◯黒子委員 公明党福岡市議団を代表し、28年度決算概要について、並びに28年度市基本計画に係る実施状況の報告に沿って、公共交通バリアフリー化促進事業について及び道路照明灯のLED化の推進について維持管理の視点を含めて質問していく。まず、28年度決算概要についてだが、先日、総務省が地方自治体の28年度決算を公表した。地方財政健全化法に基づく各指標は改善し、景気回復の恩恵が及んでいるようだが、まず、本市の28年度決算のポイントについて説明を求める。
△財政局長 決算見込みについては、一般会計及び15の特別会計の実質収支が黒字または収支均衡となっており、また、全会計ベースの市債残高についても前年度と比較して縮減している。
◯黒子委員 本市の財政構造の特徴は、かつて集中的に社会資本整備を進めたことで多くの資産が形成された半面、多額の市債残高を抱え、財政が硬直化していると聞いている。財政の現状についてだが、一般会計におけるプライマリーバランスの過去3年間の推移を尋ねる。
△財政局長 26年度は約317億円の黒字、27年度は約353億円の黒字、28年度は見込みで約352億円の黒字であり、12年度以降、17年連続で黒字を達成している。
◯黒子委員 市債残高のピークである16年度末の全会計ベースでの市債残高及び過去3年間の推移を尋ねる。
△財政局長 満期一括積立金を除く全会計の市債残高は、16年度末が約2兆5,882億円、26年度末が約2兆2,439億円、27年度末が約2兆2,159億円、28年度末が約2兆1,744億円である。
◯黒子委員 16年度をピークに着実に減少しているようだが、地方公共団体の財政健全性を示す健全化判断比率である4つの指標を用いて、本市財政についての分析を求める。
△財政局長 まず、28年度の実質赤字比率及び連結実質赤字比率については、赤字が生じていないため発生していない。次に、28年度の実質公債費比率は12.2%、将来負担比率は152.7%であり、いずれも早期健全化基準を下回るとともに、近年の健全な財政運営の取り組みの結果、前年度と比較して改善している。なお、これらの2つの指標は政令市の中で高い水準にあるが、一方で、市民生活を支える社会資本が整備され、多くの資産が形成された側面もあると認識している。
◯黒子委員 いずれの指標も問題はないとのことだが、実質公債費比率は起債に国の許可が必要とされる18%を下回っているが12.2%、将来負担比率は政令市で6番目に高い152.7%であり、今後とも市債残高の縮減に取り組んでいかなければならない。自治体はみずからの財政状況を常に分析し、財政運営の健全性を確保していくことが求められるが、財政構造の弾力性及び行政水準の確保という視点から本市の特徴について、他の政令市と比較しながら説明を求める。
△財政局長 27年度の経常収支比率は92.5%であり、政令市でよいほうから6番目と比較的良好ではあるが、財政構造の弾力性の拡大に向けて引き続き健全な財政運営に取り組んでいく。また、27年度の財政力指数は0.879であり、政令市でよいほうから11番目と中位であるが、今後も市民生活に必要な行政サービスの安定的な提供及び生活の質の向上等に向けて、財源の確保に努めていく。
◯黒子委員 総務省は地方公共団体の会計について、財政の透明化を促進し、市民に対する説明責任をより適切に果たすため、発生主義の企業会計的手法である、統一的な基準による地方公会計の導入を求めている。地方公会計を本市財政のさらなる健全化を進めるためのツールとして予算編成等に積極的に活用するなど、限られた財源を賢く使う取り組みを行うことが極めて重要であるが、地方公会計の内容及び本市における導入状況について尋ねる。
△財政局長 平成27年1月の総務大臣通知において、原則として29年度までに全ての地方公共団体で、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした統一的な基準による財務書類等を作成することが求められている。統一的な基準による財務書類は貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書の4表で構成され、地方公共団体間での比較可能性が確保されることになる。本市においては29年度中の作成、公表に向けた取り組みを進めているところである。
◯黒子委員 今後の本市の財政状況を見ると、大幅な伸びが見込めない一般財源、伸び続ける社会保障関係費、高度成長期に集中的に整備した公共施設等の改修費、長期にわたって償還しなければならず高どまりしている公債費など、依然として楽観できる状況ではない。今後の財政運営の方向性について尋ねる。
△財政局長 今後の財政運営に当たっては平成29年6月に策定した財政運営プランに基づき、将来にわたり持続可能な財政運営とするための取り組みを進めていく。具体的には、市民生活に必要な行政サービスを安定的に提供しつつ、重要施策の推進や新たな課題に対応するために必要な財源を確保できるよう、政策推進プランに基づき投資の選択と集中を図るとともに、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化、既存事業の組みかえなどの不断の改善に取り組んでいく。また、中長期的に、生活の質の向上と都市の成長のために必要な施策事業の推進により税源の涵養を図りつつ、超高齢社会に対応する持続可能な仕組みづくりやアセットマネジメントの推進、市債残高の縮減に向けた市債発行の抑制などにより、将来にわたり持続可能な財政運営に取り組んでいく。
◯黒子委員 本市財政は依然として楽観できる状況ではないため、賢く財源をつくる取り組みを今後とも進められたい。次に、28年度市基本計画に係る実施状況の報告に沿って質問していく。初めに、公共交通バリアフリー化促進事業についてだが、まず、事業の目的及び内容について尋ねる。
△住宅都市局長 バリアフリー基本計画及び都市交通基本計画に基づき、誰もが使いやすい安全、安心で快適な交通環境づくりを目的として、鉄道事業者が実施する鉄道駅のバリアフリー化に対する補助を14年度から開始し、18年度からはバス事業者が導入するノンステップバスへの補助を実施している。
◯黒子委員 28年度における本市のノンステップバス導入への補助台数、補助金額及び1台当たりの補助金額を尋ねる。あわせて、国からの補助があれば内容を尋ねる。
△住宅都市局長 ノンステップバスの車両価格と通常車両価格との差額の2分の1をバス事業者へ助成しており、28年度はバス事業者2社の87台に対して3,863万5,000円、1台当たり約44万円を支出している。また、国からの補助は本市と同額となっている。
◯黒子委員 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、いわゆるバリアフリー法において、バスのバリアフリー化における関係者の責務及び今後のノンステップバスの導入目標について、どのように定められているか尋ねる。
△住宅都市局長 平成18年12月に施行された同法では、バス事業者が新たに車両を導入するときは、高齢者や障がい者などに配慮した、いわゆる低床バスの基準を定めた公共交通移動等円滑化基準に適合させなければならないと定められている。一方、国及び地方公共団体は、移動などの円滑化を促進するため、バス事業者への補助など必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定められている。ノンステップバスの導入目標については、平成23年3月に策定された移動等円滑化の促進に関する基本方針、通称、国の基本方針において、32年度までに約70%を達成することとされている。
◯黒子委員 28年度末時点における、市内を走行する路線バスに占めるノンステップバスの台数及び導入率を尋ねる。
△住宅都市局長 市内の路線バス1,342台のうち380台がノンステップバスであり、導入率は約28%である。なお、24年度まではバス事業者においてワンステップバスを積極的に導入してきた経緯があり、ノンステップバスにワンステップバスを加えた低床バスの導入率は28年度末現在、約87%である。
◯黒子委員 ノンステップバスの導入促進のため、本市がバス事業者に対して補助金を出している根拠を尋ねる。また、補助金交付に当たってバス事業者との間に確認書などがあれば、その内容を尋ねる。
△住宅都市局長 国の基本方針及びバリアフリー基本計画に基づき、国の補助制度に合わせて、公共交通バリアフリー化促進事業補助金交付要綱を定め、助成を行っている。補助金交付に当たってはバス事業者と確認書を締結し、整備目標に達するまで市内の運行路線がある営業所に配置すること、本市の協力により普及促進が図られていることを周知するシールを車体に張ることなどを取り決めている。
◯黒子委員 平成25年の当初議会において、我が会派の議員の質問に対して市長は、ノンステップバスの車両の導入については本市の支援を拡大し、交通事業者や国と連携して導入の促進に取り組んでいくと答弁しているが、25年度以降の取り組みについて尋ねる。
△住宅都市局長 本市の支援について24年度までの補助台数は年間当たり2台であったが、25年度以降、補助台数を大幅に拡大し、年間当たり約70~80台の導入に対して補助を行っている。現在、バス事業者において新たなバスを購入する際は、全てノンステップバスを導入していると聞いており、本市としても引き続き、導入促進に向けて積極的に支援していく。
◯黒子委員 国の基本方針において、32年度までに導入率約70%という目標が定められているため、導入促進を強く求めておく。先日、総合都市交通計画を定めている川崎市を訪問して調査を行ったが、川崎市では誰もが安全、安心、快適に利用できる交通環境の整備としてユニバーサル化を進めており、取り組みの方針として、子育て世帯や高齢者、障がい者を初め、誰もが利用しやすいノンステップバスやユニバーサルデザインタクシー等の車両の普及や利用環境の整備を推進することとしていた。本市における都市交通基本計画でのタクシーの位置づけについて尋ねる。
△住宅都市局長 ユニバーサルデザインの理念に基づき、子どもから高齢者まで年齢や障がいの有無などにかかわらず、誰もが安全で安心して移動できる交通環境づくりを進めている。タクシーについてはドア・ツー・ドアで移動できる機動性の高い公共交通であり、地域特性に応じた生活交通の確保に寄与するものと考えている。
◯黒子委員 公共交通の担い手としての役割が期待されているとのことだが、急速に進む高齢社会では、高齢者や障がいのある人の日常生活における移動手段の確保はますます重要になってきており、円滑な移動手段の一つとして、多様なニーズに対応できるタクシーへの期待や重要性はますます高まるものと考える。現在運行されているタクシー車両のほとんどがセダン型であり、高齢者や障がいのある人にとっては少々利用しづらいのではないかと思っており、誰もが利用しやすいタクシー車両をふやしていくべきだと考える。国においては誰もが利用しやすいタクシー車両について、ユニバーサルデザインタクシー(以下、UDタクシーと言う。)の認定制度を創設して開発や普及を後押ししていると聞いているが、UDタクシーとはどのような車両なのか、また、28年度末における本市の導入状況を尋ねる。
△住宅都市局長 国の基本方針に基づき、普及促進に向けて平成24年3月に車両の標準仕様を定めた認定制度が創設されている。足腰の弱い高齢者や車椅子利用者、妊娠中の女性などがスムーズに乗りおりできるよう、乗降口や車内を広くして、スロープや手すりを設置した、誰もが利用しやすい、みんなに優しい新しいタイプのタクシー車両であり、市内での導入台数は約20台と聞いている。
◯黒子委員 川崎市でUDタクシーを導入している事業者に話を聞いたところ、車椅子利用者が1人でも安心して外出できるようになる、ベビーカーもそのまま乗車できるため若い世代も利用が可能である、福祉的な要素だけでなくさまざまな展開の可能性を持った車両である、大きな荷物を後部スペースに乗せることが可能であるため旅行者には大変便利であるとのことであった。さまざまなニーズに対応できるUDタクシーは今後、主流になっていくことは間違いなく、国土交通省は補助金を出してUDタクシーの導入を進めているが、国の助成制度の内容を尋ねる。また、国は事業効果をどのように見込んでいるのか尋ねる。
△住宅都市局長 国は地域公共交通確保維持改善事業費補助金などにより、タクシー事業者に対し1台当たり60万円を限度額とする補助を行っている。事業効果としては、本格的な高齢社会を迎える中、移動の円滑化を促進することにより、高齢者や障がい者を含めたあらゆる人の社会参加が進むことが期待されている。
◯黒子委員 国は補助金を出して事業を推進しているが、車両価格が一般のタクシーに比べて高額であるため、目標どおりに進まないようである。川崎市では平成25年7月にユニバーサルデザインタクシー導入促進補助金交付要綱を制定し、川崎市内を営業区域としているタクシー業者で、地域公共交通会議において策定された生活交通改善事業計画にUDタクシー導入を掲げた事業者を対象に、1台当たり20万円を上限とする補助を行っており、今年度までに川崎市内の法人タクシー総台数の10%をUDタクシーとすることを目標に事業を進めている。その他の政令市でも補助制度の導入が進んでおり、札幌市は1台当たり上限30万円、横浜市では1台当たり上限12万円、さいたま市では1台当たり上限37万5,000円、名古屋市では1台当たり上限20万円、静岡市では1台当たり上限60万円となっている。また、東京都では1台当たり上限60万円の補助を行っており、現在約5万台あるタクシーの2割に当たる1万台をUDタクシーにする方針だと聞いている。本市は、ノンステップバスについては引き続き、国及び本市の補助制度を活用しながらバス事業者における導入を促進していくとのことであったが、UDタクシーについては補助制度がなく、導入台数も少ない状況である。第9次基本計画では、本市が取り組む施策としてユニバーサルデザインの理念によるまちづくりを掲げており、基本計画に基づき策定された都市交通基本計画やバリアフリー基本計画でも、公共交通のバリアフリー化を推進していくと定められているため、公共交通の一端を担うタクシー車両についてもユニバーサルデザイン化を促進していくべきだと考える。本市のタクシー協会には、UDタクシー導入に向けた具体的な計画があると聞いており、本市も導入促進に向けて独自の補助制度を創設すべきと考えるが、所見を尋ねる。
△住宅都市局長 本格的な高齢社会を迎える中、高齢者や障がい者を初め、誰もが利用しやすい、みんなに優しい公共交通の利用を促進していくことは重要だと考えている。ユニバーサルデザインタクシーについては、高齢者などの社会参加を促進していく上で有効な交通手段であると認識しており、国の補助制度や他都市の先行事例などを参考にしながら、普及促進のあり方を検討していく。
◯黒子委員 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、本市では2019年にラグビーワールドカップ、2021年に世界水泳選手権の開催が決定している。国内だけでなく海外からも多くの旅行者が見込まれるため、グローバル化への対応が必要であるとともに、高齢者を初め、車椅子利用者等に対して公共交通における環境を整備し、社会参加を促進する上でも、UDタクシーを含む公共交通のユニバーサルデザイン化はますます重要になると考える。この質問の最後に、ユニバーサル都市・福岡の実現に当たり、核となる公共交通バリアフリー化の推進に向けた市長の決意を尋ねる。
△市長 本市では「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」をまちづくりの目標像に掲げ、市政の柱の一つとして推進している。また、人生100年時代を見据え、誰もが心身ともに健康で、自分らしく生きていける持続可能な社会を目指す福岡100プロジェクトをことし7月に打ち出し、オール福岡で推進しているところである。そのような中、高齢者を初め、誰もが気軽に外出し、さまざまな活動ができるような環境を整えていくためにも、公共交通のバリアフリー化は重要な施策であると考えており、今後とも、いつでも、誰でも、自由に、使いやすくというユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、ハード、ソフト一体の取り組みによる総合的なバリアフリーのまちづくりを進めていきたい。
◯黒子委員 次に、道路照明灯のLED化の推進について維持管理の視点を含めて質問する。本市は、管理する道路照明灯の全てをLED化する事業を進めているが、まず、LED化事業の概要、28年度の決算額及びLED化された照明灯の数、28年度末時点のLED化の進捗状況を尋ねる。
△道路下水道局長 24年度以降に新設した道路照明灯は全てLED照明灯を採用しているが、23年度末までに設置したLED化されていない照明灯3万4,570基について、24~38年度の15年間で全てをLED化する事業を進めており、28年度は決算額2億8,099万円余で1,205基をLED化した。また、28年度末時点の進捗状況については、照明灯の修繕や道路改良に伴いLED化したものも含め、24~28年度の累計で6,186基をLED化しており、進捗率は約18%である。
◯黒子委員 15年計画で始めの5年間の実績が約18%であるため、15年間での完了は難しいようであるが、LED化事業の具体的な進め方を尋ねる。
△道路下水道局長 道路照明灯設置後の経過年数を考慮しながら、省エネルギー効果やコスト縮減効果の高い消費電力の大きな照明灯を優先してLED化しており、具体的にはまず、既設照明灯の柱の健全性を確認した上で、照明灯の柱はそのまま利用し、照明器具のみをLED照明器具に取りかえている。また、九州電力やNTTの電柱に設置している照明器具の球切れの際や、道路改良工事に伴う照明灯の建てかえ時においてもLED化を行っている。LED化事業は国の補助事業を活用しながら進めているが、国の予算の確保が課題となっており、今後も国に働きかけを行いながら事業費の確保に努め、38年度までに全ての照明灯のLED化を目指していく。
◯黒子委員 LED化の具体的な作業工程について尋ねる。
△道路下水道局長 LED化に当たっては一定区間をまとめて実施することが効率的であるため、まず、道路照明灯設置後の経過年数を考慮しながら、消費電力の大きな照明灯が設置されている路線を選定する。次に、選定した路線の整備予定区間における照明灯の柱の健全性を確認するため、現地で目視及び打音調査を行い、柱の健全性が確認されたものについてのみ柱をそのまま利用し、照明器具をLED照明器具に取りかえる工事を行っている。
◯黒子委員 道路照明灯の柱には鉄製を初め、さまざまな素材があると思うが、一般的な照明灯の柱の耐用年数を尋ねる。
△道路下水道局長 国が定めた道路照明施設設置基準などに耐用年数は示されていないが、一般社団法人日本照明工業会が実態調査を行っており、一般的に使用されている鉄製の照明灯の柱の場合、30年を経過すると危険な腐食が見られる割合が高くなるという調査結果が示されている。
◯黒子委員 道路照明灯の柱が明らかに腐食していると見られる場合の対応策を尋ねる。
△道路下水道局長 腐食の範囲を目視で確認し、打音調査などにより腐食の進行ぐあいを確認しており、その結果、腐食が激しいものについては柱ごと建てかえを行い、腐食が軽微なものについては防せい処理を含む塗装などの補修を行って対応している。
◯黒子委員 近年、全国各地で鉄製の道路照明灯や標識などが劣化を原因として倒壊するなどの被害が報告されている。倒壊した柱の多くは、高度成長期にインフラ整備の一環として設置された鉄製の柱であり、倒壊の原因は経年劣化による鉄材の腐食とも言われているが、過去3年間における本市での道路照明灯の倒壊件数を尋ねる。
△道路下水道局長 26年度0件、27年度3件、28年度3件である。
◯黒子委員 平成28年2月11日、大阪府池田市の公園内の照明灯が倒壊し、女の子が大けがをしたという報道があったが、事故の詳細を尋ねる。
△道路下水道局長 池田市に詳細を確認したところ、公園内のトイレ付近に設置されていた照明灯が倒れ、近くにいた10歳の女子児童が照明灯の柱と地面の間に左手人さし指と右手中指を挟まれ、重傷を負ったとのことである。また、倒壊した照明灯の柱は鉄製で平成8年に設置されており、折れた根元部分は土がかぶさり腐食していたとのことである。
◯黒子委員 事故を受けて池田市は、市内の道路や公園、公共施設の照明灯だけでなく、カーブミラーや標識など、市が管理する合計9,109本の柱を緊急点検している。ことし2月、池田市を訪問して調査を行ったが、緊急点検の結果、根元が腐って倒壊のおそれがある柱が合わせて67本見つかったとのことであり、池田市長は、数が多くて驚いている、原因を究明したい、全国的にも倒壊のおそれがある柱はあるだろうと話していた。本市での道路照明灯の倒壊件数を先ほど尋ねたが、倒壊の原因をどのように分析しているのか、また、その後の対応について尋ねる。
△道路下水道局長 27、28年度における6件の道路照明灯倒壊の原因は、柱の腐食や台風の影響によるものと考えている。また、倒壊後は速やかに照明灯を撤去するとともに、市内の同タイプの照明灯について目視及び打音調査による緊急点検を実施し、腐食等の異常が確認されたものについては、建てかえや防せい処理を含む塗装などの補修を実施している。
◯黒子委員 本年8月9日、博多区上呉服町の市道で道路照明灯が倒壊したが、倒壊した照明灯の概要、直近の点検日、倒壊の原因、被害状況及びその後の対応について尋ねる。
△道路下水道局長 倒壊したのは平成11年設置の高さ4メートルの歩道照明灯であり、直近の点検日は平成21年9月4日であった。倒壊の原因は8月9日に各地で被害をもたらした突風によるものであり、けが人や物損はなかった。その後の対応については、倒壊した照明灯を同日速やかに撤去するとともに、市内同タイプの照明灯290基について目視及び打音調査による緊急点検を実施し、緊急点検の結果、傾きなどの異常が見られた照明灯14基を安全のため撤去した。
◯黒子委員 本年5月11日、北九州市でも鉄製の道路照明灯の倒壊が発生している。北九州市は周辺の同タイプの照明灯を含め、市内全ての照明灯について緊急点検を行ったとのことであり、本市においても早急な照明灯の総点検が必要だと考えるが、所見を尋ねる。
△道路下水道局長 本市では21年度に、設置後10年以上経過した道路照明灯1万9,067基について定期点検を実施し、異常が見られたものは建てかえや補修を行っており、その後も日常的な点検、緊急点検を適宜実施している。具体的な点検内容について、定期点検は10年に1回、設置後10年以上経過した照明灯を対象に目視点検を実施するものであり、腐食によって板厚が薄くなっていると懸念される柱については、詳細点検として測定機器による板厚の調査を実施している。日常的な点検は道路パトロール時に目視点検を行うものであり、ランプの球がえやLED化の施工前にも柱の健全性を確認している。緊急点検は倒壊などの事故が発生した場合、同タイプの照明灯について目視点検や打音調査を行い、必要に応じて柱の腐食が見られる部分の板厚調査も実施するものである。これらの点検で異常のあった照明灯については、建てかえや防せい処理を含む塗装などによる補修を実施し、安全確保に努めている。
◯黒子委員 鉄製の照明灯の柱の場合、30年を超えると危険な腐食が見られる割合が高くなるという答弁があったが、道路の路面部における地下水の状況や、埋め込み部分の環境によって腐食の進行には大きなばらつきがあるようであり、大阪府池田市の公園の照明灯は設置後20年で倒壊している。また、博多区上呉服町の照明灯は20年経過せずに倒壊しており、外見上は、さびが少し見られた柱の根元部分以外は特に異常がない状態であったが、本市には、設置後20年を超えている道路照明灯は何基あるのか、また、その全ての柱の根元を掘削調査すればどの程度の予算が必要となるのか尋ねる。
△道路下水道局長 28年度末時点の道路照明灯総数3万7,037基のうち、設置後20年を超えている基数は、地域からの譲渡等により設置年数が不明な照明灯を除いて9,093基である。また、掘削調査の費用について、仮に照明灯の柱の根元を10センチの深さで掘削調査するとして試算した場合、1基当たり七、八万円程度となり、9,093基全ての調査費用の試算は約7億円となる。
◯黒子委員 大阪府池田市の状況から推測すると、倒壊のおそれがある道路照明灯の数はかなりあるのではと考えられるが、設置後20年を超えている照明灯全ての柱の根元を一度掘削し、問題がなければ埋め戻す作業を実施する場合には、工期、コスト及び調査時の交通規制などさまざまな問題が発生する。そこで、国土交通省は掘削調査の事前調査として非破壊検査を推奨しているが、掘削せずに支柱埋設部の劣化調査などが可能となる非破壊検査について説明を求める。
△道路下水道局長 国土交通省が運用する公共工事等における新技術情報提供システム、通称NETISにおいて、掘削せずに照明灯の柱の根元の腐食状況を調査する非破壊検査の新技術として、超音波を用いたものや電磁誘導の原理を用いたものなどの測定技術が登録されている。なお、非破壊検査の新技術については、28年度に国土交通省関東地方整備局による測定精度の調査が行われているが、非破壊検査による測定結果と実際に掘削確認した腐食状況が一致した正答率は40~65%だったという結果が示されており、今後さらなる精度の向上が求められている。
◯黒子委員 本市において非破壊検査の実績はあるのか。実績があれば、検査の内容及び結果を尋ねる。
△道路下水道局長 27年度に実証試験として、中央区の渡辺通りの道路照明灯の柱9基について超音波を用いた非破壊検査を実施しており、検査結果は、健全と評価された柱が3基、次回定期点検まで経過観察と評価された柱が6基であった。
◯黒子委員 非破壊検査について技術はかなり進歩していると考えるため、開発動向に関する情報をしっかりと収集し、有効であると判断される場合は積極的に活用されたい。道路照明灯の倒壊は県内において、本市や北九州市以外でも発生しているようであり、本年8月5日、春日市の春日公園で県道脇にある照明灯が倒壊し、通行中の女性がけがをしている。5月に発生した北九州市での倒壊を受け、県は設置後30年を超える照明灯2,689基を緊急点検したが、今回倒壊した春日市の照明灯は緊急点検の結果、異常が見られなかったにもかかわらず、その3カ月後に倒壊した。県は今回の事態を重く受けとめ、柱周辺の土を掘るなどして、腐食の異常がないかなどを調査すると聞いている。県や北九州市とは情報交換を図りながら、照明灯の構造や部材の状況の評価など、必要な知識や技術を有している組織や団体と連携し、今後の対応をしっかりと進めていくことが必要だと考えるが、所見を尋ねる。
△道路下水道局長 最近の道路照明灯の倒壊事故の発生を機に、県や北九州市と9月上旬に照明灯の維持管理や非破壊検査等に関する意見交換を行っており、今後も効果的、効率的な維持管理を行うため、継続的に意見交換や情報共有に努めていく。また、非破壊検査は照明灯の柱の根元を掘削せずに腐食の有無を調査することができる一方、測定精度のさらなる向上が求められており、非破壊検査の技術開発の進捗を注視するとともに、他都市での実績等も収集していく。さらに、企業や団体等から非破壊検査の実証試験等の申し出があれば、積極的に協力していきたいと考えている。
◯黒子委員 博多区上呉服町の道路照明灯は設置後20年を経過せずに倒壊しているため、20年を超えたものは要注意と考えたほうがよいのではないかと考える。目視や打音調査だけでは異常を認識できないことも多いと思うため、非破壊検査を初め、技術開発の進捗を注視しながら、より精度の高い検査方法などを取り入れていくことは非常に大事な姿勢である。照明灯全体のライフサイクルコストを考慮した効果的な維持管理計画書を策定するなど、対処療法的な維持管理から予防保全的な維持管理へと転換していくべきではないかと考えるが、所見を尋ねる。
△道路下水道局長 道路照明灯全体の効果的な維持管理計画について、28年度から照明灯の柱の標準仕様を従来の鉄製から腐食の起きにくいアルミ製に変更し、長寿命化を図っている。また、照明灯のLED化の推進によって電気料金を縮減して維持管理経費の軽減を図り、照明灯の点検や修繕に要する事業費を確保しているところである。31年度には次の定期点検を行うこととしており、その点検結果を踏まえ、LED化の推進とあわせて、効果的、効率的な維持管理計画を検討していく。
◯黒子委員 本市財政の見通しが依然として楽観できる状況にない中では、限られた財源を賢く使う取り組みを進めていくことが重要である。本市は公共施設等について、平成20年にアセットマネジメント基本方針を策定し、施設の長寿命化や施設の有効活用など幅広い取り組みを進めている。今回、道路照明灯について質問してきたが、高度成長時代に急速に整備された道路、橋梁、河川、上下水道などは老朽化が進んでおり、施設の改修や修繕などの維持管理には多額の経費が見込まれている。公共施設マネジメントは単に老朽化対策にとどまらず、将来のまちづくりの取り組みであり、優れた技術や新技術なども有効に活用しながら、費用の縮減を図るとともに最大限の効果を上げていかなければならない。最後に、市長にアセットマネジメントの推進について決意を尋ね、質問を終える。
△市長 今日の元気な本市を支えているのは、先人たちが築いてきた道路などのインフラ施設であり、本市がさらに発展し、魅力あふれるまちであり続けるためには、インフラ施設を次の世代にしっかりと引き継いでいくことが必要だと認識している。また、公共施設マネジメントについては、計画的にアセットマネジメントを推進することで、財政負担の軽減を図るとともに、最大の効果を上げていくことが重要だと考えている。アセットマネジメント基本方針を踏まえ、平成29年6月に、今後4年間の取り組みを示すアセットマネジメント推進プランを策定し、各施設の特性に応じたアセットマネジメントの取り組みを推進しているところであり、道路照明灯についてもLED化を推進するとともに、より効果的、効率的な維持管理に取り組んでいく。今後とも公共施設を安全、安心に維持し、良質な公共サービスを持続的に提供できるよう、全庁を挙げてアセットマネジメントの取り組みを推進していく。