◯黒子委員 公明党福岡市議団を代表して、平成30年度決算概要並びに公営企業の経営戦略について質問する。先日、総務省が地方自治体の30年度決算を公表した。地方財政健全化法に基づく各指標は改善し、地方公営企業の総収支も黒字幅が拡大するなど、景気回復の恩恵が及んでいるようだが、本市の30年度決算のポイントについて説明を求める。
◯財政局長 平成30年度の決算見込みについては、一般会計及び全ての特別会計において、実質収支が黒字または収支均衡となっている。市債残高については、全会計ベースで前年度より着実に縮減している。
◯黒子委員 本市の財政構造の特徴は、かつて集中的に社会資本整備を進めたことにより多くの資産が形成された反面、多額の市債残高を抱え財政の硬直化が懸念されている。財政指標を分析し、他の政令市と比較しながら、財政構造の弾力性及び行政水準の確保という視点から本市の特徴について尋ねる。
◯財政局長 平成30年度の経常収支比率は91.9%で、政令指定都市の中では、よいほうから4番目で比較的良好であるが、財政構造の弾力性の拡大に向けて引き続き健全な財政運営に取り組んでいく。30年度の財政力指数は0.889で、政令指定都市の中では、よいほうから10番目で中位にある。今後も市民生活に必要な行政サービスの確保や生活の質の向上に向けて、税源の確保などに取り組んでいく。
◯黒子委員 地方公共団体の財政健全性を示す4つの指標、いわゆる健全化判断比率についてはどうか尋ねる。
◯財政局長 平成30年度の実質赤字比率及び連結実質赤字比率については、赤字が生じていないので、いずれの比率も発生していない。実質公債費比率は11.0%、将来負担比率は123.2%であり、国が定める早期健全化基準を下回っている。なお、実質公債費比率及び将来負担比率については、政令指定都市の中で比較的高い水準にあるが、その要因として、本市では立ちおくれていた社会資本整備を近年着実に進めており、新しく資産形成を行ってきた結果であると考えている。
◯黒子委員 いずれの指標についても問題はないとのことだが、実質公債費比率は、起債に国の許可が必要とされる18%を下回っているものの11%を超えている。将来負担比率についても123.2%と、いずれも政令市の中では高い位置にあり、これからも市債残高の縮減に取り組んでいかなければならない。平成30年度の市債残高と内訳について尋ねる。
◯財政局長 満期一括積立金を除くと、全会計ベースで約2兆771億円となっている。内訳としては、一般会計が約1兆1,862億円、特別会計が約1,814億円、企業会計が約7,095億円となっている。
◯黒子委員 全会計の市債残高が約2兆771億円で、公営企業会計の市債残高が約7,095億円で3分の1が公営企業分となる。公営企業の経営の健全性を示す指標である資金不足比率は、どうなっているのか。
◯財政局長 平成30年度は、全ての公営企業会計において資金不足は生じておらず、資金不足比率は発生していない。
◯黒子委員 地方公営企業については、平成26年に地方公営企業の会計基準の見直しが行われているが、一般的にどのような効果があるのか。
◯財政局長 国によると、償却資産は全て毎年度減価償却するなど、現在の資産価値を適切に表示するとともに、本来認識することが適当な収益や費用を発生時点で全て計上することにより、資産状況や損益構造がより明らかになるとされている。
◯黒子委員 会計基準の見直しによって資産状況や損益構造が明らかになったにもかかわらず、平成30年度の包括外部監査において、水道事業及び下水道事業の29年度決算報告について、監査人から指摘を受けている。指摘された内容を尋ねる。
◯道路下水道局長 下水道事業における指摘については、財務会計システムと管理資料等との金額が一致していないものがあるため、調査の上、修正を行い、貸借対照表の正確性を確保する必要があるというものである。
◯水道事業管理者 水道局における指摘は3件あった。1つ目は、会計システムと管理資料等の金額が一致していないものがあるため、調査の上、貸借対照表の正確性を確保されたいというもの。2つ目は、前受金として留保されたままになっているものがあるため、精算が必要な案件については速やかに精算処理されたいというもの。3つ目は、除却漏れとなっている固定資産について、速やかに除却手続をされたいというものであった。
◯黒子委員 監査人からの指摘を受けて、ことしの9月議会で下水道事業及び水道事業の両会計合わせて約1億円の収入と約5億円の支出について、補正予算を組んで対応する事態となった。そもそも、貸借対照表は企業の財政状態を的確にあらわすものであり、企業の可能性や信頼性を判断するための重要な書類である。道路下水道局と水道局は、事態を重く受けとめて、しっかりと反省されたい。また、再発防止に向けた今後の取り組みについて尋ねる。
◯道路下水道局長 下水道事業会計の内部統制体制が十分に確立されていなかったことが大きな要因であると認識している。包括外部監査人の指摘を真摯に受けとめ、速やかに再発防止策を検討した。内容は、事務フローを見直すなど担当部署間における連携を強化し、コミュニケーションを密に行っていく。次に、内部研修の充実や外部研修等への職員の派遣などを積極的に行い、会計業務に携わる職員の知識の涵養に努めていく。さらに、残高等の検証が随時行えるよう管理システムの改修を行うとともに、公認会計士など会計の専門家の知見などを活用してチェック体制を強化していく。今後こうしたことが起こらないよう、しっかり取り組んでいく。
◯水道事業管理者 会計処理に際してのチェック体制が不十分であったことが大きな要因であると大変重く受けとめている。再発防止に向けた取り組みとしては、企業会計に係る事務処理マニュアルの抜本的な見直しを行い、局内に周知徹底を図ることによりチェック体制を強化、確立するとともに、内部研修の充実や外部研修等への派遣などを積極的に行うことにより、会計事務に携わる職員全体の人材育成を図っていく。また、チェックに必要な集計表や一覧表が抽出、確認できるよう企業会計システムの改修を行うなど、的確な会計処理に努めていく。
◯黒子委員 各企業会計の取り組みも当然必要であるが、問題の重要性を考えると、それだけでは足りない。全市的な視点からチェック体制が必要だと考えるが、財政局の所見を尋ねる。
◯財政局長 平成28年度決算から統一的な基準に基づく財務書類を作成しており、企業会計を含めた連結ベースでの財務書類4表についても、作成の上、ホームページなどで公表している。30年度の包括外部監査における指摘事項については、先の答弁のとおり、各企業会計においてチェック体制の強化を含め、再発防止に向けた取り組みがなされると認識しているが、より一層の正確性の確保に向けて、企業会計などと連携しながら適切に対応していく。
◯黒子委員 政府は、平成27年6月に、地方財政をめぐる厳しい状況を踏まえ、公営企業については経営戦略の策定を通じ、経営基盤の強化と財政マネジメントの確立を図ることを閣議決定している。公営企業の戦略について、まず、水道事業について質問する。昭和40年代から集中的に整備してきた本市の膨大な水道施設は、間もなく一斉に更新時期を迎え、再構築の時代に入っていく。水道事業の目指すべき将来像及び実現の方向性についてどのように定めているのか尋ねる。
◯水道事業管理者 水道局においては、安全で良質な水の安定供給を図るため、平成29年2月に10年度までの12年間を計画期間とする福岡市水道長期ビジョン2028を策定し、安全、強靭、持続を目指すべき方向と定め、その達成に向け取り組んでいる。また、同ビジョンを踏まえ、4年ごとに取り組むべき具体的な事業計画や財政収支計画を定めた福岡市水道中期経営計画に基づき、効率的な事業運営に取り組んでいる。
◯黒子委員 水道事業を取り巻く経営環境はますます厳しさを増してきており、大きな転換点を迎えている。本市の水道事業の経営状況について、平成30年度の料金収入、損益及び経常収支比率を示し、経営状況を尋ねる。
◯水道事業管理者 料金収入は約319億円、損益は約71億円の黒字、経常収支比率は124.5%となっており、水道長期ビジョンの見通しを上回る単年度利益を確保しており、安定した経営状況となっている。
◯黒子委員 水道事業は、中長期的な視点を持って、経営に取り組んでいかなければならない。改めて料金収入等の長期的なトレンドについて質問する。料金収入については、ピーク時から現在に至るまで、どのような状況で推移しているのか、その間の損益の状況とあわせて尋ねる。
◯水道事業管理者 水道料金収入のピークは、平成12年度の約337億円で26年度に約305億円まで減少したが、近年は回復傾向にあり30年度は約319億円となっている。また、単年度利益については、14年度に約9億円まで減少したが、その後は改善傾向にあり30年度は約71億円となっている。
◯黒子委員 料金収入のピークは平成12年度の約337億円で、その後、減少傾向が続きやや回復しているが、30年度は約319億円でピーク時と比べると約18億円減少している。損益についても、料金収入のピークであった12年度は約30億円の黒字で14年度に約9億円まで落ち込んで、それから回復傾向になった。26年度に少し会計基準が変わったので、正確に比較はできないが、28年度に約64億円、29年度に約63億円、30年度に約71億円と過去最高の黒字となっている。料金収入つまり売り上げが減っているにもかかわらず、黒字を確保している。この要因について尋ねる。
◯水道事業管理者 アセットマネジメント手法を活用した水道施設の効率的な維持、更新によって経費節減に取り組むとともに、企業債残高の縮減による支払利息の低減を図るなど、経営の効率化に取り組んでいることによるものと考えている。
◯黒子委員 水道事業の経営状況を判断するに当たって大事な指標である給水原価と供給単価について、平成30年度と5年前を尋ねる。
◯水道事業管理者 給水原価は、水道水1立米を利用者に届けるまでにかかる費用を示すもので、平成26年度が199.2円、30年度が170.7円である。供給単価は、料金単価の異なる全ての用途を含めた収入と水量から計算した水道水1立米当たりの単価で、26年度が218.1円、30年度が219.3円である。
◯黒子委員 給水原価は随分下がる一方、供給単価はほぼ横ばいで推移している。供給単価を給水原価で除する料金回収率について説明を求める。
◯水道事業管理者 料金回収率は、給水原価に対する供給単価の割合で、水道事業の経営状況の健全性を示すものであり、平成26年度が109.5%、30年度が128.5%となっている。給水原価については、経費節減の効果や企業債残高の縮減による支払利息の減少などにより着実に低下する一方で、供給単価については、給水原価を上回る水準で安定して推移しており料金回収率は向上している。料金回収率が向上したことにより、水道施設等の更新などに充てる建設改良費や、さらなる企業債残高の縮減のための財源を確保できていると考えている。
◯黒子委員 水道局の立場ではそのような説明になるが、私は少し違う捉え方をしている。企業債残高については、着実に利益を確保することで縮減を図っていると言うが、平成30年度末の企業債残高は幾らか。また、企業債残高のピークの時期と金額について尋ねる。
◯水道事業管理者 平成30年度末の企業債残高は約1,120億円で、企業債残高のピークは12年度末の約1,674億円である。
◯黒子委員 企業債残高のピークも料金収入のピークと同じ平成12年度で約1,674億円、30年度が約1,120億円であり、ピーク時の12年度から約554億円縮減している。この企業債残高の約1,120億円は、料金収入319億円の約3.5倍に当たる。企業債残高が料金収入の3.5倍というのは非常に厳しい状況であると考えるが、他の政令市などと比較しての所見を尋ねる。
◯水道事業管理者 ピーク時における12年度の約5倍に比べ着実に減っているが、他の大都市の平均は約1.9倍であり、いまだ高い状況にある。引き続き、企業債残高の縮減に向けてしっかりと取り組んでいく。
◯黒子委員 本市の企業債残高を他の政令市や大都市並みの1.9倍まで下げるためには、約514億円の縮減が必要となり大変な状況である。水道長期ビジョンにおける企業債残高の見通しを尋ねる。
◯水道事業管理者 水道長期ビジョンにおいては、企業債の新規借り入れ額を元金の償還額の範囲内に抑制することにより、企業債残高は、計画期間の10年度末には1,000億円を下回り、約985億円になる見通しとしている。
◯黒子委員 水道長期ビジョンでは、企業債残高を985億円まで縮減するということであり、これまで以上に縮減に取り組んでいかなければならない。水道長期ビジョンにおける収益的収支の見通しを尋ねる。
◯水道事業管理者 水道長期ビジョンにおいては、収益的収入及び支出ともに、おおむね横ばいで推移し、安定的に40~50億円程度の単年度利益を確保できる見通しとしている。
◯黒子委員 本市の人口は増加が続いており近いうちに160万人を超えそうであるが、人口増が水需要の増加には結びついていないので、今後の料金収入の大幅な伸びは期待できない。一方で、これまで整備を進めてきた水道施設の大量更新時期を迎える。平成27年3月の条例予算特別委員会において、ちょうどその当時、水道長期ビジョン及び中期経営計画の策定の時期であったので、策定に当たっては専門家から成る委員会を設置して、水道事業ガイドラインに基づく数値などのデータを積み上げ、水道事業のさらなる見える化を目指すべきであると指摘した。水道長期ビジョンや中期経営計画の策定に当たって、どのように反映したのか尋ねる。
◯水道事業管理者 学識経験者や公認会計士などから成る懇話会を設置し、水道事業の現状を踏まえた上で、今後の目指すべき方向性や優先的、重点的に取り組むべき施策などについて、幅広い意見を聞き策定している。なお、策定に当たっては、水道事業ガイドラインの指標を参考にしながら、各種施策の成果指標を設定するなど、事業の進捗や成果を市民にわかりやすく見える化する工夫をしている。
◯黒子委員 水道長期ビジョンの見通しによると、料金収入の伸びが見込めない中、収益を確保し企業債残高の縮減を図ることとしており、老朽化が進む施設の更新需要に適切に対応していかなければならない。特に4,000キロメートルにも及ぶ配水管については、計画的、効率的更新が必要となる。水道長期ビジョンにおける配水管更新の整備見通しについて説明を求める。
◯水道事業管理者 実際に道路を掘削して配水管の老朽度と埋設環境について調査、分析した上で、おのおのの配水管の実質的な耐用年数を設定し効率的な更新を行うこととしている。水道長期ビジョンにおいて、更新延長を年間40キロメートルから45キロメートルにペースアップすることで、8年度までに、実質的な耐用年数を超過した配水管の更新を完了させる予定としている。
◯黒子委員 年間45キロメートルの更新を続けるためには、多額の更新費用が必要となるが、長期ビジョンにおける建設改良費の見通しにどのように反映されたのか。
◯水道事業管理者 水道施設の維持、更新については、アセットマネジメント手法を活用し、投資の平準化やライフサイクルコストの縮減を図っていく。水道長期ビジョン計画期間中の建設改良費は、平均で年間145億円を見込んでいる。
◯黒子委員 供給単価は、平成26年度が218.1円、30年度が219.3円で、ほとんど横ばいで推移している。給水原価は、26年度が199.2円、30年度が170.7円で、大分下がっている。給水単価を供給原価で除した料金回収率は、26年度が109.5%、30年度が128.5%で、少しずつ上がってきている。他の大都市平均が118%であるので、本市の料金回収率は他都市に比べると高いと言うことができる。この給水原価を製造原価、そして供給単価を販売価格と捉えると、料金回収率は利益率と捉えることができる。つまり、本市の利益率は、他の大都市と比べれば高いということが言える。少なくとも、現水道長期ビジョンの最終年度の10年度までは料金を値上げする必要はないと考えるが、所見を尋ねる。
◯水道事業管理者 単年度利益を着実に確保し、今後増加する水道施設等の更新需要や企業債残高の償還のための財源に充てることにより、現行料金を維持することとしている。
◯黒子委員 ぜひ例外ないようにお願いしておく。本市は、市民の理解と協力を得ながら、他都市にはない節水型都市づくりを進めてきた歴史がある。また、直結給水方式の推進や貯水槽の適正管理の啓発など、安全でおいしい水プロジェクトなどにも鋭意取り組んできた。新しい時代の水道事業経営についても、市民の理解と協力を得ながら進めていかなければならない。水道事業の経営戦略について、管理者の見解と決意を求める。
◯水道事業管理者 今後の水道事業については、料金収入の大幅な伸びが期待できない中で、増加する更新需要等に適切に対応していく必要があり、より一層の計画的、効率的な事業運営が求められている。引き続き、市民の意見に耳を傾けながら、水道長期ビジョンに掲げる事業計画を着実に実施し、安全でおいしい水道水を安定的に供給するとともに、将来にわたり安定経営を持続していく。
◯黒子委員 下水道事業の経営戦略について質問する。水道事業より少しおくれて、昭和50年代前半から集中的に整備してきた本市の膨大な下水道施設についても、間もなく一斉に更新時期を迎え、再構築の時代に入っていく。まず、本市下水道事業の目指すべき将来像、その実現の方向性について、どのように定めているのか尋ねる。
◯道路下水道局長 東日本大震災や熊本地震など、自然災害の激甚化や頻発化、施設の大量更新時代の到来などを背景として、平成29年6月に計画期間を10年とする福岡市下水道ビジョン2026を策定した。同ビジョンの中で、本市の下水道が目指す将来像として、下水道サービスを持続的に提供することで、快適で安全、安心な暮らしを支えるとともに、豊かな環境の創出に貢献し、さらには、国際貢献などを通じて新たな価値を創造するものと位置づけたところである。さらに、この将来像の実現に向け4年ごとに具体的な実施計画を策定することとしており、現在、福岡市下水道経営計画2020に基づき鋭意取り組んでいる。
◯黒子委員 下水道事業を取り巻く経営環境についても、厳しさを増している。平成30年度の使用料収入、損益及び経常収支比率を踏まえての経営状況を尋ねる。
◯道路下水道局長 平成30年度の下水道使用料収入は約280億円となっている。純損益は約75億円の黒字で、経常費用に対する経常収益の割合である経常収支比率も115.3%と100%を超えていることから、経営状況は良好であると認識している。
◯黒子委員 経営状況は良好のようだが、中長期的な視点を持って経営を行っていかなければならない。使用料収入の推移と損益の状況を尋ねる。
◯道路下水道局長 下水道使用料収入については、世帯数が毎年増加していることから基本使用料は増加しているが、世帯当たりの使用水量が減少傾向で重量使用料は伸び悩んでおり、全体としては、ほぼ横ばいで推移している。純損益については、平成18年度からは毎年度黒字を計上しており、年々黒字幅は増加している。
◯黒子委員 下水道の使用料収入は、平成18年度に約276億円で、さきの答弁のようにほぼ横ばいが続いており、28年度に約279億円、29年度及び30年度に約280億円と少しずつ伸びてきている。一方、損益は17年度に約8,300億円の赤字を計上し、この年に料金改定を行ったことから18年度から黒字に転換した。そして、少しずつ損益も回復し、28年度に約64億、29年度に67億円、30年度に約75億円と過去最高の黒字を記録している。下水道についても、使用料収入がさほど伸びない中で、損益については過去最高を記録している要因について尋ねる。
◯道路下水道局長 水処理や汚泥処理のための機器を更新時期にあわせて節電型に切りかえ、電気代の節減を図るなど、維持管理費を低減してきたこと、また、平成19~24年度に措置された国の制度を活用して高金利の企業債を借りかえたことにより、利息負担の縮減を図ったことなど、全体として支出を削減してきたことで毎年度黒字を確保している。
◯黒子委員 平成30年度末の企業債残高及び企業債残高のピークの時期と金額を尋ねる。
◯道路下水道局長 平成30年度末の企業債残高は約3,665億円で、企業債残高のピークは14年度末の約5,097億円である。
◯黒子委員 平成14年度が企業債残高のピークで約5,097億円、30年度が3,665億円と約1,432億円縮減している。この約3,665億円の企業債残高は、他都市に比べ極めて高いと思うが、どのような状況なのか。また、下水道事業の企業債残高は料金収入に対してどの程度なのか尋ねる。
◯道路下水道局長 平成30年度末の企業債残高を平成31年3月31日時点の人口で除した、市民1人当たりの額に換算すると、本市の約24万円に対して本市を除く指定都市及び東京都の平均は約20万円となっており、21都市中、多いほうから5番目となっている。また、企業債残高の使用料収入との比較については、本市の13.1倍に対して、他の大都市平均は12.1倍である。
◯黒子委員 企業債残高が多いことから、利払いの負担が大きく金利上昇のリスクもあるので、さらなる企業債残高の縮減に取り組まれたい。今後、どのように企業債残高の縮減に取り組むのか、下水道ビジョンの見通しに沿って答弁を求める。
◯道路下水道局長 ピーク時の平成14年度末から、この16年間で約1,432億円縮減してきた。今後もプライマリーバランスを堅持することで、下水道ビジョンで掲げた10年間で20%削減の目標を達成できると見込んでいる。
◯黒子委員 下水道施設の中でも特にストック量が多い管渠について質問する。本市の下水道整備は昭和50年代前半から積極的に推進しているが、下水道管の改築更新に係る事業費のピークはいつごろになるのか。
◯道路下水道局長 下水道整備費のピークは昭和60年前後であるので、下水道管渠の法定耐用年数を50年とすると、改築更新に係る事業費のピークは単純計算では令和10年代後半となる。
◯黒子委員 計画的な改築更新のためには、これまで整備してきた管渠の状況を的確に把握する必要がある。下水道の経営状況を示す指標中、管渠の老朽化率と改善率及び平成30年度の状況について尋ねる。
◯道路下水道局長 管渠の老朽化率は、布設後50年を経過した管渠の総延長に対する延長割合を示すもので、平成30年度末時点では、地中に埋設している管渠の総延長約4,965キロメートルに対して、老朽管渠延長は約329キロメートルで6.6%である。管渠の改善率は、地中に埋設している管渠の総延長に対して、当該年度に改築した管渠延長の割合を示すもので、30年度の改築延長は約22.7キロメートルで0.46%である。
◯黒子委員 2つの指標を用いることで、老朽化した管の割合と改築のペースを把握することができる。平成30年度の改善率で計算すると、下水道管の更新が一巡するのに単純計算で何年かかるのか。
◯道路下水道局長 約220年となる。
◯黒子委員 令和10年代後半に改築更新のピークを迎えるが、改築更新事業は新規投資とは違って使用料収入の増加は見込めないことから収支の悪化が予想される。そのような中、改築更新のための事業費の急増時に、いかに必要な事業費を絞り込むかということが経営戦略として極めて重要である。今後、どのように下水道管の更新に取り組んでいくのか尋ねる。
◯道路下水道局長 安定した下水道サービスを市民に持続的に提供していくため、事業費の平準化を図りつつ、アセットマネジメントの観点から管渠の更新に取り組んでいる。引き続き、計画的なテレビカメラ調査により老朽化に伴う劣化状況を把握し、致命的な破損が発生する前に対策を講じる、いわゆる予防保全に取り組むとともに、計画的な管更生や布設がえ工事を行うことで、施設の長寿命化や事業費の削減に取り組んでいく。なお、都心部に埋設している昭和48年までの規格で製造された陶器製の管渠や管渠内部で腐食が進行しやすい箇所については、最優先で改築更新に取り組んでいる。
◯黒子委員 平成30年度の使用料単価、処理原価、使用料充足率を示すとともに、他の大都市平均との比較を尋ねる。
◯道路下水道局長 使用料単価は、料金徴収の対象となる有収水量1立米当たりの使用料収入で、本市は179.16円、他の大都市平均は140円となっている。処理原価は、有収水量1立米当たりの汚水処理に要する経費で、本市は131.47円、他の大都市平均は120.29円となっている。使用料充足率は、汚水処理に要した費用に対する下水道使用料収入の比率で、本市は136.3%、他の大都市平均は117.9%となっており、本市の数値は、いずれの指標とも他の大都市平均を上回っている。
◯黒子委員 使用料単価は、平成26年度は179.8円、30年度は179.16円とほぼ横ばいで推移している。処理原価は、26年度は147.64円、30年度は131.47円とだんだん下がってきている。下水道の場合、使用料単価を処理原価で除すると使用料充足率となる。本市の使用料充足率は、26年度は121.8%、30年度は136.3%と徐々に上がっている。他の大都市平均が117.9%であり、本市の使用料充足率は極めて高いと言える。水道と同じように、使用料充足率を利益率と考えると、本市の利益率は極めて高いと言える。少なくとも、現下水道ビジョンの最終年度、令和8年度までは値上げをする必要はないと考えるが、所見を尋ねる。
◯道路下水道局長 現行の下水道使用料の水準で事業を堅調に運営することができると見込んでいる。
◯黒子委員 値上げはないと理解する。本市の下水道事業は、使用料収入の伸び悩みや多額の企業債残高の償還、老朽化した管路の更新、頻発する自然災害への対応など多くの課題がある。これらの課題解決に向けては、経営指標などを活用しながら、さらなる見える化に努められたい。また、学識経験者や専門家の知見を活用し分析、精査し、経営戦略にぜひ反映されたい。下水道事業の経営戦略について、見解と決意を尋ねる。
◯道路下水道局長 将来人口推計によると、本市の人口は令和17年ごろをピークに減少に向かうと予測されており、これに伴い下水道使用料収入の減少が見込まれる。また、急速に進む施設の老朽化や、激甚化、頻発化する自然災害への対応も怠ることができない。こうした厳しい経営環境を迎えつつある中、安定した下水道サービスを持続的に提供していく上で、コスト縮減は焦眉の課題である。具体的には、企業債の発行について、プライマリーバランスの堅持により発行を抑制するとともに、効率的な整備手法や工法の採用、機器の運転管理にIoTやAIを活用することによる維持管理費の削減など、アセットマネジメントの推進を図ることで、本市の下水道が目指す将来像の実現に向け、しっかりと取り組んでいく。
◯黒子委員 水道事業と下水道事業を検証しながら質問を進めたが、交通事業については次の機会に質問したい。公営企業を取り巻く経営環境は、ますます厳しさを増していく。料金収入や使用料収入の伸び悩みに見られるように、稼ぐ力が弱くなっている一方で、収益の源である施設や整備が大量更新時期を迎えることが大きな課題となっている。それぞれの企業体が、みずからの経営等について的確な現状把握を行い、将来にわたって安定的に事業を継続していくための経営戦略をしっかりと描いていくことが必要である。公営企業の経営基盤の強化と財政マネジメントについて、市長の所見を尋ねる。
◯市長 市民の暮らしを支える重要な社会インフラである上下水道や地下鉄などの企業会計の経営基盤の強化は大変重要であり、各企業会計において、それぞれの経営環境を踏まえながら、中長期的な計画を策定して戦略的な経営に取り組んでいる。今後とも、徹底した経費の節減や積極的な収入の確保、企業債残高の縮減などにより経営基盤の強化を図るとともに、アセットマネジメントの着実な推進など、持続可能な財政運営に向けた取り組みにより、本市の住みやすさをさらに向上させることができるよう全庁を挙げてしっかりと取り組んでいく。