◯川上(多)委員 公明党福岡市議団を代表して、暗所視支援眼鏡の助成について、市民に寄り添った終活支援事業及びご遺族サポート窓口の拡充について、中高生の居場所づくりについて質疑する。初めに、暗所視支援眼鏡の助成について、まず、日常生活用具に関する過去3年間の決算額と給付件数の推移を尋ねる。
△保健福祉局長 日常生活用具の決算額は、平成29年度が3億1,002万円余、30年度が3億2,904万円余、令和元年度が3億3,599万円余である。給付件数は、平成29年度が2万7,108件、30年度が2万8,716件、令和元年度が2万8,831件である。
◯川上(多)委員 昨年、網膜色素変性症の患者から、暗所視支援眼鏡を日常生活用具に認定してほしいとの相談を受けた。国の指定難病である網膜色素変性症とは、眼の中で光を感じる組織である網膜に異常が見られ、失明することもある遺伝性、進行性の病気である。特徴的な主な症状として、暗いところで物が見えにくくなる夜盲症、視野が狭くなる視野狭窄、視力低下などがあると聞いている。本市には網膜色素変性症の患者は何人いて、どのような支援を行っているのか。
△保健福祉局長 患者数は令和元年度末で195人である。実施している支援として、まず、指定難病の医療受給者証の交付を受けた人については、治療に必要な医療費の自己負担の一部を助成するとともに、身体障害者手帳を持っていない人でも、一定の障がいがある人については、障がい福祉サービス等を受けられることとしている。また、難病相談支援センター及び区保健福祉センターにおいて、療養や日常生活、就労などの各種相談支援を実施している。
◯川上(多)委員 相談を受けた人は、かなり視野が狭くなっており、足元が見えにくく、少しの段差や溝などを見極めることができず、転倒のおそれがあり非常に怖いと話していた。そのため、日常の外出はいつも決まったルートでしか行動できず、人混みでの歩行も困難であり、パニック状態になることもあるなど、行動範囲がかなり制限されるとのことだった。また、夜盲は夕方になると物が見えにくくなるため、夜間の外出は支障を来すなど、日常生活における様々な不自由さを嘆いていた。近年、この難病で苦しんでいる人にとって効果的な暗所視支援眼鏡が、九州大学と民間企業の共同で開発された。この眼鏡は、高感度のカメラ画像を目の前のディスプレイに投影することで、暗いところでも明るく見えるようにすることが可能であり、網膜色素変性症の人が日常生活を安心して過ごせる用具として有効であると聞いた。そこで、現在、視覚障がい者に対して認定されている日常生活用具にはどのようなものがあるのか、また、暗所視支援眼鏡は日常生活用具に認定されているのか、本市の現在の状況を尋ねる。
△保健福祉局長 視覚障がい者を対象とした日常生活用具については、パソコン等の画面音声化ソフトなどの情報通信支援用具、視覚障がい者用のポータブルレコーダーや拡大読書器などがある。暗所視支援眼鏡については、現在、日常生活用具には認定していない。
◯川上(多)委員 日常生活用具の認定についての流れはどうなっているのか。どのような人が、いつ、どのような判断基準により検討し、最終的に誰が決裁しているのかを具体的に尋ねる。また、令和元年度に新たに日常生活用具に認定されたものがあれば示されたい。
△保健福祉局長 日常生活用具の要件については、厚生労働省の告示によると、安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの、日常生活上の困難を改善し、自立を支援しかつ社会参加を促進すると認められるもの、製作や改良または開発に当たって障がいに関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般に普及していないものという3つの要件を全て満たすものと定められている。この要件に該当するものについて、必要に応じ、日常生活用具に認定しようとする場合は、障がいや福祉用具に関する専門的知見を有する者で構成する障がい児・者日常生活用具検討委員会に意見を求め、同委員会の結果を尊重して、保健福祉局長が日常生活用具給付事業の給付対象、給付方法、基準額等の実施内容などを決定することとしている。令和元年度に新たに認定された日常生活用具は、人工内耳の体外器の修理、交換である。
◯川上(多)委員 答弁のあった判断基準に照らしてみると、1番目に、普通の眼鏡と同様に安全かつ簡単に使用できるものであり、2番目に、就学や就労をより継続的に可能とし、さらには災害時に避難する際にも役に立つなど、障がいによる困難を克服し自立や社会参加につながるものと思われる。3番目に、改良、開発に当たっては専門的な知識が必要で、まだ普及していないものであることから、3要件を満たしていると考える。相談を受けた人は、暗所視支援眼鏡の体験会で実際に装着してみたところ、物がはっきりと見えて、視野が広がり、これがあれば大変助かるとうれしそうに話していた。しかし、価格が約40万円と高額であり、経済的負担が大きく、購入が極めて難しいため、暗所視支援眼鏡を日常生活用具の給付の対象にしてほしいとの切実な訴えを受けた。障害者総合支援法に規定されている日常生活用具については、各市町村に対し予算の範囲内で国が2分の1、県が4分の1以内を補助することができることになっており、給付の対象品目は自治体で判断できるものとされている。この制度を利用して、昨年7月、全国で初めて熊本県天草市において、暗所視支援眼鏡が日常生活用具の給付対象として認定された。以降、最近では千葉県千葉市なども日常生活用具の給付対象としている。そこで、本市でも、難病であり視覚障がいのある網膜色素変性症の患者がより軽い経済的負担で購入できるよう、暗所視支援眼鏡を日常生活用具に認定すべきと思うが、所見を尋ねる。
△保健福祉局長 暗所視支援眼鏡については、網膜色素変性症の患者にとって、夜盲や視野狭窄の改善に有効なものであり、必要性のあるものと理解している。しかし、新たに日常生活用具を認定する際には、厳しい財政状況の下、様々な課題がある障がい者施策全体の中での優先度や他都市の状況なども含めて、総合的に判断していく必要がある。
◯川上(多)委員 障がい者の福祉用具として国が一律に種目を認定して支援を行っている制度に補装具費支給制度がある。視覚障がい者が利用できる補装具は、つえ、義眼、眼鏡に限られており、その分を日常生活用具でカバーしなければならない状況と聞いている。そのような中、暗所視支援眼鏡が開発されたことは、夜盲や視野狭窄で困っている人にとって、生活の質を大きく改善するための画期的な福祉用具の誕生となったのではないか。一人でも多くの患者にこの眼鏡を日常生活用具として使用してもらい、眼鏡の開発に寄与した九州大学の地元である本市から全国へその効力を波及していくことを切に願っている。本市が策定した2016~2020年度の保健福祉総合計画において、障がい者分野の基本理念として、障がいのある人が必要な支援を受けながら、自らの能力を最大限発揮し、地域や家庭でいきいきと生活することのできるまちづくりを目指すとしている。まさにこの暗所視支援眼鏡は、視覚に障がいのある人の外出支援、就学、就労支援、災害時の避難及び社会的自立支援につながるものと確信するので、ぜひ前向きに検討してほしいと思う。このテーマの最後に、日常生活用具を含めた視覚障がい者への支援について、医療の専門家である荒瀬副市長に所見を尋ねる。
△荒瀬副市長 視覚障がいのある人たちが、日常生活をはじめ、移動や情報など日々多くの不便や困難な状況に置かれていることは十分承知しており、そのような人たちへの支援は大変重要と考えている。視覚障がいのある人たちには、これまで交通費の助成やガイドヘルパーの派遣による移動の支援に加え、点字や音声コードを活用した情報提供など、支援の充実に取り組んできた。提案の視覚障がい者の日常生活用具については、新しい機器であるため、他都市における給付実績や機器の活用状況などの研究を進めていく。今後とも、視覚障がい者の生活に寄り添った支援を進めていくことで、「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」の実現に向けたまちづくりをしっかりと推進していく。
◯川上(多)委員 次に、市民に寄り添った終活支援事業及びご遺族サポート窓口の拡充について尋ねる。近年では、生前の元気なうちから自分らしい人生の最期の迎え方について考え、親族や大切な人に伝えておく終活への関心が高まっている。まず、本市の終活支援事業の概要を尋ねる。
△保健福祉局長 市民の一人一人が高齢期に向けての心構えや準備ができるよう、終活応援セミナーを行っている。また、テーマごとに自分の意思や意向を書き込むことで、元気なうちから家族や支援者等と話し合うきっかけづくりとしてもらうためのエンディングノートを作成し、情報プラザ、区役所、終活サポートセンター等で配布している。
◯川上(多)委員 終活支援事業の令和元年度の決算額を示されたい。
△保健福祉局長 終活応援セミナーの決算額が211万円余である。なお、エンディングノートについては、事業者と共同で発行しているため、本市の経費負担はない。
◯川上(多)委員 市社会福祉協議会が行っている、ずーっとあんしん安らか事業、やすらかパック事業、終活サポートセンターのそれぞれの事業内容を示されたい。
△保健福祉局長 ずーっとあんしん安らか事業については、市社会福祉協議会が預託金を預かり、契約者が亡くなったときに、預託金の範囲内で葬儀や家財の処分などを代行するものである。やすらかパック事業については、月払いの利用料によって、同様に、亡くなった後の事務を代行するものである。終活サポートセンターについては、亡くなった後の事務や相続、権利擁護など、多岐にわたる相談に専門家が無料で応じるほか、地域での出前講座などを実施している。
◯川上(多)委員 市社会福祉協議会の終活支援事業に対する本市の補助金の過去3年間の決算額と利用者数の推移を尋ねる。
△保健福祉局長 補助金の決算額は、平成29年度及び30年度が492万円余、令和元年度が692万円余である。利用実績について、ずーっとあんしん安らか事業の各年度末時点における契約者数は、平成29年度が102人、30年度が92人、令和元年度が81人である。やすらかパック事業の各年度末時点における契約者数は、平成29年度が12人、30年度が20人、令和元年度が37人である。終活サポートセンターについては、令和元年7月の開設であり、令和元年度末までの相談件数は852件である。
◯川上(多)委員 ずーっとあんしん安らか事業とやすらかパック事業について、それぞれの事業を利用した場合、利用者にはどの程度の負担がかかるのか。
△保健福祉局長 ずーっとあんしん安らか事業の利用に当たっては、入会金が1万5,000円、年会費が1万円、葬儀や家財処分等の費用とするため家財の状況等に応じて50万円からの預託金が必要となる。やすらかパック事業については、一括で預託金が用意できない人のために、平成29年度から新たに設けられたもので、申込み時点の年齢や健康状態に応じて、毎月3,000~7,500円の利用料が必要である。
◯川上(多)委員 無料で利用できる終活サポートセンターの初年度の相談者数が852件と、市民の終活に対する意識は高いにもかかわらず、有料の2つの事業を合わせた利用者数がほとんど増えていないことからすれば、多くの市民がこれらの事業の利用料にまだ敷居の高さを感じているのが実情だと思う。市社会福祉協議会の取組は全国に先駆けた大変すばらしい事業であると思うが、この制度がより必要となる人は、身寄りのない単身高齢者や年金暮らしの人、生活保護を受給している人などではないか。ここで、横須賀市の終活支援に関する取組を紹介する。横須賀市は、独り暮らしで身寄りがないなど、一定の条件を満たす低所得の高齢の市民に対し、本人が協力葬儀社と交わす最低限の費用負担での葬儀、納骨の生前契約に立ち会い、死後は契約どおりに行われたのかを見届ける、エンディングプラン・サポート事業を実施している。生活にゆとりがない高齢等の人の葬儀、納骨などに関する心配事を早期に解決でき、安心して人生を送ることができる制度であると思う。また、エンディングノートに記載しておくような情報を市に登録しておき、いざというときは市が代わりに答える、わたしの終活登録という制度もあり、こちらは特に所得などの条件もなく、市民なら誰でも無料で登録できるとのことである。これなら、せっかく作ったエンディングノートがいざというときに見つからないということもない。そこで、本市でも、市民が安心して人生の最期を迎えられるよう、横須賀市のような制度を導入してはどうかと思うが、所見を尋ねる。
△保健福祉局長 終活支援事業については、高齢期に向けての心構えと準備ができるよう、市民一人一人の気づきを促すため、令和元年度から開始したものである。2年度は、終活相談への市民ニーズの高まりに応えられるよう、市社会福祉協議会で実施する終活支援事業への支援を拡充し、相談体制の強化を図っている。より多くの市民が自身の望む最期を迎えられるように、指摘の事例や市民ニーズなどを踏まえながら、引き続き終活支援事業の充実に努めていく。
◯川上(多)委員 ここまで終活支援事業について尋ねてきたが、いざ大切な家族が亡くなったとき、遺族は深い悲しみや喪失感を抱えた状態で様々な手続のために区役所を訪れなければならない。高齢の人や障がいがある人などの中には、事前にインターネットで手続を調べたり、区役所の窓口を幾つも回って、その都度書類を書いたりすることが難しい人も少なくない。そこで、死亡に伴う区役所での手続について、一般的なサンプル例を尋ねる。
△市民局長 高齢の人が亡くなった場合で言えば、死亡届、後期高齢者医療等の資格喪失届、葬祭費の支給申請、未支給年金の請求、介護保険証の返還などがある。また、身体障害者手帳の返還、障がい者医療の資格喪失届、世帯主や納税義務者の変更届、相続関係の証明のための戸籍や住民票の交付手続などが必要になる場合もある。
◯川上(多)委員 一般的な場合でも10個の手続が必要であり、ほかの行政サービスを受けている場合はもっと多くの手続が必要となる。遺族は悲しみの中、不安を抱えながら来庁する。当然、高齢の人も多いと予想され、今後ますます高齢化が進んでいくことを踏まえると、より丁寧な対応が望まれる。ましてや、手続上必要となる印鑑や、場合によっては相続人の預金通帳などの不備により手続ができず、もう一度出直してこないといけないという事態は避けるべきである。死亡に関する手続について、市民からどのような声が上がっているのか尋ねる。
△市民局長 特に市民から直接の意見はないが、手続の数も多く、煩雑で負担に感じる人も多いのではないかと考えている。そのため、区役所では、フロアマネジャーなどが必要な手続の一覧表を渡し、各窓口を案内するとともに、各窓口が連携し丁寧な対応に努めている。
◯川上(多)委員 死亡に関する手続の平均待ち時間を示されたい。
△市民局長 亡くなった人の状況によって必要な手続は様々であり、時期により待ち時間も異なることから、一連の手続に要する待ち時間などのデータは取っていない。
◯川上(多)委員 仮に1つの手続が平均10分だとしても、単純合計で100分、さらにこれが繁忙期などと重なれば、区役所の手続だけでも半日かかってしまうというのも決して大げさな想定ではない。コロナ禍において3密を避ける観点から、区役所での手続が長時間になることは断じてあってはならないと思う。死亡に伴う手続は、除籍手続や国民健康保険、年金など多くの申請手続が必要となるケースも少なくないため、よりスムーズに手続が進むための配慮が必要となる。そこで、平成30年第3回定例会において、我が会派の古川議員が、各区役所でのワンストップ窓口となるおくやみコーナーの設置を提案し、当時の局長は、今後、博多区庁舎の建て替えも踏まえ、窓口サービスの在り方について検討していくと答弁しているが、現在の設置状況を尋ねる。
△市民局長 死亡に伴う手続の専用窓口については、中央区役所が独自の取組として、令和元年5月にご遺族サポート窓口を設置し、遺族に寄り添ったサービスを行っている。
◯川上(多)委員 中央区で独自の取組として設置したご遺族サポート窓口の概要と現時点でどのように評価しているのか尋ねる。
△市民局長 中央区役所においては、家族が亡くなった際に必要となる手続や問合せ先などについて、区役所以外の銀行等の民間企業まで含んだ、ご遺族のための手続きガイドを作成し、死亡届が提出された際に、葬祭事業者などを通じ遺族に渡している。また、ご遺族サポート窓口については、遺族からの予約を受け、状況に応じた必要な手続や窓口の順番などの一覧表を作成し、来庁時には各種手続をスムーズに行ってもらえるよう案内している。ご遺族サポート窓口の利用者の多くが高齢の人であり、スムーズに手続ができて助かったなど好評を得ている。
◯川上(多)委員 中央区が作成しているご遺族のための手続きガイドは、健康保険証や介護保険証の返却、未支給年金や遺族年金の請求など、様々な手続に必要なものが1冊にまとめられている。また、亡くなった人が世帯主だったのか、年金を受給していたのか、高齢福祉サービスや障がい福祉サービスを受けていたのかなど、該当するところにチェックをして、それに伴う主な手続や準備するもの、手続先の窓口が一目で分かるようになっており、親切な配慮がなされている。ご遺族サポート窓口は、原則予約制となっており、手続に来た人に対し、申請書作成のサポートや窓口への案内など、少しでもスムーズに手続ができるようになっている。何より、区役所で案内の係の人が迎えてくれる体制が整っていることで、遺族の安心感につながっているのではないかと思う。このような中央区の取組は、高齢の人や遺族に寄り添ったすばらしいサービスである。行政窓口における市民サービスの向上の観点からも、ご遺族サポート窓口を全区に設置してはどうかと提案するが、所見を尋ねる。
△市民局長 中央区のご遺族サポート窓口は好評を得ており、各区役所への展開については、人員やスペースの確保などの課題も踏まえ、検討を進めていきたい。
◯川上(多)委員 ぜひ一日も早く全区に広げるよう、重ねてお願いしておく。超高齢化社会を迎えるに当たって、経済的負担がなく、より身近なところで安心して受けられる終活支援事業とご遺族サポート窓口の拡充は、死後の不安を軽減し、高齢の人の暮らしの安心や充実にもつながると考えるが、このテーマの最後に市長の所見を尋ねる。
△市長 長寿化が進む中で、将来に様々な不安を抱える高齢者や、大切な家族を亡くした遺族など、市民のそれぞれの立場に寄り添った支援を行っていくことは大変重要と認識している。これまで終活支援事業については、高齢期の過ごし方や、人生の最終段階をどのように迎えたいかなどを自身で考えてもらえるように、住民に身近な終活サービスを行っている市社会福祉協議会と連携して、セミナーの開催や相談支援に取り組んできた。また、区役所では、遺族をはじめ、全ての来庁者へ心のこもった支援ができるように、市民サービスの向上に努めてきた。今後とも、長寿を心から喜べる社会となるように、市民ニーズを踏まえながら、終活支援の充実に努めていくとともに、全ての人が安心して利用しやすい区役所となるように取り組んでいく。
◯川上(多)委員 次に、中高生の居場所づくりについて尋ねる。昨今における中高生を取り巻く環境は、インターネット、携帯電話の普及、社会経済状況の変化等により大きく変化している。スマートフォン等の利用が増え、ネット依存やSNSでトラブルに巻き込まれるケースもあるなど、現代社会における新たな社会問題となっている。地域社会においては、核家族化や地域の人間関係の希薄化、共働き家庭の増加が進み、大人と触れ合う機会も少なくなっている。また、中高生は、友人関係や学力、進路に関することなど思春期ならではの様々な不安や悩み、ストレスを抱えている。平成30年度に本市が実施した青少年の意識と行動調査において、あればいいなと思う場所はの問いに対し、1人でものんびり過ごせる場所と回答した割合が、中学生50%、高校生37.8%と最も多く、自主学習できる場所、学校や家にいたくないときに気軽に立ち寄ることができる場所と続く。このような状況を踏まえ、中高生が家族や友人、地域の大人たちにありのままの自分を受け止められ、心から安心して過ごせる場所、人間関係づくりができる場所、すなわち居場所の提供がますます重要になってくると考える。そこで、今回は、本市の子ども施策の中でも、中高生の居場所づくりに焦点を絞って質疑を行う。まず、本市が行っている中高生の居場所づくりに関する事業概要と過去3年間の予算額、決算額の推移を尋ねる。
△こども未来局長 中高生の居場所づくりについては、中高生を中心とした若者が気軽に立ち寄り、自由な時間を過ごすことができる居場所づくりに取り組む、若者のぷらっとホームサポート事業を実施している。具体的には、本市が運営を委託するフリースペースてぃ~んずの開設や、居場所づくりを行う団体に対する補助、居場所づくりに関するノウハウの提供や、団体間の交流会の開催、ホームページやリーフレットによる周知、広報などを行っている。過去3年間の予算額及び決算額の推移については、平成29年度は予算額358万4,000円、決算額258万6,000円、30年度は予算額313万6,000円、決算額276万2,000円、令和元年度は予算額323万6,000円、決算額232万2,000円である。
◯川上(多)委員 フリースペースてぃ~んずの取組概要、運営主体、対象者、現在の開設場所、開設日時と、中高生の利用者からどのような声が上がっているのか示されたい。
△こども未来局長 フリースペースてぃ~んずについては、NPO法人子どもNPOセンター福岡に運営委託を行っており、主に中高生を対象に、毎週日曜日の13~17時、南区保健福祉センターの講堂や塩原公民館において開設している。利用者からは、学校とは違う友達と過ごせるのが心地よい、ここでは受け入れてもらえるから安心する、高校を卒業したら運営スタッフとして関わりたいなどの声をもらっている。
◯川上(多)委員 現在の利用者からは一定の評価を得ているとのことだが、フリースペースてぃ~んずの過去3年間の利用者数を尋ねる。
△こども未来局長 過去3年間の中高生など若者の利用者数は、平成29年度は延べ540人、30年度は延べ586人、令和元年度は延べ246人である。
◯川上(多)委員 令和元年度の利用者数は、前年度の586人から246人と半分以下に減っている。この要因は何であると考えているのか尋ねる。
△こども未来局長 令和元年8月に開設場所を移転したが、移転先の決定に時間を要し速やかな周知ができなかったこと、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため令和2年3月に一時休止したことなどが影響したものと考えている。
◯川上(多)委員 中高生からは、居心地がよい、受け入れてもらえるから安心といった声がある一方で、利用者数が減っていることは大変残念に思う。その要因については、開設場所の移転や新型コロナウイルス感染症の影響による休止期間があったためとのことであったが、そのほかにも利用者数が減少した理由があるのではないか。1つ目は、フリースペースてぃ~んずが、南区保健福祉センターの講堂や公民館で開設されており、果たして中高生が気軽に立ち寄りやすい最適な場所なのかということである。中高生が気軽に立ち寄れる場所の条件として、交通の便がよく、できれば室内の雰囲気などが外からも少し見られるような、路面に面している場所が望ましいのではないかと考える。2つ目は、開設日時が毎週日曜日の13~17時と限られていることである。本当に利用者のニーズに合っているのかとの疑念が生じてくる。そこで、中高生の利便性を考慮し、本事業の目的に合った場所の開設を検討してはどうか。また、より多くの中高生に居場所の提供ができるよう、場所を確保の上、試験的に平日の夜も開設し効果を検証するなど、もう一重施策の充実を図ってほしいと思うが、所見を尋ねる。
△こども未来局長 開設場所や日時については、居場所を必要とする中高生にとって、より気軽に立ち寄りやすい場所や利用しやすい時間帯などについて引き続き検討していく。
◯川上(多)委員 ぜひよろしくお願いしておく。次に、フリースペースてぃ~んず以外の居場所について尋ねる。本市として、フリースペースてぃ~んずとは別に、地域で若者の居場所づくりを実践している団体へ補助金の財政支援を行っているとのことだが、補助金事業はいつから実施しているのか。あわせて、令和元年度の補助金の決算額と交付団体数を尋ねる。
△こども未来局長 地域において若者の居場所づくりを行う団体に対し開設費や運営費の補助を行う、若者のぷらっとホームサポート事業補助金については、平成25年度から実施している。令和元年度の決算額は31万円で、4団体に交付している。
◯川上(多)委員 補助金を創設した当時と比較して居場所は増えているのか。平成25年度と直近の居場所の開設数及び区ごとの内訳を尋ねる。
△こども未来局長 本市が把握している居場所の開設数については、平成25年度は6か所であったが、令和2年度は15か所に増えている。その内訳は、東区3か所、博多区1か所、中央区3か所、南区3か所、早良区3か所、西区2か所である。
◯川上(多)委員 中高生の居場所について、どのようなニーズがあるのか示されたい。
△こども未来局長 平成30年度に本市が実施した青少年の意識と行動調査によると、1人で過ごせるところ、友達と一緒に活動できるところ、人と交流できるところ、不安や悩みを相談できるところなど様々である。
◯川上(多)委員 中高生からの様々なニーズがあるにもかかわらず、城南区には現在本市で把握している居場所がないということであり、少なくとも各区に1か所の居場所を開設することを早急に進めてほしいと思うが、今後どのように取り組むのか、所見を尋ねる。
△こども未来局長 地域の居場所を増やすためには、その担い手の確保が重要と考えており、毎年、居場所づくりに興味がある人や団体が参加できる交流会や研修会を開催し、事例や運営ノウハウの紹介などを行っている。今後とも、新たな担い手を確保し、開設や運営の支援を行うことにより、様々な居場所づくりに取り組んでいく。
◯川上(多)委員 城南区については、早急に居場所を確保するよう重ねて要望しておく。居場所を増やしていくとともに、居場所を必要とする中高生にしっかり周知していくことも大切と思うが、現在はどのような周知を行っているのか。
△こども未来局長 市内における若者の居場所の情報をまとめたリーフレットを作成し、市立中学校や高校等に配布するとともに、スクールソーシャルワーカーにも周知を行うほか、市ホームページにも掲載している。
◯川上(多)委員 中高生の居場所の周知方法として、LINEなどのツールを活用し情報を発信するなど、啓発にもより一層力を入れてほしいと思うが、所見を尋ねる。
△こども未来局長 SNSを活用した情報発信など中高生により届きやすい方法を検討していく。
◯川上(多)委員 ぜひよろしくお願いしておく。本市として、中高生の居場所づくりに本気で取り組もうとしているのであれば、現在の居場所の質の向上という観点から、団体間のつながり、ネットワークを構築し、地域での見守り体制を整えていくことを早急に進め、しっかりと見える形での施策につなげてほしいと思う。局としての今後の具体的な取組や考えを尋ねる。
△こども未来局長 居場所づくりに関する今後の取組については、引き続き、新たな担い手の確保により、地域における様々な居場所づくりを進めながら、居場所の運営団体だけでなく、様々な若者の支援を行う団体ともネットワークを構築し、運営ノウハウの共有により居場所の質の向上を図るとともに、よりニーズに適した居場所や適切な支援団体につなぐことによって、地域で中高生を見守る環境の充実に取り組んでいく。
◯川上(多)委員 ここで他都市の取組を紹介する。東京都世田谷区では、区内の大学と協定を結び、若者支援に関する相互協力を行っている。区側は、協定を結んだ大学からの紹介で、ひきこもりなどで大学に通えなくなった大学生に対し、専門の臨床心理士などが本人や家族と面談し、大学に戻れるよう援助をする。一方、大学側は、大学生ボランティアが中心となって、中高生がゆったりと過ごすことができる居場所の運営に協力する。中高生にとっては、自分たちとより近い年代の大学生と接する機会となり、より効果的であると思う。大学にとっても、市にとっても相乗効果が見込まれ、大変よい取組ではないかと思う。このような他都市の例も参考に、本市として居場所のさらなる拡充に努めてほしいと思うが、所見を尋ねる。
△こども未来局長 中高生の居場所づくりについては、大学をはじめ、様々な団体との連携による多様な居場所づくりについても、今後検討していく。
◯川上(多)委員 市内における居場所の増加、中高生への周知の強化、より一層の居場所の拡充について要望してきた。冒頭にも述べたような社会状況を踏まえ、中高生たちが今何を求め、どのような居場所の提供が必要なのか、中高生の視点に立った施策を具体的に前に進めてほしいと思うが、最後に市長の所見を尋ねて質疑を終わる。
△市長 中高生は思春期特有の不安や悩みを抱えがちな年代であり、学校や家庭とは異なる身近な場所に、それぞれのニーズに合った気軽に立ち寄ることができる居場所があることが望ましいと考える。これまで、地域団体やNPO法人等と連携しながら、中高生の多様なニーズに応える居場所の確保に努めてきた。今後、居場所の運営団体や若者の支援を行う団体とのネットワークの強化に向けて、交流会を開催するなど若者の社会参加や自立を支援する環境づくりにしっかりと取り組んでいく。