◯古川委員 公明党福岡市議団を代表して、SDGsについて、商店街の老朽設備について、須崎公園について、以上3点尋ねる。初めに、SDGsについて尋ねる。国連が2015年に持続可能な開発目標(SDGs)を採択してから5年、国内外においてSDGs達成に向けた取組がいよいよ本格化している。先日の補足質疑において自民党福岡市議団の大原議員もSDGsに触れ、「市民に対しSDGsの周知が大事」と発言した。自治体は市民や企業などの多様な主体に対し、SDGsを分かりやすく内容を周知する役割があると思うが、所見を尋ねる。
△総務企画局長 SDGsを達成するためには、市民や企業、NPOなど多様な主体の参画が重要であると認識しており、自治体にはSDGsの理念の周知や、達成に向けた取組を促す啓発などを実施する役割があるものと考えている。
◯古川委員 本日はその観点から、SDGsの周知に絞って尋ねる。近頃ではSDGsのカラフルなロゴ、またSDGsのバッジをしている方をまち中で見かけることも多くなった。しかしSDGsを何のことだか全く知らない、聞いたことはあるが具体的にどういうことか知らないということも多く耳にする。そこで、市民向けにSDGsを周知するためのこれまでの本市の取組を尋ねる。また、市民の認知度、理解度を調査したデータがあれば示してほしい。
△総務企画局長 まず、SDGsの周知について、令和元年度はアジア太平洋都市サミットのプレイベントで、SDGsの理念に沿った持続可能な毎日のために私たちができることをテーマとしたシンポジウムを開催したほか、環境フェスティバルでは、SDGsに関する啓発動画の放映や写真展示を行うなど、様々なイベントや印刷物などを活用しながら取り組んだ。また、SDGsの認知度の調査については、令和元年度の環境フェスティバル来場者300人へのアンケート結果で、以前から知っているが24%、今回初めて知ったが43%、知らないが33%となっている。
◯古川委員 市民にどのくらい認知されているかを知ることは今後も必要なことであるため、機会を捉えて調査を継続することを希望しておく。先日の日本経済新聞に、自治体や企業のSDGsの認知度を掲載した記事があったので紹介する。まず、経団連会員企業、いわゆる大企業に当たるが、ほぼ90%、それから自治体は約45%、中小企業では認知度が低く約15%という結果であった。その中小企業に詳しくアンケートを取ったところ、SDGsについて既に対応、アクションを行っているが1.2%、それからSDGsについて対応、アクションを検討しているが0.8%、これで合わせて約2%、それからSDGsの内容について知っているが特に対応は検討していないが5.8%、SDGsという言葉を聞いたことはあるが内容は詳しく知らないが8.0%、SDGsについて全く知らないが84.2%という結果であった。記事によると、SDGsに先行して取り組んでいる中小企業はビジネス間競争を優位に進めている事例を紹介していた。SDGsは世界共通語であり、積極的に取り組む企業には海外からの商談が舞い込むなどビジネスチャンスにつながっているというのである。これからの中小企業を応援するためにも、もっと事業者にSDGsを理解してもらうことが重要だと日経新聞はまとめている。これまで本市は、市内の中小企業事業者に対しSDGsによる事業展開など、どのような周知を行ってきたのか尋ねる。
△総務企画局長 SDGsの達成には、市民や企業、NPOなど多様な主体の参画が重要であるという認識の下、その周知に当たっては、特に中小企業に限定せず、幅広く市民や企業を対象としたイベントの開催などにより取り組んできた。一方で、福岡市の事業所の約99%を中小企業が占めているという状況を踏まえると、本市におけるSDGsの達成において、中小企業の認知度を高めることは大変重要である。そのため、令和2年度は、各局が行う企業向けのセミナーなどにおいてSDGsに関する説明を積極的に行うとともに、企業に配布する印刷物にもSDGsに関する内容を盛り込むなど、様々な機会を通して、中小企業に対するさらなる周知に取り組んでいく。
◯古川委員 同じ福岡県内でも北九州市はSDGs未来都市に選定されるなど、全国でもトップクラスのSDGs推進都市と言われている。かつては公害のまち、それが環境問題に取り組む都市、そしてSDGsをブランド化した都市として変貌を遂げた。北九州市はSDGsを推進するため、市の企画調整局が主体となって、学識者や経済団体、市民の代表からなる北九州市SDGs協議会及び市民や企業、NPOなどの団体、学校が会員となり活動を促進する北九州SDGsクラブを軸とする体制を構築している。この北九州SDGsクラブでは、市民や企業向けにSDGsについて、次のように呼びかけている。非常に分かりやすい具体的なアプローチだと映ったので、紹介する。市民として私たちができることは、新たに特別なことをする必要はありませんと明言した上で、ちょっとした気づきや行動が大切であり、例えば、健康増進のためにウォーキング通勤をするとか、SDGsに取り組む企業の商品を積極的に購入するなどの行動をお願いしている。また、NPOや自治会等の団体に対しては、新たに活動するのではなく、ちょっとした工夫でと明言した上で、SDGsを活用して団体の取組をアピールすること、例えば、今行っている団体の行動がSDGsにつながるかを考えてもらう。そして、その活動が17のゴールのうちのどのゴールに関連するか検討し、ホームページ等でゴールのアイコンを掲載しPRすることにより他団体とのコラボレーションが生まれ、また新たな活動に参画してくれる人を獲得するチャンスが拡大するというのである。最後に、企業、事業者に対して、自社の企業活動全般をSDGsの視点で見直し、SDGsに資する取組を大いにPRするよう依頼している。PRすることにより企業ブランドの向上につながり、売上げの増加につながる。生産や調達方法を見直すことで経営課題の抽出が期待できる。国内外の投資家の評価が高まる。SDGsの取組を評価するのは市場であり、取組を進めることで販路拡大や顧客確保による企業活動の拡大など、メリットが大いに期待できるとしている。各分野に対し分かりやすく説明し、SDGsに関する気づきを考えることを重視している。このように、具体的な行動を分かりやすく知らせることが重要だと思う。本市は市民に対し、SDGsの理念や具体的な行動をどのように周知していくつもりなのか、新年度の取組を尋ねる。
△総務企画局長 令和2年度の取組は、これまでのアジア太平洋都市サミットのプレイベントや環境フェスティバルなどに加え、規模の大小にかかわらず様々なイベントを通した普及啓発の充実を図っていく。また、新たな取組として、市政だよりや各種パンフレットなどの印刷物を活用した広報のほか、公民館や地下鉄の駅など公共施設への啓発ポスターの掲示、市役所1階ロビーに設置予定の大画面ディスプレーにおける啓発動画の放映、SDGsに関する出前講座の創設など、様々な媒体や手法を活用するとともに、その内容が市民に分かりやすいものとなるよう工夫しながら、SDGsのさらなる普及啓発に取り組んでいく。
◯古川委員 今後、目に見える形でのSDGsの普及啓発に期待する。SDGsに関する自治体の役割は、市民や企業などに対して分かりやすく周知していくとともに、自治体施策の中にSDGsの理念をしっかりと盛り込んでいくことだと思う。先日の新年度市政運営方針及び議案説明の折、高島市長は誰一人取り残さないというSDGsの理念を踏まえ、未来を担う子どもたちをはじめ、高齢者や障がい者など、あらゆる人がその能力を存分に発揮できるような、持続可能なまちづくりを進めていくとの力強い表明があった。福岡市総合計画に基づく市政運営の中にもSDGsの理念が盛り込まれ、政策が進められていることは理解しているつもりであるが、まだまだ十分ではないような気がしてならない。このことは、次の機会に改めて質疑をしたいと思う。政府においても、SDGsを地方創生の原動力と位置づけ、残りの10年を行動の10年として走り始めた。今こそ私たち一人一人がSDGsという理念を理解し、様々な課題を乗り越え、10年後のゴールに向かって行動を開始できるかが、今年の重要な課題である。福岡市としてSDGsの理念をどのように市民に周知し、どのような政治姿勢で挑んでいくのか、高島市長の所見を尋ね、この質問を終わる。
△市長 本市では、多くの市民の皆様とともに策定した総合計画において、都市の成長と生活の質の向上の好循環をつくり出すことを基本戦略として掲げて、経済的な成長と安全、安心で質の高い暮らしのバランスが取れた、コンパクトで持続可能な都市づくりに取り組んでいる。これは、SDGsの理念と方向性を一にするものであり、総合計画の着実な推進により、SDGsの達成に向けて取り組んでいるところである。加えて、国連ハビタット福岡本部との連携や、アジア太平洋都市サミットなどを通した都市間連携によって、例えば上下水道分野や環境分野における本市の強みを生かしながら、アジアの諸都市におけるSDGsの達成にも貢献をしていきたいと考えている。市民や企業、NPOなど多様な主体に参画してもらうためには、自治体による周知が大変重要であると認識しており、今後とも様々な機会を捉えてSDGsの普及啓発に積極的に取り組み、誰一人取り残さないというSDGsの理念を踏まえ、未来を担う子どもたちをはじめ、高齢者や障がい者など、あらゆる人々がその能力を存分に発揮できるような持続可能なまちづくりを進めていく。
◯古川委員 次に、商店街の老朽設備について尋ねる。この質問に当たり、まず商店街の歴史と現状を整理する。商店街は、戦後復興期から高度成長期にかけて数を増やし、いわゆる地域の一等地で商売をするなど、まちの顔として存在し、祭りを開催するなど地域活性化の担い手、地域コミュニティを形成する場として地域に貢献してきた。その後百貨店やスーパーマーケットが台頭したことにより、商店街はその地域内において大型店と競合することになった。1973年以降、大規模小売店舗立地法によって、大規模小売店の出店が規制されてきたが、1993年に法律が改正され、郊外への大規模小売店の出店が進んだ。加えて自家用乗用車の普及の進展もあり、人々の買物は、近所の商店街から郊外の大規模店へ徐々に移行していった。その結果、商店街を中心とする中心市街地は空洞化。さらに近年の情報技術の進展に伴い、ネット通販が市場を拡大。リアル店舗とネット店舗による販売競争も起こるなど、商店街の運営状況はますます厳しくなったと言われている。現在、市内の商店街、商店連合会は各区に幾つあるのか、また40年前と比較して、商店街、商店連合会の数は各区どのように変化しているのか尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 平成29年度に商店街に対して行った実態調査によると、市内には、商店街及び複数の商店街で構成される商店連合会が138団体ある。また、40年前の本市の商店街数は、市として区ごとに把握したデータはないが、福岡商工会議所が以前作成した商店街マーケット名簿によると、市内に224の商店街と商店連合会があったとされており、平成29年度までの約40年間で86団体の減少となっている。これを区別に団体数の推移で言うと、東区が36から27に、博多区が49から27に、中央区が50から34に、南区が27から14に、現在の城南区、早良区、西区を合わせた旧西区が62から36に減少している。
◯古川委員 約40年間で、市全体で86もの商店街が消滅していることが分かった。これは本市のみならず全国的にも商店街が減っている現状があり、商店街の厳しい運営実態がうかがえる。ある調査機関によると、商店街の経営者の高齢化による後継問題や、店舗や設備の老朽化が深刻という調査結果が出ている。本市では市民に対し令和元年度市政意識調査を行い、商店街に関するアンケートを実施している。商店街利用者が商店街の利用で困ったことは何ですかという問いに対し多かった答えのうち、上位3つを尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 駐車場や駐輪場がない、多種多様な店舗がない、トイレやベンチなどの休憩スペースがないとなっている。
◯古川委員 今後商店街に期待することは何ですかの問いに対し、多かった答えのうち上位5つを尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 多種多様な店舗の充実、質のよい商品やサービスの取扱い、駐車場や駐輪場の整備、値段の安い商品やサービスの取扱い、トイレやベンチなどの休憩スペースの整備となっている。
◯古川委員 駐車場や駐輪場の整備、また、トイレ、ベンチなどの休憩スペースの設置、いわゆるハード面の整備に期待する答えが出ている。時代の変化に伴う利便性の向上が求められていることも事実で、商店街のハード面の更新が課題となっている。商店街に関する意識調査から見えてきた商店街の課題とも言えるハード面の整備について、本市は具体的にどのような対応を取るのか、新年度の取組を尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 本市はこれまで、商店街が新たにアーケードや休憩施設等を設置するなど、商店街の共同施設を整備する際には、商店街高度化支援事業にて、その事業に係る経費の一部を助成している。また、令和2年度の新規事業として、国内外からの観光客の消費を取り込もうとする商店街を支援するために、商店街観光振興事業を実施することとしているが、本事業では、イベント開催などのソフト面に加えて、観光客などをおもてなしするためのトイレやベンチなど休憩スペースの設置など、ハード面の整備を支援することとしている。
◯古川委員 ハード整備が求められる商店街の現状がある中で、老朽化した設備の安全対策も課題である。昨年秋に発生した台風19号の突風によって、博多区内にある商店街のアーケードの一部が飛んでしまった。すぐに見に来てほしいと商店街から連絡があったが、この日、現地を見に行くことができなかったため、行政に対応を依頼すると、公道上であっても商店街による占有物であれば占有主である商店街が対応する案件であり、処置や修繕をする立場ではないということであった。そこで、道路下水道局に尋ねる。公道に設置されている街灯などの設置物の維持管理はどのような規定に基づいているのか。また、商店街に設置されている防犯灯やアーケードの維持管理は、行政が責任を負う立場ではなく、事故の場合の責任も一切ないということなのか尋ねる。
△道路下水道局長 街灯など道路上の設置物には、道路管理の必要から道路管理者が設置する道路法第2条に規定されている道路の附属物と、同法第32条に基づいて道路管理者から許可を受けて設置される道路占用物件がある。商店街に設置されている防犯灯やアーケードは道路占用物件に当たり、その維持管理は、道路法第39条の8において国土交通省令に定める基準に従い、当該物件を設置したもの、つまり道路占用者が自ら行うべきものとされている。また、これらの物件の設置、または維持管理が適切に行われなかったことにより、他人に損害を生じさせた場合は、民法の規定により道路占用者がその損害を賠償する義務を負うこととされている。
◯古川委員 商店街の運営も大変厳しくなっている。将来的に老朽設備の維持管理費や撤去費用を用意できない占有者が出てくることも想定される。そのような場合の行政の対応を尋ねる。
△道路下水道局長 道路占用物件の維持管理は、道路法上、道路占用者が自ら行うべきものとされているが、道路占用物件が老朽化するなど占用を廃止する必要が生じた場合についても、道路法第40条に基づき、道路占用者において当該物件を除却し、許可を受けて占用を開始した以前の状態に戻す必要が生じる。
◯古川委員 それが厳しい商店街があるのも現実である。老朽化した商店街の防犯灯などの占有物に関して、通行人の安全面を考えると撤去が望ましいが、維持管理や撤去費用を捻出できない占有者を支援できる施策を道路下水道局は考えるべきだと思うが、所見を尋ねる。
△道路下水道局長 本市は、犯罪のない安全で住みよいまちづくり推進条例に基づき、市民と行政が共働して防犯施策を推進しているが、道路下水道局は、同条例の基本理念を踏まえ、防犯灯は、その設置者である自治会、町内会などの地域団体に支援を行っている。商店街についても、この地域団体に含まれることから、商店街が防犯灯を設置、管理、撤去するに当たり、その費用の一部を補助している。具体的には、防犯灯の設置、移設、撤去を行う場合の工事費に対して、上限額はあるが、その3分の2~2分の1を補助するとともに、電気代などの管理費の一部を補助するものである。当該制度は、今後、商店街施策を所管する経済観光文化局とも連携し、その周知に努めていく。
◯古川委員 商店街の防犯灯は、自治会や町内会が設置する防犯灯と同じように、補助制度ができていることをしっかりと周知するよう要望しておく。商店街を支援している経済観光文化局は、アーケードが飛んだ商店街に対しどのような対応を行ったのか、また、買物客の安全対策のため商店街にどのようなアドバイスを行ったのか尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 アーケードが落下したとの連絡を受け、直ちに担当職員が現場を確認するとともに、被害状況等について区役所等の関係部署へ報告を行っている。アーケードを含む商店街施設による事故が発生した場合、施設管理者である商店街が責任を負うことになるため、本件においては、商店街に対し市民の方への安全を確保するよう助言を行うとともに、商店街高度化支援事業について説明を行っている。
◯古川委員 商店街高度化支援事業とはどのようなものか、改めて概要と新年度の予算額を尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 商店街の魅力向上などを目的として、アーケードや休憩スペースといった共同施設の設置や高度化を行う場合に、その設置費用の助成を行うものである。公共の利便性を図る施設の設置は事業費の20%以内もしくは4,000万円を、その他の共同施設は事業費の10%以内もしくは2,000万円を限度に助成している。令和2年度の当初予算額は107万1,000円となっている。
◯古川委員 本市の商店街高度化支援事業は更新するための支援メニューである。アーケードは更新してもやがて朽ちていき、将来的には再び老朽化する。老朽化する危険な設備であるアーケードを後世に残し続けていくぐらいなら、一気に取り払う撤去という選択を考える商店街も出てくると思われる。全国的にもこのようなケースが発生している。博多区のこの商店街では当初、撤去も含め検討していたが、本市において撤去に関する支援がなく、高度化という条件なら支援策があることから、今回はこのように決断をされたと聞いている。商店街の老朽設備を更新ではなく撤去する際の費用を補助する制度はないのか尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 商店街高度化支援事業は、施設のリニューアルによる商店街の魅力向上や、より効率的な設備の導入に伴う管理経費の削減など、商店街の高度化を目的としたものに支援を行うものであり、故障した設備の単純な補修や老朽化した施設の撤去については、補助対象としていない。
◯古川委員 議会事務局の調査によれば、他の自治体でも商店街のアーケードの撤去に係る支援を行っている自治体が、横浜市をはじめ幾つかあるとのことだった。また、県単位においても支援している自治体があるとのことだった。先日、兵庫県庁を訪問し話を聞いてきた。兵庫県のアーケードの撤去に対する支援の条件は、申請時の組合員数がアーケード建設時の組合員数から3分の2に減っていること、申請時の空き店舗が全体の店舗の3分の1以上であること、また、補助率は通常3分の1以内、補助限度額は500万円ということだった。支援している主な理由として、商店街における空き店舗等の住宅への転換を可能にすることと言われていた。近隣のマンションなど高層の建物から商店街を見下ろしたときに、老朽化したアーケードは見栄えが悪かったが、撤去したことにより景色がきれいに感じられ、都市の景観が向上し、資産価値が上がる。また、アーケードを撤去したことによって青空が見えて商店街が昼間は劇的に明るくなるという効果と、住宅の建設が可能になり、まちのにぎわいを戻す結果にもつながった。老朽化した商店街のアーケードの撤去を支援することは、一見後ろ向きの施策に思われがちだが、維持費が今後不要になることなど、商店街の負担を減らしつつ、商店街そのものを存続させていくために非常に前向きな施策であるとの担当者の意見がとても印象的であった。本市においても一定の条件の下、商店街の老朽化したアーケードなど撤去をする場合の支援策を検討すべきと考えるが、所見を尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 商店街が保有するアーケード等の共同施設は商店街の資産であり、その維持管理は商店街の責任にて実施するものであると考えている。しかしながら、全国的に多くの商店街が商店主の高齢化や組合員の減少により、アーケードや街路灯といった共同施設の維持管理が難しくなってきていることから、全国共通の課題として、指定都市市長会を通じて、国に対して財政的支援に関する提言を行っている。本市でも、商店街施設の老朽化を課題として認識しており、その支援の在り方につき、他都市の動向も踏まえ検討を行っていく。
◯古川委員 商店街の減少が本市以上のスピードで進んでいる自治体もあり、全国的には本当にこの課題は深刻である。調査の上早急な導入をお願いしたい。この質問の最後に、商店街の負担を軽減させ、存続を図るための商店街の支援振興について、高島市長に所見を尋ねる。
△市長 商店街は、近隣住民の暮らしを支える地域経済の担い手であるとともに、交流やにぎわいの場を提供するコミュニティの担い手として、地域の活力を支える重要な存在であると認識している。このため、アーケードや休憩施設など、商店街に来られる方が快適に、また安心して買物を楽しめる環境の整備、地域外からも商店街を訪れたくなるような魅力向上の取組について、これまで支援をしてきた。令和2年度からは、商店街のさらなる活性化を図るため、宿泊税を活用して国内外からの観光客の消費取り込みを目的とした商店街の取組を積極的に支援することとしており、これらの施策を通して、商店街が観光客にとっても、そして地域にとっても訪れたくなるような魅力的な場所となるように、ハード、ソフト両面からしっかりと支援をしていく。
◯古川委員 最後に、須崎公園について尋ねる。北天神エリアに須崎公園があるが、この公園は天神という一等地に広大な土地を有する公園である。しかし、今では野外ホールや噴水広場など全く活用されず、椅子や手すりもさびついたままである。私の下にも、なぜここまでほったらかしなのか、また、かつてこの場所に幕末福岡藩の海防と台場があったとされることを物語る石垣もあるのに生かされていない、貴重な歴史遺産を観光スポットとして有効に活用されていないのはもったいないという意見や、人けがなく大変静かな公園だが、夜は人けがなさ過ぎて怖いという近隣住民からの声もあった。また、市民会館に用事があるときぐらいしかこの公園に足を運ぶことがなく、天神地下街がもう少し北へ延びたら便利なのにとの声も寄せられている。このたび、北天神エリアの須崎公園が新たな拠点文化施設とともに再整備されることになり、大変期待をしている。そこで、福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備の目的は何か、またそれぞれの概要を尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 目的は、拠点文化施設と須崎公園を一体的に整備、活用することで、両施設の魅力が相まった緑あふれる文化芸術空間を創出し、市民はもとより、国内外から多くの人々が集うエリアを形成することを目指すものである。拠点文化施設整備の概要は、約2,000席の大ホール、約800席の中ホール、約150席の文化活動・交流ホール等を整備するものである。また、須崎公園再整備の概要は、休養施設、便益施設、管理施設等を整備するものである。
◯古川委員 本年1月28日に、拠点文化施設整備と須崎公園の再整備に関して、落札業者が決まったと報告があった。この事業の落札価格及び落札率、事業の業務範囲と今後のスケジュールを尋ねる。また、新年度に係る内容と予算額を併せて尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 入札予定価格の税抜き209億7,500万円余に対して、落札価格は税抜き208億7,100万円余で、落札率は99.5%となっている。事業の業務範囲は、拠点文化施設及び須崎公園の整備に係る設計、施工及び15年間の維持管理、運営となっている。今後のスケジュールは、令和2年6月に事業契約の議案提出の後に設計に着手することとしており、拠点文化施設及び須崎公園の一部については、令和6年3月に供用開始を行い、令和8年3月に公園の全面供用開始を予定している。また、令和2年度の予算は、事業契約の準備や設計モニタリングなどの業務委託等の経費として3,000万円余を計上している。
◯古川委員 この事業は、PFI-BTO方式とのことであるが、PFIのよさは、本市の財政負担の軽減が図られるとともに、価格の競争、また施設の外観や機能を含めた提案力の競争が行われることだと思っている。しかし、公募に応じた事業者は1グループのみであった。公募に応じた事業者が僅か1グループだけになった経緯と、1グループのみの入札で競争性が確保できているのか、所見を尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 1グループの入札となった経緯は、入札参加表明の時点においては3グループから参加表明があったが、その後、2グループから入札辞退の申出がなされ、結果として1グループからの入札がなされたものである。入札における競争性については、落札者の決定、公表までは何グループが応募しているか分からない仕組みとなっていることから、入札における競争性は確保されていると考えている。また、落札者の提案についても、事業の目的を十分に踏まえ、要求水準書を上回るものと認識している。
◯古川委員 この公共事業は大規模な事業でもあり、企業としてはやりがいがある仕事だと思うが、入札参加表明があった他のグループが結局参入しなかった原因は、担当局としてどう理解しているのか尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 入札参加表明があった他のグループが、最終的に入札へ参加しなかった原因は、各事業者の判断によるものであるが、公募手続における質疑や対話の意見から推測すると、利用料金収入や光熱水費の需要変動、15年の長期にわたる運営、事業を取り巻く社会経済情勢など、各事業者が総合的に判断されたものと考えている。
◯古川委員 このエリアには、現在、県立美術館が存在している。須崎公園内にある県立美術館は大濠公園へと移転することが発表されたが、現在の建物は引き続き活用されるとの報道があっており、最新の正確な情報を尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 現県立美術館の報道については、県において、令和2年1月27日の記者会見や、同年3月4日の県議会代表質問に対し、県知事が、現美術館の具体的な活用方策を検討していくと答弁していることが報道されている。
◯古川委員 拠点文化施設と須崎公園の整備は、もともと県立美術館を残したままの設定で、整備計画や入札予定価格が設定されていたのか尋ねる。
△経済観光文化局総務・中小企業部長 本市としては、平成30年12月の拠点文化施設整備及び須崎公園再整備の実施方針の公表時点において、県立美術館の移転再整備の方針が決まっていなかったため、現県立美術館は、当面存置するものとして事業を進めているものである。
◯古川委員 現在、市が所有する土地を県立美術館に無償貸与しているということは、もともとどういう契約になっているのか、その条件を所管する財政局に尋ねる。
△財政局長 県立美術館用地貸付に当たり、福岡県と取り交わしている使用貸借契約の条件については、県は美術館用地に使用しなければならないこと、使用貸借期間は美術館として存続する期間とすること、県は美術館用地以外の用途に使用してはならないことなどを定めている。また、契約の条件で疑義があるときは、市と県が協議を行うこととしている。
◯古川委員 2019年4月1日に発表されている整備事業の要求水準書を見ると、県立美術館の移転再整備の方針が決まっていなかったためか、県立美術館ゾーンとして現美術館の場所はそのまま存続している状況での計画になっており、この時点では県立美術館を除く部分を整備する計画になっている。その後、2019年6月の県議会で県知事は、新県立美術館の建設に向け基本計画の策定準備をすることを表明、同年9月の県議会で有識者による建設地選定委員会を設置し、明年1月に建設地の選定を行うと発言。そして本年1月16日に県知事は、建設地選定委員会から大濠公園への移転新築が望ましいとする報告書を受け、1月27日に大濠公園への移転を表明、同時に現施設も活用する方針を示していた。それ以降、市と県の互いのトップの発言をめぐり、主張の擦れ違いが発生していることがクローズアップされて報道されている。これから生まれ変わろうとしている須崎公園をよりよいものにしていくためには、県と市の胸襟を開いた話合いこそ重要であり、これまでの経緯を踏まえて、しっかりと県との協議を行うべきと思うが、担当副市長の答弁を求める。
△光山副市長 県立美術館については、現在の施設が老朽化し狭隘であることなどから、県において、平成19年に県立美術館将来構想検討委員会が設置されて以来、新しい県立美術館の整備に関する検討が進められてきた。一方、本市としては、現在の市民会館の老朽化が進み、設備関係をはじめとする様々な機能劣化も大きな課題となっていたことなどから、平成24年に拠点文化施設基本構想を策定して、平成30年12月には拠点文化施設整備及び須崎公園再整備の実施方針を公表したが、その時点で、福岡県の方針が決まっていなかったことから、現在の県立美術館は、当面存置するものとして事業を進めてきた。その後、令和元年10月に新福岡県立美術館建設地選定委員会が設置され、県立美術館の方針として、新しい県立美術館は大濠公園へ移転することと併せて、現在の県立美術館の建物は新しい県立美術館と相互補完的に運用していくことが、令和2年1月に表明された。これまで本市からは、適時情報提供を行いながら県立美術館の検討状況を確認していたが、県からは、現在の県立美術館の取扱いを含め、具体的な検討状況を示してもらえなかったことから、まずは県の考えを聞いた上で、しっかり協議をしていく。
◯古川委員 新県立美術館が大濠公園に移転するのであれば、現県立美術館の土地は市に返還を求め、一体整備に関連して、より多くの人に足を運んでいただけるようなエリアとして整備され、利用価値を高めていくべきだと思う。また、話合いの結果、仮に県立美術館移転後も、現建物をそのまま別の目的で使用されるのであれば、相応の借地料をしっかりもらうべきものと思っている。天神ビッグバンで天神が大きく変わろうとしている今、北天神エリアに存在する須崎公園は、地域防災計画上、地区避難場所に位置づけられていることなどから、さらに重要な意味を持つ公園になるものと確信している。須崎公園がこれから行われる拠点文化施設との一体整備により、より魅力的な公園に生まれ変わること。また、水辺にたたずむ公園として整備され、公園と那珂川の景観を楽しめること。幅広い年齢層の市民が利用できるレストランも設置されると聞いており、市民や来街者の期待も大きい事業であるため、しっかりとお願いをしたいと思う。これまで、国内外からの観光客は、天神に来ることはあっても須崎公園の存在さえ知らなかった人も多かったはずである。天神における人の流れが北天神エリアにも広がる可能性を秘めている。須崎公園周辺の北天神エリアは、天神地区とウォーターフロント地区をつなぐ場所に位置しており、須崎公園と拠点文化施設の一体整備に当たっては、公園や文化芸術の機能強化に加えて、都心部の回遊性向上の視点も大変重要であると考えている。須崎公園を含む北天神エリアの未来についてどのように考えているのか、高島市長に尋ね、質問を終わる。
△市長 北天神エリアにおいては、今回須崎公園と拠点文化施設を一体的に整備、活用することで、両施設の魅力が互いに重なり合う、緑あふれる文化芸術空間を創出していく。この須崎公園を含む北天神エリアは、都心部の核である天神地区とウォーターフロント地区をつなぐ重要な場所に位置していることから、市の新たなランドマークとなる今回の緑あふれる文化芸術空間の創出を契機として、周辺エリアとのさらなる回遊性向上にも取り組むことによって、市民をはじめ国内外から多くの皆さんが集まる、にぎわいや憩いに満ちたまちづくりを進めていく。