット、ホームページなどを活用し、より広く周知啓発を図っていきたいと考えている。

◯勝山委員 先日、久しぶりに心温まる光景を目にした。小学五、六年生くらいの男の子が1人で幼い弟の手を携えて、横断歩道の前で車が来ないか一緒に安全確認。弟を保育園に迎えに行き、そのまま自宅へ帰っている途中の様子であった。弟思いの優しいお兄ちゃんだなと心から感心した。その数日後、新聞記事を読んでいると、ヤングケアラーどう支えるという記事が目に飛び込んできた。そこで、ヤングケアラーのことを調べてみると、ヤングケアラーとは、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を引き受け、本来大人が担うような家事や家族の介護、世話、感情面のサポートを無償で行っている18歳未満の子どもを指すそうであり、ケアをされる人は、障がい者や慢性的な病気、精神的疾患やアルコール、薬物依存がある親や祖父母で、中には幼い兄弟の世話の場合があるとの記事であった。幼い兄弟の世話との記事を読んだとき、私が先日見たあの優しいお兄ちゃんは、もしかしたらヤングケアラーだったかもしれないと、こちら側の勝手な思い込みで180度違う取り方をしてしまったことに、知らなかったことへの恥ずかしさと、また知ることの大切さを痛感した。様々な人のサポートやケアに携わることは子ども自身の人間的成長につながるが、過度なケアが長期間続くと子どもの心身に不調を来したり、遅刻や欠席が多くなったりして学校生活への影響も大きくなり、進学や就職を断念せざるを得ないなど、心身ともに未発達な子どもがケアをすることは負担も大きく、子どもの将来の社会生活にも深刻な影響を及ぼす。2017年の総務省就業構造基本調査では、家族をケアしている15~29歳が全国に約21万人、15~19歳のケアラーは約3万7,000人いると推計している。そこで、厚生労働省が平成30年度に市町村に設置する要保護児童対策地域協議会を対象としてヤングケアラーの実態について全国調査を実施したが、その調査結果の概要を示されたい。

△こども未来局長 厚生労働省が行ったヤングケアラーの実態に関する全国調査の結果の概要については、ケアに費やす時間は、多い順に、5時間以上が43.5%、3~4時間が15.9%、4~5時間が14.5%、2~3時間が14.5%などとなっている。次に、学校生活への影響については、学校等にもあまり行けていないが31.2%、学校等に行っており、学校生活に支障は見られないが28.7%、学校等には行っているが授業に集中できない、学力が振るわないが12.3%などとなっている。次に、子ども自身のヤングケアラーの認識の有無については、子ども自身がヤングケアラーと認識していないが44.5%、ヤングケアラーと認識しているが11.8%、分からないが41.1%などとなっている。

◯勝山委員 厚生労働省は令和元年度に要保護児童対策地域協議会におけるヤングケアラーへの対応についての通知を出している。その通知に記されている本市で言う要保護児童支援地域協議会──以下、要支協と言う──に求められる役割について示されたい。

△こども未来局長 要保護児童支援地域協議会に求められる役割については、ヤングケアラーとされる子どもの中にはネグレクトや心理的虐待に至っている場合があることを認識し、関係機関との連携により適切に支援を行うよう、厚生労働省の通知により示されている。

◯勝山委員 2月26日には厚生労働省はヤングケアラーを支援するためプロジェクトチームを発足させる方針を決め、3月17日に第1回の会議を開催した。また、先日の衆議院予算委員会の質疑で菅総理は、省庁横断のチームで当事者に寄り添った支援につながるようしっかり取り組みたいと答弁している。このように、ヤングケアラーの問題については国がいち早く対応を検討している。そこで、ヤングケアラーの早期発見のため、多様な視点からの把握が不可欠だと考えるが、本市において、要支協や学校がヤングケアラーを早期発見するためにどのような取組を行っているのか。

△こども未来局長 ヤングケアラーの早期発見のための取組については、要保護児童支援地域協議会においてヤングケアラーを発見しやすい立場にある学校や地域の関係機関と緊密に連携し、できるだけ早く状況を把握できるよう努めている。

△教育長 ヤングケアラーの早期発見は、児童生徒が長期にわたり欠席した場合は、学級担任をはじめとして教育相談コーディネーター、スクールソーシャルワーカーなどが家庭訪問を行い、児童生徒の状況を確認しているが、慢性的な病気や障がい、精神的な問題を抱える家族の世話をしている実態、いわゆるヤングケアラーの実態を把握した場合は、必要な対応と支援を行っている。今後、学校に登校できている児童生徒についても実態を把握する必要があると考えており、学校生活の中でヤングケアラーに関する実態を把握していきたいと考えている。

◯勝山委員 ヤングケアラーの問題の解決に向けてどのように取り組んでいけばよいのか。初めに取り組むべきことは本市におけるヤングケアラーの実態の把握だが、要支協だけではヤングケアラーの一部しか把握できない。まずは全容を把握するための手だてとして、学校において実態を把握する必要があると考える。2016年、神奈川県藤沢市では、市の教育委員会の全面的な協力を得て、公立小中学校、特別支援学校55校の教員1,098人に対してヤングケアラーに関する調査を行っている。この調査をきっかけとして、学校の教職員など関係者の中で、ふだん自分が関わっている子どもたちの中にもヤングケアラーがいることや、ヤングケアラーに対して配慮が必要とされていることが認識された。そこで、本市でも、子どもと接する時間が長く、子どもの小さな変化に気づきやすい教職員に対して、周知と認識にもつながるヤングケアラーに関する調査を行ってはどうか。

△教育長 ヤングケアラーは教職員、児童生徒の双方が正しい理解をすることが重要であり、教職員に対しては、必要な研修や啓発を行った上で調査を行っていきたいと考えている。

◯勝山委員 調査に加え、教職員に対してヤングケアラーの理解をより深めていくために継続して研修を行っていく必要があると思うが、所見を尋ねる。

△教育長 ヤングケアラーは教職員が正しく理解し早期発見に努めるとともに、具体的な対応や、不安や悩みの解消など、継続した支援を行うことが重要であると考えており、教職員に分かりやすい研修動画を作成し、各学校における校内研修を実施していきたいと考えている。

◯勝山委員 要支協を構成する関係機関においてもヤングケアラーについての理解をさらに高めていく必要があると思うが、現在、ヤングケアラーに特定した研修や周知は行われているのか。

△こども未来局長 要保護児童支援地域協議会の関係機関に対し、今後、定例会議の中でヤングケアラーの周知を図るとともに、定期的に行っている児童虐待防止研修の中で新たにヤングケアラーをテーマとして取り上げ、研修を実施していく。

◯勝山委員 令和3年度に教職員を対象とした実態調査やヤングケアラーをテーマとした研修が行われるとのことであり、理解や認識がさらに深まることを心から期待している。今までヤングケアラーの実態が把握されてこなかった大きな理由として、子どもたちの多くは幼い頃から家族の介護やケアをしているため、自分の生活が当たり前だと受け止めてしまい、本来子どもが担うべきことではないと認識できず、苦しくてもSOSを出すことすらできない、SOSを出したいと思っても相談先がない、知らないということもある。学校側は学業のこと、支援センターは介護やケアの対象者、つまり子どもたちの家族についての相談を受けることはできるが、ヤングケアラーという視点がないため、家族のケアをしている子どもたちの悩みにまで積極的に相談に乗ったり、生活の実態に踏み込むことが難しかったと感じる。また、子どもたちの側も、家庭内の問題だとして周りの大人に相談することをどうしてもちゅうちょしてしまうというケースも考えられる。子どもが自分の置かれている状況に気づけるよう、子どもたちにも伝えていくことが重要であると思うが、教育委員会の考えを尋ねる。

△教育長 児童生徒に対しては、ヤングケアラーという概念や守られるべき権利があることを丁寧に説明し、児童生徒の親や家族を思う気持ちに配慮しながらも、自分自身が置かれた状況を正しく理解させることが重要である。悩みや不安がある場合には、学級担任やスクールカウンセラーなどにちゅうちょせずに相談するように指導していきたいと考えている。

◯勝山委員 人権学習などでヤングケアラーの概念や自身の権利について教えることはとても重要なことである。教職員への調査に加え、子ども自身が回答する調査を行うことで今置かれている状況を自認し、ヤングケアラーの把握がより明確になると考える。そこで、教育現場の負担が少なく済むように、例えば、Q-Uアンケートや学校生活に関するアンケートに質問項目を加えるなど、工夫をしながら小中学生にヤングケアラーに関するアンケート調査を行ってみてはと考えるが、所見を尋ねる。

△教育長 アンケート調査は、各小中学校が毎月を原則として定期的に実施している学校生活に関するアンケートの項目にヤングケアラーに関する内容を加え、実態を把握していく。なお、アンケート調査の実施に当たっては、児童生徒が違和感を覚えたり傷つくことがないよう十分に配慮し、ヤングケアラーの早期発見、早期支援につなげていく。

◯勝山委員 子どもたちの気持ちに十分配慮しながら調査するよう求めておく。また、調査で実態把握をしてからになると思うが、国の動向などを注視しながら、今後、ヤングケアラーの悩みを聞いて支援につなげていく相談ダイヤルのようなものも検討されたいが、所見を尋ねる。

△こども未来局長 ヤングケアラーの悩みを聞いて支援につなげていくことができるよう、今後検討していく。

◯勝山委員 他の相談ダイヤルとの兼ね合いや調整などが必要になると思うが、直接ヤングケアラーの悩みの声を聞き、支援につながるよう求めておく。中学校を卒業したヤングケアラーに対しても、引き続き状況を見守り、必要に応じて支援につなげていくことが重要だと思うが、所見を尋ねる。

△教育長 中学校を卒業した後の支援は、学校在籍時に把握した生徒に対して追跡調査を行うとともに、必要に応じてスクールソーシャルワーカーなどの派遣を行っていく。また、中学校卒業後に新たにヤングケアラーとなった生徒についても、関係局と連携し、実態の把握に努め、必要な支援につなげていきたいと考えている。

◯勝山委員 要支協の対象から外れてしまう18歳以降のヤングケアラーに対して、ケアラー支援と若者支援のそれぞれの観点から見た支援を考えていくことが必要だが、本市の考えを示されたい。

△保健福祉局長 家族介護者への支援については、地域包括支援センターや区障がい者基幹相談支援センターなどの相談機関を通じて、介護を必要とする人を適切な福祉サービスにつなげていくことなどにより家族介護者の負担軽減を図っていくことが重要であると考えている。今後とも関係機関と連携しながら、家族介護者に対する相談支援事業の周知を図るなど、介護者自身の生活も安心して継続していけるような支援に努めていきたい。

△こども未来局長 18歳以降のヤングアケラーに対する支援については、要保護児童支援地域協議会において支援を行っている子どもが18歳に達する際には、その後の支援について関係機関と協議することとしており、ヤングケアラーについても適切な支援に円滑に移行できるよう、丁寧に対応していく。

◯勝山委員 人権意識の高いイギリスでは18歳未満をヤングケアラー、18歳以降の若者をヤングアダルトケアラーと分類し、幅広い若者支援を行っている。神戸市では来月からヤングケアラーの専門部署をこども家庭局ではなく福祉局に設置して、社会福祉士などの有資格者により、ケアマネジャーや介護サービス事業所、地域包括支援センターなどと連携し、18歳未満だけではなく20代の若者も対象に支援を始めるそうである。幅広く若年代のケアラーを支援するためには、子どもや学校の側だけではなく、福祉サービスの側にも大事な役割があると考える。こども未来局の要支協における取組、そして教育委員会での学校現場における取組とともに、保健福祉局では、まずは介護サービス事業所や障がい福祉サービス事業所などの、特に各家庭を訪問するケアマネジャーなど介護従事者等に対してヤングケアラーの概念や支援の必要性について周知や研修を行い、早期発見につながる取組を始めるべきと考えるが、所見を尋ねる。

△保健福祉局長 ヤングケアラーについては、家庭内の問題として外部から認知されにくく、相談にもつながりにくいなどの問題を抱えているものと認識をしており、早期発見につながるよう、その実情や支援の必要性について、家庭を訪問するケアマネジャーやヘルパーといった福祉サービス事業者や従事者などに対ししっかりと周知、啓発を図っていきたい。

◯勝山委員 イギリスでは1995年にケアラー支援法が制定され、2004年にはヤングケアラーの支援策が盛り込まれた法改正が行われ、教育や就労、財政面での支援に取り組んでいる。日本でもプロジェクトチームを立ち上げて本格的にヤングケアラーに対する支援方策をまとめ、政府の経済財政運営指針である骨太の方針に反映させる考えのようである。そこで、本市でもヤングケアラーが社会で広く認識されるため、保健福祉総合計画や子ども総合計画にヤングケアラーの概念や支援方策などを明記し、反映させる必要があると考えるが、所見を尋ねる。

△保健福祉局長 保健福祉総合計画においては、介護を必要とする人を適切な福祉サービスにつなげることなどにより家族介護者の精神的、身体的負担を軽減することを定めている。現在策定を進めている次期保健福祉総合計画においては、子ども総合計画と連携しながら、ヤングケアラーを含む家族介護者への適切な支援について反映できるよう検討していく。

△こども未来局長 ヤングケアラーについては、子どもの健やかな成長や生活を守る観点から、今後、子ども総合計画に適切に反映できるよう検討していく。

◯勝山委員 総合計画に反映されることでヤングケアラーの認識がさらに広がり、実効性のある取組につながることに心から期待している。今回、ヤングケアラーの質問をするに当たり、文字どおりヤング──若者の支援はこども未来局、ケアラー──介護者の支援は保健福祉局に分かれており、ヤングケアラーに特化した支援を行う専門部署はなかった。まさしく各関係局にうっすらと重なったのり代のような部分が今回のヤングケアラーというはざまの問題の一つだと感じた。多様化、複雑化する社会においては、新たなはざまの問題は今後も起こり得る。このような問題に関してはっきりとした支援策を現状で持ち合わせていないかもしれないが、少しでも関係している局が全体観に立ち、知恵を絞り取り組んでいくことが問題解決につながる一歩だと感じた。今この瞬間も過度なケアを担って苦しんでいる子どもたちは確実にいる。できるだけ多くの大人たちがヤングケアラーがいるという視点を持ち、地域の子どもたちと関わることによって、子どもたちを救うことに必ずつながる。それが地域の子どもたちを守る何よりの支援なのかもしれない。20年後の2040年、ヤングケアラーは増えることはあっても減ることはないとみなされている。最後に、ヤングケラーを含むケアラーの2040年のあるべき姿を見据えた市長の所見を尋ね、質問を終わる。

△市長 超高齢社会のさらなる進展に伴い、本市においても、いわゆる団塊ジュニア世代が全員65歳以上になる2040年には介護を必要とする人の増加に伴って家族介護者の増加も見込まれ、今後ますます家族介護者への支援が重要になってくるものと考えている。ヤングケアラーについては、子どもの心身の健やかな成長や教育機会の確保が図られるよう、行政をはじめとして学校、地域、介護や障がい者を支援する関係機関が連携して支援に取り組んでいくことが必要であると考えている。今後とも見守り、支え合う地域づくりをはじめ、高齢者、障がい者、子ども、様々な課題を抱える人など、全ての人が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる健康福祉のまちづくりを全市一丸となって進めていく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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