▼令和6年 令和5年度決算特別委員会 勝山 信吾 総会質疑 (令和6年9月25日)

◯勝山委員 公明党福岡市議団を代表して、がん対策の拡充について、空き家対策について質疑を行っていく。初めに、がん対策の拡充についてである。私は令和3年度9月議会の一般質問で、アピアランスケア推進事業について、福岡県で行っているアピアランスケア推進事業の補助を活用し、来年度はこの事業を本市で実施することを検討してほしい旨の質問をした。その質問に対して、本市においても県の補助事業の活用について検討するとの答弁があり、4年度から福岡市アピアランスケア推進事業を本市でもスタートしている。がん治療の脱毛時に使用するウィッグに関する研究によると、がん患者の生存率も徐々に高まり、治療中や治療後の生活の質の向上が強く求められている。日本人女性においては、乳がんの罹患率が高く11人に1人と言われている。また、乳がん患者の治療に伴う身体的苦痛の1位が頭髪の脱毛、2位が手術による乳房切除となっており、患者にとって大きな苦痛となっている。先日、ある婦人から私に相談があった。その人はがんに罹患し抗がん剤治療を受けているさなかで、薬の副作用の影響で髪の毛が抜けてしまい、病院に通院するのもおっくうになっているとのことだった。私はすぐに本市のアピアランスケアの助成制度を案内した。数か月後、その人からお礼の連絡をもらったが、申し訳なさそうに、「ウィッグが思っていたより高価だったため、助成額をもう少し上げてくれたら負担額が減って非常に助かる。また、所得制限もあるためどうにかならないか」との相談を受けたため、今回質問するに至った。初めに、本市のアピアランスケア推進事業の概要と目的、直近2年間の利用実績、予算額と決算額、執行率について尋ねる。

△保健医療局長 アピアランスケア推進事業については、がんの治療に伴う心理的負担を軽減し、社会参加を促進することで、療養生活の質の向上を図ることを目的とし、医療用ウィッグ等は2万円、補整具等は1万円の範囲内で購入費用の半額を助成するものである。令和4年度の助成者数は、ウィッグ等が363人、補整具等が97人、予算額は880万円、決算額772万円余、予算執行率は87.8%となっており、5年度の助成者数は、ウィッグ等が377人、補整具等が105人、予算額は869万円余、決算額は791万円余、予算執行率は91.0%となっている。

◯勝山委員 この事業も始まってまだ3年目である。がんに罹患した人に多く知ってもらい、利用してもらいたいと思う。今後、さらに幅広い周知が必要だと思うが、所見を尋ねる。

△保健医療局長 アピアランスケア推進事業については、がん診療連携拠点病院等でのチラシの配布やウィッグ等を取り扱う店舗へのチラシによる事業の周知、市ホームページへの掲載などにより周知を図っているところである。引き続き、必要な人に必要な情報が届くよう、効果的な周知、広報に努めていく。

◯勝山委員 がん治療への出費がかさむ中で、ウィッグや補整具の購入による支出も経済的負担の一因となる。ウィッグや補整具の平均的な購入費用を尋ねる。

△保健医療局長 令和5年度における平均購入額については、ウィッグ等が9万9,213円、補整具等が2万4,240円となっている。

◯勝山委員 私も調べたが、高価なものは数十万円もするものもあると聞いている。この事業を利用した市民の反応や事業効果について尋ねる。

△保健医療局長 利用者をはじめ市民からは、一部でも補助があるのは助かるという感謝の声がある一方で、医療用でないウィッグの助成や所得制限の廃止を求める意見も聞いている。

◯勝山委員 本市においても、ありがたいとの声や所得制限の廃止などの声が上がっているとのことである。平均購入費と本市の助成額の開きが大きいと感じるが、本市の認識を尋ねる。

△保健医療局長 この事業は福岡県の補助要綱に基づき実施しており、県と市で助成額の半額ずつを負担するものである。本市としては、利用者等の意見を踏まえ、助成額及び補助率の引上げなどを県へ要望しているところである。

◯勝山委員 助成額と購入額の差が大きいという認識については答弁がなかったが、ウィッグ等について本市独自で助成を増額した場合、県からの補助は受けることができるのか尋ねる。

△保健医療局長 県の補助要綱に定める助成額を超える金額を本市独自で助成する場合については、県からの補助を受けることができないことから、本市単独での負担が必要になると考えている。

◯勝山委員 本市独自で助成額を増やした場合は、超える部分においては、県の補助を受けることができないとのことである。ここで、先日訪問した東京都江戸川区の取組を紹介したいと思う。江戸川区では、従前からアピアランスケアに関する助成の有無の問合せが多かったことや、議会においても支援を望む声があったこと、東京都ががん患者へのアピアランスケア支援事業を開始し、助成経費の2分の1を補助することとなったことを受けて、令和5年度より事業を開始している。本市では、江戸川区より1年早くこの事業を開始しているが、助成額が違う。本市は上限2万円で1回のみ助成しているが、江戸川区では1点当たり上限10万円で、対象者1人につき2点まで助成を受けることができる。合わせると20万円の助成額になる。利用者からは、助成があるから購入に踏み切ることができた、ありがたいとの声をたくさんもらっているようである。東京都では、今紹介した江戸川区のほか、5つの特別区でも1点当たり上限10万円で2回助成を受けることができ、本市と大きな差を感じるところである。冒頭の答弁によると、本市においては、執行率が90%前後で、決算額は約800万円弱、負担割合は2分の1のため、この事業の本市の実際の負担額は400万円程度になる。仮に本市独自で1万円増額した場合は、負担額は400万円増えることになるが、決して大きな負担ではないと思う。そこで、利用者の購入費負担軽減のために、県に対して補助の増額等を強く要望するとともに、本市による助成額の上乗せを今後検討できないか尋ねる。

△保健医療局長 県に対しては、助成額及び補助率の引上げや医療用でないウィッグ等の追加、所得制限の廃止について要望しているところであるが、今後も引き続きしっかりと要望を行っていく。本市単独による助成額の上乗せについては、保健福祉施策全体の中で総合的に検討していく必要があると考えている。

◯勝山委員 総合的に検討する必要があるとのことであるが、県が引上げをするまでの間、本市独自の上乗せ支援をすることを要望する。また、県に対して粘り強く要望もし、今後、県が助成額や補助率を引き上げる際には、本市も助成額等の増額を要望している側として、速やかに対応することを要望しておく。次に、がん対策事業費の胃がんリスク検査について、質問を進めていく。我が国では昭和56年以降、がんが死因の第1位を占め続けており、生涯のうちに2人に1人ががんを患うと言われている。福岡県においても、昭和52年から死因の第1位を占め、令和4年には約1万6,000人、死亡者の約4人に1人ががんで亡くなっており、がん対策は重要な課題となっている。県では、がんを取り巻く現状と課題を踏まえて、6年度から6か年のがん対策の基本的方向性を示した、第4期福岡県がん対策推進計画を策定し、本市もこの推進計画に基づいて、がん対策を推進している。そこで、本市のがんによる死亡者数と死亡率の直近5年間の数とその傾向を尋ねる。

△保健医療局長 本市におけるがんによる死亡者数と死亡率については、福岡市保健統計年報によると、死亡者数は、平成30年が3,819人、令和元年3,868人、2年3,878人、3年3,922人、4年4,040人となっている。次に、人口10万人当たりの死亡者数で算出した死亡率は、平成30年が241.8、令和元年242.9、2年240.5、3年242.2、4年247.6となっており、がんによる死亡者数、死亡率ともに増加傾向である。

◯勝山委員 がんによる死亡者も死亡率も増加傾向とのことである。6月に厚生労働省が発表した人口動態統計によると、令和5年の1年間に国内で膵臓がんで死亡した日本人は4万174人で前年より増加、一方、胃がんは前年の4万711人から3万8,767人に減少し、昭和32年以降、初めて4万人を切った。かつてはがん死の1位だった胃がんは、平成22年頃まで約40年間にわたり年間5万人前後で推移していたが、原因とされるピロリ菌の除菌が幅広く健康保険の適用になった平成25年以降着実に減少し、10年間で20%の大幅減となっている。そこで、本市の胃がんの死亡者数と死亡率の直近5年間の数とその傾向を尋ねる。

△保健医療局長 本市における胃がんによる死亡者数と死亡率については、福岡市保健統計年報によると、死亡者数は、平成30年が403人、令和元年383人、2年342人、3年354人、4年338人となっている。次に、人口10万人当たりの死亡者数で算出した死亡率は、平成30年が25.5、令和元年24.0、2年21.2、3年21.9、4年20.7となっており、胃がんによる死亡者数、死亡率ともに減少傾向である。

◯勝山委員 胃がんによる死亡者数も死亡率も減少傾向とのことである。胃がんにはピロリ菌の感染が深く関わっており、ピロリ菌感染のない人から胃がんが発生することは非常に少ないと言われている。WHOによると、ピロリ菌感染は最もリスクが高い発がん因子に規定されているところである。初めに、ピロリ菌の感染者を減らすことが、胃がんの罹患者や死亡者を減らすことにつながると思うが、所見を尋ねる。

△保健医療局長 国の第4期がん対策推進基本計画において、ピロリ菌が胃がんのリスクであることは科学的に証明されていることから、ピロリ菌感染者の減少が、胃がんの罹患者や死亡者の減少につながるものと考えている。

◯勝山委員 本市でも、ピロリ菌感染者の減少が胃がんの罹患者や死亡者の減少につながるとの認識を持っているようである。がんの予防に詳しい北海道大学名誉教授の浅香正博教授は、「胃がんの減少はピロリ菌除菌で義務づけられた内視鏡検診による早期発見が大きく寄与したと考えられ、日本の胃がん対策は大きな成果だった」と語っている。本市では、平成30年7月から胃がんリスク検査を開始しているが、その概要と目的、直近3年間の予算額と決算額、執行率を尋ねる。また、胃がんリスク検査の対象者数、受診者数、受診率について尋ねる。

△保健医療局長 胃がんリスク検査については、血液検査により、胃がんの主な原因であるピロリ菌の抗体検査と、胃粘膜萎縮の程度を判定するペプシノゲン検査を組み合わせて、胃がんになりやすいかどうかを調べるものである。また、受診対象年齢は35歳または40歳としており、35歳は若年層の胃がん予防として、40歳はがん検診、特定健診と併せて受診してもらうことを目的としている。予算額、決算額、執行率については、令和3年度予算額が1,212万円余、決算額1,212万円余、執行率100%、4年度予算額が1,500万円余、決算額1,145万円余、執行率76.3%、5年度予算額が1,212万円余、決算額1,062万円余、執行率87.6%となっている。対象者数、受診者数、受診率については、3年度の対象者数が4万4,404人、受診者数3,310人、受診率7.5%、4年度の対象者数が4万3,887人、受診者数3,100人、受診率7.1%、5年度の対象者数が4万3,003人、受診者数2,845人、受診率6.6%となっている。

◯勝山委員 答弁によると、受診者数、受診率ともに3年連続で減少しており、予算の執行率も、令和4年度は76.3%、5年度は87.6%と8割程度にとどまっており、不用額を計上しなくて済むように、受診率アップのために実効性のある手だてを講じることも考えなくてはならないと思う。そのためには、この事業の目標を明確に示して、その上で、事業の検証や分析などを行っていくことが重要である。そこで、検査の受診率については、7%程度と決して高い率とは言い難いが、受診率が伸びていない要因について所見を尋ねる。

△保健医療局長 受診率が伸びていない要因については、現在、分析ができていないが、平成30年度に開始した検査であり啓発が十分でないことが考えられることから、引き続き対象者全員に個別に案内はがきを送付し、胃がんリスク検査の意義などについて周知を図っていく。

◯勝山委員 では、本市独自で受診率の目標は定めているのか尋ねる。

△保健医療局長 胃がんリスク検査については、国のがん検診実施のための指針に定められていないことから、現在、具体的な受診率の目標設定には至っていないところである。

◯勝山委員 受診率が伸びていない要因については、分析ができていないとのことであり、目標については、国が定めていないので本市独自では設定していないとのことである。持続可能な事業になるように、事業の検証などを深めて、本市で考え得る取組を進めていくことを要望する。国の第4期がん対策推進基本計画には、ピロリ菌の感染が胃がんのリスクであることが証明されている。そこで、ピロリ菌の陽性者を把握し、胃がんのリスクを回避するため、除菌治療につなげる仕組みは非常に重要である。胃がんリスク検査による直近3年間の陽性者数と除菌治療の数、その割合、除菌治療までの取組について尋ねる。

△保健医療局長 陽性者数については、胃がんリスク検査を受診後、要精密検査となった人の数で答弁すると、令和2年度が848人、3年度589人、4年度585人となっている。除菌治療を行った人の数とその割合については、2年度が321人で37.9%、3年度256人で43.5%、4年度267人で45.6%となっている。また、除菌治療については、主に内視鏡による精密検査の結果、除菌が必要と判断された場合は、医療機関において治療の推奨が行われているところである。

◯勝山委員 これまでの胃がんリスク検査の実績について、本市はどのように評価をしているのか。

△保健医療局長 胃がんリスク検査の結果、要精密検査となった人が自分のリスクを理解した上で、医療機関を受診するなどの予防行動を取るきっかけになっているものと考えており、引き続き受診率向上に取り組んでいきたいと考えている。

◯勝山委員 令和3年9月の一般質問で、ピロリ菌除菌の受診年齢について、他都市の状況を参考にしながら、受診年齢の見直しを含め、効果的な事業の実施について検討するとの答弁を受けていたが、その後の検討状況を尋ねる。

△保健医療局長 これまでの検討状況については、令和4年度に他の政令市に対し行った聞き取り調査において、対象年齢を本市より幅広に設定している自治体においては、受診率が2%未満となっていたことから、まずは対象年齢の拡大は行わず、受診率の向上を目指すこととしたものである。そのため、5年度からは、40歳の人に対する個別はがきによる案内を年2回に増やすなど、対象者が受診機会を逃さないよう見直しを行ったところである。

◯勝山委員 国立がん研究センターでは、胃がんの予防法の一つとして、ピロリ菌感染の有無を知り、感染している場合は、除菌を検討することを提言している。また、胃がんの予防にはピロリ菌をできるだけ早く除菌することが効果的で、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生率が抑制され、胃がんの早期発見や重症化の予防にも効果がある。健やかに暮らしていくためには、病気やけがを防ぐことや、病気を早期に発見して適切な治療を受けることが非常に大事である。予防は、病気になってから治療を受けるのではなく、病気にかからないように対策をすることで、生活の質の向上や医療制度の維持といった効果も期待できるところである。若年層から胃がんのピロリ菌検査を実施している政令市を尋ねる。

△保健医療局長 千葉市と名古屋市においては、20歳以上の若年層を対象にピロリ菌検査のみを実施している。

◯勝山委員 先日視察で訪問した神奈川県横須賀市では、神奈川県の医師会のモデル事業として開始後、令和元年度より市医師会と連携、協力し、中学2年生を対象にピロリ菌対策事業を行っており、検査費用、陽性者への除菌治療費ともに全額公費負担で実施している。実施方法は、学校検診の1回の尿検査と同一検体で行うため、本市の血液検査のような手間はかからない。また、受診者は2,060人で一次検査から除菌治療まで行った予算は約824万円である。一方で、本市が行う胃がんリスク検査の受診者は、5年は2,845人、決算額は約1,060万円で、この決算額には除菌費用は含まれていない。早期発見、治療を行うことで、長い目で見ると、本市の医療費負担は少なくなる可能性もあり、重症化を未然に防ぐこともできる。また、陽性の場合は若い年齢で除菌することもでき、子どもの胃の環境も良好にすることができる。ここで受診率のパネルを見たいと思う。上の表が横須賀市の中学2年生のピロリ菌対策事業である。まず、対象者は約3,000人であり、そのうち検査を受けた人の割合が約56%、2年度が67.2%、3年度67.1%、4年度65.0%、5年度が67.5%で受診率が非常に高いと思う。一方で、本市は受診率が7%前後のため、横須賀市は学校で実施している分高いと感じた。また、見てもらいたいのは除菌者数である。除菌者の陽性者数は少なく、年度ごとに30人、17人、26人、21人、9人となっているが、そのうち除菌治療を受けた子どもたちは100%である。一方で、ピロリ菌検査と胃がんリスク検査は、一概に比較はできないが、本市の胃がんリスク検査を調べたところ、除菌治療受診率が37.9%、3年度が43.5%、4年度が45.6%で、やはり学校で検査を行うことが除菌治療を受ける人が多いということを示しておきたいと思う。また、横須賀市は、表紙が一生ものの贈物、中2の胃がん予防という冊子を作っており、2019年度から市内在住の中学2年生を対象に、希望者に対するピロリ菌検査と、感染が分かった場合の除菌を全額公費で行っていることや、胃がんの撲滅のため、その意味と価値を胃がん経験者に語ってもらったことも載せて、保護者、中学2年生の当事者にピロリ菌検査のお知らせとして必ず配っているとのことだった。そこで、本市においても横須賀市の事例を参考にして、子どもたちの将来の胃がんのリスクを低減させるために、受診年齢を学校検診で行うことができる中学2年生相当まで引き下げてはどうかと考えるが、所見を尋ねる。

△保健医療局長 中学生へのピロリ菌検査については、若い世代のピロリ菌の感染率が減少傾向であることや、検査、除菌の実施について専門家の意見が分かれていることから、慎重に検討する必要があると考えている。

◯勝山委員 今の答弁によると、検査、除菌を実施すべきか否か意見が分かれているとのことであるが、その内容を尋ねる。

△保健医療局長 検査、除菌の実施については、日本小児栄養消化器肝臓学会では、無症状の小児に一律にピロリ菌の検査、除菌をすることは推奨しないとされる一方で、青少年期に対しては、日本ヘリコバクター学会のガイドラインにおいて、除菌治療をすることは、家庭内感染を予防し、次世代への感染対策として非常に有効であるとされている。

◯勝山委員 繰り返しになるが、日本小児栄養消化器肝臓学会では、無症状の小児にピロリ菌の検査、除菌をすることは奨励されていないとのことだが、一方で日本ヘリコバクター学会では、青少年期に除菌治療することは、家族内感染を予防し次世代への感染対策として非常に有効であると言われており、意見が相反している。年齢の低い小児は奨励しないならば、小児から年齢層を少し上げて検査の機会を増やすことで、受診率の向上につながるのではないか。そこで、本市でも千葉市や名古屋市のように20~30歳でピロリ菌検査を実施するなど、検査の機会を増やして受診率の向上につなげるべきだと考えるが、所見を尋ねる。

△保健医療局長 20歳以上の若年層を対象とした胃がんリスク検査については、若い世代のピロリ菌の感染率が減少傾向であることや、国のがん対策推進基本計画において、健康で無症状な集団に対するピロリ菌の除菌による胃がん発症の予防効果については、十分な科学的根拠は示されていないとされていることから、対象年齢の引下げは慎重に検討する必要があると考えている。

◯勝山委員 小児には奨励されないとの理由だけではなく、無症状な集団に対するピロリ菌の除菌についても慎重に検討する必要があるとのことである。横須賀市や佐賀県のように、中学生に積極的にピロリ菌の検査、除菌を行っている自治体もあれば、そうでない自治体もある。どちらが正しいとかは言えないが、どちらの学会の意見を聞くかで自治体が行う施策も変わってくるように思う。今回視察で訪問した横須賀市は、医師会としっかり協議をして、中学生のピロリ菌検査の必要性を総合的に判断して実施していたが、何より感銘を受けたことは、横須賀市は胃がんを横須賀市から撲滅することを公言しており、そのために気概を持って積極的にチャレンジをしていることであった。胃がん撲滅を公言することは、自治体にとってもかなりハードルが高いことだと感じたところである。本市においても、胃がんリスク検査の受診率の向上に取り組んでいくとは思うが、様々な可能性にチャレンジしてもらいたいと思う。初めてのコロナ感染症との戦いのときでは、当時の保健福祉局の皆さんが医療従事者と力を合わせて、全力で福岡市民の生命を守ってくれた。令和4年4月に局が分かれて保健医療局となったが、いま一度、福岡市民の生命を守り抜くとの保健医療の原点に立ち返って、本市の施策をさらに展開していくことを要望する。最後に、がん検診について尋ねる。がんを予防すること、がん検診による早期発見、早期治療を促すことで、がん罹患者や死亡者の減少につながる。国の第4期がん対策推進基本計画でも、誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指すことを全体の目標とした上で、がん検診受診率については、60%を目指すことが盛り込まれている。まず、本市の5つのがん検診の直近の受診率とその傾向を尋ねる。

△保健医療局長 本市のがん検診受診率については、令和4年国民生活基礎調査によると、胃がん検診が44.2%、大腸がん検診が41.1%、肺がん検診が42.3%、乳がん検診が42.4%、子宮頸がん検診が44.9%となっており、徐々に増加傾向にあるが、全国と比較すると、子宮頸がん検診を除き、平均値を下回っている状況である。

◯勝山委員 全国と比較すると、本市の受診率はまだ低いようであるが、本市の受診率の目標値とその達成のためにどのような取組を行っているのか尋ねる。

△保健医療局長 がん検診受診率の目標については、福岡市保健福祉総合計画において、令和8年度までに50%を達成することを定めている。受診率向上のための取組としては、節目年齢や検診受診歴に応じた受診勧奨はがきの送付や、検診ガイドの全戸配布、啓発イベントの開催など広報、啓発を行っている。また、検診専用ウェブサイト「けんしんナビ」によるオンライン予約の導入や、協会けんぽ等と連携し、ホテルや商業施設などで行う「よりみち健診」の実施など、受診しやすい環境づくりに取り組んでいるところである。

◯勝山委員 様々な取組をしているようである。名古屋市では、がん検診受診率のさらなる向上に向けて、特定の年齢の人に自己負担が無料になる無料クーポン券を送付したり、がん検診をワンコインで受けられるよう自己負担額を一律500円としたりするなどの取組を行っている。そこで、本市が実施する5つのがん検診における自己負担額を尋ねる。

△保健医療局長 自己負担額については、各区保健福祉センターなどで実施している集団検診の場合、胃がん検診が600円、大腸がん検診500円、肺がん検診500円、子宮頸がん検診400円、乳がん検診は40歳代が1,300円、50歳以上が1,000円となっている。医療機関で実施している検診の場合、胃がん検診が1,800円、大腸がん検診500円、子宮頸がん検診1,200円、乳がん検診は40歳代が1,500円、50歳以上が1,200円となっている。

◯勝山委員 名古屋市では5つのがん検診を受けても2,500円であるのに対して、本市では最大で5,500円になるのを考えると、気軽に受けたくなる金額ではないように感じる。本市でも、なかなか上がらない受診率の向上に向けて、自己負担額を下げるなど、初めての人でも受診しやすくなるように思い切った取組が必要ではないかと考えるが、所見を尋ねる。

△保健医療局長 がん検診については、本市が実施する検診受診者数は増加傾向にあるものの、全体の受診率は目標の50%に達していない状況であることから、受診率向上に向け、さらに取組を強化していく必要があると考えている。中でも、新規受診者の開拓が重要であると考えていることから、初めての人が受診しやすい機会を創出するための取組について検討していく。

◯勝山委員 よろしくお願いする。ここまでがん対策について質疑を進めてきたが、人生100年時代となった今、がんの予防やがんとの共生といった、がん対策の推進は欠かすことができない。がんの予防、早期発見、早期治療や、がん闘病中の人に対する生活の質の向上のためにも、今後のがん対策の拡充に向けた副市長の意気込みを尋ね、この質問を終わる。

△荒瀬副市長 がんは生涯のうち2人に1人が罹患すると言われており、実際、本市においても死亡原因の第1位となっていることから、がん対策は大変重要と認識している。まず、がん予防については、がんのリスクになると判明している胃がんとピロリ菌、肺がんとたばこ、子宮頸がんとヒトパピローマウイルスなど、がん予防について、しっかりと周知、啓発していく。早期発見、早期治療については、特に働く世代へのがん検診の受診率向上に向け、夜間、休日に行っている健康づくりサポートセンターの周知を図るとともに、受診機会のない事業所に働きかけ、企業と連携した検診を受けやすい環境づくり等に取り組んでいく。さらに、10月は健康づくり月間であり、ピンクリボン月間でもあるため、イベントやSNS等による広報、啓発を強化し、全市を挙げて受診率向上に取り組んでいるところである。今後とも、がん患者支援の充実を含め、総合的にがん対策の強化に取り組んでいく。

◯勝山委員 よろしくお願いする。次に、空き家対策について尋ねる。全国の空き家の総数が過去最多に上り、増え続けていることが総務省の調査結果から明らかになった。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は900万戸で、前回調査の平成30年の849万戸から51万戸増加し、過去最多を記録している。また、30年前の平成5年の空き家数は448万戸となっており、この30年間で倍増しているところである。総住宅数に占める空き家の割合である空き家率は過去最高の13.8%に上り、実に7戸に1戸が空き家になることに相当している。空き家は全国的に年々増加しており、日本における空き家問題は深刻な社会課題となっている。そこで、福岡県内と本市内の空き家数と空き家率、本市の空き家の状況について尋ねる。

△住宅都市局長 平成30年に総務省が実施した住宅・土地統計調査によると、福岡県内における空き家数は約32万8,600戸、空き家率は12.7%である。また、本市内における空き家数は約9万4,200戸、空き家率は10.5%で、政令市において5番目に低い状況である。

◯勝山委員 増加傾向にある全国と比較すると、本市の空き家率は3ポイントほど低い状況のようである。本市の将来人口推計を見ると、2040年頃に総人口がピークに達し、人口は約170万人になると推計している。その一方で高齢者数は年々増加し、65歳以上の高齢者が占める割合は27.8%、世帯数においては単独世帯の増加が顕著となり、2040年頃には6割を超えると推計しているところである。これらのことを考えると、現在は本市の空き家率が全国と比較して低い状況にはあるものの、今後の単独高齢者世帯の増加に伴い、さらに空き家も増加していくことが懸念され、本市においても具体的な対策がますます必要になってくる。先ほどの答弁によると、割合でいえば政令市において5番目に低いとのことであるが、数で見ると9万4,200戸と決して少ない数ではないと思う。本市の認識を尋ねる。

△住宅都市局長 空き家数には、賃貸や売却用などとしての利用が予定されているものも含まれており、それ以外の使用目的のない空き家の利活用が重要と考えている。本市において、使用目的のない空き家の割合は2.8%で、政令市において最も低い状況であるが、近年増加していることから、利活用の促進を図る必要があると考えている。

◯勝山委員 国土交通省は、おおむね1年間を通して利用の実態のない住宅を空き家と定義しており、そのうち特に増加が著しいのが、答弁にあった賃貸、売却用物件や別荘などに該当しない使用目的のない空き家である。前回調査から全国で約37万戸増えており、過去最多の385万戸に上っている。そこで、本市の空き家のうち、使用目的のない空き家の平成25年、30年の数と、所有者が空き家のままにしておく理由について尋ねる。

△住宅都市局長 平成30年の住宅・土地統計調査によると、25年は約2万500戸、30年は約2万4,800戸である。また、空き家にしておく理由については、令和元年度に国が実施した空家所有者実態調査によると、上位3項目は、物置として必要、解体費用をかけたくない、更地にしても使い道がないとなっている。

◯勝山委員 また、一戸建ての空き家のうち使用目的のない空き家の数と、一戸建て空き家の総数に対する割合について尋ねる。

△住宅都市局長 同調査によると、一戸建ての空き家は約8,000戸で、割合は73.4%である。

◯勝山委員 使用目的のない空き家の背景には、核家族化で子ども世帯との同居が減ったことや、少子・高齢化、人口減少の進行が指摘されており、本市においても、不動産市場に流通しない使用目的のない空き家の割合が73.4%と非常に高く、増え続けていることが現状の課題である。ここまで本市の空き家の状況について尋ねてきたが、これからは本市の空き家対策について尋ねていきたいと思う。福岡市空家等対策計画における空き家対策に関する主な施策と、令和5年度の決算額について尋ねる。

△住宅都市局長 空き家対策の主な施策としては、空き家等の適切な管理の促進として、市民意識の啓発や専門家と連携した相談体制の構築、空き家等の利活用促進として、空き家バンクなどによる既存住宅の流通や、リフォーム市場の活性化促進及び空き家の多様な活用方策の検討、実施、放置空き家等に対する対策の推進として、放置空き家等の所有者等への助言、指導などである。また、令和5年度の決算額は1,688万円余である。

◯勝山委員 まずは空き家対策の入り口として、相談体制の充実が求められるところである。空き家等に関する相談への対応、実施体制と令和5年度の相談件数について尋ねる。

△住宅都市局長 まず、相談への対応、実施体制については、住宅相談コーナーにおいて、建築の知識、経験を有する相談員が相談を受けるとともに、司法書士による相続等の権利関係に係る特別相談を行っている。また、適切な管理が行われていない空き家については、住宅都市局や各区役所の窓口において相談を受け、現地調査や所有者等の特定を行い、訪問や文書等での指導を行っている。次に、令和5年度の相談件数については、住宅相談コーナーが247件、特別相談が2件、その他の窓口での相談が219件である。

◯勝山委員 空き家の増加を抑制していくためには、住宅市場への流通を支援する取組や住宅ストックの質の向上などにより、既存住宅を有効活用し、所有する空き家で売却、賃貸を考えている物件と、購入、賃貸希望者をマッチングすることが重要になる。そこで、福岡市空き家バンク制度について、これまでの実績を尋ねる。

△住宅都市局長 令和2年度に運用を開始し、4年度に1件、5年度に3件の登録がなされ、全て成約している。また、6年度は現在2件の登録がなされ、別に6件の相談を受けている。

◯勝山委員 今答弁があったが、令和2年度の運用開始から4年がたつが、まだ登録件数が少ないように感じる。そこで、本市の課題認識と今後の取組について尋ねる。

△住宅都市局長 登録件数については、本市は他の政令市と比較して空き家率が低いことに加えて、人口増加等により不動産流通が活発なことなどから、空き家バンクへの登録まで至らないケースがあるものと認識しているが、民間住宅ストックを積極的に活用していくため、引き続き登録の促進に向けて、空き家の掘り起こしや制度の周知などにしっかりと取り組んでいく。

◯勝山委員 答弁にもあったように、空き家の掘り起こしや幅広い制度の周知をしっかりと行ってもらいたいと思う。空き家を地域の資源と考えて、地域活用ニーズや多様化する市民の居住ニーズなどに対応するために、空き家の多様な利活用を進めることも必要になる。令和6年度に新設した空き家改修費補助制度の概要と実績について尋ねる。

△住宅都市局長 空き家改修に係る補助制度については、様々な地域ニーズへの対応と空き家の利活用を複合的に推進するため、令和6年度に2種類の制度を創設している。制度の内容については、空き家を改修して福祉施設や子ども食堂などの地域貢献施設として活用する場合に、250万円を上限として対象経費の2分の1を補助するものと、市街化調整区域において子育て世帯の定住化促進のための住宅として活用する場合に、100万円を上限として対象経費の2分の1を補助するものがあり、いずれも設計や改修工事、家財道具の処分等に係る経費を対象としている。また、実績については、令和6年8月末時点で、地域貢献施設に係る改修費補助について1件の申請がなされている。なお、補助に関する問合せは、複数受けているところである。

◯勝山委員 空き家を改修して福祉施設や子ども食堂など地域貢献施設に対して、最大250万円の改修費補助金制度が創設されている。地域福祉への活用については、福岡市社会福祉協議会が社会貢献型空家バンク事業を実施しているが、概要と実績について尋ねる。

△福祉局長 空き家の地域福祉への利活用を図ることを目的に、社会福祉協議会が古家空家調査連絡会と連携し、空き家を活用してほしい所有者と、地域の居場所や福祉目的の事業所などに活用したいと希望する人をマッチングする事業である。活用実績は、令和6年8月末現在で11件となっている。

◯勝山委員 改修費補助の創設を機に、さらに取組が進めばと思う。社会貢献型空家バンク事業の課題と普及促進について尋ねる。

△福祉局長 地域福祉への利活用を希望する人のニーズに合った立地や間取りの空き家の提供が少ないことが課題であり、より多くの人に協力してもらうことが重要であると考えている。このため、社会福祉協議会が専用のウェブサイトを開設し、取組の内容や具体的な事例を紹介するとともに、パンフレットの配布や広報誌への掲載など普及啓発を行っており、引き続き連携して取り組んでいく。

◯勝山委員 空き家を地域の資源と捉え、高齢者支援や障がい者支援、子ども支援など地域福祉に利活用していくことは、効果的な空き家対策につながる。そのためには、空き家改修費補助事業を行っている住宅都市局は、社会貢献型空家バンク事業を行っている福祉局と連携をしっかり図るべきだと考えるが、所見を尋ねる。

△住宅都市局長 本市においては、空き家の多様な活用に向けた庁内連絡会議を設置し、関係局と情報共有などを行うとともに、令和6年度に創設した空き家改修に係る補助制度では、社会貢献型空家バンク事業において、空き家を福祉施設に改修する際にも利用可能とするなど、福祉局と連携して取り組んでいるところである。引き続き関係局と連携しながら、空き家の利活用に向けて取り組んでいく。

◯勝山委員 放置された状態の空き家は、老朽化による倒壊や景観の悪化など地域に悪影響を及ぼすおそれがあり、対策が急務である。私の地元地域でも、空き家について多くの相談が寄せられている。屋根瓦はずれて窓ガラスは割れており、かつ外壁は倒壊寸前の空き家に加えて、長年放置された木や枝も伸び放題で隣地にも越境するなど、管理不全の空き家の影響は、防災、防犯、衛生、景観など地域にとっては深刻な問題である。そのような中、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が令和5年12月13日に施行されたが、平成26年の制定時と比べてどのように改正されたのか尋ねる。

△住宅都市局長 空家等対策の推進に関する特別措置法については、使用目的のない空き家の増加状況を踏まえ、除却等のさらなる促進に加え、特定空家等の状態となる前の段階から、有効活用や適切な管理を促進するよう改正がなされている。主な改正内容としては、所有者の責務の強化として、国や自治体の施策への協力の努力義務化、活用拡大に資する措置として、空家等活用促進区域や空家等管理活用支援法人制度等の創設、特定空家化を未然に防止する措置として、指導、勧告の対象拡大及び勧告を受けた空き家の固定資産税に係る住宅用地特例の解除、特定空家等の除却等の円滑化に資する措置として、財産管理人による空き家の管理、処分措置の創設などとなっている。

◯勝山委員 改正法では、活用拡大、管理の確保、特定空家の除却等が改正の3本柱となっており、また特定空家に加えて、それに至る前の管理不十分な物件を管理不全空家と規定し、市区町村の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地の特例を解除できるようになった。そこで、本市の管理不全空家等への今までの対応状況を尋ねる。

△住宅都市局長 福岡市空家等の適切な管理に関する条例に基づき、条例が施行された平成29年4月から令和6年3月までに、管理不全空家等の認定を258件行っているが、そのうち是正された件数は172件、未是正の件数は86件となっている。

◯勝山委員 未是正件数が86件あるとのことだが、未是正の空き家に対してどのように取り組んでいるのか尋ねる。

△住宅都市局長 未是正の空き家に対しては、現地を調査するとともに、所有者や相続人の所在を把握し文書による指導を行った後、是正が進まない場合や連絡が取れない場合は、所有者の自宅を訪問するなど、繰り返し指導を行っている。また、令和5年度の法改正によって、市町村長による申立てができることとなった所有者不明等に対する財産管理制度を活用するなど、早期是正に向けた取組を行っている。

◯勝山委員 では、改正前において、特定空家へ勧告後、固定資産税の住宅用地特例を解除した例があれば、その推移と総件数を尋ねる。

△財政局長 解除の実績としては、平成30年度が1件、令和元年度が2件、2年度及び3年度がそれぞれ1件、4年度が4件、5年度が2件で、合計11件となっている。

◯勝山委員 特定空家の勧告後、住宅用地の特例を解除した件数は11件とのことだが、今回の法改正で、管理不全空家に対しても勧告できるようになり、今後増加することが想定される。また、先ほど答弁にもあったが、改正法では、市区町村が空家等活用促進区域や活用指針を策定する制度が新設された。中心市街地や観光地を想定して、用途が住宅に限られている区域でも、指針に明記されていれば、商業施設や飲食店などに転用できるようになる。所有者にも現行の適切な管理の努力義務に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務が追加され、所有者の責務が強化されている。ほかに、市区町村がNPO法人、社団法人などを空家等管理活用支援法人に指定できることも盛り込まれている。自治体や所有者へのサポートを強化するために、新しく空家等管理活用支援法人制度が創設されたが、その概要を尋ねる。

△住宅都市局長 空家等管理活用支援法人制度は、空き家の管理や活用などに取り組むNPO法人等の民間法人が、公的立場から活動しやすい環境を整備し、空き家等対策に取り組む自治体の補完的な役割を担うことを目的とした制度である。

◯勝山委員 国土交通省の令和3~4年に全国空き家対策推進協議会員を対象にした調査によると、市区町村の6割が人手不足や専門的知識不足などが課題と考えており、空き家の適正管理や利活用での第三者団体の活用については約6割が必要と回答するなど、第三者団体の活用ニーズは高いようである。この調査のように、空き家の発生を防ぐことは、行政の取組だけでは難しく、関係する団体や法人など民間の力を借りることが極めて重要であると思う。京都市では、令和6年4月30日付で5つの法人を空家等管理活用支援法人に指定をしている。これらの法人は、これまでの空き家所有者への普及啓発や相談会の開催などのほか、空家等対策協議会に参画してもらい、市の空き家対策に協力してもらっているようである。今回の法改正で、支援法人制度が創設されたことを受けて、指定により法の裏づけが得られたことにより、市民への見え方や市とより一層の連携強化につながると考えて、この支援法人制度を活用することとしたようである。市町村が支援法人に補助や委託費の支出を行った場合、その市町村は国庫補助を受けることができるのか尋ねる。

△住宅都市局長 国の空家対策総合支援事業において、令和6年度から、空き家等の管理や活用に関する情報提供や相談、普及啓発などを行う法人に対して市町村が支援する場合、補助を受けることが可能となっている。補助率は2分の1で、1法人当たり1か年度500万円を上限に最大3か年度受けられることとなっている。

◯勝山委員 市町村が支援法人に対して補助や委託費の支出があった場合は、国の補助を活用することもできるとのことである。そこで、本市においても国庫補助などを活用して、空家等管理活動支援法人制度を導入してみてはと考えるが、所見を尋ねる。

△住宅都市局長 本市においては、国の法改正に先行して、空き家対策の普及啓発や相談対応などについて、県や住宅関連団体等とも連携しながら既に取り組んでいるところである。引き続きさらなる促進を図るため、空き家の状況やニーズ等を踏まえながら、空家等管理活用支援法人の活用なども含め、必要な取組についてしっかりと検討していく。

◯勝山委員 制度導入に向けて検討するようお願いする。都市部への取組も大切だが、市街化調整区域を含む郊外エリアの対策の強化はますます重要になっていく。そこで、郊外エリアにある空き家に対しての課題と取組について尋ねる。

△住宅都市局長 郊外エリアの空き家については、交通などの利便性の観点から、市場で流通しづらいといった課題があると認識をしている。このため、令和4年度から郊外エリアの空き家を対象とした掘り起こし調査を実施し、空家バンクへの登録を促すとともに、市街化調整区域において、定住化促進のための住宅として活用する場合の改修費補助制度を創設し、6年度から子育て世帯を対象に拡充を図ったところである。

◯勝山委員 本市では、令和4年度から郊外エリアの空き家を対象とした掘り起こし調査を行っており、空き家の早期利活用につながる取組をさらに進めてもらいたいと思う。その郊外エリアの空き家の利活用に当たっては、そのノウハウを持つ専門家や関係団体との連携による支援体制の強化が求められている。先日話を聞いた全国古民家再生協会は、地域に寄り添った空き家アドバイザー協議会を設置し、自治体とも連携協定を結んで、古民家鑑定士の育成、住教育の活動、地域住民を巻き込んだDIYによる古民家再生や、人と家の終活セミナー相談会の開催など地道な活動をしている。法改正の活用拡大に定める、所有者や活用希望者への普及啓発、情報提供、寄り添った相談支援などを行う空家等管理活用支援法人制度の趣旨や取組に沿った活動をしている。空家等管理活用支援法人の活用など、今回の法改正を受けて、郊外エリアを含む空き家対策を一層効果的、機動的に推進してしてもらいたいと思うが、最後に、市長の所見を尋ね、質問を終わる。

△市長 全国的に人口減少が進む中、本市の人口は増え続けており、民間の不動産流通も活発に行われていることなどから、使用目的のない空き家の割合は政令市の中で最も低い状況となっている。しかしながら、その数は増加の傾向にあるため、空き家を地域のニーズに応じて活用することで、社会的な付加価値を創出し、地域の活性化や良好なコミュニティの形成につなげていくことが重要であると認識している。このため、空き家を利活用の余地がある地域の資産として捉え、福岡市空家等対策計画に基づき、空き家の発生予防や利活用、適正管理の促進など幅広く取り組んでおり、令和4年度に市街化調整区域の定住化促進に資する空き家改修への補助を、6年度には、福祉施設や子ども食堂など地域の活性化に資する改修への補助を開始するなど、取組の充実を図っているところである。引き続き、郊外エリアを含む空き家の状況等を踏まえ、福岡県や関係団体など様々な関係者と連携を図りながら、良質な住宅ストックの形成に向けてしっかりと取り組んでいく。

 

議員紹介

  1. つつみ 健太郎

    西 区

    つつみ 健太郎
  2. たばる 香代子

    中央区

    たばる 香代子
  3. たのかしら 知行

    博多区

    たのかしら 知行
  4. 石本 優子

    早良区

    石本 優子
  5. かつやま 信吾

    東 区

    かつやま 信吾
  6. 古川 きよふみ

    博多区

    古川 きよふみ
  7. 高木 勝利

    早良区

    高木 勝利
  8. しのはら 達也

    城南区

    しのはら 達也
  9. 尾花 康広

    東 区

    尾花 康広
  10. 松野 たかし

    南 区

    松野 たかし
  11. 山口 つよし

    東 区

    山口 つよし
  12. 大石 しゅうじ

    南 区

    大石 しゅうじ
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